【白銀の黒帝:7】女神の使い魔と無職の少年

八木恵

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5章:傍観者編

休暇は神獣竜界か魔界へ

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休暇が始まるとすぐ、食堂は休業し、シュン、リン、シリルは魔界にいき、ゲールは皇国に調査にむかった。

シュンとリンは、魔界の瘴気の森の間引きを終え、神獣竜界の深層の森に戻り、俺はいつものベンチで座り、エールをのみながらタバコをふかしている。

アークがエールをのみながら「人間社会だどうだ?」と聞かれた。
「だいたいの今の状況はわかった。 いま、ゲールに調べさせてぇーんけど、それ次第だな。
 だが、なぜシリルを執拗に標的にしてんだかがわかんねぇー」と考えながらいう。 
「ああ、俺らにはあの駄女神たちの考えている事はわかんねぇーし、理解できねぇーからな」ってアーク。

俺もそんなアークの言葉に同意だ。 エールをのみながら「わかんねぇーよな」と苦笑いした。
っていうか、お花畑脳の女神の考えなんて知りたくもないがな。

すると、大魔王と一緒にシリルが現れた。
「シュンさん、アークさん、遊びにきたぞ」といいニコニコしているシリル。
俺もアークも苦笑いしている。
「「お前ら、本当に暇だな」」って俺達がはもっていう。
「あはは、われは暇だぞ。」って大魔王、そして、頬をかきながら「シリルは逃げてきたがな」と苦笑いしている。

シリルが逃げてきた? なんかそっちのほうが面白いなって思ったら、シリルは不貞腐れてる。
「逃げてきてないぞ。 全部断ってきたぞ。それにちゃんと説得したぞ」と言って、「邪竜さんと遊びにいってくるぞ」といって深層の谷に向かうシリルだった。

「シリル、逃げたな」っていうアークも苦笑してる。
「だなー。 んで、何があったんだ、大魔王?」って俺、タバコをふかしながら聞く。
駄女神よりもこっちのほうが面白そうだ。

大魔王が苦笑いしながら、説明するのだった。 
魔族同士は子供が出来にくく、家族単位で生活することはなく種族ごとや基本共同生活をする事が多い。
子供が生まれてもみんなで子育てするため、みな誰の子か気にすることもない。 
魔王種だけは別で管理されており、魔王の責務として定期的に子作りをしなくてはいけないのだが、魔族の女性陣の中でシリル独占禁止になっており、常に複数相手にするシリルがとうとう頭にきて切れて全員を断ったらしい。 
そんなシリルの態度に、人間にいい人がいるのかなどまでに発展し、シリルが人間社会には興味ないといってさらに怒ったので、女性陣は引き、その隙にここに来たとの事だ。

「魔族の個体数維持のためにはしかたがないんだが、人間社会にいるもんだから、魔族の女どものちょっとした嫉妬だ。」と溜息をつく大魔王。 

俺はそんな話を聞いて笑うしかない。 シリルも大変だな。 でも、なんでシリルはあんなに魔族に気に入られてるんだ?
「にしてもよ、シリルってなんでそこまで気に入られてんだ?」って俺。
「それか。 魔族は、強さが一番だ。シリルは、魔族で儂に次いだ強さなうえ、あの見た目の可愛らしさに皆が愛おしいらしいぞ。 
まぁ、魔族は、みな引き際はわきまえとる、独占しようなど考えないから無用な争いはないがな。」という大魔王。

「なるほどな。ギャップ萌えだな。」というアーク。
「ははは、ストーカーになるやつがいなくてよかったな」とさらに笑いながら言うアークだ。


自分でそんな事を言ったアークの顔つきが変わる。
「おい、シュン、まさか、駄女神のシナリオが破綻してってやつだが、もしもだぞ、こんな理由でシリルが標的になってるって考えるとどうだ?」って、アークが俺と大魔王に説明する。 

俺は、吸っていたタバコの火を消して、アークの説を否定したくなる。

「あぁああ、いやいや、そんな事で魔界をまきこもーとしてんのか?」
「いや、もし、そうなったら魔族どもが乗り込むぞ!」という大魔王。

「それって、駄女神のわがままだろ!」って俺が呆れていうと、「だから、駄女神だろ」ってアークに突っ込まれた。

「シリルはどうすると思う?」って俺が聞いたら、「「あいつ、スルーだな」」とアークと大魔王に言われた。
やっぱりな。 
「だろな。 あー面倒。」といってエールを飲み干すと、「「しかも、面白くない」」というアークと大魔王だった。

駄女神は何をしたいのか、妄想するのである。 でもアーク説が正しいとなると、まじ面白くない。

◇◇◇
長期休暇も終わる3日前に、迷宮都市の食堂に戻るシュン、リン、シリルである。
既に、ゲールも皇国から戻り、調査報告を聞いている。

「うわぁー、アークの言ってた事が正解かよ」と俺がいう。
「俺、嫌だぞ。 魔界に帰るぞ。」というシリル。
確かに、俺も同じ立場なら帰りたいな。
「シリルが、とりあえずだ、茶番にのっかりゃ終わりらせられんな。」って俺。
「確かにだぞ。 でも嫌だぞ」というシリル。
「あー面倒だし、おもしろくねぇー」と俺がいうと、みんな頷くのだった。

まじ、これ面倒。 面倒でも面白ければいいのに、それもまた面白くない。
もう少し、ましな事しろよな駄女神!
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