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第3章 少年期 学園編

192話 ついに・・・

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 どうも、僕です。今日この日までの数日、色々と忙しくも楽しい日々を過ごしてきた僕達ですが、ついに、“この日“がやって来ました・・・

 そう、“送還儀式“の日が・・・

 先日、“儀式“で歌う“歌“が決まった次の日に、リトス教のミシオン大司教様から“送還の儀式“を行う日程が通達されたと、父様から言われました。それが2日後の“土の日“だった。とても急な話であったけど、事前に“儀式“の日程は前日に知らされることもあると聞いていたので、それ程驚きはしなかったが、日程が2日前にわかった事は行幸だった、仁達はイネオス達と別れの挨拶もできなくなる可能性の方を心配していたからだ。

 日程が判明したおかげで、仁達は今週最後の学園登校の放課後、イネオス達に自分達が元の世界に帰ると話、最後に皆んなで街で遊ぶ事ができた、仲良く学校で学んだ事や夏休暇に旅行した事、歓迎パーティーに皆んなで参加した事、その他にいろんなアクシデントがあった事など、たくさんの思い出話しをしながらカフェでお茶したり、お買い物したりと楽しく過ごした。その間は仁達がヘリー姉様に頼んでいたダンジョン産の写真の魔道具と、それぞれのスマホで思い出作りの写真撮影をしたりして、その日の門限の時間いっぱいまで遊び尽くした。最後にデューキス家の屋敷で仁達のお世話になった人達全員で記念撮影して、イネオス達や仲良くなったその兄弟達と涙を堪えながら最後の別れを惜しんで、デューキス家の家族全員とソルと仁達は翌日の“送還儀式“の準備の為、王城に向かった。

夢ちゃん「ぐすっ、いつか分けれなきゃいけないって、すんっ、分かってたけど、もう2度と会えないって思うと、ぐずっ、凄く寂しいねっ」

彩ちゃん「っ、そうね、悲しいけど、すんっ、これまでたくさん撮った写真や動画が、ふぅ、素敵な思い出を思い出させてくれるわよ・・・」

仁「うん、そうだね、皆んな元気でいてね・・・っ・・・」

 王城に向かう馬車の中、仁達は涙を流しながらも笑顔で皆んなに手を振っていた。

(“送還儀式“で見送る事が許されるのはリトス教の限られた神官達と、この国の王族と各国の代表、それと仁達を預かったデューキス家の家族とソルだけだからね。その他の人の見送りは警備上の問題から、許可が出なかった。しょうがない事とはいえ、“送還儀式“の場でのお見送りができないのは、イネオス達も寂しかっただろうね・・・)

 準備のためとは言いつつ、仁達が王城に呼ばれたのは、各国の代表達が仁達の送還の意思確認&謝罪と言う名の、勧誘や足止めを要求して来たからだ。もちろん今回は大っぴらな勧誘などは禁止されているので、この国の王族の誰かと保護者役としてうちの父様と母様同席した上で、各国の代表が余計な事を言わないように目を光らせながらの謝罪会だ。
 *この謝罪は用もないのに勝手にこの世界へ呼んだことへの謝罪、これはズューウス王国が独断で行った事とはいえ、この世界の神が定めた法を知っている国々も連帯責任として謝罪しなければならない。この法は一応すべての国々の上層部が知っており、これまで“この世界の危機“を救ってきた“異世界の勇者達“を尊重するための法だからだ。だから自国が関わっていないからと、謝罪を拒否したりすると他国からは後ろ指を刺され、国交にも支障が出ることも確実だ。歴代の“勇者達“に対しての敬意が見られない、恩知らずな国だと思われるのだ。それと、法を犯して無断で“勇者候補達“を呼び出した国の王族は、召喚した彼らに誠心誠意謝罪を行わないと、神罰で神に呪われる(過去に前例がある)。なので各国は決してこの謝罪を拒否する事はしないのであった・・・

 そして仁達が中身のない謝罪会をしている間に僕は、“送還儀式“のことでリトス教の神官達と打ち合わせや、音楽隊と歌う“歌“の練習や本番さながらのリハーサルなどを行なっていた。

(“異○送り“の曲の短さをカバーするため彩ちゃんの提案で少しアレンジを入れたから、そこも少し練習頑張ったんだよね。後、仁達には内緒でちょっとしたサプライズも付け加えた。
 しかし、忙しい1日だった、(*´ー`*)リハーサルはマジ凄かった!さすがプロの音楽隊、2日前に渡したばかりの楽譜の曲をもうすでに完璧にマスターしていて、そこからアレンジまで付け加えるなんて凄すぎだろ!(*゚▽゚*)
 それに僕の無茶振りにも答えてくれたし、久々に緊張感のある舞台のリハーサルをしたな、リハーサルの時間はそんなに長くはなかったけど、なんとか寝落ちする前にいい仕上がりにはなったはず・・・)

 久々に心地よい緊張感と疲労感を感じ、その日はぐっすり眠ったのだった。


 そして翌朝、“送還儀式“の当日の今日、朝食をとり終えた僕は、仁達にゆっくり話がしたいと言われ、今、仁達の滞在している部屋へと移動している最中だ。

「ソル、“送還儀式“は午後からの予定だったよね?移動と僕の着替えの時間を差し引くと、仁さん達との時間はどれくらい取れそう?」

ソル「そうですね、お召し替えの前のお手入れの時間も入れますと2時間ほどです」

「2時間ね、分かった、なんの話かは分からないけど、そこまで時間はかからないと思いたいね」

ソル「そうですね、何か心残りがおありになられるのかもしれませんね」

「そうだね、一緒に過ごしていて楽しかったし、仁さん達もそう思って最後に話がしたいのかもね」

(もしくはここの居心地が良かったからここに残りたいとか?そう言われたらどうしよう・・・( ;´Д`)春雷達は気合を入れて一足先に“送還儀式“の場を下見行ってるのになぁ)

 ソルとジュール達を連れてそんな会話をしながら仁達の部屋に到着、部屋の前には護衛のための近衛騎士が2人いて、その人達に声をかけ僕の来訪を中に告げてもらう。そうするとすぐに中から仁達専属になったうちの使用人達が顔を出し、僕達を招き入れた。

「おはようございます。仁さん、彩さん、夢香さん、朝食はもうお済みですか?」

 中に入り軽く挨拶を交わす、だがどこか落ち着きのない3人を不思議に思いながら、進められたソファーに座ろうとしたら。

仁「あ、あの、申し訳ないんだけど、アトリー君以外の人達は席を外してもらえないかな?」

「「「「「!?」」」」」

 仁達以外の室内の人達がその言葉に驚き固まった。

ソル「・・・・アトリー様以外全員ですか?」

仁「うん、護衛の人もなるべくなら部屋の扉から離れてもらいたいかな、今から話すのは僕達とアトリー君、それと神々が関係する話だから、他の人達にいてもらうとちょっと困るんだ・・・」

「えっ?」(そ、そんな話あるっけ?ティーナちゃん達から何か聞いてる?(-᷅_-᷄๑))

天華『いいえ、何も聞かされてませんが・・・』

 なんの話のことかさっぱり分からなくて困惑気味の僕を差し置いて、仁だけではなく彩ちゃん達も「重要な話だから」と言って、城の使用人達だけでなく、うちから来ていた専属使用人達まで部屋から出るように言っている。

仁「ソル君、ごめんね、少しの間だけだから・・・」

ソル「・・・分かりました。アトリー様、僕は先に部屋に戻りお召し替えの準備をしておきます。お時間が差し迫りましたらお迎えにあがりますね」

 ソルは仁達の要求に困惑し少し不満げに、一応譲れない線を敷き条件をつけてきた。

「え、あ、うん、僕はそれでいいよ。仁さん達も、それでいいかな?僕は色々と準備に時間がかかるから・・・」

仁「うん、それまでには終わると思うよ・・・」

 僕に時間制限がある事を話し、それを承諾してもらおうと仁に話すと、すぐにその条件に同意した。

(まぁ、仁達は意地悪でこんなことしないから、今本当に何か重要な要件が僕にあるって事か?(*´ー`*))

「じゃあ、ソル、それでお願いできるかな、すまないけど他の人達も退出してね、あ、天華達はどうしようか?」

仁「あ、聖獣様達は一緒でも大丈夫・・・」

「・・・分かった、・・・あ、ソル、部屋の前の近衛騎士達には扉の側からなるべく離れるように言ってくれるかな?」

ソル「・・・一応、伝えておきますが、言う事を聞いてくれるかは分かりませんよ?」

「あ、そうだね、王城の騎士だもんね、まぁ、伝えるだけ伝えといて」

ソル「畏まりました・・・」

 そう言って頭を下げ部屋を出ていくソル、少し心配げに僕達を見て他の使用人達が部屋を出て行った。

「さて、話すのはいいけど、その前に“サウンドリバッフ遮音結界“、“ダズルヴェール幻惑結界“と、よしこれで誰にも聞こえないし、何を話しているかを悟られる事はないよ。それで?何の話しなのかな?神々から何か重要な指示でもあったのかな?」

 全員が出ていたのを確認、何の話かは分からないけど、でも、仁達がいつも以上に真剣で緊張した表情をしていたので、重要な話がしたいのは確かだろうと判断し、すぐに音を遮る結界と、外部からただ雑談しているような幻影が見える結界を作った。それは天井や壁裏から複数の影護衛の気配がしているので、読唇術で会話の内容を読み取られたりしないため対処だ。ちゃんとした話の場を整えてやっと要件を聞いた。

仁「・・・ふぅー、まず最初に謝っておくね、これは、僕個人がアトリー君と話したかったことだ。神様達は全く関係ないんだ。嘘ついてごめん、でもここまでしないと、アトリー君だけとゆっくり話すことができないと思ったからしたんだ」

「・・・そう、仁君が僕1人だけに用があったてことなんだね?・・・」(・・・・・・)

 ここまで来ると、何となく何を言われるのか分かってきた僕は、静かに相槌を打つ。

仁「うん、これでやっとここでの話は誰にも聞かれない、アトリー君、・・・いや“おばま“、君は、・・・貴女は、僕の、母の妹の、“沙樹崎 咲子 叔母さん“でしょう?・・・」


・・・・よく気づいたね仁、仁はやっぱり賢い良い子に育ったね、でも泣き虫なのは相変わらずだね・・・・


 仁は意を決したように真剣な眼差しで体に力を入れて話し始めた、僕を“おばま“って呼んだ後は感情が昂ったのか、涙を流しなら懇願するように僕の前世での名前を呼んだ。僕はそんな泣きながら僕よ呼ぶ仁が、前世で最後に見た7歳の時の姿がダブった様に見えて、たまらなく愛おしく思えて、自然と笑顔で誉めたのだった。

仁「っ・・・・“おばま“っ、なんで、会った時に、教えてくれなかったんだ!?ぐっ、・・・そしたら、もっと、たくさん・・・」

「・・・仁、僕は、いや、私はもう、向こうの世界では死んだ人間だ、そんな人間がこんな異世界で仁の元叔母さんだよって言っても信じる?・・・それに、向こうの世界で今を生きている仁達に、死人の私が関わっても良いことはないと思ったんだよ。・・・」

仁「でもっ!・・・それでも僕は知りたかった!“おばま“が死んで僕は初めて自分が無力な人間だと思い知った!母さんやばぁば、他の叔母さん達もすごく悲しんだんだ、そんなに悲しんでる皆んなに、僕は、僕は、何もできなかった!“おばま“にも何もできなかった!“おばま“はいつも僕達のことを可愛がってくれたのに、僕は何も、返せていない!っ、もっと早く知っていれば、僕は“おばま“に恩返しできたかも知れないのに・・・」ぐすっ

「・・・仁・・・」

 僕は自分が死んだ後の家族の様子を知って少し胸が痛くなった。そして、この子が自分の無力さに嘆いた事にも、僕のことをもっと早く知っていれば僕に恩返しできたのにと、それを悔やみ悔しさで歯を強く食いしばる。仁の両脇に座る彩ちゃん達も唇を強く噛み、涙を堪えて、僕達の様子を見守る。

「・・・仁、それは仕方ないことだよ、私が死んだ時は仁はまだ7歳、死とは何かなんて始めて知った頃だろう?・・・「ヴゥンッ」・・・それに私に何かしたくても仁はまだ小さな子供だったんだから、気にすることはないよ」ポンッ

 僕は自分自身に“幻覚魔法“をかけ立ち上がり、悔しさに泣く仁の頭に手を置いた。

「私は、仁達、甥っ子姪っ子が皆んな元気で遊びに来てくれるだけで、最高に幸せだったんだから、今も、僕は仁と彩ちゃんと夢ちゃんと3人でこの世界で過ごせた時間が何よりも幸せだよ・・・」

仁「・・・“おばま“?・・・・」

「ふふっ、叔母さんの姿は久しぶりだけど、おかしい所は無いかな?仁、本当に大きくなったね。もう私の身長はとうに越して、見上げるほどになった。なのにいつまでもぐずぐず泣くんじゃないよ。妹の“まどか“や下の従兄弟達に笑われるよ、仁は皆んなの1番上のお兄ちゃんでしょ?私の可愛い最初の甥っ子ちゃん♪ふふっ」

彩ちゃん「“サキおばま“・・・」

夢ちゃん「・・・“サキおばま“だ・・・・」

 久しぶりに前世での姿を“幻覚魔法“で再現した。黒髪ポニーテールに黒目の二重でやや吊り目、標準的な日本人顔に、少しふっくらした体型、前世でよく着てたジーンズパンツにロングシャツを着たおばさん、その姿に、仁達は驚き、口をポカンと開けて呆然としていた。

「ふふっ、なんて顔してるの3人とも、ふふっ、そんなに驚くとは思わなかったわ、ふふっ、でも、おかげで涙は引っ込んだね?」

天華:『アトリー、それは誰でも驚くのでは?』

ジュール:『私も驚いたー!』

「あら?そう?・・・それもそうだね?ふふっ」

夜月:『アトリーの前世の姿は初めて見たな、あ、いや正確には大人の時の姿だな?』

「そうだね?あ、そう言えば仁!アンタなんで私の子供の頃の写真なんて持ってたのよ!あれをクラスメイトの前で公開するとか恥ずかし過ぎるでしょ!」

 ポカンとしたまま動かない仁達を見て笑っていると、天華からツッコミを入れられ、ジュールからは素直な反応がきた。夜月は不思議そうな顔で僕の姿をじっと見た後、子供時代の姿の話が出て、以前、学園で公開した写真のことを思い出し、プンスコ起こりながら仁の頭をグリグリと撫で回した。

仁「ふへへへっ、やっぱり“おばま“だ・・・」

「もう!反省してないわねこの子は!」

 怒って罰として頭をグリグリ撫で回したのにも関わらず、反省の色のない仁の気の抜けたような言葉に、頭をグリグリと撫でていた手にさらに力を強く入れて、髪がぐちゃぐちゃになるようにかき混ぜた。

仁「わぁ~~っ、やめてよ“おばま“僕もう小さい子供じゃないんだからっ」

「ふふっ、私にしてみたらまだまだ皆んな子供だよ。「ポンポンッ」・・・それにしてもよく私が分かったわね?やっぱりどこかでやらかしたかな?」

(“転生者“ってバレた時も無意識にやらかした前科があるからなぁ僕は・・・・(。-∀-))

仁「あ、・・・それはね・・・・」

 仁の頭を撫で回すのに満足した僕は、元の席に戻って首を傾げながらバレた要員が何だったのか不思議に思い話すと、ぐしゃぐしゃになった頭を元に戻しながら、仁は話し始めた。














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