神様のお導き

ヤマト

文字の大きさ
上 下
135 / 173
7話目!灰冶の章 夢境の栞

7-3

しおりを挟む
 街に着くと、僕は今までとはまた違った街の活気強さに目を見張った。人間がメインの街ではあるけれど、さっき灰冶さんが言っていたように小人やエルフ、ドワーフの姿もチラホラあった。ゴブリンの姿はない。エルフとかは人間を嫌っているイメージがあったけれど、中にはこうやって人の街に出向く人もいるんだな。
 建物は自然と調和したような建築が多く、木造の家がメインだった。中には木、そのものを上手く利用した家もあって、なかなかにファンタジーだ。僕は賑やかなその街にすぐに心を奪われてしまった。
「良い街ですね」
「ふふ、気に入った?」
「はい!」
「それは良かったわ」
 灰冶さんはご機嫌そうにニッコリ微笑んで、街の中心部へと向かった。街の中心部は円状に露店や出店が並んでおり、所謂市場のようになっていた。他の街にも行って思ったけど、この世界では露店や出店がメインで、あまりスーパーみたいな所は見かけない。アキラくんとよく買い出しに行くところは都会でスーパーとかもあるけど、基本的にはこういう店の売り出し方が普通なんだな。
 僕は街並みをしみじみと眺めながら、灰冶さんの後を着いていく。灰冶さんは色んなものに目移りしていて、あっちやこっちやと足を進めては止めて、色んなものを興味深そうに見ていた。僕には何が何だかイマイチわからないけれど、灰冶さんが気に入って見てるのだからきっと良いものなのだろうと、勝手に思っていた。
「ん? これ」
 灰冶さんが何か見ている横で、僕は目に付いた気になる石を拾い上げた。それは他のものとは違っていて、直径一センチほどの小さな鉱石にも関わらず、妙な存在感を放っていた。
「おや、お客さん、お目が高いねぇ。それ、たまたま帰り道に拾った鉱石なんだけどね、ゴブリンの住む鉱山にしかない鉱石なんだよ。きっとどこかのゴブリンが落としてった物なんだろうけど、ありがたく商品として扱わせてもらってるんだ」
 店のおじさんの説明によると、どうやらゴブリンの住む鉱山でしか取れないものならしい。こんな小さな鉱石にも価値があるんだな。
 僕はその鉱石の価値がわからずに、色んな角度から見ていると、灰冶さんが少し興奮した様子で横から割って入ってきた。
「これはかなり希少なものね。なかなかお目にかかれるものじゃないわよ。拓斗、よく見つけたわ! 偉いわよ~!」
「うっ」
 灰冶さんはまた、僕の頭をわしゃわしゃと撫で回した。人前でやられるととても恥ずかしい。これが桜なら、褒めて遣わす! とか言って冗談を言い合えるのだが、こうやって面と向かって褒められるとどうしたら良いかわからないものだ。
 僕は真っ赤になる顔を片手であおぎながら、その鉱石を灰冶さんに渡した。灰冶さんは自前のルーペを取り出して、その鉱石を三百六十度、隅々まで丁寧に観察していた。
「いいわ。質も良い。買ったわ!」
「お! お客さん、太っ腹だねぇ。でも大丈夫かい? これは小さいと言っても結構値が張るよ?」
「いくらでも出すわ。店主、お会計をお願い」
「まいど! 三万円ね!」
「三万!?」
 僕は店のおじさんが言った値段に驚愕した、
あんな一センチほどしかない鉱石が!? そして、それを平然と買う灰冶さんも何なんだ。僕、よく思うけど、お金が無限にあるからか、針山家のみんなはちょっと金銭感覚狂ってると思う。
「ふぅ、良い買い物をしたわ。拓斗、貴方も何か欲しいものがあるなら遠慮なく言いなさいね」
 そして、当然のように僕にも何か買ってくれる。僕は僕で、一応働いた分の軽い給料は貰っている。それで自分の欲しいものを買いたいのだが、みんながこうやって甘やかしてくるから、お金は貯まる一方だ。まぁ、僕が街で住むことになったら、この貯金は糧となるだろうけど、ちゃんと自立しなきゃなと思う。
 そうやってしばらく店を物色している時のことだった。事件は起きた。
「きゃあああ! ゴブリンよー!」
 突然、街の中で女の人の悲鳴が上がった。ゴブリンという言葉に僕はギョッとして、すぐにその声がした方へと視線を向けた。同じようにたくさんの人が声のした方に視線を集め、その視線の先にいたのは紛れもないあのゴブリンだった。僕らの後ろを着いてきていたゴブリンだ。
 ゴブリンは街の男性たちから一斉に袋叩きに遭い、見てるこっちが痛くなるほどだった。ゴブリンは必死に何かを言おうともがいていたが、彼らはその隙を与えずゴブリンに暴行を振るう。
 僕は咄嗟に走り出し、気付けばゴブリンの前に立っていた。
「あらあら、困ったさんねぇ……」
 灰冶さんが後ろでそう呟いていたが、今の僕には聞こえていなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

処理中です...