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第2章 少年期
58話 職人とは・・・
しおりを挟む連行されて行ったローグ青年を見送った後・・・
父様「では、今回の犯人は捕まったが今までの不正疑惑の件は犯人が自白するまでは未解決なので、これから先も気を引き締めて業務に励んでほしい、異常だ」
と、父様が締め括りギルド職員達は仕事に戻った、僕達はそのまま個別商談室でギルマスと話をする為に残りそれぞれソファーに座った。
(はぁ、ココで時間 食っちゃったからギルドの見学は中止だねー、あーあ、残念(T ^ T)見たかったな職人さんの作品、ふぅ)
1人心の中で愚痴る僕だった。
天華『そうですね、昼食後は鉱山の見学でしたよね』
(そうだよ、今回は色々あったからチャンス逃しちゃったね…)
天華『また次、来た時のお楽しみに取っておきましょう、ね、アトリー様』
シュンッと、していると天華が慰めてくれて、少し下がったテンションの僕にはその優しさがしみた、念話でそんな会話をしていると、
父様「アトリー、約束のギルド見学だけど…」
「あ、気にしないで下さい、また今度でも大丈夫ですので」
父様がまさにタイムリーな話題を出してきたのでお仕事の邪魔にならない様に遠慮する。
父様「アトリー、「ポンッ」「わっ」最後まで話を聞きなさい、「?」今からの時間だと少ししか見学できないけど職人ギルドの見学に行くかい?」
「‼︎、いいんですか?行っても?」
頭に手を置かれて撫でられながら聞くと父様が優しく笑ってくれた。
父様「あぁ、行っといで、父様はまだ時間が掛かりそうだからね、アトリーはココにいても暇だろう?」
(どうしたんだろう急に・・・あ!そうか、さっきの犯人の処遇とか決めるのにお子様には聞かれたくない話があるんだね)
「!、あ、そうですね、むしろ僕がココにいる方がお仕事の邪魔になりそうですから職人ギルドの見学をしてきます♪」
と、理由を察し、むしろ自分には好都合だったので喜んで返事をした。
父様「アトリー、察しが良いのは何時ものことだけど、決して私はアトリーの事を邪魔なんて思ってもないからね」
その言葉を言う父様は真剣な顔をしていた。
「あ…、はい、父様、ごめ、・・ご提案してくださって有り難う御座います」
“ごめんなさい“と謝りかけた僕を見て父様が少し悲しそうな顔をしたので咄嗟に言葉を変えた。
(あぁー!、僕の馬鹿!また父様に悲しそうな顔をさせちゃった!もう、なんで先に“ごめんなさい“って出ちゃうんだろ癖になっちゃたのかなぁ?せっかく職人ギルドだけでも見学できるようになったのに自分でテンション下げちゃったよ・・・はぁー)
いまだに誤り癖が抜けない自分がちょっと情けなくなってきた。
父様「アトリー、職人ギルドのギルドマスターが色んな職人の作品を見せてくれるって言っていたよ、楽しんでおいで」
また少しテンションが下がった僕を見て「仕方のない子だね」と言う雰囲気でまた頭を撫でてくれた。
その後すぐに商業ギルドのギルマスに挨拶をして、またカイルさんとソル、護衛騎士達も連れて部屋を出てカイルさんに案内されるがままに職人ギルドの受付までやって来て、カイルさんが受付の女性にギルド見学の申請を申し込んでいると、
?「ほー、君が公爵様の三男坊か、可愛らしい奥さん似だね」
と、若い男性の声で話かけられ振り向くと僕と同じ高さの身長をした小動物系の顔をした可愛らしい男の子と目があった。
「?」
(今、声をかけてきた人はこの男の子?でももっと大人の人の声がしたんだけどな?)
首を傾げながら不思議に思い一応周りを見渡してみた。
?「おいおい、声をかけたのは俺だ、こっちだ」
「あ、はい、えっと・・・」
目の前の男の子から先程の若い男性の声がした。
(わっ、違和感半端ない、やっぱりこの男の子が話しかけてきたんだ、低い身長に愛らしい顔、でも外見にそぐわない声って、この人は小人族の方かな?)
夜月『ふむ、小人族は外見が衰えない者が大半だが、稀に内臓機能は人族と大して変わらない老化スピードで声も年相応になる者がいるな』
(ふーん、だからか外見にそぐわない声の正体は)
ついマジマジ見ていると、受付の女性と話していたカイルさんが、
カイルさん「ギルマス、先に互いに自己紹介なさってからお話しして下さい」
カイルさんに言われて挨拶をしていない事に気づいた僕は慌てて先に挨拶した。
「初めまして、僕はデューキス公爵家当主の三男アメトリン・ノブル・デューキスと申します以後お見知り置きを、本日は職人ギルドの見学をさせて頂けるとの事でお邪魔しますね」
ギルマス「おぉ、初めまして、俺、や、・・・自分はこの街バリエル・メタッロミーヌの職人ギルドのギルドマスターをしているアルテサノ・ミノルと言います、大したもてなしは出来ないですが楽しんで下さい」
いつも通りの挨拶をすると職人ギルドのギルマスが背筋を伸ばし畏まった様子で挨拶してくれた、そして あえて僕の方や腕にいる聖獣達には触れずに話を進める。
それは何故か?と、思うかもしれないが理由がある、ここ最近は初めて会う人に聖獣の皆んなを紹介するのはやめているのは一般市民の人達には聖獣達は畏れ多過ぎて常に平伏したままになりかねないから、紹介せずに僕の使い魔だと思わせておく方が良いだろうって父様が言っていたから、でも貴族相手には必ず紹介するようにと言われた(まぁ、この間の件もあるしね)
「はい、有り難う御座います、よろしくお願いしますね、ミノルさん」
(ミノルだって、日本人の名前みたいな家名だね、ちょっと親近感♪ミノルさんって呼ぼう)
互いに挨拶を交わした後はすぐにギルマスがギルド内の大まかな説明と共に案内してくれた。
*職人ギルドとは・・・
職人ギルドの仕組みは職人ギルドに登録している職人に制作依頼が来ると指名ありと指名なしの2つに分けられ、指名ありの依頼はそのまま指名された職人に依頼の話が行き、その職人が依頼を受諾すればその依頼の製作を任されて依頼が完了すると報酬とギルドの依頼達成ポイントが入りそのポイント数と実力や人柄を精査した上でギルド内のランクが決まってくる仕組みだ。
指名依頼の良い所は報酬が高い事、指名依頼される職人は腕が良い事で有名になっている人達だから報酬もそれなりに高くなる、指名なしの依頼の場合はギルド内にある掲示板に依頼内容が書かれた依頼書が貼り出されるので店舗を持たず仕事を探している職人が自分のランクに見合った依頼書を掲示板から剥ぎ取りギルドの受付で依頼の受諾手続きをしてから製作、納品する事で依頼達成ポイントが入る、指名なしの依頼の大半が無名の若手職人などが受けるので報酬はそんなに高くない、でも名前を売るチャンスでもあるので若手は頑張って依頼をこなすんだとか…、
だが期限がある依頼が大半なので期限を過ぎると依頼不達成になるのでペナルティとしてポイントの差し引きや賠償金などを払ったりしないといけないので依頼内容には要注意だ、このペナルティは指名ありの場合も変わらない。
他に違いがある所は強いて言えばリスク的に指名なしの方が言い事もある指名を受けて依頼を失敗すれば有名な職人の場合、名前が全ての職人ギルド内で知れ渡ってしまうと言うこと、指名依頼は報酬が高い分リスクも付き物だ。
最後にこの街の職人ギルド特有の仕組みがある、若手の職人が自分の作品を売り込みに持ってくる所が職人ギルドの名物になっているそうだ、
そして持ち込まれた作品を保存展示されている場所があるそうで、今そこに案内されている僕、話を聞きながらワクワクしている。
ミノルさん「・・・それで、このギルドに持ち込まれた作品は依頼者達の良い目安になってるんでギルド内で若手とされるEランクまでの職人の作品を展示してあります」
「へーそうなんですね、良い仕組みですね、若手の方も自分の作品を多くの人に見てもらう事ができる良い機会になって、依頼したい方は職人の技量を見極める目を養える良い場所としてこれ以上の良い仕組みは無いと思います、他の支部の職人ギルドではしてないのですか?」
ミノルさん「そうですね、物作りが有名な場所はしている所が多いですね、後は展示する場所はかなりの場所を食うのでそれなりの広さがある支部が積極的にしているそうです」
「なるほど、確かに場所は必要ですからね、次に寄る街にもあるか父様に聞いてみよう♪」
ミノルさん「お楽しみの所すまないが坊ちゃん、デューキス領の中ではココから先だと領都の“ブリエヘマ“にあるのが最後です、後は対岸にある“バリエル・ゼートゥリズモ“にもありますがそこは通らんでしょう?」
「そうか、領地内には3箇所しかないのか…、確かに“バリエル・ゼートゥリズモ“にはいかないね、じゃあ領都の職人ギルドに今度連れて行って貰おう!カイル、父様にそうお願いできるかな?」
カイルさん「はい、私からお伝えしておきますね」
「ふふっ有り難う、行けるのが楽しみだよ、ね、ソル!ソルは鍛治氏の作品を見るのが楽しみでしょう?」
ソル「はい、アトリー様、色々な方が作った武器を見るのが楽しみです」
「やっぱり、今から見るのはどんな物が多いのかな?金属が沢山出る鉱山が近いから武器が多いかな?それとも金属の細工がしてある装飾品かな?ふふっ楽しみ」
ミノルさん「ハハハッ、坊ちゃんは物好きだな、その答えはもう分かるぞ、ここが展示場所だ」
と、職人ギルド1階の1番左奥にある大きな扉が開け放たれている場所まで来た、入口から見たかぎりかなり大きな広間になっておりレイアウトは美術館さながらの美しい配置になっている展示品はアクセサリーの小さな物から大型の家具まで様々な物が展示してある。
「わぁ、凄い広いし綺麗!」
展示は種類によって分けられており入ってすぐの正面中央は“家具“コーナーになっている床を見ると矢印が書いてあり右回りに進むようだ。
「あ、正面は“家具“だけど右には“宝飾品“?かな?」
家具のコーナーはかなり広いので先に右の壁沿いにある宝飾品を見るこ事にした、複数の作品がガラスケースに入っており作品のそばには作品名と製作者の名前が書いてある札があった。
ミノルさん「ここは彫金細工師や宝飾細工師、様々な金属を使った細工が施された宝飾品が展示したある、まぁ、たまに他の素材の宝飾品があるが…」
「おぉー、凄いキラキラしてる!」
金属だけを使った宝飾品や宝石を嵌め込むための金属土台など色々あって楽しい中でも銀と金を使った髪留めの彫金細工が目を引いた。
「わぁ、これ金で宝石を囲んだ後に銀の土台に嵌め込んである!すごく細かく模様がついてる、かなり難しそう…」
ミノルさん「ハハハッ、坊ちゃんは中々目の付け所が良い、この作品を作ったのは最近注目されている若手1番の腕を持つ奴の作品でさ、この宝石を囲ってる金を形を歪ませずに銀の台座に固定させるのは至難の業でここがうまくいかねぇとすぐに宝石ごと金の装飾が取れちまうんですよ、その上この金と銀についている模様も細けぇんで掘るのに時間がかかりますし、これが出来る職人はそうそういませんよ」
(ひゃー、僕こんな事絶対できない!細か過ぎるよこの模様!よほどの集中力がないとできない技だよ、やっぱり職人さんは凄い!)
色々な物を見てミノルさんに解説して貰いながら展示コーナーをまわっていると武器コーナーについた武器はスタンダードなロングソードからどうやって使うか分からない武器まで見ていて飽きない、ソルのテンションが静かに上がっているのが分かった。
(ソルの目が嬉しそうにキラキラ輝いてるよ、可愛いなぁふふっ)
隣で一緒に見学しているソルの反応にほっこりしつつ見学を進めた、ぐるっとまわって来て最後は魔道具コーナーに着いた。
「あ、魔道具だ、・・・?コレどうやって使うんだろう?それよりコレは何の魔道具なんだろう?」
手前にあったショーケースの中を覗き込むと奇妙な形の魔道具が展示されていた。
(見た目ウニみたいなトゲトゲの先に石?ぽいのが嵌まった使用用途も不明な魔道具の作品…、うん、さっぱり分からん)
ミノルさん「あー、これはですね、一応 照明器具の魔道具ですね」
「照明器具?」
ミノルさん「はい、このトゲの先端がですね光るんですよ、製作者が言うには暗い室内で使うと天井に先端の光が星のように光らせるんだとか、ですが本人的にはコレはまだ成功品では無いらしく、天井に映る光が強過ぎて星に見えないと嘆いてましたね」
「うーん、星空を室内で再現したかったんですかね?」
(って、事はこの製作者はプラネタリウムを作りたかったんだけど、作品的にはミラーボールになっちゃったのかな?
惜しいねー、先端を光らせないで穴の空いたカバーの中で強い明かりを1つ用意した方が簡単だっただろうに)
ランプシェードを使った簡易的なプラネタリウムならすぐ出来たと思う僕、所謂、影絵の応用だ、陰で形を作るのではなく反対に光の形を制限すれば良い話。
(まぁ、教えないけど、それにこれぐらいなら魔道具にする必要も無いからね何なら蝋燭と紙だけでもできるし)
魔道具は製作者個人の先入観で作られている物が多くツッコミ所が多くて楽しかった。
(アレだね、煮詰まっちゃって変な方向に行っちゃった感じがする作品が多かったね)
天華『まぁ、まだこの世界は科学が進歩していませんからね、魔法と言う現象に当てはめがちなのでアトリー様からしてみれば違和感があるのでしょう』
(そう言うものか~、まぁ僕も化学の何たるかはさっぱり分かんないんだけどね、前世でも解明できてない現象なんていくらでもあったからね~)
天華『アトリー様の分かる範囲でもこの世界の人間にして見れば大発見なのでしょうね』
(そうなんだろうね~、まぁ、大事にしたくないので黙ってますがね)
天華『それで良いと思いますよ』
すべての展示品を見終わりご機嫌で展示部屋から出て行くと丁度 父様が前方からこちらに来ていた。
「あ、父様!お仕事のお話は終わったんですか?」
父様に駆け寄りながら聞いた。
父様「あぁ、今さっき終わった所だよ、アトリー、見学は楽しかったかい?」
側に近寄ってきた僕の頭を撫でながら感想を聞いてきた父様に僕はご機嫌で答えた。
「はい、色々な職人さんのこだわりが見れて とても楽しかったです♪」
父様「ふふっ、それは良かったね、さぁそろそろお腹も空いたろうお昼を食べに行こうか」
予定通り昼食を食べに行く事になったのでココまで案内してくれた職人ギルドのギルドマスターのミノルさんにお礼を言い、表に準備された馬車に乗り込む、馬車に乗り込んだ僕達は次の目的地へ急いで移動する。
(はー、やっぱり職人さんの仕事は凄くて素晴らしくて楽しかった!)
移動中の馬車の中で見た事をニコニコ笑顔で楽しそうに話すアトリーとソルは終始ご機嫌だった。
その様子を笑顔で聞き役に徹していた大人達はアトリーが年相応の反応をしてくれるので「連れて来て良かった」っと思いながら こちらも終始ご機嫌だった、そしてそのまま目的地に着くまで楽しく会話したのだった・・・
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