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第3章 少年期 学園編
165話 王城での会議 第三者 視点
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アトリーが体調を崩した、その日の深夜未明の出来事・・・・
第三者 視点
ここは、ウェルセメンテ王国の王城にある限られた人しか入れない“秘密の会議室“。その会議室内にはこの国の現国王を始め、その父親の前国王夫妻と王弟、デューキス公爵家の当主とその弟である事務補佐官など、身内が集まる中に国の重鎮である宰相に王国騎士団総団長と魔法師団団長、王国軍総元帥と王国衛兵隊総隊長、そしてリトス教の大司教がいた。異様な取り合わせのように感じる室内だが、今回の会議の議題には必要な人員であるのは確かなのだ。
サフィアス国王「皆、今日は忙しい中、急な呼び出しにも関わらず集まってくれた事感謝する。・・・・今日の呼び出しの本題に入る前に初顔合わせの者達もいるだろうから各々自己紹介をしておこうか。そうだな、・・・・父上達は良いとして、宰相、其方から順に自己紹介をして行ってくれ」
会議室に用意されているのは大きな円卓で、その円卓の会議室入り口から1番奥に座っているのは、この国の国王のサフィアス、そこから見て右手側に前国王、その横に宰相と続いていた。サフィアスの左側は前王妃だ。国王サフィアスに指名された宰相は静かに立ち上がり自己紹介を始めた。
宰相「はっ、畏まりました。お初の方々もおられるとの事なので、僭越ながら私から自己紹介の程をさせていただきます。私はウェルセメンテ王国宰相の任を任されております。ロワヨテ・ノブル・マルキースと申します。ここ最近、任命して頂いた新参者ですが、これから頻繁に顔を合わせる機会が御座いますので、何卒よろしくお願いいたします」
そう言って、恭しく頭を下げお手本のような挨拶をしたのは、マルキース侯爵家特有の濃ゆい灰色の髪に、青みがかった緑色の瞳をした、中年男性。体型は細身で眼鏡を掛けた頭脳明晰を絵に描いたような人物だ。
マルキース宰相の自己紹介に全員が静かに軽く頭を下げる。それを見て着席した宰相、その次に右横に座っていた事務補佐官であるシベラスも丁寧に挨拶し着席。次はそのまた右隣にいる白い騎士服を着たガタイの良い茶髪で黄色い瞳の渋い中年男性が立ち上がった。
男性騎士「次は私ですね、お初にお目にかかります。私はウェルセメンテ王国騎士団、総団長を務めています。アウグスト・ノブル・エスクードと申します。そして、こちらが私の部下で・・・・」
総団長は簡潔な自己紹介の後、自分の右隣に座っている黒いローブを着た、深緑の髪に新緑色の透き通った瞳を持つ、細身で華奢な若い女性を手で指し紹介しようとしたが、女性はすぐに椅子から立ち上がり、総団長の紹介も待たずにお辞儀をして挨拶をし出した。
魔法師「魔法師団、団長を務めています。シャルロット・ノービレ・セヘルと申します。魔法省とは違い実戦重視の騎士団の一部隊となります。以後お見知り置きください」
と、せっかちな様子で自己紹介を終えた、彼女は早々に着席し。総団長は苦笑いだ。
総団長「彼女は団長を任命されてまもないですが、優秀な魔法師ですので心配いりません。では次の方、お願いします」
そう言って、魔法師団長のフォローを軽く入れ、次の人にバトンタッチをした総団長も静かに着席した。魔法師団長が着席した総団長に膨れっ面をしていたが、見事にスルーされているのを横目に、彼女の隣に座っていた紺色の軍服を纏った、背が高くがっしりとした体格に橙色の髪色、黒眼の腕まくりをした女性が立ち上がり、ニカッと笑って軽く頭を下げ自己紹介をし出した。
軍人「初めまして。自分はビクトリア・ノービレ・クシフォスと申します。役職は王国軍総元帥を任されています。以後お見知り置きを・・・」
そう、自己紹介した彼女が、総元帥という役職だったことに驚いた様子の人が数人いたが、そんな事は気にしていない様子で彼女は堂々と着席。その空気の中、彼女の右隣に座っていた男性は、素早く立ち上がり、ガッチガッチに緊張した様子で自己紹介をし出した。
衛兵隊員「は、初めまして。私は衛兵隊総隊長を任されています。アンラーゲ・ノブル・ナビールと申します。よ、よろしくお願いします!」
と言って、深く頭を下げ、素早く着席。彼はここ最近、一小隊長から、衛兵隊全体を取りまとめる衛兵隊総隊長に任命されたことで、今までにないプレッシャーに苛まれていて、着席してもなお1人緊張しっぱなしの総隊長に、隣に座っていた総元帥が軽く肩を叩き励ましている。そんなやり取りの間も順調に右隣に座っていた、リトス教の大司教である“ノエーマ・ミシオン・アルソビスポ“が自己紹介して。その次のデューキス公爵家当主の“アイオラト・ノブル・デューキス“とドゥーカ公爵家の当主として“ブルージル・ノブル・ドゥーカ”の自己紹介も終わった。
全員の自己紹介が終わって、やっと今回の会議の議題に移った。宰相であるマルキースが立ち上がり司会を務める形で始まった会議、その会議の内容はここ数日で起きている学園内の侵入者の件と、今日起こった呪詛事件など、そして、差し迫っている“公開実技授業“や“勇者候補達“の“帰還儀式“での懸念事項などの、情報共有が行われている。
マルキース宰相「・・・・と、言う事で、本日見つかった“呪詛媒体“での奇襲などの懸念が持ち上がり、来週の雷の日に行われる“公開実技授業“の警備の見直しと、近隣国の軍部の動きなどを注視しなければならなくなりました。市街地の方でも、このような“呪詛媒体“の販売の摘発も同時に行っていただけたらと思います。それと、再来週には“帰還儀式“を執り行う予定になっているのですが、そちらの関係でも、他国からの入国者には厳しい制限をかけることになりそうです。他にご質問などのありましたらお答えいたします」
と、手元の書類を見ながらあらかたの説明を終えた後、視線をあげ円卓に座る会議参加者の顔を見回した、マルキース宰相。その時、市街地の治安と警備を担当する、衛兵隊の総隊長であるナビール総隊長が真剣な表情で手を上げた。
マルキース宰相「どうぞ、ナビール総隊長殿」
宰相に質問を許された総隊長が静かに席を立ち姿勢を正しは話し始めた。
ナビール総隊長「発言の許可有り難うございます。先程の説明の中で1つ気になった事があるのですが・・・学園内への“侵入者“と今日あった“呪詛事件“、その2つの事件は何か同じ目的があって行われたのか。はたまた別々の目的で行われた犯行なのか。この2つの事件の関係性を皆様はどうお考えなのでしょうか?」
と、全員に問い掛けた。その問い掛けに会議参加者達はそれぞれ考える様子を見せ黙り込んだ。
デューキス公爵「・・・そうですね、私としては関係性があると思ってはいます。一見、別々の何かしらの目的があって起こった事件のように見えますが、突き詰めて行けば、我が息子“アメトリン“の元に辿り着くのです。今回の“呪詛“の件はあの子の友人であるご令嬢が標的になったのですが、“呪詛を行った術者“の最終的な目的が、うちの子を思い通りにしたいと言った、正気とは思えない理由だったんですよ。それと、学園内の“侵入者“はほとんどがうちの子の周囲に張り付いている事が判明しているのです。まぁ、いつも一緒にいる“勇者候補達“を標的としている可能性も捨てきれないですが、盗難にあった“学章“の二つがあの子にいつも敵意を向けるクラスメイトの従者達のものだった、その事を鑑みてもこの事から2つの事件は何かしらの関係性があると確信しています」
ナビール総隊長「・・・そうでしたか・・・・」
デューキス公爵の話を聞き納得のいった表情で頷くナビール総隊長に、サフィアス国王はこう続けた。
サフィアス国王「そうだな、その意見には私も賛同する。だが、どうも、アメトリンにちょっかいを掛けてくる、相手の統率力は良く無いように思える。一昨日、学園内に“侵入者“を送り込んできたにも関わらず、今日は何故あのような派手な騒ぎを起こすことになったのか、それが不可解だ。“侵入者“を送り込んでいるなら、何か秘密裏にしたかった事があるはずだ、なのに今日はあれだけ人の目につく事をして何の得がある?それか呪詛事件を起こした者の独断専行だったのか?いや、その可能性は大いにありそうだが、それすらも止められない組織、または首謀者なのか?」
すぐに関係性はあるだろうと発言したデューキス公爵に同意の意思を示しつつも、自分の中で拭えない違和感を話すサフィアス国王。
エスクード総団長「確かに、そう言われると相手のやりたい事がチグハグな印象を見受けられますね・・・」
マルキース宰相「目的は同じでも手段が違う感じがしますね。それこそ、先日まであった夏期休暇中にも似たような事が起きたと聞きましたし、デューキス公爵のご子息を狙う勢力が手当たり次第に、何かを試しているようにも感じます・・・」
サフィアス国王が指摘した違和感を全員が同じように気づき、夏期休暇中にあった事件もその違和感の一つで、マルキース宰相の印象では何かを試している様ではないかと話す。
セヘル魔法師団長「・・・・もしかしたらそれは、神々の加護の効果範囲ではないでしょうか?」
少し考えて出した予想を真剣な表情で口に出したセヘル魔法師団長。そんな彼女の表情は自分も気になっていたのであろう事から、その瞳にほんの少しだけ好奇心の色が見える。
クシフォス総元帥「確かに、デューキス子息に授けられた神々の恩寵は、一見して完璧な防御力を持っているように見えているが、神々の完璧な恩寵を受けているからと言っても、その恩恵を使いこなす者が人である限りどうやっても何処かで油断し隙が出るものだ。相手はその隙を直接的にも間接的にも、細々とちょっかいを掛ける事で探ろうとしている可能性は高いな・・・これが戦場なら私でもそうする、相手の弱点を探るのは常套手段だろう・・・」
セヘル魔法師団長「神々の加護の発動条件や効果範囲、効果そのものの詳細な情報。デューキス子息を欲しがる者達にはこれほど貴重な情報はないでしょう」
「「「「「ザワッ」」」」」
ミシオン大司教「そ、それならば来週に執り行われる“公開実技授業“は中止なさった方がよろしいのでは?学園内の“侵入者“の不可解な行動の件もありますし・・・」
冷静で真剣なクシフォス総元帥やセヘル魔法師団長の発言に会議室はざわめき、ミシオン大司教はアメトリンの身を案じ、近日中に催される予定の“公開実技授業“の中止を提案する。
サフィアス国王「うーむ、そうしたい所ではあるんだが・・・・今回は外交筋からの正式な要請な上に、今まで国交もなかった国々の大半がその要請に賛同の意思を表明している。そして、何よりアメトリン本人がその要請を承諾したのだ、本人がすると決めた事を憶測の範囲を出ない話で無理やり取りやめにする事はできない・・・」
ミシオン大司教「!、アメトリン様が承諾なされたと⁉︎そ、それでよろしいのですか⁉︎デューキス公爵閣下⁉︎」
子供が決めた通りにして我が子を危険に晒しても良いのかと問いたいミシオン大司教。彼は神官として1人の大人として、まだ幼い子供を危険から遠ざけようとしていた。その聖職者の鏡とも言える行動だが、デューキス公爵の言葉一つでその願いも虚しく叶わなかった。
デューキス公爵「ミシオン大司教、貴方の言いたい事は理解できます。ですが、この決定は覆ることはないのです。あの子が前向きにしたいと思った事を私は止めるつもりはありませんから。今回の要請にはおそらく、あの子に敵意を向けるクラスメイトの“ヴェステの第一王女“が裏で糸を引いているでしょう。彼女が何が目的でうちの子にちょっかいを掛けるのか。あの子は良く考え、周りの意見にも耳を傾けた上で、この要請をしてきた国の思惑をも利用し、自身が気になった事を真正面から聞き出す気なのです。それに、あの子が自発的にする事を止めることは私達にはできないのですよ」
ミシオン大司教「・・・親である貴方でさえもですか?」
信じられないと言った表情でデューキス公爵を見る、ミシオン大司教にデューキス公爵はさらに言葉を続けた。
デューキス公爵「えぇ、私達、親でも・・・あの子にこの要請を聞く必要はないし、親としても危険性が伴うのでして欲しくないと、丁寧に理由を説明して止めました。ですが、それ以上に今やらなければならない合理的な理由を提示されてしまい、もうそれ以上は止める事はできなかったのです。
それに本来なら先日のパーティーでされた神々の警告を考えれば、今その提案をした2つの国や、それに便乗した国々には“神罰“が落ちていてもおかしくはないんです。ですが、そうはならなかった、何故ならあの子がこう言ったからです。
“「彼女が何か仕掛けてくるんじゃないか、と言う、父様達の懸念はちゃんと分かっています。ですがもう、あの人の視線にはうんざりです。この気を逃すと、彼女はまた別の手段を用いて周囲を巻き込みつつ僕を襲うでしょう。そうなった時に後で後悔はしたくないのです。それに僕と彼女は良い加減決着をつけた方が互いのためになると思います」“と」
親であるデューキス公爵が本来なら聞く必要も無い要請であること、何か裏があることも含め、何が起きるか分からない“実技演習“の参加を取りやめて欲しいと言った、だが彼の意思は少しも揺らがなかった。むしろ、危険は承知の上で今せねば後々に周囲を巻き込みかねない危うさを秘めていると、両親を説得するほどだった。その強い意志を神々が優先させた事で“神罰“は降る事はなかった。どこまでも神々はアメトリンの意志を優先させるのだ。それを自分達が止める事は無理だと。
ドゥーカ公爵「あのアトリーがそこまで言ったのか、そして神々はその意図を汲んで“神罰“は降さなかった・・・我々を含め、今回関わった国々はアトリーに感謝しなければな・・・それに、アトリーは今まで相当な不快感を抱えたまま学園生活を送っていたに違いない。逆に今までよく我慢したと思うぞ?」
オレサフィア前王妃「そうねぇ、アトリー君は多分、今まで相手の立場を鑑みて、向こうが手を出してこない限り相手にしない、と言った気遣いをして来ていたのでしょう。神々もその気遣いを優先させたのでしょう。でも、今回の事でそれも意味をなさなかったんだと悟った・・・・それにアトリー君は賢いから自分で決着をつけないと、この問題は解決しないと思ったんでしょうね、だから危険かもしれないと理解しつつも“実技演習“の参加も決めた。それだけの覚悟をした子の邪魔はしてはならないと思いません事?大司教様?」
ミシオン大司教「・・・っ、そうですね、・・・分かりました私はもうお止めしません。ですが、当日の“公開実技授業“の見学を許可いただけませんか?もし何かあった時にアメトリン様のお力になりたいのです・・・」
アメトリンの心情に理解を示す2人、オレサフィア前王妃の眼光鋭い問い掛けに一瞬怯んだが、それでも自分のできることをやりたいと言い。強い意志を
持って当日の見学の許可を願ったミシオン大司教。
サフィアス国王「うむ、“公開実技授業“の見学は許可しよう。大司教がいれば幾分私も安心できる。だが、それと引き合えに神殿の守りがどうしても薄くなる懸念がある、今も衛兵隊の巡回警備の強化は行なっているが、大司教が神殿にいるといないで警備の強度が全然違うからな、大司教の代わりと言ってはなんだが、こちらから軍を派遣し警備に当たらせようと思うが如何か?」
ミシオン大司教「それは願ってもない申し出です。“儀式“の準備の為、神殿から外に出る神官の制限をしておりますゆえ、どうしても手の届かない場所がございます。それこそ外回りの警備に人を割り裂く事ができずにいましたので助かります」
“公開実技授業“の見学の許可をもらう代わりに、神殿での警備の配備の強化を約束させ、双方の納得いく形で話がまとまった。
サフィアス国王「うむ、そうか、そう言ってくれるとありがたい、こちらからは1個小隊を派遣しよう。人員の選抜は総元帥其方に任せる」
クシフォス総元帥「はっ、“王命“受けたまりました。任務に忠実な人員を選抜、派遣させていただきます」
立ち上がり、拳を作った手を胸に置き、恭しく頭を下げて“王命“を受領したクシフォス総元帥。ミシオン大司教もサフィアス国王に軽く頭を下げた。
マルキース宰相「話は纏まりましたね。それは良いのですが、まだ今回の“公開実技授業“の件で警戒しなければならない事があります。・・・・それは学園内に侵入した者達の件です。“侵入者“達がいるのが発覚したのが昨日だったのですが。今日も学園にその“侵入者“達が入って来ていた事が確認されています。それも“呪詛事件“があっている最中にその場にいた事も記録に残ってます。“侵入者“達は事件の後も他の学生達と同じように学園内で過ごし。全ての学科の授業が終わると生徒達と同じように学園内から出て行ってます。この者達の目的がさっぱり分からない為、全体的な警戒体制が常に取られてはいますが。目的が話からない事には対応策も取れずに困っているのです」
サフィアス国王「確かに、それも懸念事項の一つではあるな、しかし“侵入者“達は普通の学園生活を送っているのだろう?本当に何がやりたいのか分からんな、だが各国の外交官が勢揃いする“公開実技授業“が差し迫ってる、なんとしても“侵入者“達を捉えねばならん。皆、何か良い案はないか?忌憚ない意見を聞かせてくれ」
エスクード総団長「よろいしいでしょうか?」
マルキース宰相の新たな議題にサフィアス国王は全員に良案がないか問いかけた。そこエスクード総団長が真剣な表情で手をあげた。
マルキース宰相「どうぞ、エスクード総団長殿」
エスクード総団長「では、失礼します。私は明日からの学園での“侵入者“対策として、学園入り口で“学章“の再確認を実施してはどうかと思います」
「「「ふむ・・・」」」「「「それは・・・」」」
エスクード総団長の提案に全員が反応したが、その反応は2つに分かれていた。
マルキース宰相「エスクード総団長殿、その案は以前にも持ち上がったのですが、その“学章“を確認する作業だけで、その日の学園の授業の大半を使うことになるとのことで、却下となりました。それは貴方もお分かりだったはずですが・・・」
エスクード総団長「はい、その案が却下になったのは私も知っています。ですが今回の“公開実技授業“で騒ぎを起こされるより、たった1日の学園の授業が潰れる方がいいのではないかと思うのです」
「「「「確かに・・・」」」」ざわざわっ「「でも・・・」」
各国の外交官が集まる場所で騒ぎを起こされ、国の威厳を落とすより、授業がたった1日分潰れるだけで、懸念事項の塊と言っていい“侵入者“の炙り出しができる方が良いのではないか、と言う意見に半数以上が賛成に傾いているが、数人がまた違った懸念を心配している。
ナビール総隊長「よろしいでしょうか?その案ですと、学園入り口で“侵入者“が炙り出しに気づき、その場で逃走される可能性の方が高いと思われます。それに、その日に“侵入者“が来るとは限らないと思うのですが・・・・」
そう、ナビール総隊長が言うように、この方法ではただ犯人を取り逃がすだけではないか?と言った懸念がある。
エスクード総団長「うむ、それは私も分かっている、この案の欠点にはそこにあるのだが、この方法の1番の有要点は“侵入者“を学園内に入らせないと言った点だ。それにわざわざ本当に“学章“の確認を取らずとも良いのだ、学園の入り口で“学章“を確認しているそぶりを見せるだけで“侵入者“は危機感を感じ学園内に入ろうとは思わんだろう。そうなると、手に入れた“学章“を手放す可能性が高くなり、別の方法を取るしかなくなる、デューキス子息や“勇者候補達“に執着をあれだけの執着を見せる相手なのだ、必ず別の手口で再度学園に侵入してくるに違いない」
ナビール総隊長「そうか、“学章“を使い物にならなくさせる事で、別の手段をこうじてくる“侵入者“達の炙り出しをしやすくするんですね?他の手段ならば大概予想もつきますし、“学章“ほど厄介な事にはなりませんでしょう・・・」
ナビール総隊長の意見も踏まえた上でわざと、相手に“学章“が使えないものと認識させる、それこそが本来の目的だとエスクード総団長はこの案を提案したのだ、事実、この“学章“を使って入ってこられる事が1番厄介であった、それ以外の手段となると大概は手口が決まってくる。そしてその他の手口は国の諜報機関“影騎士“が常に監視しているのだ。要は自分達のやりやすい場に“侵入者“達を誘いこむ事ができる、とエスクード総団長は言いたいのだった。
その話を聞いたサフィアス国王はすぐにその案を実行すると決め、学園内への“侵入“の手段になり得る場所や部署への衛兵隊と影騎士の派遣を指示した。
その後も細々した話し合いが行われ、その日の会議が終わったのは太陽が登り始める少し前だったとか、参加者は眠たげな目を擦りながら帰路についた。
翌日、アメトリンが自分の父親の寝ぼけた顔を見て意外そうな表情をして、“(父様の寝ぼけ顔、可愛い♪)“などと思っていたのはまた別の話・・・・
*明日はもっと長いです!
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