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第3章 少年期 学園編

83話 その頃・・・ 父:アイオラト 視点

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 時は戻り、アトリーがダンジョンに向かった後の話・・・・

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  父: アイオラト 視点

 アトリーが砂浜を“飛び立って“行った時の衝撃が、今だに収まりがつかない残された物達に私は説明を求められていた。

ニモス義兄上「ラト、アレはどう言う事だ⁉︎建国から500年以上も続く王宮の宮廷魔導士達が躍起になって研究解析している、“古代の飛翔魔法“をなぜアトリーが、さも当然と使っているんだい⁉︎」

「ニモス義兄上、落ち着いて下さい、あの子の事でお話しできる範囲はお話ししたいですがここでは・・・」

ニモス義兄上「分かっている!分かっているがっ!あの“飛翔魔法“だぞ⁉︎こうも堂々と使われて今更ここで話しにくいなんて言い訳は聞けないぞ⁉︎」

 ボコッ 「痛っ!!」

お義母さん「落ち着きなさい!このバカ息子!ラト君が言い難いって言ってんだから自重しなさい!!」

 ニモス義兄上の後ろから飛んで拳骨を叩き込んだお義母さん、その拳骨を受けたニモス義兄上は頭を抱えてうずくまった。

(かなり痛そうだな、身体強化した拳骨かな?あれ・・・)

「すみません、お義母さん、ニモス義兄上、あの魔法の事ですが原理を言ってもすぐに理解できないのもありますが、心配しているのはアトリーの事と、他に関わっている者達の安全のためでもありますので、今ここでは言いづらいのですよ、なので、説明は致しますので出来れば周りに人が居ない場所か、お屋敷の執務室でお願いします」

お義母さん「分かったわ、じゃあ、まず休める場所に移動してから話しましょう、子供達は好きに遊んできなさい、アトリー君はまだ時間がかかるでしょうからね、大人達はそれに付き添って頂けると嬉しいわ」ニッコリッ

 お義母さんの迫力のある言葉と笑顔に、ブラーブ殿達夫婦は他の2家の親達と一緒に、自分の子供達と仁君達を連れて海辺の散策を申し出て、この場を離れて行き、デューキス家の騎士団の団員の数人がマルキシオス家の騎士団員を連れて、遠巻きに護衛体制に入り、調査にあたる任務の者達は連携の確認のための訓練をし始めた、使用人達もデューキス家の使用人達が率先して砂浜に寛げる空間を作り出し、マルキシオス家の使用人にお茶の準備をお願いしていた。

 そして、砂浜に椅子やテーブル、ソファーなどを設置し、ゆっくりとお茶が出来る空間を作り出した所で各々座る、ここにいるのは私達夫婦とニモス義兄上、前侯爵夫婦のお義父さんとお義母さんだけとなった。

ニモス義兄上「イタタタッ、母上もう少し加減して下さい!たんこぶが出来たじゃないですか!」

 使用人がうちの使用人であるカイルとリアだけとなると、ニモス義兄上が自分の母親であるプラセルお義母さんに、先程の拳骨に対して抗議していた。

お義母さん「うるさいわよ、ニモス、それぐらいで泣き言言わないの、それより、ラト君これで話して貰えるかしら?」

 お義母さんがニモス義兄上の講義を軽く受け流し、真剣な表情で説明を求めてきた。

「はい、そうですね、まず、あの魔法を作るにあたって、今回こちらにお邪魔している“勇者候補達“の仁君達が関わっています、なので魔法の開発の経緯は慎重に隠しておきたいのです」

お義父さん「あの子達が?見たところ普通の子供に見えるが・・・」

 私は約束通り、“飛翔魔法“の開発に関してアトリーだけではなく、開発の過程で関わった人に仁君達がいることを話した、その事にお義父さんは今も浜辺で他の子供達と遊んでいる仁君達をそっと見つめた。

「そうですね、仁君達は我々と違う世界から来ているのはご存知と思います、それがこの世界の理とは全く異なる世界なのです」

お義父さん「理が全く違うとは?」

「まず、仁君達の世界では“魔法“というものがないそうです、物語などの創作物としての“魔法“の記述はありますが、実際に“魔法“が使える者は居ないそうです」

「「「っ!!⁉︎」」」

「その代わりと言うか、あちらの世界では“カガク“という物が発展しており、空を飛ぶ為の原理が解明されていて、人々を乗せて空を飛ぶ“ヒコウキ“なる物が存在するそうです」

「「「そ、それはっ!」」」

「それは言うならば“空を飛ぶ魔道具“みたいな物らしいです、その“ヒコウキ“と言うものは、あちらの世界では一般的なもので、普通に利用されているものらしいです、大勢の人間を乗せて世界各国を飛び回り、各地を繋げ交流の幅を広くしていると、そして“戦争の武器“にもなったりしているそうです」

「「「!!」」」

「この事を聞いて、私は彼らにアトリー以外の人にその話をしなように、約束してもらいました」

ニモス義兄上「そうか、それで、大人数のいる場所での話を避けたのだね、済まなかった、ラト、君が争いの元にならないように配慮して居たのにも関わらず、問い詰めたりして悪かった」

 そう、仁君達の知識の中にはとても危険なものが、たくさんあるそうだ、あちらの世界では戦争に際して、簡単に地形が変わるような武器が存在するとなると、そのことがこの世界で広まると世界は荒み、争いが絶えない場所となるだろう。

「いいえ、大丈夫ですよ、もし原理を聞いたとしても再現できるかはまた別の問題ですから、私としては仁君達が持っている知識を悪用されるのを恐れているので、彼らの関与に関して誤魔化しながら説明するのは無理がありますから、なので場所を変えて頂ければ、アトリーが開発した“飛翔魔法“のカラクリはお話できると言う事です」

 最も警戒していることを解って貰えてホッとしながらも、アトリーの為した偉業に関しては自慢したい所だった。

お義父さん「ほう、ではアトリーはその“ヒコウキ“なる物の原理が解ったと言うことか?」

「いいえ、“ヒコウキ“の原理は理解できなかったそうで、“飛ぶ“と言うか“浮かぶ?“事に関して理解できたと言ってましたね」

お義父さん「ほうほう!“浮かぶ“と言う事の理解か、それは凄いな!」

ニモス義兄上「“浮かぶ“?」お義母さん「“浮かぶ“ねぇ?」

「そうです、アトリーはその空に“浮かんで動く“と言う事を理解し、それを既存の魔法で再現しているそうなんです、使っている魔法もごく簡単なもので“重力魔法“と“風魔法“の2つだけで飛んでいるらしいです」

お義母さん「へ?2つ?合成魔法を使ってるのかしら?」

 と、不思議そうに聞いてきた。

「合成魔法は一応、使ってはないと言ってましたよ、そうですね、まず、“重力魔法“の使い方が今までと全く違っていますから、そこが理解できなければこの魔法は再現しないでしょうね、我々の“重力魔法“の使い方は対象を“重くする“、と言う事にのみ使ってきましたが、仁君達の説明では“対象の重量を変化“される事こそが、“重力魔法“の正しい使い方なのでは?と、言ってましたね」

お義父さん「“重量の変化“?」

ニモス義兄上「対象を“重くする“だけが“重力魔法“の使い方ではないと?」

お義母さん「ふむ?・・・・!!、“重く“出来るなら“軽く“する事もできると⁉︎」

(お義母さんは自力で答えに辿り着いたようだ、さすがシリーの母上だな、魔法に関しての見識が広いな)

「そう言う事です、あの時アトリーが浮かび上がったのは、自分の体重と周りの空気の重量を軽くしたからではないかと、でも、それだけではただ浮いているだけななので、“風魔法“で自分が行きたい場所に“移動させている“ 、と、言う事です、それがアトリーが使用した“飛翔魔法“のカラクリですね」

*この時、大人達は重力のと言う物の本質を知らないが故に、間違った解釈をしていた、この世界の今いる星には重力を調節している精霊達が存在し、他世界である地球とほぼ変わらない環境になっている、その事を知っているアトリーは“飛翔魔法“の根本的な原理を全ての人の目から逸らし、ミスリードさせているのであった。
 今回アトリーは魔法で“飛んで“見せたが、他にも“重力を司る精霊“にお願いする事で、“風魔法“を使わずとも自由自在に空を飛び回ることができる。

*あと、飛行機や戦闘機などが飛ぶために使われている、熱を利用したジェット噴射での飛行方法は、スピードは出るが危険極まりないので採用していない。
(噴射の方向を間違えるとあらぬ方向に行ったり、噴射口の近くの人が怪我をするからね!)

お義父さん「ほぉ~、それはまた画期的な魔法の使い方だな、長年魔法を使ってきた私達でも、魔法の本質をまだまだ理解できていないとは、実に興味深いね」

ニモス義兄上「私には何が何やら、それにこの方法は“重力魔法“、いや“時空魔法“の適性と“風魔法“の適性がなければ使うことができないじゃないか、“時空魔法“の適性を持っている者なんて、そうそういないぞ?それに加え“風魔法“まで使用できないといけないなんて、実質、再現不可能なんじゃ・・・」

お義母さん「そうでしょうね、高位の魔法属性を持った者は、下位の4大基本属性を持つ事はできない、逆も然りで4大基本属性を持った者は、中位魔法属性までしか持てない、と一般的にはされいる、が、まれに高位魔法属性を持っていても、下位の魔法属性も持っている者はいる、それでも“時空魔法“と“風魔法“両方の組み合わせで持っている者が国内で何人いるかしら?それに、高度な魔法操作と、大量の魔力が必要になってくるだろうし・・・これはまさに、“全魔法属性“を持って膨大な魔力があるアトリー君だけが使用できる魔法と言っても過言では無いでしょうね・・・」

 真剣な表情でそう考察するお義母さん。

「そう言う事なので、“飛翔魔法“のカラクリは公開できても、開発に至った経緯は伏せておきたいんですよ」

お義母さん「分かったわ、この事は私達の胸の内だけに留めておきましょう、それと“飛翔魔法“の存在もね、アトリー君ぐらいしか出来ない物を公開してもいい事は起こらないでしょうからね」

「お気遣い有り難う御座います、お義母さん」

 優しく笑いながら今回の“飛翔魔法“の件は公開しない事になった、後であの場にいた全員に軽い口止めを行う事になった。

 しばらく子供達の遊ぶ様子を見てのんびりと過ごしていると、丁度、昼時になった頃合いで、マルキシオス家の使用人達が屋敷から昼食を持って来ているのが見えた、そこにネニュス夫人と娘のマディラちゃんも一緒に来ていた。

ニモス義兄上「おや?もうそんな時間か?アトリーはまだ出てこなさそうだな、時間がかかっているのかな?」

シリー「そうですね、アトリーは大丈夫でしょうか?」

「そんなに心配はいらないと思うけどね、あの子の実力は誰よりも知っているだろう?」

シリー「ラト、そうですが・・・「わぁっ!!な、なんだアレ!!」え?」

「「「「!!⁉︎」」」」

 シリーと会話をしていると、波打ち際で遊んでいた子供達の方から大きな声が聞こえた。

「どうした⁉︎」

 すぐにそちらに視線をやると、沖の方から透明な一枚の板のような物が突き出ていた、それは徐々に我々がいる浜辺の方に伸びて来て、ついに浜辺に辿り着くとピタッと止まった。

ニモス義兄上「な、なんだ?あれは…、はっ!客人と公爵家の皆様を守れ!!」

 そう呟く、ニモス義兄上すぐさま気を取り直し、騎士達に指示を出す、近くにいた子供達やブラーブ殿のご家族達は、すぐにそこから離れこちらにやって来ている。

「あの、魔力は・・・」

騎士「公爵様、危険ですのでお下がり下さい!!」

 透明の壁からはとても覚えのある魔力のオーラが見え、私は逆に近づいて行った。

お義父さん「ラト、あれに覚えがあるのか?」

「はい、あの壁の正体は知らないのですが、あの壁からはアトリーの魔力が見えます」

お義父さん「アトリーの?…確かに、覚えがある気配ではあるが、このような大きな魔力の塊で何をしようとしているのだろうか?」

「アレは多分、“結界魔法“ですね、ですがアレから何をしようとしているのかは分かりません」

 と、会話しているうちに、透明な壁に縦に切れ目が入り2つに分かれ始めた、縦に2つに割れた壁はゆっくりと離れていき、海水を押し除けるように道を作り出している、割れた海の中は砂や岩、珊瑚などだけが残り、そこを覗き込めば、両側の透明な壁は、水槽のガラスの壁のように海の中の様子がよく見てとれる。

「・・・これは、もしかして…、ダンジョンの入り口まで続いているのか?」

シリー「ラト、あちらに・・・」

 私のすぐ隣まで来ていたシリーが見ている方を見ると、アトリーといつも一緒にいらっしゃる聖獣様のジュール様が、こちらに向かって走って来られている。

「ジュール様、どうなさったんだろうか?」

ジュール様「わっふっ!」

 ジュール様は楽しそうに駆け寄って来られて、私達の前で止まり座った、するとジュール様からもアトリーの魔力が感じ取れた。

『「父様、母様、お待たせしてすみません、ダンジョンの探索はひとまず終了しました、よろしければ皆様を“嗜好の海底神殿“にご招待したいので、こちらの道を進んで来られて下さい、あ、でも、昼食の最中でしたら僕がそちらに向かいます、まだのようでしたらこちらでも食べる事もできますよ、返答はジュールに伝えて頂ければ僕に伝わりますので、お返事お待ちしております」』

「ふふっ、ここまでの事をしておいて、昼食の心配をしているなんて、アトリーらしいね、ふふっ・・・はぁ、しかし“嗜好の海底神殿“とはなんだろうか?あのダンジョンの名称なのだろうか?それにダンジョンで昼食を食べるとは?まぁ、何にせよ、行ってみれば分かるか・・・、ジュール様しばしお待ちいただけますでしょうか?すぐに話をつけて参りますので」

ジュール様「わふっ!」

 簡潔な伝言の中に聞きたい事がたくさんあったのだが、考えるより実際に行って見てみた方が早いと結論付けて、私はニモス義兄上達に今の伝言を伝えこの割れた海の道を歩く事を提案した。

ニモス義兄上「そうか、この“海の道“はアトリーが作ったと言う事で間違いないようだね、それに全員がまとめてダンジョンに向かう事ができる、またとない機会だと言う事なら、迷う事はない」

 そう即決したニモス義兄上の行動は早かった、すぐさま騎士達や使用人達に指示を出し始めた、調査の為に選抜していた騎士達に加え、浜辺の警備をしていた騎士達も数人同行するように言い、使用人達も昼食を持ってきた使用人もついて来るように伝えた、私も我が家の騎士と使用人達も半数はついて来るように伝えて、お待ち頂いていたジュール様に皆で向かう旨を伝えた、するとすぐにアトリーから返事が返って来て、『「ダンジョンの前でお待ちしています」』と言って、通信は切れた。

(?、アトリーが直接こちらに来ないのは何故だろうか?向こうで手が離せない状況にあるのかな?もしかしたら、この“結界魔法“を維持するのに苦労しているのかもしれないな…)

 ならば早くアトリーの負担を減らす為に、急いでダンジョンに辿り着かねばと思い、準備を済ませ、ジュール様の先導で海にできた道を歩き始めた・・・













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