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第3章 少年期 学園編

166話 “公開実技授業“当日〈魔法実技授業の時間〉

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 はい!どうも!僕です♪今日はテンション高めでやっております♫

 何故なら、本日、待ちに待って無い!“公開実技授業“当日なのです!ドンドンぱふぅ~!!やっふぅ~~!!

天華『無駄にテンション高いですね。それに待ちに待って無いってなんですか・・・』

(これだけ、テンション高めてないと憂鬱すぎて“実技演習“のやる気が保てる気がせん・・・( ̄◇ ̄;))

天華『そこまでですか・・・』

 天華と絶賛念話中ですが、今は学園に向かってドナドナ気分で馬車で移動中です。☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

(自分でやるとは言ったものの・・・はぁ~~~~、帰りてぇ~~~~(*´Д`*))

夜月『もうすでにやる気が保ててないな・・・』

春雷『一瞬でしたね・・・』

天華『アトリー、言葉遣い・・・』

 とある事情から現在進行形でやる気がゴリゴリ削れていく所に、隣に座っている母様が僕の頭をずっと撫でている。それでやっとやる気が補填されて、逃亡までに至ってない・・・

(癒しはここにある・・・・(*´ー`*)母様万歳!)

 今日は保護者同伴の学生がわんさか来ると予測して、そんな人混みに巻き込まれ無いように、少し早めに出たのだが、もう既に道は馬車の列で渋滞を起こしていた。そんな風景を眺めながらボーッとしていると・・・

(あ、学園のロータリーが見えてきた・・・)

 絶妙なバランスで保たれている僕のやる気をなんとか維持し、馬車は学園に到着。いつも通りのやり取りにいつもも通りの順番で馬車を降り、いつも通りの反応を横目に見て、学生組は先に学園内の教室に行くため、両親とはここで別れる事となった。保護者達は学園入り口近くにある対応棟で受付して、来客用の“学章“をもらってから、あのコロッセオ風の屋外運動場に行くみたいだ。僕やソルは兄弟や仁達と一緒に行動し、先に来ていたイネオス達や、お店の修復が済んで家に戻ったロシュ君を見つけて、全員で教室のある建物まで移動した。

ライ兄様「アトリー、皆んなも今日の“公開実技授業“頑張れよ、俺達は客席で見ているからな」

 ポンポンッと頭を撫でて爽やかに言ったライ兄様。

ヘリー姉様「皆んな無理はしないでね、特にアトリー」

「・・・ふぁい・・・・」

(名指しでご忠告いただきました~!(*゚▽゚*))

 優しい手つきで僕のほっぺたをつまみムニムニしたヘリー姉様、その後すぐに軽く手を振り自分達の教室向かっていた。そんな姉様達を見送り、僕達も1学年の教室がある方向の廊下を、たわいも無い会話をしながらゆっくり進んだ。周囲の人達の注目の視線なんて何のその、珍しく小さい姿で僕に抱っこされている夜月を撫でながら進み、Aクラスの教室までついたのでここでイネオス達とも別れ、後でまた一緒に屋外運動場に行く約束もして、僕とソル、ロシュ君に仁達と教室に入った。

「「「「「ザワッ!」」」」」

 教室に入るなり、クラスメイト達がざわめきたった、自分はいつも通りに登校したつもりでも、今日あることを思えばクラスメイトの反応は致し方ないと思う。前日に僕が“実技演習“を行うことが1年生全体に通達されて、それ以降クラスメイト内での僕の“実技演習“への期待が高まりに高まっていたからだ。

(前回以上のものを求められても困るんだけどねぇ~( ´ ▽ ` )てかさぁ、なんで“魔法の実技“もする事になってんだろうねぇ?)

夜月『まぁ、“武術の実技“だけとは聞いてなかったしな、確認するのを忘れていたのだから、しょうがないのではないか?』

雪花『誰も気づきませんでしたからね・・・』

(・・・はぁ~、まぁそうなんだけどぉ~~(*´Д`*))

 そう、クラスメイト全員が期待しているのは“魔法の実技演習“だった、以前の“魔法実技演習“では、全属性を使ったミュージカル風の演技を見せたのだが、その事が密かに学園内で人気を博していた様で、今回の“魔法実技演習“でもそれが見れるのではないか、と期待がされているところであった。

(もう、あんなぶっつけ本番の演技は遠慮願いたいんだけど?どうしたもんか・・・・(。-∀-)適当に属性魔法を1・2個披露すればいいか?)

天華『そうですねぇ・・・・今のアトリーの魔力量では以前のような小規模の演技は難しいでしょう、その方が良いかもしれませんね?』

(だよねぇ、あの時みたいなミュージカル風で、基本4属性の魔法とか使ったら大変な事になりそうだもんね、最小出力でも無理だしね、・・・他の物理的被害が出ない魔法属性を使うしかないよね?あ、でも、6月の時みたいに的に魔法を当てる実技だったらどうしよう・・・)

 今年の夏期休暇中に魔力量がグッと高くなった僕には、以前の様な細かい魔法を使うのは無理があると天華が言う。それを理解している僕もどうにかして“魔法実技演習“を回避しようと先生に相談したが、あえなく失敗した。あの女子生徒のせいで・・・・

(何が“「あら、デューキス子息はお約束をお破りになられるのですか?皆様、貴方の“魔法実技演習“をお楽しみしてらっしゃるのに?」“だっ!マジ、思い出しただけで腹が立つなぁ!)

 今も僕を睨んでくる彼女の視線を感じつつも、その時の事を思い出してさらに苛立ちが増した僕は、心を落ち着かせるために無言でひたすら夜月を撫でていると・・・

ソル「アトリー様?どうかなさいましたか?」

 と、僕の感情が伝わったソルが心配して声をかけてきた。

「ん、大丈夫、今ちょっと“魔法実技演習“の事を考えていただけだから・・・」

ソル「あぁ、それですか・・・」

 ソルは正確に僕が考えたいた事、いや、思い出していた事が分かったのか、ソルも少し不機嫌になっていた。

仁「あー、あれかぁ、結局まだ何を披露するか決まってないの?」

夢ちゃん「まだ決まってないのはやばくない?」

彩ちゃん「アトリー君の実技が凄く期待されているみたいだけど、以前はどんな魔法を披露したの?」

 僕達の前の席に座っている仁達もこちらを振り返り会話に混ざってきた。

「えーっと、ですね・・・」

ロシュ君「以前のアトリー様の魔法はそれはもう凄かったですよ!様々な魔法に、美しい歌声が・・・・・」

 と、彩ちゃんの質問に僕が答えるのを躊躇していると、ロシュ君が大興奮で説明してくれて、その説明を聞いた仁達がキラキラした目で僕を見てきた。

「えーっと、その視線の意味は?」

仁達「「「一度でいいから歌に合わせて動く魔法を見てみたい!」」」

 そう、声を合わせて、期待に満ちたキラキラした目で言った言葉に僕は・・・

「・・・・ぜ、善処します・・・」

 と、返すしかなかった・・・

(あー、もう逃れられなくなった・・・・普通に属性魔法を1・2個撃つ案は潰れた・・・くそっ!( *`ω´)そもそも、まだどんな授業か分からないんだが⁉︎むしろ、どうやってミュージカル風にするかが1番の課題になりそうなんだが⁉︎)

天華『アトリー、言葉・・・それで?もし授業内容が前回と同じだった場合でも、結局リクエストに答えてあげるんですね?』

(当たり前じゃん!仁達があんなに期待した目で僕を言ってくるんだよ?(*´ー`*)おばちゃんはそんな甥っ子のリクエストに弱いんだよ?)

夜月『ここで“おば馬鹿“が炸裂するのか・・・・』

(だって、一度でいいからって、言うんだもん!今回を逃すとあの子達は一生見れないものだって僕は分かってるから、それは叶えてあげなきゃだろ⁉︎(*゚∀゚*))

 と、熱く語っていると夜月に『分かった、分かった、落ち着け』と宥められた。一応、仁達にできる範囲でするが期待するな、と言い聞かせ、僕は天華達や精霊達を交えて、どんな実技にするかと相談し出した。

(歌を歌うのは良いんだけど、流石に今回は題材が欲しいね、それに合わせて魔法を使う感じがベストだと思うんだけど、どうかな?)

天華『確かに、前回は本番直前に考えた歌でしたからね。それに前の実技は魔法属性を満遍なく使う目的でしたが、今回は魔法属性の制限がありますし、題材に沿った魔法を組んだ方が効率的ですね』

夜月『だが、その題材となる歌はどの歌にするんだ?』

ジュール『こっちの世界の歌にする?それとも向こうの歌にする?』

(あー、そうだねそこも考えなきゃか・・・仁達にリクエストを聞いてみるのもありか?)

春雷『それより、こちらで向こうの世界の歌を題材に決めて、仁さん達に内緒で歌ってあげた方が良いんじゃないですか?』

雪花『そうそう、仁さん達を驚かせるのも良いじゃないですか♫』

(あー、それ良いかも!Σ('◉⌓◉’)あ、魔法を的に当てる実技だった場合はどうしようか?前みたいに歌の歌詞の内容に巻き込む感じがいいのかな?)

 と、仁達のリクエストに答えると決めると、ジュール達や精霊達と色々と意見を出し合い、“魔法の実技演習“の演技の内容が決まる頃には、レーラー先生が教室に来て、今日の授業の概要と注意事項を話して、全員が学園指定のローブを羽織ると教室を出ることになった。
 レーラー先生は今からの授業の用意のため先にいなくなり、クラスメイトが全員廊下に出たら、僕も廊下に出た。するとすでに1学年の生徒が全員廊下に出ていて、人でごった返しになっていた。でも僕の周りにはいつも通りある程度の空間ができて快適で、そこにイネオス達が合流し全員で屋外運動場に移動しのだった。

「うわぁ~、以前より人多いいね、ってそれも当たり前か、1年生の保護者のほとんどが来てるんだった・・・」

 前回は学園の生徒達や例の外交官達、あと自国の王族にその護衛、その時そこに何故か自分の家族も来てたが、客席の約半数を使用していただけで、残りの約半数は空席だったので、今日みたいなほぼ満席の客席に皆んなで驚いたのだった。それもそのはず今回は全学年に加え、以前より増えた各国の外交官や王族にその護衛、我が国からは宰相などの偉い人達に、何故か今回は王族の全員が大集合、そのお陰で護衛や警備もたくさん入っていて、その上で1学年の生徒の保護者達もいるため客席が大賑わいしているのだ。

 ざわざわと賑わうコロッセオ風の屋外運動場の客席、そこに1年生達が入っていくと更に賑やかになり、最初の方に入って言った生徒達の何人かが、家族らしき人に名前を呼ばれて恥ずかしそうにしているのが見えた。

「あー、あの中に入って行くの恥ずかしいよね・・・でも良かった、うちの家族はそう言う事しない方だから・・・」

ソル「うちもですね・・・」

ヘティ「我が家もそう言う声掛けはしないと思います。と、言うか、貴族の家系でしたら、そう言う大声を出すような事はしないと思われますが・・・」

「あ、それもそうか(はしたないって言われちゃうもんな・・・)・・・って事はあれは皆んな一般市民のご家庭かな?」

ベイサン「多分、そうだと思います。見知った顔もいますんで・・・」

イネオス「僕にも見覚えのある方がいますね・・・」

「そうなんだ・・・」(乙っ!(*゚▽゚*))

仁「ねぇ、アトリー君、僕達はいつ出たら正解なんだろうね?」

夢ちゃん「私達が出て行ったら更に騒がしくなりそうな予感・・・」

彩ちゃん「まぁ、それはしょうがないと思うわよ?私達は異世界から召喚された“勇者候補“で、アトリー君は神様の愛し子だもの、注目するなって方が無理じゃない?だから、いつ出て行っても騒がれるのは確定されてるのよ」

 今、僕達は屋外運動場のグラウンドに出る為の通路の入り口近くで、ギリギリ客席から見えない位置の影から、運動場内を観察しながら雑談しているのだ。その横を他の1年生達が通りずぎ、来客の注目を集めながらグラウンドに入って行っている。

「ですよね・・・まぁ、腹を括って出て行くしかないでしょうね、最後の最後に出ていって全部の注目を浴びる前に出ていきましょう!」

仁「それは嫌だな、しょうがない、行くか・・・」

彩ちゃん「アトリー君と出ていけば多少は私達への注目は分散するから、アトリー君、同時に出ていきましょう!」

夢ちゃん「・・・お願いが打算的すぎるよ、彩ちゃん・・・」

(本当それな!(*´Д`*))

「「「「「あははははっ」」」」」

 と、一通り笑い合って、僕達は気を引き締め、同時にグラウンドに出て行った。

「「「「ザワッ!!」」」」「「「「「わぁ~!」」」」」

「出てきたぞ!」「えっあの人達が“勇者候補様達“?」「前にいるのは聖獣様方じゃないか?」「あの銀髪の方が“神の愛し子様“?」「わぁ、きれぇーい♪」

 色々と騒がれてはいるがそこは極力スルーする方向で・・・。そんな感じで実技を指導してくれる先生達が来るまで、なるべく他の人の邪魔にならない場所まで移動し、また雑談を続けることにした。

「ふぅ、人の視線には慣れたと思ったけど、今回ばかりは人が多すぎるよ・・・」

ソル「確かに、少し落ち着かないですね」

「その中に敵意も混じっている気もするし、嫌な感じだ・・・」

 人の多さとその人達から向けられる視線の煩わしさ、その中に敵意が隠しきれない視線を感じ辟易していると。

仁「それって、大丈夫なの?アトリー君・・・」

「大丈夫か、大丈夫じゃないかで言うと、あまり大丈夫ではないですね。先週、学園内で行われた“学章“の機能検査、あれで、僕達の周りをうろついていた“侵入者“を遠ざける事はできたと、父様達が言っていましたが、今日の“公開実技授業“までに、その“侵入の犯人達“は今だに捕えてはないそうなので、今感じた“敵意“がその“侵入犯“のものとは限りませんが、警戒は必要だと思います」

仁「えっ、あれって“学章“をちゃんとつけているかの服装点検じゃなかったの?それに“侵入者“が再びこの学園に入ってきてるかもって事?」

「えぇ、あれは父様達の犯人を捕まえる為の作戦の一つだったそうです。ですが、相手側が思ったより慎重だったようで、あの点検以来、相手方からの動きがないそうです。もし、何か仕掛けてくるのなら今日以外にないだろうと。先日、父様から教えてもらいました。要は僕に何か仕掛けるなら“武術の実技演習中“が1番の機会ですし。仁さん達に何か仕掛けるにしても、この人の多さを利用して騒ぎを起こし、周囲が混乱している隙に拉致、と言った手段も考えられます。なので、何か騒ぎが起きても慌てず、僕の渡したペンダントに魔力を込めてくださいね?」

 僕の感じた敵意ある視線に対し心配してきた仁に、あえて嘘をつき隠すような事はぜず、正直に今の状況を話した。この話を聞いている他の友人達にも警戒して欲しいと重ねて注意を促した。皆んなは真剣な表情で頷き返してくれて。僕は安心感を得た。(ここまで言っておけば、何か起きた時は冷静に対処してくれるだろう・・・)

 その後は前の休みに行ったピクニックの話で重たい雰囲気を変えて、先生達が来るのを待った。

 数分後・・・わちゃわちゃと、次の休みに何をして遊ぶかと予定を立てたりしているうちに、魔法実技の授業を行う先生達がグラウンド内に入ってきて、クラスごとの整列を促してきた。その指示に僕達も従い各々自分のクラスの列に並び、授業が始まった・・・

(うーん、前回の“実技授業“とあまり変わらないねぇ・・・(*´ー`*)ならあのプランで行くか・・・それにしても変わり映えがなくて暇だねぇ)

 今、やっているのは前回、夏休み前の6月にあった“実技授業“の時の授業内容と、同じ内容だった。

天華『それは仕方ないですよ。皆さんまだ子供ですし、いくら日頃から学園で学んでいるとは言っても、一度も実践をした事が無い人達が大半なんですから。この授業の目的は“最低限の実践ができるようになる事“ですから。まだ、魔法をうまく使いこなせない子供達に向けた授業なんて、反復練習あるのみって事でしょう・・・』

(そうなんだろうけど、これは暇すぎる・・・・)

 前回の“公開実技授業“の時以降、僕は普通の“実技授業“は見学だけの参加だったので、皆んながしている授業内容は退屈そのものだった。今日は参加することが前提だったとしても、やっている事が単調過ぎて暇なことには変わりなかった。

(だって、得意な魔法を連続5回、的に当てて、その発動速度を測り、的にどれだけ当てれたかを見るだけの授業はどう見ても暇すぎる。まぁ、反復練習する事はいいことだけど、この授業内容の何を見て、この観客席にいる人達は面白いと思うだろうか?(*´Д`*)?それに自分の番が来るまでが長い!)

天華『もう、本当にアトリーは暇なことが嫌いですねぇ』夜月『落ち着きがないぞアトリー』ジュール『じゃあ私達とお話ししよ~~』

(うん、そうしよー!♪( ´θ`)ノ)

 ほぼ最後尾で前に並んでいる人達の長ったらしい詠唱に、勿体ぶった杖回し、そんな物を長々見ているだけの授業に、早くも暇を感じ辟易し出した僕を、天華達が嗜めつつも話し相手になって暇つぶしに協力してくれた。(あ、今、精霊達は今回ダークエルフの国“エッケ“から来ている外交官に、僕と契約している事を悟られないように、カフスボタンの中で静かにしてくれている。(´・Д・)会話もできないのは申し訳なさすぎるのだが、ダークエルフやエルフは精霊達を敬い過ぎているところがあり。
 特に高位精霊達を神格化している節もあるので、人族の僕がその高位精霊の2人と契約しているのがバレると、色々厄介なことになりかねないのだ。だから、本当ごめんっ!(>人<;)て感じで頼んで静かにして貰っている。
 でも、僕の精霊からの好かれ体質は変わらないので、見る人が見れば僕の周りは他の人より精霊が集まっているのが分かる。その事は僕も理解しているので、目で精霊を追わないように、意図的に精霊だけは見ないようにしている。精霊が見えたない風を装えば、ただ精霊に好かれやすい子供に見えるだろう、と向こうが勘違いするようにしているのだ・・・)

 ジュール達と楽しく話しているうちに前の列が短くなり、僕達の出番が近くなっていた。そして、今回もソルは僕の前に自分が“実技“をすると言って聞かなかったので、結局、僕はまたラストを飾ることになっている。(まぁ、良いんだけどね・・・(。-∀-)恥ずかしいけど・・・ついでにロシュ君はまだまだ魔法が苦手なので列の最初の方で早めに“実技“を終了させているよ)

(お、イネオスの番が来てる・・・)

 以前より的の数が多く設置位してあり、1クラスごとに的が5個用意されたことで、全クラスが同時に“実技授業“が始まっていて、隣のクラスの列の後ろの方にイネオスがいるのを発見、そして丁度、出番が回ってきているようだ。

 ドコッ!ドコドコッ!!ドカッ!ドカンッ!!

(おぉ!今日は土魔法の“ストーンバレット“を使ったんだ、最後の一発は的を貫通したみたい、今回は“杖“も使わずにあれだけ出来るなんてイネオス凄い!また魔法が上手くなってる♪ふふっ、ヘティとベイサンのクラスは、もう1つ向こうだから見れなかったけど、イネオスの実技が見れて良かった♪( ´θ`)ノ)

 イネオスが使った“ストーンバレット“は、同じ土魔法の“ストーンアロー“の上位互換に当たる魔法だ、その魔法が的になっている木製(強化魔法で加工済み)の板のど真ん中に凹みを付けながら当てて行き、最後の的は凄い音を立てて貫通させたのだった。それも魔法の発動を補助する“杖“も使わずに・・・

天華『詠唱破棄も馴染んで来てるようですから、今の最後の一発で詠唱破棄スキルを習得したんではないでしょうか』

(おおっ!とうとう、イネオスも詠唱破棄をゲットか⁉︎Σ(-᷅_-᷄๑))

 天華とわちゃわちゃ念話していると、イネオスが驚いた顔をした後に、嬉しそうに小さくガッツポーズをしたのが見えた。

「ふふっ、詠唱破棄のスキル、習得したみたいだね」

ソル「アトリー様?どうしました?」

 イネオスの嬉しそうな表情に連れられて、自分もつい嬉しくなり、思っていたことが口に出ていたようで、前に並んでいたソルが後ろを振り返り何の事だと聞いてきた。

「あ、今ちょうどイネオスの実技が目に入ってね、何やら嬉しそうにしていたから、新しいスキルでも習得したんじゃないかなって、言っていたんだよ」

ソル「?・・・あ、とうとう詠唱破棄を習得できたんでしょうか?」

「うん、そうだと思うよ、天華がそうじゃないかって言ってたから、ふふっ」

ソル「テンカ様が・・・それなら確実ですね、イネオス凄く喜んだんじゃないですか?後でお祝いしなきゃいけませんね、ふふっ」

「ふふっ、そうだね♪」

 そう会話している内にソルの前に並んでいた仁達の実技が始まった。最初は夢ちゃんが水魔法と風魔法で的を切り刻み、次の彩ちゃんでボロボロになった的を氷魔法でガッチガチに固めた後に、木魔法で的が見えなくなるぐらい蔦でぐるぐる巻きにした。最後に仁が火魔法で蔦でぐるぐる巻きになった的を白い火で燃やし尽くし、上から降りてきた光魔法で一瞬で焼滅させていた。周囲は驚きと称賛の声で騒がしくなり、消失した的は先生達が新たに立てるようで

(高圧縮された水のウォーターカッターや、真空を利用した、かまいたち現象でボロボロになった的を、時空間魔法も併用して一瞬で凍らせ、その上から急成長させた蔦でさらに強化した、それを高温度の火で燃やしたり、増幅圧縮させた光で焼滅させるなんて、えぐい事するなぁ~、でも、3人で連携をよく考えてここまでテンポ良く的を壊したんだ、最初に比べたら凄い進歩したなぁ~成長を感じる・・・( ´ ▽ ` ))

夜月『完全に親目線だな・・・』ボソッ

 夜月に何か言われたが気にしない。次に実技をするのはソルだから応援しなければ!と息こんだ。

「ソルなら、やればできる!頑張って!」

ソル「はい!行ってきます!」

(グフっ!か、可っ愛いっ!何あの可愛い笑顔!僕を殺すきか!?(*゚▽゚*))

 緊張した様子もなく、元気いっぱいに子供らしい笑顔で気合を入れて言ったソルに、僕はノックアウトされそうになった。

 ソルは新しく用意された的の前で集中し、実技を始める合図をまった・・・

レーラー先生「・・・・ソルドア・ノブル・ソンブラ、実技、始めっ!」

ソル「はい!“フォトンソード“」

 ヴゥンッ!

ソル「すぅ・・・・はぁっ!」

 シュッ!!  ズッ ズルッ ゴトゴトゴトッ!

「わぁ!ソル!全部切れてる!できてるっ!成功だっ!」

ソル「は、はい!できました!」

「「「「「っ!?ぇえぇえ~~~っ!!?」」」」」 (うわっ!うるさっ!!)

 ソルが出した魔法は光魔法で僕が作った魔法の1つだ、その名も“フォトンソード“、要は某ロボットアニメの“ビームサーベル“や、某宇宙映画の“ライトセイバー“など、さまざまな漫画、アニメ、映画などに出てくる夢の武器、“光る剣“を再現させた魔法だ。
 その魔法をソルは見事ものにして、今日の実技に使用したのだ。出現させた“光の剣“を的に届く長さまで伸ばし、横に一線振っただけ、ただそれだけだが的は見事、真っ二つになって地面に落ちていった。
 今日はその魔法を披露すると言っていたソルだが、今まで持続時間が的を全て切るまでは続かず、途中で魔法発動が止まるのだった。それが今日、見事全ての的を切るまで魔法が維持できて大成功したのだった。

 その成功をソルと僕は喜び合っていると、観客席から凄い人数の驚きの声が大音量で聞こえてきた。その後も驚きの声は止まず、運動場内は騒がしいままだった。

(これ、今のこの混乱に紛れて僕の“魔法実技“やっちゃっていいかな?)

 なんて、思っていると・・・

 ゴンッゴンッ!!

サフィアス叔父様<<<「鎮まれ!」>>>

 ピタッ!・・・・シーンッ

 何かを床にぶつけるような大きな音がし、拡張された大きな音でサフィアス叔父様の低く重みのある声がした。その瞬間全てのざわめきが止まり運動場内は静まり返ったのだった・・・

(あー、やり損ねた・・・チッ)

天華『アトリー、舌打ちしてはいけませんといつも言ってるでしょう?それに最近舌打ちする回数が多いですよ?』

(むぅー)

 周囲が静まり返る中、混乱に乗じて自分の“魔法実技“をさっさと終わらせようと画策していた僕は、思った以上に事態の収集をつけるのが早い事に舌打ちをついて拗ねていた。天華にお小言を貰っている間にサフィアス叔父様が何か言って、全員を落ち着かせ、実技授業を再開させていた。

レーラー先生「最後、どうぞ」

 レーラー先生の素っ気ない声掛けで自分の番が来た事を知り、天華のお小言も止まったので、僕は実技をする台の上に乗った。

「あ!デューキス子息の番だ!」「「「「「ザワッ!」」」」」「やっと見れる!」「さっきの彼より凄いのが見れるのかしら?」「今回はどんな魔法を見せてくれるんだ⁉︎」

(チッ、1番最初に叫んだ奴、余計なことを・・・( *`ω´))

 僕に気づいた観客達は再び騒ぎ始め、一気に注目を集めた僕は辟易してまた舌打ちし、悪態をついていると。

天華『ほら、また、それより落ち着いて実技を始めましょう』

 そう言って、僕の肩から飛び上がり離れていった天華。

(うん、・・・ふぅー・・・さて、やるか、仁達が喜んでくれると良いんだが・・・)

 天華の言葉に気持ちを入れ替えた。

レーラー先生「・・・アメトリン・ノブル・デューキス、実技、始めっ!」

「はい」

 目を閉じ、すぅーっ、と息を深く吸い、目を開けて、実技を開始した。

「さ~く~ら♪さ~く~ら♫やよいの空~は~♩見わたす限~り♬」

 今回の魔法の題材にしたのは、前世で良く祖母が歌っていた日本童謡“さくらさくら“だ。歌い出しと共に僕と的の間にある、10メートルほどの空間の真ん中に、小さな植物の芽を出し、それをどんどん成長させていき、高さ約5メートルほどの樹木にした、そこから更に成長させて花の蕾をつけさせた・・・

「かすみか♫ くも~か~♪によいぞ♬い~ずる♩」

 歌の題材の通りに“桜の花“の蕾を、全ての枝に蕾をつかせると、一気に開花させ満開させる、樹木は綺麗な薄桃色に染まり、間には青々とした桜の葉をちらほらつけて。桜の香りをも漂わせた、枝は僕の手の届くほど広がり、育てしならせる、僕はその枝に手を伸ばし、その光景にうっとり見入ったと同時にまた懐かしさも込み上げてきた。

「いざや♪いざや~♩見にゆ~か~ん~♬・・・“は~な~ふ~ぶ~き~~~♫“」

 満開の桜の花をちらしだした、どんどん散っていく桜と共に、実技用の的が目に見えて劣化していく、そして最後の祖母オリジナルの歌詞の部分で、全ての桜の花びらをちらし、ザァッと風に舞い上がらせると、的はボロボロと崩れて行き、チリになり桜の花びらと一緒に空に消えていった。そして、先程まで目の前にあった桜の木も全て跡形もなくなり真っさらな地面だけが残った。

「・・・・ふぅ・・・これにて、実技を終わります」

・・・ドッ!!「「「「「わぁ~~~!!」」」」」

(おぉうっ!Σ('◉⌓◉’))

「凄い!なんだアレ!」「あれはなんの魔法なの!?」「凄いキレーだった!!」「あの歌はどこの国の歌なの!?」「なんて幻想的な魔法だ!」「歌声が素晴らし!!」

 そんな称賛の嵐の中、僕は後ろを振り返り、仁達のいる方を見た。

(どうだ?仁!良い出来だったでしょう?「ドヤァ」・・・・えっ!な、なんで泣いてるの⁉︎Σ('◉⌓◉’))

 見た先で仁がこちらを見たままボロボロと涙を流し、微動だにせず立っていた。僕はそれに驚きプチパニック。

天華『どうしました?』

 実技の間はソルの頭の上に移動していた天華が僕の肩に戻ってきて、聞いてくる。

(じ、仁がボロ泣きしてる!彩ちゃんや夢ちゃんも涙ぐんでるんだけど⁉︎ど、どうしよう⁉︎3人を泣かせっちゃった⁉︎((((;゚Д゚))))))))

夜月『落ち着け、アトリー、多分、懐かしさと感動で泣いているだけだろう。それほど、アトリーの魔法が素晴らしかった、と言うことだ』

 夜月にそう宥められたが、まだ不安でしょうがない。

(そ、そうかな?だ、大丈夫だよね?)

ジュール『大丈夫、大丈夫♪』

(なら良いけど・・・(。-∀-))

 一応、心配だったのでソルを連れて仁達の所に行き、大丈夫か聞いたが3人とも大丈夫と答え、“感動した“とか“凄かった“とか色々感想をくれて。そこでやっと、ほっとした僕だった。その後、興奮冷めやらない観客達をまたもやサフィアス叔父様が落ち着かせ、午前の“魔法実技授業“の終了を告げた。(どうやら、僕が1番最後の“実技演習“だったらしい)

 全ての“魔法実技演習“が終了し、僕達生徒はその場で解散。保護者が来ている生徒達は、保護者達と昼食をとる事を許されているので、各々自分たちの家族を連れてご飯を食べれる所に案内するか、お弁当を持ってきている人達は、学園内の憩いの場や広い芝生のある庭園などに案内しているようだ。

 そして、僕達はいつもの秘密基地でご飯を・・・、とは、ならなかった。

(デジャブ・・・(-᷅_-᷄:))

 そう、何故か、また王族の食卓に呼ばれて学園内の迎賓館で昼食をとることになった・・・

 今回は仁達も追加され、王族は何故か全員いるのでわちゃわちゃと、過ごすことになった。だがこの時、午後の“武術の実技授業“で壮大な事件が起こることは誰も予期していなかった・・・





「「「「「!?、アトリーーーー!!」」」」」「「「「アトリー様ーー!!」」」」「「「アトリー君!?」」」

「「「「「キャァーーーー!!」」」」」「「「さ、殺人だーーー!!」」」

「捕まえろ!!」










*明日も続きを投稿します。ぜひ見てくださいね♪(≧∇≦)
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