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第3章 少年期 学園編

210話 デューキス家の団結力 第三者 視点

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 “勇者送還の儀式“の最中に起こった“歌い手・アメトリン“襲撃事件と共に、“邪神教“と思われる侵入者達が礼拝堂を占拠、その時、囚われの身となった人達が侵入者達の不足の事態の隙を狙い、反撃の狼煙をあげた。それと同時にアメトリンの救出の戦いが今動き始めた・・・

・・・聖獣達を邪魔する、侵入者排除隊“デューキス家、子息令嬢部隊・双子“方面・・・・

シーライ「なぁ、ヘリー、手加減はいらないよな?」

ヘリオラ「・・・そうね、ライ、手加減はいらないと思うわ」

 獰猛な笑顔で侵入者達を見るシーライに冷めた表情で同意するヘリオラ、2人は双子で容姿はよく似ているが、こう言った時の反応が全くもって正反対なのが印象的である。

ラン「いやいやいや、手加減はしてください」

ヘリオラ「あら?ラン、アトリーを傷つけた人達に手加減する必要があったかしら?」

ラン「アトリー様をあのような目に合わせたクズ達にお怒りなのは良く分かりますが、この一味がここにいる奴らで全員とは限りません。ですから聞かなければならない事がたくさんあるので、出来れば死なない程度に手加減してください」

サイツ「ライ様も、お願いします。あの人達は後々、尋問でたっぷり後悔することになりますから、今は堪えてください」

シーライ「チッ、しょうがねぇな・・・」

 侵入者を遠慮なく打ちのめす気でいた双子に、ヘリオラ専属のメイドである“ラン“が慌ててで止めに入った、アイオラトはこうなることを予想して、それぞれの専属と行動を共にするように言いつけたのだった。子供の頃からの付き合いである4人は、互いをよく知る気安い仲であるからできることだ。

ヘリオラ「そうだったわね。じゃあ、死なないギリギリを攻めるしかないわ、ライ、貴方できそう?今の私の魔法では魔道具のせいで少し出力が不安定なのよね、剣術は魔法無しだと威力が出ない可能性もあるし、素手だと逆にやり過ぎちゃうもの」

シーライ「あぁ、分かった、剣術だけで行くなら俺の方が加減ができるからな、ヘリーは補助を頼む」

ヘリオラ「えぇ、補助程度なら大丈夫よ、任せて。父様はできるだけ複数人で1人を相手するように言ってたから、私達4人で一人一人、確実に倒していきましょう」

シーライ「よし、早く取り掛かろう、俺達の獲物が逃げる前にな・・・」

ラン&サイツ「「畏まりました」」

 双子は自分たちの専属の話を聞き、ちゃんと理由も理解して、それぞれの役割を決めた。後はそれを実行するだけ。それからの双子は誰も止めることのできない素晴らしい連携技で侵入者達を蹂躙し捕縛していった。
 シーライは愛用の“ツーハンデットソード“を片手に素早く相手に突っ込んでいく、この時はなるべく刃を立てず、ツーハンデットソードを棍棒代わりにして相手を殴打し、骨折させる事で動きを鈍らせていく。ヘリオラは愛用の“ダガー“2本を両手に持ち、そのダガーを“魔法杖“として使い魔法でシーライを支援する。その時、横からたまに入ってくる別の敵からの剣撃を両手に持った剣で軽く応戦したり、攻撃魔法は手元に手甲のように展開した結界で弾き飛ばしたりして、最小限の動きでかわしている間にシーライが後ろから相手を行動不動にする。こんな感じの繰り返しで、また、その双子の陰で専属2人が戦闘中の攻撃などで建物に被害が及ばないようにしたり、動けなくなった侵入者達を縄で縛り捕縛していく、そんな補佐を含めてがこのチーム全体の連携だった・・・


・・・・そしてもう一つの侵入者排除隊“デューキス家、子息令嬢部隊・長女・長男“方面・・・・

カイヤト「姉上、ライとヘリーが早速動き出しましたよ。私達もそろそろ動きましょう」

カシミール「えぇ、そうね、ではまずは、あの魔道具の設置の指揮をとって、あの“セルパン“にも話しかけていた。黒ローブの女性を捕まえましょうか」

カイヤト「あぁ、そうですね。彼女には色々と聞きたい事がありますし。先に確保していた方がいいでしょう。父上達の闘いに巻き込まれて死なれると面倒ですし・・・じゃあ、ルウ、頼めるかな?」

ルウ「畏まりました・・・」

 デューキス家の子供達の年長組は冷静に状況を把握し、侵入者達の中で“セルパン“以外で、この組織の内情に1番詳しいと思われる人物を見極め、優先的に捉える計画を立てていたようだ。そんな2人に無言で付き添う専属使用人達の1人、カイヤトの専属メイドの“ルウ“はカイヤトの指示に質問を返すこともなく、自分のするべき事をすぐさま理解し了承し、そして、彼女はすぐに行動に移した。“ルウ“はカイヤト達の目の前でどんどん気配が薄くなり、今、目の前にいるはずなのに存在感が感じられなくなっていく。そして、とうとう姿まで見えなくなったと思ったら、数秒後にはターゲットになった黒ローブの女の真後ろに移動していた。

イーロ「カミィお嬢様、尋問の方は私にお任せいただけますでしょうか?」

カシミール「えぇ、最初からそのつもりよ、でも、その前に少し私とお話しさせて貰いたいのだけど、いいかしら?」

イーロ「はい、それはお好きになさってください、ですが程々にお願いいたしますね」

カシミール「あら、私はそんな酷い事言わないわよ?ただ少し今のアトリーの状態を聞くだけだから」ニコッ

 と、手に持った愛用の男性の拳大の球体型の“メイス“の頭を掌の上でポンポンッと扱っていた。

イーロ「お嬢様…、それなら今お持ちのメイスはいらないのでは?・・・」

カシミール「それは相手が素直な場合だけでしょう?」

イーロ「それはそうですが、お嬢様自らなさらなくても私がお聞きします」

カシミール「それはダメよ。アトリーの事は私達が直接聞かないと納得いかなんですもの」

 カシミールの専属執事“イーロ“は、カシミールが自らアメトリンの事を聞きだす事に難色を示しているが、カシミールは力技を使ってまで聞き出すつもりのようで、“イーロ“の提案はガンとして拒否した。

カイヤト「イーロ、こうなった姉上は何を言っても引かないよ」

イーロ「カイ様、はぁ、分かっております。カミィお嬢様、くれぐれもやり過ぎないようにしてくださいね?」

 カイヤトの言葉にイーロは軽くため息をついたあと、長い間仕えてきたお嬢様の性格はよく分かっているので、すぐに自分から折れて、注意するだけにとどめたが、やり過ぎないかは心配でならなかった。

カシミール「大丈夫よ。死なない限界ギリギリの境界は、ちゃんと見極めれるようにお母様から厳しく教わったから。それにアトリーの事が聞ければ良いだけだから、他のことはイーロに任せるわ」

 ねっ!と、良い笑顔で言うカシミールにしょうがないと言った表情で頷くイーロ、そんなやり取りをしている内に、“ルウ“が黒ローブの女を乱戦の中カシミール達の前まで連れてきていた。

カイヤト「ルウ、ご苦労様」

ルウ「・・・はい・・・・」

 カイヤトに労われても表情は無表情で口数は少ない“ルウ“は、これで通常運転、一応、今は労われて喜んでいる。そうして差し出してきたのは、両腕を後ろで縛られ、口も喋れないように布を乱雑に突っ込まれている黒ローブの女、さっきまで暴れ回っていたのだろう、服装は乱れて羽織っていた黒いローブがはだけ、ショートボブの青い髪色にそこそこ整っている顔が見えている。その表情は苛立ちを隠さず、こちらを睨みつけていた。

青髪の女「うぅっ!!」

カシミール「まぁ、まだお元気そうで良かったわ、私、貴方にお聞きしたい事があったのよ。お話し聞いていただけるかしら?」

 メイスを持ったまま迫力のある良い笑顔で近寄ってくるカシミールに、青髪の女は引き攣った表情をしていた。それからカシミールは笑顔の圧を出したまま、“OHANASI“と言う名の尋問をして、アメトリンの事や今、魔法陣に張ってある結界の詳細などを聞き出した。*この時カイヤトは(僕の出番はなかったな・・・)と手に持っていた愛用武器の“ブロードソード“を撫でたとか撫でなかったとか・・・・

カシミール「・・・そう、今のアトリーの状態は貴方にも分からないと言う事なのね・・・」

青髪の女「は、はい、あの結界内ではあのお方、フ、“フィズィ様“以外の魔法の行使やスキルの発動は制限されています。そ、それと、恐らくですが、結界の外と内側では完全に空間が切り離されているので、あ、あの子供、「ギロッ!」ひっ、…デ、デューキス子息様の魂があの空間に閉じ込められている、か、可能性は大いにあります・・・」

 これまで何があったか分からないが、見た目は何処の怪我もないのに、服装が少し汚れている青髪の女、その状態で話の最中に視線で脅され、怯えながらも、必死に話す。

カイヤト「ふむ、なら、今のアトリーの状態は所謂“仮死状態“なのか?でもそれは結界があってのことだろう?結界が無くなってしまったらまずいんじゃ・・・、いや、でもそれなら、今、何故、聖獣様方はあの結界を壊そうとし始めたんだ?聖獣様方ならその事には気づいているはずだろうし・・・」

カシミール「そうよね?何かアトリーの状況が変わったのかしら?」

 青髪の女のその説明にアメトリンの今の状況を推察する。だが、その状況の中、聖獣達の行動に違和感を覚えた2人。

イーロ「・・・・お嬢様、先程、彼らは何かの“儀式“に失敗したとお聞きしてますが、その失敗の後すぐに聖獣様方は動き出したのですよね?」

カシミール「あ!そうだわ、“送還の儀式“が終わって、役目を終えたはずの魔法陣が再起動したと思ったら、すぐにまた動かなくなったのだけど、その事と何か関係あるのかしら?」

 その時その場にいなかったイーロの指摘で、何かを思い出したカシミールは思い当たる節を話し、最後の方は膝まづいて話を尋問されていた青髪の女に視線を向けて聞いた。

青髪の女「そっ、それは私達にも分かりません。ですが、あらゆる事態を想定して調節した魔道具が急に停止したのは事実です。そ、それと、関係があるかは分かりませんが、皆様から奪って集めた魔力で起動させた魔法陣の機能が正常に動かなかったと言うより、魔法陣の効果が急に消え失せたと感じました。なので“フィズィ様“は魔道具の不調ではなく、魔法陣そのものに不具合がないかと仰られたでしょう」

 そう、話す女の言葉にカイヤトは引っかかったのか、こう質問した。

カイヤト「うーん、じゃあ、貴方の目から見て、魔法陣は正常に起動していた、でも突然、魔道具以外の何かの要因でその機能が失われた、と言うことかな?」

青髪の女「は、はい・・・」

 簡潔にまとめられた話に素直に頷く女、その様子を見て嘘は言ってないだろうと判断した。それでも、何か見逃している感じがしているカシミール達は頭を捻った。

カシミール(うーん、あの結界と魔法陣の起動とは関係性はなさそう。むしろ全く別の力で動いているの確かでしょうし・・・魔法陣の機能の消失と聖獣様方が動いた件はどう繋がる?それともやっぱり関係がないのかしら?・・・)

カイヤト(この女が言う事が確かなら、今、あの結界を壊すことは悪手だ。なのに聖獣様方は今、動いた、それは今動いても大丈夫だと判断したから?では、その大丈夫だと判断した理由はなんだ?あの魔法陣の機能の消失と関係があるのか?でも、あの結界はあらゆる意味で外との空間と遮断しているのなら、魔法的な要因ではないはず。そもそも、あの魔法陣の機能とはなんだ?あの結界の効果は“スキル“の使用も制限だと言っていたから、アトリー自身が何かできるわけではない。むしろ大怪我をして仮死状態なはずだ・・・仮死状態?いや、待てよ?仮死状態なら・・・でも、“スキル“は制限されて、いや、制限の条件次第では・・・!もしかしたら、魔法陣の効果がその結界になんらかの作用を与えた?それで結界の効果が変質した?それがスキルに関する事なら?それにアトリーにはあのスキルがある!その事を向こうは知らないのなら希望はある!!)

カイヤト「姉上!!」

カシミール「カイ!」

カシミール&カイヤト「「アトリーを助け出すなら今よ!」です!」

カシミール&カイヤト「「!!!」」

 互いに考えていた事が一致した瞬間だった。2人は自分たちの考えが同じところにたどり着いた事を理解し、顔を見合わせ目を瞬かせて真剣な表情で頷き合った。

イーロ「お嬢様、カイ様どうなさいましたか?」

カシミール「イーロ、今から全力であの結界を壊すように全員に通達して、今なら全員で掛かればできるはずよ、いやするの!」

イーロ「!…何か確証が持てたのですね?」

カイヤト「彼らは“僕達“よりアメトリンの事をよく知らないと言うことが分かったんだよ」

イーロ「「!?」」

イーロ「・・・そう言う事ですね。畏まりました。すぐに全員に通達いたします」

 カイヤトの意味深げな言い回しに驚いたが、その意味がすぐに理解できたイーロは、カシミールに出された指示を素早く実行に移し出した。

 この頃にはサフィアス王の元で結成された反撃隊のおかげで、“吸引の魔道具“はほぼ機能を停止しており、他の魔道具の使用阻害もなくなってきていた。おかげで、デューキス家で使用されている“通信の魔道具“の使用もなんの問題なく使用できたため、カシミールの指示は素早く伝達されていき、全員が魔法陣の周りに集まるのには時間はかからなかった。

 そして、侵入者達も大半は捕縛され、残るは魔法陣に取り付けられた魔道具を操作していた、魔道具技師と思われる非戦闘員の2人だけとなっていた。

サフィアス王「さて、後は其方達だけとなった、良い加減諦めて大人しく捕まるんだな」

 完全に魔法陣とその2人を包囲した状態で告げられた最終通告、ようやくこの騒動に終止符がつこうとしていた・・・・



















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