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第3章 少年期 学園編

110話 呪詛とは・・・

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父様「・・・・それで、そのご令嬢はこの呪詛の媒体をアトリーに投げてきたんだね?」

「あ、そのペンダントを投げて来たのは男の子の方です」

父様「男の子の方が?・・・ふむ、では、この媒体は2人の念が入っていたかもしれないね・・・」

 はい、どうも、僕です、今、何しているかと申しますと・・・、父様に今日のお昼前に起きた“ご令嬢押し掛け事件“の詳細を説明、尋問されている次第です、…はい。

 母様達との楽しいお出かけを終えて、コミス伯爵邸に帰ると、父様達は予定通り邸内にいたスパイの使用人達を一掃して、スッキリした様子で僕達の帰りを待っていた。
 僕は帰り着いてすぐに父様達にスパイの使用人達の処遇がどうなったのか聞いた、すると父様はスパイの大半は守秘義務違反の罪で他家に漏らした情報の内容で処罰の重さが決まり、最低でも解雇の上、紹介状なしでの領外追放、最も重い罰だと、コミス家で得た情報を魔法契約で喋れなくした上での犯罪奴隷落ちの終身刑、その中に窃盗や横領、機密漏洩違反、と色々あったようで、最終的には処刑されるかも知れない人が少なくとも1人はいるようだ。
(うむ、中々やらかしている人がいたんだね・・・( ・∇・))

 そして、そんな人達を紹介して来た貴族達に、父様直々の苦情のお手紙が出されたらしい。(まぁ、自分の滞在中のプライベートな内容を暴露されれば、誰でも怒るよね・・・)
 一通り聞きたいことは聞き終えて、まったりお茶を飲んでいると、話題が今日の僕達の話になり、母様が午前中の事件の子供2人はどうしているかと聞いたことで呪詛の件を素直に話したら、父様から、いや、父様達(父親勢&兄弟)から詰め寄られ、母様達(母親勢&ソルやイネオス達)からお小言をもらった次第です…、はい、反省してます・・・(。-∀-)

父様「アトリー、アトリーが強いことは皆んな知ってはいるが、それでも君はまだ10歳の子供だ、1人で何とかしようとしちゃダメだよ、特に今回のような自分が標的の呪詛を親に黙ってるなんて、良くないことだ」

母様「そうよ、アトリー、後になってこんな事を聞かされるなんて、とても驚いたし、心臓に悪いわ、お願いだから、何かあったらすぐに言ってちょうだい」

 父様に真剣に怒られ、母様には涙目で心配されてしまった。

「はい、父様、母様、皆様、ご心配をかけてしまい申し訳ございません・・・」しゅん(◞‸◟)

父様「アトリー、いつもならすぐに言ってくれるのに、今回はどうして今まで黙っていたんだい?」

 父様が凹んだ僕を見て困った様子で聞いてくる。

「・・・すぐに言ったら、母様達とのお出かけが中止になるかもって思って、それにあの時お屋敷に戻ったら父様達のお仕事のお邪魔になると思ったから・・・犯人も捕まえてあるし、物的証拠も確保したから、話すのはお出かけが終わって帰ってからでもいいかなって・・・」

「「「「「うっ」」」」」「「「「「くっ」」」」」(((((上目遣いが可愛い!)))))

 ちょっと拗ねた言い方で上目遣いになった僕、周りが手を口に持っていき何かを堪えているようだが、父様は困った顔のまま僕の頭に手を乗せた。

父様「それでもダメなものはダメだよ、お出かけなら明日でもできただろう?それよりアトリーの安全が第一だ」

(むぅ、父様には効かなかったか・・・ちっ(´ε` ))天華『コラッ、ちゃんと反省しなさい!』

「・・・はい、分かりました、次からは気をつけます・・・・、あ、そうだ、父様、そのペンダントどうなさるんですか?」

 天華に怒られ、真面目に反省した僕は早々に気持ちを改め、目に止まった呪詛の媒体になったペンダントの正体が気になり、今後の扱いがどうなるか聞いてみた。

父様「これかい?、これは呪詛に詳しい専門家に見せて、今回の呪詛の効果がやたら大きかった原因を調べて貰わないとね」

「・・・専門家・・・、父様、僕がそのペンダント“鑑定“してみてもいいですか?」

父様「アトリーが?ふむ、“鑑定“でどこまで分かるか分からないけど、やってみる価値はありそうだね」

(あの時は、“精霊視“だけで見ていたからよく分からなかったけど、“情報開示“で見てみれば詳しい情報が出てくるはず・・・)

 当様の許可を得て、呪詛の媒体になったペンダントを“見て“みた。

(ほうほう、これはまた・・・)

「父様、これはただの呪詛の媒体ではありません」

父様「?どう言うことかな?」

「そうですね、まず、この中央に嵌まっている石、これは元々魔石なのですが、今は魔力を失った、ただの石になってます、これを呪詛の媒体にするとともに呪詛に使う力、魔力の供給源にしているようです、そして、この元魔石ですが、これの裏には呪詛の儀式に使う魔法陣のようなものが刻まれていて、相手にどんな呪詛をかけたいのか細かい効果も書いてあるみたいです、このペンダントそのものが呪詛の儀式の形式を凝縮したもので、後は多少の供物と呪詛を行う人の強い念と魔力を注げば呪詛が発動する仕組みのようで、あ、それとそこには呪詛を成功させるために邪神の力も借りているようですね、この金属の土台が力を借りたい邪神を表しているようです、これを見る限り“蛇“ですかね?」

「「「「「なっ!」」」」」

 大人達が驚愕の表情を浮かべる中、僕は別の事を考えていた。

(ふーん、邪神で、蛇ねぇー、ありきたりだね、でもこれって実在する邪神みたいな力ある生物や、土地神じゃないと力は借りれないよね?て、ことは、この世界には蛇の邪神?が存在するのかな?)

*呪詛の儀式とは・・・・
 呪詛の儀式とは本来、人を呪うだけではなく、人の役に立つようなものもあった、それは全般的に“呪い《まじない》“と呼ばれるものであり、人を呪う呪詛とは区別された。
 だが、“呪詛“も“まじない“も大きな効果を得たいときは、土地に力があるとされる場所を探し場を整え、念を溜め込むことのできる媒体を用意する、呪文もしくは祝詞などの手順をふみ何かしらの供物を捧げる事が必要だった、この世界では魔法と言う技術があるので、わざわざめんどくさい準備や供物を用意してまで、何かしらの効果を得ようとする者は少なく、廃れていくものと思われたが、一部の権力者や邪教となどは、“相手に遠隔で危害を加える“ことができる“呪詛“に目をつけた、これは魔法でできない事もないが、魔法だと膨大な魔力と魔法の扱いに長けた者ないとできないため、そのどちらも自信がない者達がこぞって使用したのだった。
 そして、“相手に遠隔で危害を加える事“だけがメリットではなく、邪神や土地神などある一定の信者から崇められ信仰を得ている者の力を借りると、呪詛やまじないの効果が高くなり、媒体に込めた呪詛の発動に必要な自分の魔力が、手を借りた邪神や土地神の魔力と合わさり、呪った相手に誰が呪詛を行ったかを特定しづらくする事ができた、その事が最大のメリットだった。

 しかし、今回、起こった事件で呪詛を行う上での最大のデメリットであった、力のある土地や儀式の手順をふむ必要がなくなって、手軽に人を殺せるような呪詛が行われた、その事が大人達を驚愕させたのだった。

「ふむ、それにしても母様達が最初、嫌がらせ程度のものだと思っていた、うるさい音を出させる呪詛ぐらいだったら、このペンダントぐらいの大きさの媒体ですむと言うのが常識だったのが、今回の事件でペンダント1つで人を呪い殺せるとなると、呪詛の常識を見直さなくてはならなくなった・・・。
 しかし、呪詛を行う上で必須の力のある土地、すなわち魔素が豊富な土地、それを魔石で代用し、呪文や祝詞、どのような効果の呪詛にすると言う設定の部分を魔石に魔法陣として直接刻むことで、それを省いた、残りは多少の供物を捧げながら自分の魔力と念を注ぎ込むだけか・・・、うん、実に単純かつ合理的で中々興味深い・・・、ん?でもなんで今回、呪詛で1番大事な念を溜め込むための媒体を、彼は僕に投げつけて来たんだろうか?・・・・・・・
 媒体は言わば念や魔力と言った力を溜め込むための器、器が大きいほど自分の力を溜め込んでおける、そのおかげで呪う相手がどこにいても溜め込んだ念がその相手を見つけ出す、だから、呪詛の儀式に使う媒体は大きく頑丈な物が良いとされる、金属製の銅像や大きな盃、深さのある器など・・・、だがその力を溜め込む器が小さければ呪う相手を見つけ出せない、でも、その相手が近くにいれば呪詛は簡単に発動する?いやできる?・・・だから僕にわざとあのペンダントを投げつけた?・・・・
 そうなると、呪いたい相手が近くにさえいればすぐに呪殺しようと思えば簡単にできると言うこと?それなら前もって媒体に力を溜め込んでおけば、いつでも突発的な犯行が可能になる・・・後は媒体に込めた念の思いの強さや、捧げた供物の質によって呪詛の効果の強弱が決まる・・・、これは思ったより厄介なものを作った人物がいるみたいだな・・・」

父様「アトリー・・・それは・・・」

「!、あ、口に出てましたか?・・・・・ん?皆さん、どうしました?」

 父様がとても驚いた顔で話しかけてきたので、これまでの情報から鑑みて自分の中で整理して考察していた事が、無意識に口から漏れているのに気づいた、だが他の人達は口をポカンッと開けていたので、不思議に思い首を傾げた。

母様「…アトリー、その呪詛の知識はどこから?・・・」

「あ、それは領地の屋敷の書庫で見つけた本を見て知って、後は天華達に色々と細かい原理などを聞いて覚えました♪凄く興味深かったのでつい深掘りしてしまいました、でも、呪詛やまじないの類は僕には効かないし、使うにしても自分の魔法の方が効率がいいので、使おうとは思いませんでしたけど、今回の呪詛は僕を標的にしていたのは確かでしたが、雑念が多かったようなので威力はそう対したことはなかったし、ほぼ失敗したようなものでした、魔石に刻まれた呪文を見る限り、僕を殺すつもりはなかったみたいですし、精神を狂わす程の執着念ではなかったのが幸いしました」

母様「・・・それは、アトリーを殺すつもりはなかったけれども、精神を狂わす意図はあったと?」

「・・・あ、・・・いや、母様、今の精神を狂わすとは大袈裟に言いました、あの魔石に書いてあった呪詛の効果は僕の精神を操ると言う目的のものでして・・・」

(やっべ!、至らんことまで言った⁉︎Σ('◉⌓◉’))

 調子に乗ってベラベラと喋りすぎた僕、母様から物凄い怒りのオーラが発せられているのが目にみえる・・・・

母様「まぁ、そうなの、アトリーが無事で母様はホッとしました…、アトリー、今日は色々あって疲れたでしょう?」

「へ、あ、いや、そこまで疲れては無いですが・・・」

 唐突に話を変えた母様に戸惑う。

母様「そう?お夕食の時間までは時間があるから少しお昼寝したらどうかしら?「お昼寝するほどまでは・・・」聖獣様お願いできますでしょうか?」

 疲れてないと返したのに急にお昼寝を勧められ、断ろうと思っても全く話を聞いてもらえず、最終的にはジュール達に向かって何かをお願いされてしまった。

夜月『ふむ、しょうがない、任されよう』「にゃうっ」

「え?ちょ、夜月⁉︎」

天華『少し顔色も悪いですしね』「きゅー」

ジュール『私も一緒にお昼寝するからね♪』「きゃん!」

「天華にジュールまで⁉︎と、父様!僕まだあのご令嬢に聞きたいことがあるんです!母様達を止めてください!」

(ご令嬢がどこでこのペンダントを手に入れたか気になるし、供物は何を使っていたかも気になる!それにジュール達が言ってた“嫌な匂い“の元も気になる!だから、今は寝てる暇なんてないんだ!)

 何故か母様のお願いを夜月達が承諾してしまった、でも、まだ気になる事があった僕は最後の望みと思い、このままお昼寝を理由に退場させられないように父様に助けを求めた。

父様「アトリー、私もお昼寝をした方がいいと思うよ、他の子達もね・・・」

「えっ?『スリープ・クラウド』あ、・・・・・・」(他の子達も?・・・・眠気が・・・・(´-`).。oO)フラッ・・・ポスッ

 夜月が放った暗魔法の“スリープ・クラウド“のうっすら黒い雲に囲まれて、急な眠気を感じた僕は隣にいた母様の方に体が傾きそのまま身体を預けた・・・・・

母様「ゆっくり、おやすみアトリー、後は母様達に任せてちょうだいね・・・・」

(かあさま?・・・Zzzz)

 眠気で意識が薄れていくなか母様の言葉と共に自分の頭を優しく撫でる感触がした・・・・



>=====<>=====<>=====<

   第三者 視点 (仁達サイド)

 夜月がアトリーを強制的に眠らせると同時に、ソルドアやイネオス、ベイサン、ヘンティルの4人も同じように眠らせた、眠った子供達をそれぞれの保護者達が専属使用人に指示を出し、子供達を滞在中の部屋に連れて行かせた、その様子を複雑そうな表情で見ていた他の兄弟達と仁達。

仁「・・・なんか大変なことになってるね・・・」

夢香「だね・・・、てか、アメトリン君に魔法効くんだ?」

彩「多分、聖獣の夜月様が使ったから効いたんじゃないかしら?アメトリン君に絶対悪意を持たないから…、それよりユメカ、あのペンダント、どこかで見た事ない?」

 彩は何か思い出そうと頭を捻りながら、夢香に問いかける。

夢香「え?あの蛇がデフォルメされた趣味の悪いペンダントの事?・・・うーん・・・あっ!あれってもしかして!ゲーム内に出てきた願いを叶える“おまじないアイテム“⁉︎」

彩「そうそれ!それだわ!はぁ~、思い出せなくてモヤモヤしてたからスッキリした♪・・・ん?しかし、こんな所であのゲーム内に出てきたアイテムが出てくるなんてね、これって偶然じゃないよね絶対」

 思い出したい事が分かってスッキリしたと笑った後に“はたっ“と止まり、少し考えた彩は深刻そうな表情を作った。

夢香「そうだね・・・・、ねぇ、あれさ、真ん中の石ってピンクだったよね?」

仁「?うん、そうだね?それがどうしたの?」

夢香「いや、あのペンダントがゲーム内のやつと一緒なら・・・」

彩「あっ!そうか!なら他にも色があったはず!あのピンクのペンダントは恋愛成就のおまじないのペンダントだったもの!」

仁「えっ⁉︎じゃあ他にも色によって効果が違うって事⁉︎」

夢香「うん、色のバリエーションは5色だったかな?赤、青、黄、緑、そこにピンクを含めた5色、赤色は身体能力の向上、青色は知能や魔力の向上、黄色は勝負運や金運の向上、緑色は治癒能力の向上で、最後にピンク色は恋愛運の向上だったはず、この“おまじないのペンダント“を活用してゲームを攻略できるの」

 ペンダントのバリエーションがある事を思い出した彩。

仁「へぇ、色々あるんだ・・・」

彩「でもこのペンダント、確かゲーム内課金アイテムでなかなか高かったわよね?」

仁「か、課金アイテム・・・」

夢香「うん、1つ1000円ぐらいだったはず、私は課金しないでゲームしてたけど、あのペンダントあんなに効果高かった?それに効果自体も恋愛運の向上っていうより、アメトリン君の説明じゃ相手の意思を無視した洗脳って感じだったよね」

彩「そうね、やっぱりゲーム内と現実じゃ色々と違うみたい、でも、あのペンダントの種類が他にあるかも知れない事をデューキス公爵様に教えた方がいいわよね?」

仁「うん、それは言った方がいいと思う、公爵様にはゲームの事を前に話してあるから信じてくれると思うし」

夢香「私も賛成、それと、あのペンダントを売ってるのが“タンユ商会“って会社の“ラアナの宝飾店“ってお店だって教えとかなきゃね」

彩「まぁ、同じ名前の商会があるかはわからないけど、情報は多い方がいいでしょう」

 ピンク色以外のペンダントの呪詛やおまじないの効果も、取り扱っている店の情報も自分達が知っている物と全く同じとは限らないと、推察しつつその事を考慮してデューキス公爵に伝える事にした彩達。

 その時同じテーブルで、仁達の会話を聞いていたアトリーやイネオス達の兄弟は、会話の中で出てきた複数の単語の意味は分からなかったが、仁達のいた世界の何かしらと関係があったのはなんとなく感じたのだった。


 そして、仁達は大人達が話し合いの場所を変えるため部屋を出る前に、デューキス公爵を呼び止め先程の話を聞かせた、それを聞いたデューキス公爵は少し考えた後、仁達に情報提供のお礼を言い、今回の事は自分達に任せて欲しいと言って部屋を後にした。

仁「後はデューキス公爵達大人に任せるしかないね、僕達にはこれ以上できる事はないし・・・」

夢香「そうだね、私達の情報が役に立てばいいけど・・・」

彩「あの様子を見る限り何かしらの心当たりがあったんでしょう、だから少しは役に立ったと思いたいわね、・・・それにしてもいつもながらアメトリン君のあの知識と考察力には恐れ入るわね、本当に10歳なのか疑いたくなるわ」

 そう言いながら新しく出されたお茶を飲んだ。

仁(確かに、10歳の従兄弟達より凄くしっかりしている、あの姿を見ずに会話だけ聞いていれば、うちの両親達の会話を聞いているような感覚に陥るな・・・、それだけ精神年齢が高いってことかな?まぁ、アメトリン君の今までの生活環境を見れば、あの知識量の凄さはいなずける、彼は勉強が嫌いではなさそうだし、興味のある物にはとことん追求するタイプだからね、ふふっ、なんか、妹の“まどか“を見ているようで少し親近感が湧く・・・、今、家族は僕のこと心配してくれているんだろうか・・・・・・早く事件が解決できるといいな・・・)

 仁は思考の中でほんの少しの親近感と郷愁の念を抱き、今回の事件の早期決着を願った。








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