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悲報! 動物さんたちに嫌われていますわ
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部屋を出て廊下に出ると、朝お会いできなかったねずみのパーラとスージーがシンデレラの部屋へと走って向かっているのが見えましたの。
パーラとスージーはしっかり者の女の子たちで、裁縫が得意でいらっしゃるの。毎朝、小鳥さんたちと共に朝の身支度をお手伝いしてくださっているので、今朝もきっと、そのために急いでいらっしゃるのだわ。
「おはよう、パーラ、スージー」
そう呼びかけると、パーラとスージーはビックリして飛び上がり、一目散に逃げていきましたわ。
あぁ……ただご挨拶をしたかっただけですのに。
残念に思っていますと、猫のルシファーが私に向かって疾走し、ドンとぶつかりましたの。
「きゃっ!」
思わず尻餅をつき、ルシファーを抱き上げますと、その口には……
「ガス!!」
ガスはねずみの男の子で、昔、階段の踊り場に置いてあったネズミ捕りに捕まっていたところを助け出し、この家に住むねずみさんたちの お仲間になったんですの。食いしん坊で愛嬌があって、とても可愛らしいのですけど、少々不注意なところがありまして、よくルシファーの標的にされてしまいますの。
いつもなら、しっかり者のリーダー格のジャックがガスを助けに来るはずなんですけど、今日はいらっしゃらないようですわね。
私は、ルシファーの口からガスを外して差し上げました。
「おぉ、ルシファー……なんと恐ろしいことを。こんなこと、もうしないとどうかお約束くださいませ」
そう言ってルシファーを両手で抱き上げて目の高さまで持ち上げますと、ルシファーの大きな緑色の猫目が点になってしまいましたわ。そして、その間にガスは怯えながら走って逃げ去ってしまいました。
そうしている間に正気に戻ったルシファーが、私の手を引っ掻き、気取りながら去って行きました。なんて意地悪な猫さんなのでしょう。
仕方ないですわ。ルシファーは、お継母様……あ、今はお母様でしたわね、にしか愛想良くなさらないですもの。たとえアナスタシアお姉様でも、手懐けることはできないですわね。
ふと見ると、そこにはルシファーの泥のついた黒い足跡が点々と廊下についていました。
あぁ、またここを雑巾で床磨きしなくてはならないのですわね……
バケツと雑巾を取りに行こうとして、ハタと足を止めました。
そうですわ。私が床を磨いてしまったら、『シンデレラ』のお仕事を奪ってしまうことになってしまうのでした。私としましたことが……
身についた習慣を改めるのは難しいですが、シンデレラのためにも出過ぎた真似をしてはいけないと心に誓ったのでした。
気を取り直して家の外に出ると、犬のブルーノが小屋の前で寝そべっていました。
「おはよう、ブルーノ。素敵な朝ね」
いつもなら私を見ると尻尾を激しく振り、「撫でて! 撫でて!」と甘えてきますのに、今日は私を横目でちらりと見ると、あくびをして垂れ下がった耳を小さく振り、再び眠りについてしまいましたわ。
今度はそこから、馬小屋に向かって歩きます。馬小屋には、メジャーがいらっしゃいますの。メジャーはお父様が大切にしていた愛馬で、私の大切なお友達ですわ。
メジャーは、草を食んでいらっしゃいました。朝食の時間、でしたのね……失礼いたしました。
「メジャー、おはよう。ご機嫌いかが?」
そう言って、メジャーの首元を撫でましたら、ブルブルーッと荒い鼻息を鼻水と共に顔に思い切り掛けられてしまいましたわ。
「まぁっ、メジャー……」
メジャーは、今度は威嚇するように前足で何度も草を蹴る仕草をしました。
あぁ、退散するしかないようですわね。
どうしたら、動物さんたちとまた仲良くなっていただけるのかしら。
私がお母様だけでなくお父様も亡くした時、寂しく孤独な私の心を癒し、温めてくれたのが彼らでした。
たとえアナスタシアお姉様の姿をしていても、彼らとはまた仲良くなりたいですのに……寂しいですわ。
パーラとスージーはしっかり者の女の子たちで、裁縫が得意でいらっしゃるの。毎朝、小鳥さんたちと共に朝の身支度をお手伝いしてくださっているので、今朝もきっと、そのために急いでいらっしゃるのだわ。
「おはよう、パーラ、スージー」
そう呼びかけると、パーラとスージーはビックリして飛び上がり、一目散に逃げていきましたわ。
あぁ……ただご挨拶をしたかっただけですのに。
残念に思っていますと、猫のルシファーが私に向かって疾走し、ドンとぶつかりましたの。
「きゃっ!」
思わず尻餅をつき、ルシファーを抱き上げますと、その口には……
「ガス!!」
ガスはねずみの男の子で、昔、階段の踊り場に置いてあったネズミ捕りに捕まっていたところを助け出し、この家に住むねずみさんたちの お仲間になったんですの。食いしん坊で愛嬌があって、とても可愛らしいのですけど、少々不注意なところがありまして、よくルシファーの標的にされてしまいますの。
いつもなら、しっかり者のリーダー格のジャックがガスを助けに来るはずなんですけど、今日はいらっしゃらないようですわね。
私は、ルシファーの口からガスを外して差し上げました。
「おぉ、ルシファー……なんと恐ろしいことを。こんなこと、もうしないとどうかお約束くださいませ」
そう言ってルシファーを両手で抱き上げて目の高さまで持ち上げますと、ルシファーの大きな緑色の猫目が点になってしまいましたわ。そして、その間にガスは怯えながら走って逃げ去ってしまいました。
そうしている間に正気に戻ったルシファーが、私の手を引っ掻き、気取りながら去って行きました。なんて意地悪な猫さんなのでしょう。
仕方ないですわ。ルシファーは、お継母様……あ、今はお母様でしたわね、にしか愛想良くなさらないですもの。たとえアナスタシアお姉様でも、手懐けることはできないですわね。
ふと見ると、そこにはルシファーの泥のついた黒い足跡が点々と廊下についていました。
あぁ、またここを雑巾で床磨きしなくてはならないのですわね……
バケツと雑巾を取りに行こうとして、ハタと足を止めました。
そうですわ。私が床を磨いてしまったら、『シンデレラ』のお仕事を奪ってしまうことになってしまうのでした。私としましたことが……
身についた習慣を改めるのは難しいですが、シンデレラのためにも出過ぎた真似をしてはいけないと心に誓ったのでした。
気を取り直して家の外に出ると、犬のブルーノが小屋の前で寝そべっていました。
「おはよう、ブルーノ。素敵な朝ね」
いつもなら私を見ると尻尾を激しく振り、「撫でて! 撫でて!」と甘えてきますのに、今日は私を横目でちらりと見ると、あくびをして垂れ下がった耳を小さく振り、再び眠りについてしまいましたわ。
今度はそこから、馬小屋に向かって歩きます。馬小屋には、メジャーがいらっしゃいますの。メジャーはお父様が大切にしていた愛馬で、私の大切なお友達ですわ。
メジャーは、草を食んでいらっしゃいました。朝食の時間、でしたのね……失礼いたしました。
「メジャー、おはよう。ご機嫌いかが?」
そう言って、メジャーの首元を撫でましたら、ブルブルーッと荒い鼻息を鼻水と共に顔に思い切り掛けられてしまいましたわ。
「まぁっ、メジャー……」
メジャーは、今度は威嚇するように前足で何度も草を蹴る仕草をしました。
あぁ、退散するしかないようですわね。
どうしたら、動物さんたちとまた仲良くなっていただけるのかしら。
私がお母様だけでなくお父様も亡くした時、寂しく孤独な私の心を癒し、温めてくれたのが彼らでした。
たとえアナスタシアお姉様の姿をしていても、彼らとはまた仲良くなりたいですのに……寂しいですわ。
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