【不遇転生:4】悪役子息と婚約者 ~俺はまた悪役子息に転生した~

八木恵

文字の大きさ
上 下
87 / 133
3章:従軍編

竜の討伐計画中に邪魔がはいった

しおりを挟む
「マッデン……だよな?」

ジキムートの言葉に一同がうなずく。


「くっ……」

レキは抱えていた物を離し、なんとか立とうとしていた。

「くくっ、ノーティス。おぬしが言う事は本当だったみたいだの。このレキだったか? わしでもなかなか見たことが無い、美しい女がいると」

舌なめずり一つ。

その直後に突然、地面から沸き上がった水の群れがレキを絡めとっていく。

「グゥっ!?」

水に周りをまかれ、レキがうなる。

周りは水。

逃げ場がなく、ゆっくりと狭まる包囲網をにらみつける事しかできないでいた。


「ほぅほぅなんぞ、その奇麗な褐色の肌は。 貴族共は全員が色白いからのぉ。こういう趣向は稀じゃ。いや、初めてじゃぁっ! ヒヒッ。どうして今までココに来んだったか、全くっ。神もいじらしい事をしてくださるっ!」

「……シュっ!」

その時だった。

〝ムードブレイカー(自己中)″ジキムートが走った。

壁を蹴ってつたい、一気に住民たちを横目に後ろに回ろうとする。

「……」

その姿をマッデンが睨んだ――瞬間。


バキンっ!


「何っ!?」

壁にあった壁面が一気に、突如氷に代わる。

「だがこれなら!」

未だ遠い住民の裏。

ジキムートは剣を壁に刺し、その氷を逃げきっ……。

パキパキパキッ!

剣がへし折れたっ!

一瞬にして氷が剣に浸食し、芯まで凍らせたのだ。

ジキムートは住民の中へと落ちてしまうっ!


「はっ!?」

いきなりの現実。

ゴディンの力ならば通用した事が、通じない。

その事実にジキムートは声すら出せないでいる。

ドタンっ!

そして、地面の感覚。

「クッ!?」


「全員気を抜くなっ! 行くぞっ」

叫び、漆黒のローラが駆けて……っ!

「……」

彼女が動こうとすると目の前に、20……30、いや40っ!

氷の刃が突然、出現した。

「なっ!?」

詠唱なしに、とんでもない量のマナが溢れる。

それはまるで壁のような、視界を埋め尽くす程の氷の刃。

狭い空洞に逃げ道はない。

(クソっ!? 呪いを使うしかないのか……。だが……っ)

ちらりとノーティスを見たローラ。


(コイツを信じるなんてシャクだが、この呪いは今使う訳にはいかないっ! この作戦、どんな犠牲を払ってでも遂行してみせるっ! お嬢様っ。お嬢様ーっ!)

彼女は賭けに出た。

愛する者の名を、心の中で叫びながら……。

「グアァァッ!?」

「そは水を食うモノなり。吸えよ食えよ肥え太れ……っ」

ノーティスは呪文を詠唱し始める。

「〝ディセクレト(神話、そして咎人)〟……か、〝アーク・エンクレイヴライト(聖域現出)〟っ。消えよこの、神の盟約を破る愚か者がっ! 目に入れるにも汚らわしいわっ」

水の聖域の現出。

その瞬間また、この世界が水で覆われてしまうっ!

そしてノーティスもローラと同じく、数多の氷を放たれてしまうが――。

「グッ!?」

雨あられと降り注ぐ攻撃を、水の魔法障壁でなんとか防いだノーティス。

そして銀髪を翻し、すぐに氷の魔法で反撃にでようとしたが……。

「……」


フッ。


マッデンに魔法構成を睨まれただけであっさりと、ノーティスが張った魔法の障壁もろとも、ノーティスの魔法全てを消滅させられてしまったっ!

「なにっ……ディスペルされたっ!?」

単一の魔法しか使えないのだ。

属性に絶対的に秀でた人間の支配。それが行き届いてしまう。

「第3階級の私の魔法が――。駆け引きも無しにこんなっ!? 馬鹿なっ!?」

魔法階級が上から3番目に属する彼女の魔法ですら、例外では無いという事。

マッデンの前では、水のマナを『扱う事』すらかなわない。

相手を魔法世界から駆逐する。これこそが本当の聖域の意義で、攻撃的な使い方である。


「くそっ!?」

瞬間ノーティスが大きく飛んで、マッデンから逃れようとするが……っ!

「ふむぅ……」

マッデンが笑いそして――。

ノーティスの目の前に氷の刃40、50……100っ!

増える氷の刃が、ノーティスを睨みつけている。

「はぁ……はぁ」

その場からは動けなくなってしまう彼女。


「ククッ……。さてさてぇ。楽しむか」

「くぅっ!?」

マッデンは、水の牢獄にレキを閉じ込めてしまった。

あっという間に傭兵の精鋭を圧倒し、レキを自分のもとに寄せるマッデン。

水を自由に、意図したとおり、見事に動かして見せる。


「水を……。この水の量を維持して操れるなんてっ!? しかも強度も高いっ! クッ。これが本物の神の右腕っ!? ゴディンなんて比じゃない力じゃないかっ」

水に呑まれながら、レキがうめく。

この世界では水と言わずどのようなマナでも、1回単発の使い切りだ。

マナを維持し、操り続ける行為。

それは圧倒的に高位な魔法練度と、何と言っても魔力容量が必要だった。

「ほぉ、やはり近くで見るとメンコイなぁ、ぶふっ。これ程小麦に焼かれても、しっかりと美しいキメと張りっ。下民よ~。良いぞっ! わしに捧げるには十分よっ! 褒めて遣わすっ!」

高らかに笑いを上げるマッデン。


「くっ、離せっ、この豚がっ!」

ばしゃっ! ばしゃしゃっ!

体幹の強いレキの、激しい抵抗を封じ込めれるだけの水の水量と強度。

これを維持し続けるマッデンは今、MPを秒単位で失っているハズ。

だが全くもって魔力に窮する気配がない。

「何を言う? 安心せよ女。我は人間の中にありて、最も神に近しき者っ! 水神様直々にお認めになった存在よ~。胸を張れっ! 我に愛される事は、神に愛されたと同義だっ! 誇り高い一族の、さらには頂点者の子を産めるのであるっ。歓喜せよ」

「かっ神に愛されたと同じだとっ!? 貴様はただの人に過ぎないっ! 高貴な我らの真の支配者。崇高なるマナの仕手。神よこの男に罰をっ!」

「歓喜……せよっ」

グギュウっ!

マッデンが笑うと、水が締まりをきつくする。

「ぐぁぁっ!?」

レキを取り巻く水圧が一気に跳ね上がり、ヨダレを垂らしてレキがうめく。


「ほれ。神をあがめよ。子が……我が神に等しき男の種が、欲しいじゃろ?」

「ヒッ!?」

マッデンが言葉をつむぐと水が――。

レキを取り巻く水が、彼女の装備を外していく。

「ここで一つ、楽しんでおこうかのぉ? たんと水に冒され、奇麗になると良い」

あっという間に水圧で鎧を外し、胸の部分をさらけ出させられたレキ。

薄紅色の突起があらわにされてしまう。

そしてそのまま腰元のズボンまでもが、水に剥がされていく。


「くっ、やめろっ!」

「ほぉ、胸が小ぶりか。まぁ仕方ない。これならノーティスのほうが良かったがのう。――そうじゃそうじゃ、あとで水でも入れて、膨らませるのも良いじゃろうて。うんうん、その小さいのも一応たっぷり遊んでから、好みに入れ替えるか。それでは……」

「クソがっ! 僕はお前の人形じゃないんだよっ!」

レキが唇をかむ。

だがマッデンには実際、そう言った着せ替え行為ができるのだろう。

マナに選ばれるとは、そう言う事だった。


「汚い言葉を使うなっ、メスが。娼婦みたいな言葉は断じてならんぞ小娘っ! ふぅ全く。じゃが……まぁ、威勢が良いのも初めだけじゃろうて。これを受ければ考えも変わるじゃろう。いっひっひっ」

ブタのような顔が歪み、水が数本ウネウネと指のような物を這いださせた。

「……」

何か、途方もなく嫌な予感に身震いするレキ。

「今から水で子宮の中までキレイにしてやるぞ。汚れも消えるし、薄汚い病気も消える。良い事じゃぁ。それにコレをすると、娘どもが静かになる。どんな貴族のじゃじゃ馬も、わしの命令には絶対服従じゃったわぃっ! 体の芯まで水に犯される感覚に、恍惚を覚える者さえおったんじゃあっ!」

「この豚が……っ!?」

レキのコメカミがヒクつく。

大勢の住民の前、レキは群れる水の触手に蹂躙されようとしている。

大勢に好機の目で見られ、そして考えたことも無い、人体実験のような人体洗浄法で辱められようとしているのだ。


「くぅううっ!?」

そして、パンツに水が入ろうとした時レキは――笑った。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

少女漫画の当て馬女キャラに転生したけど、原作通りにはしません!

菜花
ファンタジー
亡くなったと思ったら、直前まで読んでいた漫画の中に転生した主人公。とあるキャラに成り代わっていることに気づくが、そのキャラは物凄く不遇なキャラだった……。カクヨム様でも投稿しています。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...