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第3章 少年期 学園編

89話 父としての想い 父:アイオラト 視点

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  父:アイオラト視点

アトリー「イネオス、ヘティ、ベイサン、僕は気にしてないよ、皆んなのご兄弟が僕を怖がるのは“仕方がない“、それは正常な人の思考だ、僕みたいな異常な魔力量を持った子供がいつ魔力暴走を起こすかなんて、考えただけでも恐ろしいのは普通だ。まぁ、僕にはジュール達との繋がりがあるから、そんな事そうそう起こるものではないけど、この事を言っても目に見えるものではないから、納得はできないだろうし、不安は拭えない、目に見えないもので他人を安心させれるほど、僕はご兄弟と交流を持ってはないからね。それに、僕は僕の事を全ての人に理解して貰いたいなんて、烏滸がましい事は考えていない、だから、これからは僕がご兄弟に近寄らないようにすれば済む話だから、だからね、気にしてないよ」ニコッ

イネオス君達「「「アトリー様・・・」」」

 ダンジョンの探索を終え、アトリーの魔法の威力も見届け、地上へ戻るための準備をしている最中に、ヴィカウタ子爵家の末子“イネオス“君を筆頭に家同士が仲がいい他2人の同級生を連れ、アトリーに話しかけていた。先程あった海中神殿での轟音と揺れについての説明で、轟音と揺れの原因がアトリーの放った魔法の影響だと知った者達、その中で少なくない人数がアトリーの力に畏怖し、自分とは違うレベルの存在だと認識した。それにイネオス君達の兄弟、兄や姉、数名が含まれ、その恐怖に囚われてしまったようだ。

 元々アトリーと自分達は同じ貴族としても、別の世界で生きていると思っていたような子達で、たまに会った時でも分をわきまえた行動をしていた、そして羨望の眼差しでアトリーを見ていた、今回の事で明確に自分達とアトリーは別の生き物なんだと思い知らされたのだ。
 要は前々から自分達にない膨大な魔力量を持ったアトリーに恐怖し、憧れ、また嫉妬もしたのだろう、それにアトリーと臆する事なく付き合って行ってる自分の妹や弟達にも、同じような劣等感を持っていたようだが、今回はそれより恐怖が勝った、その事で抑えていた思いが溢れたのか、イネオス君達の前で口走ってはいけない言葉を口にしてしまったのだろう、それを聞いたイネオス君達がアトリーに謝辞した。
 アトリーは聡い子だ、前々からその事に気がついて、随分前からイネオス君達の兄弟とは積極的に交流を持つ事なかった、気遣い刺激しないように・・・

 だが、今の発言が聞こえていた周りの者達をも驚かせ、畏怖の念を抱かせている。

(それを、あんなふうに、とらえていたなんて・・・、“仕方がない“なんて、何故すでに悟ったような、諦めの気持ちで世界を見ているのだろうか?あの子はまだ10歳、全てを諦めながら生きるには早すぎる、何故、そんな寂しい考え方をしているんだ…、・・・やはり私が間違っていたのか?・・・アトリー、今、君の目にはこの世界がどう見えているんだい?)

 我が子の全てを諦め、悟ったような対人関係に関しての考えに衝撃を受けていると。

ニモス義兄上「ラト、今のアトリーの言葉は本当に10歳の子供の物とは思えないんだが、老齢した大人のような思考だ」

「そう、…ですね、あの子の中の何かがあの子にあの様な寂しい考えをさせるのか、それとも私達が小さい頃からあの子を閉じ込めていたのが原因か・・・、いや、答えは決まってますね、あの子に小さい頃からもっと外の世界を見せるべきだった、アトリーを守るためと言ってあの子を閉じ込めたせいで、あの子は小さい頃から諦める事を知ってしまった、これは私の、あの時の判断が間違っていた、私がアトリーの事をもっと考えてあげなかった私の失態です・・・」ギリィッ

シリー「ラト・・・」

ニモス義兄上「ラト、それは・・・」

 奥歯を食いしばり情けない自分への怒りに耐えていると・・・

アトリー「それにね、言っちゃ悪いと思うけど僕は面倒くさがり屋だから、僕の事で怖がる人の為に、僕がいちいち何かしてまで仲良くなりたいなんて思わないんだ、僕はね、色んな意味で特殊な僕の事をよく理解してくれて、それでも友達でいてくれる人が数人いれば良いと思ってる。
 だってね、生きていれば色んな人にたくさん会うでしょう?世の中には色んな考えを持った多種多様の人達がいる、その人達全員に僕の事好きになって貰えるなんて思わないよ、僕の事を好きな人もいれば嫌いな人もいる、僕が何かした訳でも無いのに、僕の事を怖いって思う人はそこまでの人だったんだって思うんだ、いつか分かって貰えたらそれに越した事はないけどね…、それに僕には家族はもちろん、ソルやイネオス達みたいに僕自身をちゃんと見てくれる人がいるもの、だから全然寂しくない。
 それとお兄さん達のことはイネオス達自身が何か悪いわけじゃないでしょ?それを自分がした事みたいに謝るのおかしいよ…、ね?だから謝らなくていいよ、僕はイネオス達の事、大好きだし♫ふふっ」

イネオス君達「「「あ、アトリー様・・・・」」」ポッ・・・

 アトリーにいい笑顔で大好きと言われて顔を赤らめるイネオス君達、周りもその笑顔に見惚れているが・・・

(アトリーの言いたい事はわかる、正論に近いだろう、でも、こんな現実的な考え方はどこから来たんだろうか?)


 ーーー・・・それに、僕は好きなように生きるって神様達と約束したからね・・・ーーー


「「「「「っ!!」」」」」

 次に発したアトリーの言葉と表情に息を呑んだ、なんとも晴れやかで清々しい表情で神聖な気を纏い、優しく微笑むアトリー、そして“神様達と約束した“という言葉。

(“神様達と約束した“?・・・アトリーが神々と直接会話をしたというような言い回しだった・・・あの子は神々と直接語らうことができるとでもいうのか⁉︎)

 あり得ない、とは言い切れないほどアトリーは神々から目をかけて貰っている、正直、私達も畏れ多くも聖獣様方を通じ神の言葉を聞くことはあるが、それはあくまで伝聞であり、直接お声をかけて貰えるような事は、”神託“を受けられるごく僅かな神職、それこそ聖者や聖女と言われる神に認められた人達だけだ、それも神々の言葉を聞く事はできても、それは一方的に神々から賜るもので会話はできない、祈る事で自分の願いや考えを伝える事はできても、それに対しての答えが絶対に返ってくるとは限らないし、その場で会話、意思疎通が成り立つものではない。

「ア、アトリー・・・」

(アトリー、・・・君は直接神々と会話できるのか?)

 そう聞きたかったが、言葉に出して聞く事はできなかった、そう聞いてしまうと、アトリーがどこかにいなくなってしまいそうな気がした、今、あの子が纏う神聖な気は神がアトリーを連れて行ってしまいそうな程だった。

アトリー「??、父様?呼びましたか?」

 いつの間にかイネオス君達とは分かれて、私の近くにトコトコと近寄り首を傾げるアトリーは、もう先程までの神聖な気は纏っておらず、いつもの可愛い我が息子の姿だった。

「・・・いや、何でもないよ・・・」

 勤めて冷静にいつもと同じようにアトリーに笑いかけた。

アトリー「あ!そうだ!父様!父様、さっきの事で父様が気に止む事はありませんよ!僕の考えが父様が僕を小さい時外に出さなかったからとかが理由で、そう言う考えに行き着いた訳では無いですからね!僕は僕の考えを言ったまでです!
 僕の思想の根幹を誰かのせいにするなんて事、僕は絶対にしません!自分の発言の責任は自分でちゃんと取ります!それにそもそも、僕がああ思ったのは学園で様々な人に会って、変な敵対心を持った人達に出会ったのが起因です!
 世の中にはどうあっても自分の考えを曲げない人がいるって、実感したんです!話の通じない人に割り裂く時間が勿体無いから、無視するのが1番いいと思ったからそう言ったまでですからね!僕は合理的な判断でそう判断したんですから、父様のせいじゃないですよ!!」ぷぅ

 そう捲し立てるように言い切ったアトリーは、頬を膨らませちょっと怒った顔をしていた。

「・・・・・はははっ、…そうか、そうか・・・・分かったよ、有り難うアトリー、私の優しい息子」

 最初、私は呆気にとらわれていたが、アトリーの言葉が身に染みてくると同時に胸が暖かくなるのを感じた。

(先程の会話が聞こえていたのか、それでわざわざ私に自分の考えを話してくれたのか?それとも、私を気遣ってそう嘘をついてくれたのか?いや、アトリーはこんな事で嘘をついたりしないな・・・本当にそう思ったからわざわざ訂正してくれたんだろう、私を気遣って、本当に私のせいじゃないと・・・)ギュッ

 たまらず、アトリーを強く抱きしめた。

アトリー「…父様、大好きです♪」ギュッ

 今、自分は情けない顔をしているだろう、今までの自分のした判断が、この子に何かしらの影響を与えていないというのは絶対にあり得ないと分かっていても、私のせいではないと本人に言われただけでこんなにも心が軽くなる、嬉しさと同時に情けなさも込み上げてくる、だが、この子の気遣いがとても嬉しい、人目も憚らずアトリーを強く抱きしめる私を、シリーが私の表情を隠すようにアトリーと一緒に抱きしめた。

シリー「私も大好きよ、ラト、アトリーも家族も皆んな大好き、だから1人で抱え込まないで・・・」

アトリー「僕も母様も兄様、姉様、お祖父様、お祖母様、叔父様、叔母様も皆んな、みーんな大好きですっ!!」

「ふふっ、私も皆んな大好きだよ」

カミィ「ずるいですわ!私も全員大好きです!」

 先程までシリーと一緒に子供達の様子を伺っていたカミィが、自分も負けじと家族愛を伝える。

カイ「ふふっ私もです、それと父上は1人で責任を感じすぎですよ」

 カミィに続きカイも参戦する、ついでに助言もしてくる。

ライ「そうだよ、父上、アトリーが考えもなしにあんな発言するわけないって、それにアトリーの事で何かしら責任があるのは父上だけじゃない、俺達兄弟だってアトリーに何かしらの影響は与えているはずなんだからさ・・・」

 いつもは小難しいことは後回しにするライが私を思い気遣ってくれる。

ヘリー「ライに同意するのは癪だけど、その通りですわ、お父様、アトリーと歳が近いぶん長く一緒にいたのは私達でしょうし、何ならアトリーの性格は私に似てると思いますよ?」

 ヘリーはアトリーの性格は自分に似たのだと主張することで、今回のアトリーの発言の原因は自分にもあると、ライとヘリーは2人して私の心の負担を減らそうと気遣ってくれる。

ライ「そうだな、他者に厳しい所とか毒舌なところはヘリーにそっくりだ」

ヘリー「何ですって⁉︎」

カミィ「あらあら、そう言ったら、活発的なところはライに似てるわね?」

ライ「えっ⁉︎」

カイ「姉上、そしたら責任感が強いところは父上や姉上に似てますよ?」

カミィ「まぁ、そうかしら?」

シリー「ふふっ、利発的で家族思いのところはカイにそっくりですよ?」

カイ「えっ、そ、そうでしょうか?」

 いつの間にか、誰が1番アトリーと似ているかと言う話になって騒ぎ出した、それが私の心の中の罪悪感を少しずつ薄れさせてくれた。

(ふふっ、確かにアトリーはどこかしら皆んなに似ているね、でもこれだけは1番だと思うね・・・)

「ふふっ、そう言われるとは思わなかったよ、ふふっ、でも1番似ているのはシリー、君とアトリーの家族に向ける優しさ、その優しさが笑顔に滲み出ているところが1番似ているよ」

家族全員「「「「「それは確かに!」」」」」

シリー&アトリー「「?あらら??」」コテンッ「「ふふっ」」

家族全員「「「「「ほら、そっくり!」」」」」あははははっ!

 家族全員にそう言われた2人は顔を見合わせ、同じように頭を傾げ優しげに微笑み合う、そして皆んなで笑い合っていると、先程まで胸にあった微かな罪悪感が見事に無くなっていった。

(ふふっ、私は色々と背負いすぎたのか・・・、皆んな何かしらの影響は与える・・・そうだね、そんな当たり前の事が気づけない程に私は焦り、周りが見えていなかったのか・・・)

「ふふっ、うちの子達は本当に賢く良い子だな」

 そう呟くと、マルキシオス家の面々からも次々同意の言葉が出てきて、うちの子達全員が照れていた、こんな心温まる光景を周囲の者達は微笑ましそうに見守っていた、中には複雑な表情をしてこちらを見ている者もいたが、アトリーの言う通り気にしないのが良いのかもしれない、
 でも、私は、この子達に害をなすなら、いつでも容赦はしない。

(この子達を守るのは私の父親として当たり前のことなのだから・・・)


*その後、イネオス君達のした謝罪で彼らの父親達であるブラーブ殿達が、他の子供達中にアトリーに対して嫉妬や嫌悪などの良い感情を持っていないことに気づいた。
 そして、その事に対してブラーブ殿と父親達は、アトリーの能力や下の兄弟達の成長に嫉妬していた男の子達に、自分の努力不足を棚に上げて、歳下のアトリー達を妬むことがどれだけ情けないか説教し、次にアトリーの容姿に嫉妬していた女の子達に、自分の容姿に自信がない事を、アトリーに嫉妬することで責任転換する、その心が自分を最も醜くしていると母親達が説教した、そして今回の事でアトリーを異常だと化け物扱いし罵った事を強く叱った。


 後に、ブラーブ殿達が私の所に来て深く謝罪してきた、だが被害者のアトリーが気にしてないし、何かしらの実害になった訳でもないので、「謝罪を受け入れる、アトリーも気にしてはないから、もう頭を上げてくれ」と言う他なかった、でも、今回のことで少しでも自分の感情の向き合い、反省して前向きになって、アトリーに対しての嫉妬が改善される良いなと思う、そして、ブラーブ殿達は今回の件で真摯に謝罪しに来たことで、信頼にあたる人達だと再度認識できたのが嬉しかった。

(それに何やら、うちの上の子達が彼らに修行を付けるとか言ってたしね)




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  アメトリン 視点

 ひとしきり家族皆んなと笑い合った僕は、少し恥ずかしさを覚えながらも父様の表情をチラッとうかがった、もう今までの僕の生活の事での罪悪感が無くなった事を確認し、一安心した。

(ほっ、父様があんなに責任を感じていたなんて思っても見なかったよ、僕的には悠々自適な引きこもりライフで、ある意味快適だったからね、でもそのせいで僕の性格が捻じ曲がった子になっちゃったとか思われていたとは・・・今後の発言にはよくよく気をつけなきゃいかんな・・・・)

天華『まぁ、たった10歳でこんな考え方してるとか、心が枯れすぎているとか通り越して、悟り開いているぐらいのレベルですもんね・・・』

夜月『それにしても、相変わらず興味のない者に対しての扱いの雑さよ、一応、イネオス達の兄弟なんだからもっと興味を持って接したらどうだ?』

(え~、だって、お友達にはなれそうには無い人達のが多そうだったんだもん!「あ、この人とは馬が合わなさそう」て言う感じの元接客業の直感的な?のが働いてね?
 僕って前世では無理してたくさん友人を作って、頑張って仲良くなっても、いつの間にか離れていっちゃって、結局、最終的には損得勘定だけの友達2、3人しか残らなかったんだ、だから、今の僕の事を良く知ってくれていて、損得勘定でみてない貴重な友達を大事にしたい、もし、それでも誰も残らないなら、もう新しい友達は作れない気がする、それなら最初から興味持たない方がいいもの・・・離れていくの見るのも寂しいしね・・・)

 前世での経験から友人を作ることに対して、少し臆病になっている所がある、前世での2、3人残っていた友人も、本当に友人と呼べたかは分からないぐらいの関係だった、今思うと、殆どパシリだったような・・・、僕がただ寂しくて、相手に縋り付いていただけの関係だった、そう思うと僕に本当の友人がいただろうか?
 今、現在の貴重な友人であるイネオス達に、僕が縋り付いている様な、似た様な状況だけど、イネオス達は果たして、僕をちゃんと友人として見てくれているだろうか?仕方なく友人として振る舞っているだけなのかもしれない…、そんなの“ありえない“って思っていても、疑心暗鬼になって、だんだん気分が落ちてきて憂鬱になってきた。

天華&夜月『『アトリー・・・』』

ジュール『心配しないでアトリー!アトリーには私達やティーナ様達がいるからね!寂しくないよ!』

天華『そうですよ、先ほども言いましたが私達は家族でもあり、友人でもあります、絶対寂しい思いはさせませんよ!』

夜月『そうだぞ、それにアトリーはもっと自分の事に自信を持って、人と交流を持った方がいい、諦めるのは向こうから本格的に拒否されてからでいいさ』

(ジュール、皆んな・・・、うん、そうだね、今度からはもっと適度な関わり合いが持てるように頑張ってみるよ!)

 天華達に再度励まされ、心の中で気合を入れた、周りの反応なんて何のその、マルキシオス家にイネオス君達の家族、仁達、護衛騎士達や使用人達の帰りの準備、もとい微笑ましいものを見る視線が無くなるのを待って、僕は再度地上に戻るため、海を割る“結界魔法“を発動させる準備に入った。












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