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第3章 少年期 学園編

214話 結界脱出のきっかけ・・・

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(はぁ~、まじで油断した、“アイツ“、“儀式“の後の解け掛けの結界の隙間を縫って侵入して、僕の背中から刺しにくるなんてな、それも周囲の人達、誰にも気づかれずに・・・さすが神、邪神ってことか??はぁ、油断してたとはいえ、まじ、悔しんだが・・・)

 この詳細を目覚めて1番に天華達から聞いて、床に寝そべったまま聞いていた僕は反省して、悔しがっていた。

天華『まぁまぁ、アトリー、今は脱出の事を考えましょう。幸い、結界の内側と外側の環境が、アトリーから流れ出している自然エネルギーのおかげで徐々に同じような物になって来ているため。先程までとは違い、少しですが結界の効果が薄れて来ています。私達が今は“フィズィ“の気を引いてますから、この調子で結果内の環境をコチラと同等まで持ち込めれば、結界の破壊が容易にできるでしょう。それまでもう少しそこで寝たフリをしていてください』

 こうして、僕は救出が来るのを静かに待っていた・・・・

 少しして、何やら結界の外が静かになったな、どうしたんだろうと思わず目を開けようかとした時・・・

サフィアス叔父様「さて、後は其方達だけとなった、良い加減諦めて大人しく捕まるんだな」

 と、よく知った声が聞こえてきた。

(サフィアス叔父様の声だ!えっ!もしかして侵入者達の殆どをもう捕まえちゃったの??早っ!!)

夜月『アトリー、今から物理での総攻撃が始まる、凄い音が鳴ると思うが驚かずに、そのままジッとしていてくれ。今はまだ結界を壊すには内と外の環境が整ってない、タイミングを見て私達が“本気“で結界を壊すつもりだが、まだ、アトリーも流した血の回復が追いついてないだろう?それなのに“ヤツ“が意識が戻ったアトリーに気づいたら面倒だからな』

(まぁ、確かに、まだ軽く貧血気味ではあるね…OK、どんな音が鳴っても気を失ったフリをするよ、・・・それにしても、“アイツ“さ、こんなに近くにいるのに僕の復活に全然気が付かないんだけど、なんでだろう??元、高位な神?の邪神ってヤツなのに僕を刺した時のような手練れ感はどこに言っんだろうね??僕が本当に寝てるか寝てないかなんて、気配感知や魔力感知とかでバレそうな物なのに・・・)

 侵入者達の捕縛の速さに驚きつつも、夜月から救出作戦とその間の注意事項を聞き、素直に従うと返答したが、あまりの暇さにさっきからずっと気になっていた事を聞いてみた。

夜月『うーん、多分だが、“ヤツ“はこの結界を作ったことで神としての力、“神力“を殆ど使い果たしているんじゃないかと思う、この結界自体かなり頑丈だからな。それに、今、あのように人間に憑依した状態で扱える“神力“の使用量は少ないはずだ。それに今、アトリーから流れて出ている世界の自然エネルギーを感じるのも、操り使用するのも、直接本人がエネルギーと繋がらないと感じることもできない。
 そもそも、“ヤツ“はこの世界に無断に入り込んでいるからな、本来の自分のいるべき世界ではないから自分のエネルギーになる信仰心、信仰してくれる信者達が少ないこの世界では、いくら邪神教の信者達からの信仰心をかき集めて“神力“に変換できてもその量はたかが知れている。
 だからと言って、この世界で本来の自分の“神力“を使用すると自身の正体がバレかねないからな、そのへんをセーブした結果、本来の能力を全く発揮できてないのではないかと私は思うぞ・・・』

(あー、不法侵入してるから、正体はバレたくなくて、こっそりかき集めた力をやりくりして今は立てこもってるの?・・・あ、それで、魔法陣を使って自分が自由に扱える力、神力の代わりにこの世界の“自然エネルギー“を手に入れようとしていたとか??)

 夜月の説明を聞き、面倒臭いことしてんなぁと思う僕だった。それにわざわざ、僕の魂を手に入れるために自分の力を隠して、力が足りないから別の力を奪おうとして失敗してたら本末転倒だと呆れてしまった。

夜月『多分、な・・・』
(まぁ、アトリーの言うことは大体当たっているが、問題は、ここまで手のこんだ事をしてまで力を得て、アトリーの魂に“何“をしようとしたかが問題ではある、“ヤツ“がアトリーの魂を欲しがっているのは分かっていたが、何故アトリーを刺した時に追撃してちゃんと息の根を止めなかった?魂を奪うだけならすぐに済む話だ。
 何故わざわざ、生きながらえさてまでアトリーの絶望の感情を欲した?“ヤツ“が邪神であるからと言われればそれまでだが、自然のエネルギーまで欲しがったのは何故だ?そのエネルギーで何をしようとした?
 今回のように襲撃でアトリーの魂が手に簡単に手に入れられると分かっているのなら、何かするにしても自身が担当する世界の自然エネルギーを使用すれば良いはずだ、それが駄目な理由はなんだ?他世界ではないといけない理由は?)

 僕の呆れとは別に、“アイツ“が自分を崇める信者達の望みだからといって、自分に益のない事を進んでするとは思えない夜月は、“アイツ“の行動の意図を読み取ろうと思考を巡らせるのだった・・・

フィズィ「ふんっ!降伏?何故そんな事をせねばならん?お前達のような者達に我を捕まえようなど片腹痛いわ!それに我はコレの魂を刈り取る事ができれば、こんなところには要はない!他の者達の事などどうでもいいのだ!雑兵どもの悲願とやらは叶わなんだが、それももう我には関係はない!そうだ!丁度いい!今ここでお前達を無惨に殺したならコレはさぞ悲しみ絶望するであろうな!その為にはコレを起こさねばならんか?」

(やばっ!こっち来る!それにこいつ超キモいっ!!)

 “アイツ“の言動に鳥肌が立ったが、それでも我慢して寝たふりを続ける僕。

 ドカンッ!

ジュール「ガヴゥーッ!!」『アトリーに手を出すなぁっ!!!』

夜月(!?、ここで急にこの世界の自然エネルギーを奪うのを諦めた!?・・・だが、アトリーを絶望させるのを優先させた?何がしたかったんだ?意味がわからないな・・・)

フィズィ「ふっ、なんだ?愛しい主人を待ちきれないのか?それとも自分の命を先に差し出したかったのか?…もしやこの結界を壊す事ができるなどと思ってはないな?」

天華『夜月、私達も攻撃を!!』

夜月『はっ、そうだな、先に結界を破壊しよう!アトリーの側から早く“ヤツ“を離さなければ!!』

 急な方針転換に謎が深まったと思った夜月、だが、今はアトリーに向いた意識を逸らさねばと、ジュール達と一緒に結界の破壊に参加した。

 ドガンッ!!ガインッ!!ガリガリッ!!

フィズィ「あはははははっ!本気か!?無駄なことはやめることだ!」

(“アイツ“マジでムカつくなぁ・・・( *`ω´))

 ジュール達の猛攻にもまだ笑う余裕を持っている“アイツ“に少しばかりイライラが溜まる僕は、寝そべったまま拳を握り締めた。

サフィアス叔父様「っ!総員!!攻撃開始!!」

「「「「「おお!!」」」」」

 ジュール達の攻撃から少しして人間達の総攻撃が始まった、魔法陣の周囲、全方位から、剣や斧、メイスやハンマーなど、物理攻撃に特化した人達が思いっきり結界に武器を叩きつけている音がしてきた。

 ガンッ!ドコッ!カキンッ!カインッ!ガキンッ!ドスッ!バンッ!!

(おぉ、凄い音がする、事前に作戦のこと聞いてなかったら、驚きで飛び起きちゃうところだったよ・・・(。-∀-))

 ドガンッ!!ガンッ!ドコッ!カキンッ!ガインッ!!ドコッ!ガリガリッ!!ドスッ!バンッ!!

 絶え間なく鳴り響く攻撃音がさらに激しくなって来たと思ったら。

(んー??次は急に静かになったな・・・・)

ジュール『アトリー、次はアトリーの家族がなんか総攻撃してみるみたいだよ』

(おー?うちの家族が??なんで??)

 どうやら、うちの家族のターン?らしい?

天華『どうやら、魔法での総攻撃を試みて見るようです。上手くいけばこの総攻撃に便乗して、結界を壊すことができるかも知れませんので、すぐに動けるように準備して置いてください』

(うちの家族総出の魔法攻撃!これはヤバそうだΣ(-᷅_-᷄๑)りょ、りょーかい、いつでも動けるようにしておきます!( ̄Д ̄)ノ)

 デューキス家の魔法の最大火力は大体想像がつくので、一歩間違えれば神殿が崩壊する可能性があるので、少し緊張しつつ、すぐにこの場から逃れるように心の準備をした。

フィズィ「ん?・・・・なんだお前達?何をするつもりだ?まぁ、何をしても意味はないだろうがな・・・・」

父様「あまり私達を舐めないことだ!全員!撃て!」

 “アイツ“の余裕綽々の言葉の後に父様の号令で家族全員の魔法攻撃が始まった。

ライ兄様「“フレイムキャノン“!」カイ兄様「“ミシルトルネード“!」ボウッ!!ゴォーーッ!!

 ライ兄様の打ち出した火魔法をカイ兄様の風魔法が威力を増大させて結界を加熱し、膨張させる。

ヘリー姉様「“ウォータークリフ“!」シベラス叔父様「“コールドエイジ“!」ザパァー!!ジューッ!シューッ!ピキピキピキッ!ピキッ!!

(あれ?いつの間にかシベラス叔父様が来てる?(*´ー`*))

 室内の気温を一気に上げ、今にも発火しそうなほど熱せられ膨張した結界に、ヘリー姉様が水魔法の壁で結界全体を覆った、そしてすぐにシベラス叔父様がその水の壁を氷魔法で凍らせ急激に結界の温度を下げたことで、膨張した結界がその変化に耐えきれず振動し始めていた。

(結界にも熱の膨張率を使った破壊工作って効くんだ?(*´Д`*))

天華『基本、効かない物なんですけど、今回の結界が完全に空間を遮断していたおかげで多少効果はあるみたいですね・・・』

(真空のガラス瓶を火に投げ込むと爆発するみたいな感じなんだろうか?いや、違うか?(。-∀-))

 そんな事を言ってる間に攻撃はまだまだ続いていた。

カミィ姉様「“ロックランス“!」
父様「“サンダーボルト“!」
母様「“ソーンキャノン“!」
お祖父様「“シャドーブレット“!」
お祖母様「“アクセル“!」

 ドッ!カァンッ!!!

(うわっ!マジか!!これ、まともに喰らうとこの辺一帯が更地になるんだけど!?((((;゚Д゚))))))))

 ラストにカミィ姉様、父様、母様、お祖父様が“土、雷、木、闇の属性魔法“の一点突破型の攻撃魔法を放った。その上からお祖母様の得意な無属性の支援魔法で速度を早めたことで物凄い威力の魔法が結界にぶつかった。その衝撃と音は結界内にも響き、寝そべっている僕にもその凄まじさが伝わって、少し焦った。

 ピキッ!ピキピキッ!

 凄い衝撃の攻撃魔法の数々の後に、結界の中にも亀裂の入る音が聞こえてきた。

(おぉ?結界にヒビが入ったの?(*´Д`*))

夜月『いいや、少し惜しかったな、今の音は氷全体に亀裂が入った音だ。だが、この攻撃に私達の“本気“を便乗させれば・・・』

(“本気“??)

 夜月の言葉で今まで本気じゃなかったのか・・・と思っていると・・・

フィズィ「なっ!バカなっ!?そ、そう簡単にはこの結界が破れるはずがない!誰も、誰も、我の邪魔はさせん!!これの魂は我のものだ!!!誰にも渡してなるものか!(はぁっ!?何それ!?)邪魔されるのなら、いっその事ここで・・「ガオォーーンッ!!」「ドッガンッ!!!」なっ!」

 バッキンッ!!ビキビキビキッ!!

フィズィ「な、なんだとっ!!?」

 家族の全力の魔法攻撃で、自慢の結界に亀裂が入り出したと思った“フィズィ“が焦り、僕に襲い掛かろうとしたその時、ジュール達の気配にわずかな変化を感じた。それは普段とは全く別の力の気配。

(これは・・・)

 そう、これは、神々と同等の力、“神力“の気配だった、そして、今、この瞬間、明確に壊す事ができないと思われた結界に大きな亀裂が入ったのだった・・・・

(“本気“って、このことだったんだね・・・本当に“タイミング“だけが重要だったんだ・・・だって、ジュール達は聖獣じゃなくて、神獣だもの、こんな結界、“本気“を出せればなんてことなかったんだよね。ごめんね、僕の今後のことを考えて神獣だって事を、皆んなにバレないようにしてくれたんだ。
 ジュール、天華、夜月、ありがとう・・・)

ジュール『どういたしまして!』 天華『例には及びませんよ』 夜月『気にするな』

 ジュール達、神獣の気遣いに心から感謝を伝えると、皆んなそう言って照れていたような気がした。先程の“アイツ“言葉にイラっとしていた僕は少し心がほんわかした。嬉しくて、今すぐにでもジュール達の元へ駆け寄りたいが、まだ、結界は完全には壊れてないので我慢、と思っていると・・・

フィズィ「な、何故だ!何故だっ!!たかが人間や聖獣共ごときに、我の結界を壊されるなど、あってはならん!!ありえない!ありえないっ!!我の長年の悲願を邪魔した、あの“こっぱ神共“だけではなく、このような所で貴様らみたいなただの人間や聖獣共にまで邪魔されるとわなっ!!貴様ら、我を怒らせたこと、後悔させてやる!!」

(“こっぱ神共“ってティーナちゃん達の事?はぁ?(° Д °)何言っての“コイツ“??お前より数段立派な神様達なんですが??)

 自慢の結界に亀裂を入れられて怒り狂った“アイツ“はまた僕を刺した剣を拾って何かをしようとしていた。僕はそれより“アイツ“の発言にちょいキレていた。

フィズィ「“邪術解放“!!」ドロッ

(うわっ!気持ちわるっ!何だ!この不快感の塊みたいな気配は!)

ゾワッ!!「「「「「っ!?」」」」」「な、何だの気味の悪いモノはっ!!」「あれで何をする気だっ!?」「怖気がする・・・」「あ、アレは瘴気か!?」

 “アイツ“の放った言葉と共に怒り、嫌悪、狂気、嫉妬、異常な程の憎悪、様々な負の感情を詰め込んだような不快感の塊の気配に、思わず眉を顰めた。それだけではなく、自分の肌を舐め回されたような感覚が襲いかかり、鳥肌が立ち、今すぐにでもこの場から逃げ出したくなっていた。

(マジキモい、マジキモい、マジキモい、マジキモい・・・・)

ジュール『アトリー!?大丈夫!?』 天華『アトリー!気をしっかり持って!』 夜月『くっ、仕方ない、もう一度“神力“を使うしか・・・』

 色々な気持ち悪さに“マジキモい“を連呼し狂いそうになっていると。ジュール達が心配して、もう一度“神力“を使って攻撃をしようとしていた。そんな時、周囲の会話が耳に届いた。

サフィアス叔父様「くっ!アレは計り知れない、邪悪な気配する。あんな物に触れてしまったら人は容易く死んでしまうぞ!結界の完全な破壊まであともう少しだと言うのに!!」

父様「私達はまだ諦めていません!もう一度全員で攻撃を加えれば、結界は壊せるはずです!」

 剣の纏う不吉な霧に最初は恐怖を感じたサフィアス叔父様は、あの剣の力を恐れ僕を救い出すことを諦めかけている様子が伝わってきて、自分もそれはしょうがないかと思った時、父様は何があっても諦めないと言ってくれた事で、僕はまだ正気を保つことができていた。

フィズィ「“コレ“の魂は私の物だ!誰にも渡しはせんぞ!!悪夢の中でもがき苦しみながら死ねっ!!」

ジュール達『『『あ、あぁ・・・・』』』

(あ"あ"!?人の家族に何しようとしてくれてんだぁっ!?それに!)

 父様の考えている総攻撃を阻止するように“アイツ“はその気持ちの悪い剣を振るおうとする。そんな絶体絶命の状況で僕は盛大にブチギレた・・・・

「誰がっ!お前の“モノ“だっ!」 ビュンッ!ドッゴッ!!! ビュッ!ガンッ!ビキビキッ!ガシャンッ!! ドスッ!!

 “アイツ“の真後ろで全力で気配を消し、音もなく立ち上がり、“本気“で“アイツ“の頭に向かって強烈な回し蹴りを喰らわした。“アイツ“は勢いよく真横に吹っ飛び、亀裂の入っていた結界にぶつかって、その衝撃で結界は呆気なく粉々になり消えたのを見て、“何だ、もっと早くからこうしとけばよかった“と思いながらも、“アイツ“が飛んで行った方向をさらに目で追うと、結界にぶつかって飛んでいく勢いは半減し、消えた結界の少し先で床に落ちた“アイツ“はさっきの回し蹴りが効いたのか、動く様子がない。誰もが予想外の事に、驚きでポカンッとした表情で固まったままだった。
 僕はそれよりも怒りが先立ち、コイツをどうしてくれようか、と思っているとジュール達の横には今にも泣きそうな表情で、僕を見ているソルを見つけて、ちょっと冷静になった。

ソル「・・・っ、アトリー様、ご無事で、っ・・・」

 そう小さく呟いたソルに僕は今の自分の立場を思い出し、冷静に“アイツ“に向かって苦情を入れた。

アメトリン「僕は、僕の魂は僕自身のモノで、誰にもやった覚えはないっ!ましてや、お前のような気持ち悪い変態に差し出すことなんて絶対にしないっ!!」

家族全員「「「「「アトリーっ!!」」」」」デューキス家使用人一同「「「「「アトリー様っ!!」」」」」

 僕の言葉に少し遅れて反応したデューキス家一家は驚きと歓喜の声を上げた、そんな家族に僕は笑顔で振り返りこう話した。

「あ、父様、母様、皆んな、ご心配かけて申し訳ございません。でも、もうちょっとする事があるので、もう少し待っててくださいね♪」

(そうだ、ティーナちゃん達に教えてもらった事もしなきゃだし、今ならジュール達みたいに“アレ“が使えるか?・・・使えるっぽい、それなら“アイツ“にはしばらく、僕のストレス解消に付き合ってもらおう・・・)

 自分の思った以上に怒りでストレスが溜まっていたようで、ティーナちゃん達に教えてもらっていた事を今更ながらに思い出した。でも、その教えてもらっていた事を応用すれば、“アイツ“のせいで溜まったストレスを解消できると気づき、先程自分が蹴り飛ばした相手である“アイツ“の様子を見たあとあと、自分の服装を見た。

「あー、せっかくの“祭事服“が台無しだ・・・(めっちゃ、血がついてるし)これ以上汚れるのは嫌だし、動きにくいから上は脱ぐか・・・それと、ソルー、今、髪留め持ってるー?」

ソル「あ、は、はい、持ってます。どうぞ、アトリー様」

 急に話を振られたソルは驚きながらも、いつも常備している髪留めを渡すために、僕が立っている少し高い魔法陣の上に急いで上がり髪留めを渡してくれた。ジュール達もいつもより大きな姿で僕の元まで来て体を擦り付けてきた。

「ありがとう、ソル、心配かけてごめんね。ジュール達も・・・」

 僕はそんな皆んなを1人ずつ撫でながらお礼を言い、受け取った髪留めで自分の髪を簡単にまとめていると。

天華『今からどうするつもりです?』

 と、聞いてきた天華に・・・

(やる事は一つだよね?)

 と、返すと・・・

天華『ですよね・・・・』

天華達『『『はぁ~』』』

 ジュール達からは呆れたようにため息が返ってきた。皆んながそれ以上何も言わなかったので僕は、簡単に一つにまとめた長い髪を後ろに流し、上着を脱ごうと首元の留め金を外そうとした。

「・・・・(これ、自分で取りづらいな・・・)むう、ソル、度々悪いんだけど、この“祭事服“の上着を脱ぎたいんだ、この首の所の留め金、外してもらえるかな?」

 こう言う時はソルに任せると大抵解決できると知ってる僕は、いつも通りソルにお願いした。

ソル「畏まりました。少し失礼しますね。・・・・・はい、取れました。こちらの上着は僕がお預かりしますね」

 ソルはいつも通りの僕を見て、困った人だなって表情で快く上着を脱がせてくれて、預かってもくれた。

「わ、ありがとう、ソル♬“クリーン“っと、あ、そうだ、ついでにこの杖も預かってくれる?僕がスッキリするまで♪」

 いつも通りのソルの対応に嬉しくて声を弾ませながらお礼を言い、脱いだ上着の下のベストもやはり自分の血で汚れていたので、生活魔法の“クリーン“で簡単に綺麗にして、まだ手に持っていた“儀式の杖“をまたソルにお願いして、“自分がスッキリするまで“と言って預け、準備運動を始める。

ソル「スッキリ???」

 そう言って首を傾げたソルが可愛いいなって思いながら、

「うん!スッキリ♫」ポキポキッ ポキポキッ

 と、言って僕も同じように首を傾げた。そして、良い笑顔で自分の拳を鳴らした。

(ちょいとストレス発散してくるよ♪(*゚▽゚*))

ソル「あ、・・・・お気を付けてくださいね。アトリー様、ご用がありましたらいつでもお呼びください・・・」

 そして、色々察したソルに・・・

「うん♩スッキリし終わったら呼ぶから、その時、その杖を持って来て欲しいかな♪」

 と、お願いすると、

ソル「畏まりました、すぐにお持ちしますね」

 と、ソルは笑顔でそう言ってくれた。

「よろしく、ソル、じゃあ、ちょっと行って来るね♫」

ソル「行ってらっしゃいませ・・・」

 ソルがいてくれたおかげで僕は怒りのまま暴れることもなく、その笑顔に見ただけで気分が上がり。これで思いっきりやれると気合を入れて、今だに動く気配のない“アイツ“の方へと足取り軽く歩き出した。後ろの方でソルが何か言っていたが、この時の僕の頭にはもう“アイツ“をボコる事しかなかった。

父様「・・・はっ、ア、アトリー!危ない!今、そいつに近寄ってはダメだ!!」

サフィアス叔父様「・・・はっ!?だ、誰か、アメトリンを止めるんだ!」

(父様達には申し訳ないけど、僕は“アイツ“をボコる事は決定事項だから、止められても困るし、止まる気は無いんだよねっ!と)

 ダッ!ダンッ!!

 焦った様子で静止してくる大人達の言葉をあえて無視して、軽快に歩いていた僕はすぐにトップスピードで消えるように走り、あっ、と言う間に、倒れている“アイツ“の真上まで飛び上がった。

(何を考えているかわからないけど!)

「動けないふりをしても無駄だよ!僕は今、凄く怒ってるんだ、お前を逃す気はないよ!!」ヒュッ!ドコンッ!!

 バァーン!!カタカタカタッ!「「「「「うわっ!!」」」」」「「「「「きゃーっ!!」」」」」

 そう言って、倒れ込んでいた“アイツ“の真上で一回転し、勢いを付けて踵落としを思いっ切り繰り出した。地面は凹みクレーターができるほどの衝撃が礼拝堂内に行き渡った。建物は震動し、あちらこちらで埃が舞い、悲鳴が上がった。

 僕の反撃の、いや、ストレス発散の猛ラッシュはここから始まったのだった・・・・・












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