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2章:少年期(イーストエンドでの生活)

キャサリンの言い分 後編

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夕食会は、私たち家族だけの4人。 
リズに連れられて、食堂に到着したら既にお父様、お母様、そしてお兄様もいた。
相変わらず、お父様もお母様も質素な服装。 王都じゃ恥ずかしいわ。 
お母様は綺麗だから質素でもある意味及第点かしら、でもお父様は厳つい顔。 
冒険者風情のギルドマスターだから野蛮なのね。 お母様もよく結婚したわ。 元公爵令嬢なのに。 って思いつつ、リズに王都の流行の服装と化粧で参加したの。

「キャサリン、それが昨今の王都の流行か? ドリル巻きに、厚化粧が。」
お父様は野蛮だから分からないのね。

「ええ、ただ本当はドレスに刺繍がはいるのですが、いただいている仕送りでは難しくて」って言っておいた。
「お兄様の服装も本来であれば、フリルまたは金刺繍がはいるんですの」
「ええ、キャサリンの言う通りで。 第一王子の側におりますが、周りと比べると見劣りするようで、筆頭側つきにはなれず。。」とお兄様も言う。

「そうか。だが、わしは外見だけで判断するような人になってほしくない。 故に、自身の心を磨く意味で、お前達への仕送りを決めておる。 お前らは足りぬというのか?」 
お父様の機嫌が悪いわ。 お兄様と目を合わせて合図した。

「お父様は、不良品を養っているとか。 その費用こそ、無駄金ではございませんか?」って言ってやったわ。

「サイラス先生から手紙をいただきました。 父上も母上も、不良品の使用人に対して教育を施し、我が家の家計を圧迫させていると。 父上も母上も、質素な服で、貴族としての誇りはないんですか?」とお兄様がフォロー。

お父様が握ってたナイフとフォークが震えている。
「マリー、やはりサイラスに任せたのが失敗だったのか。 いや、我らが気付かなかったのかもな。」
「あなた、私も同意見です。 貴族社会に慣れた、いえ染まったとしか。」
「ああ、王都に行かせたのは間違いだったのかもな」

「お父様、お母様、何をおっしゃってるの。 それに不良品は私を殴ったのよ!」って言ったわ。 娘が殴られてるのよ。 早くあの子を追い出して。 お金の無駄よ!

”バン”
お父様がテーブルを叩いた音。 食事中にそんな態度をしたことがなくて、思わずビクッてなったわ。
「お前らぁ、わしの手紙はよまずサイラスに絆されおって! ノアールを不良品、もしくは欠陥品と呼ぶ奴は我が子であれこの家から出て行け!!」
お父様がこんなに怒鳴るなんて初めてで、怖くで涙があふれてきた。
お兄様も驚いた様子。

「あなた落ち着いて。ネイスもキャサリンも勘違いしてるのよ。」というお母様。 
何が勘違いなのよ! 

「マリー、すまなかった。 今夜は子供達に説明するためにノアールを同席させなかったな。」って、落ち着いたのか何時もと同じ口調になるお父様。 でも表情はまだ怒ってる。

「まず、ノアールは、使用人ではない。 それに、あの子の生活費から何から全ての金銭的費用は、わがガーネット家からではない。 信じられないのであれば、あとでマーカスから帳簿を見せてもらえ。 

 お前らはわしの手紙は読んでないようだな。 もう一度言う、ノアールは、ザイとエイラの養子で、彼らの遺産相続人だ。 わしがノアールが成人になるまで後継者となっている。 今の家庭教師であるザック、そして我が家にすむ費用は全てノアールの財産からだ。 本当は、わしもマリーも、生活費など無用だといったが、ノアール自身が望んだことだ。」

「しかし、父上、サイナス先生いわく、不当な理由で解雇されたとも。 それに、なぜザイ様とエイラ様が、あのふ、いやあの子を養子にして財産を!」
お兄様が反論している。 お兄様は、サイナス先生を慕っていらっしゃるから、今回の件について許せないのね。

「ネイス、サイナスを解雇したのは私です。 ノアールが文字を書けることを利用して、単語が違うとか、文章が曲がっているという度に手をムチで叩き最後はペンが握れないほど膨れあがった右手と左手でした。 痛覚がないノアールは自分がペンを握れない理由がわからず、ただ感触だけと。 たまたま、様子を伺った私が見つけ、その場で解雇したのです。」

サイナス先生がムチでたたくって。。信じられない。
お兄様も驚いている。 サイナス先生は、紳士で博識でいつも丁寧に教えてくれてた。
きっとあの不良品の出来が悪いからよ。

「マリー、お前のせいではない。 我々がサイナスを見誤った。 後で調べたが、他家の身分が低い子には同様にムチでたたいていたらしい。」

え!どういう意味。 頭がついていかないわ。 でも、お父様が話を続けてる。

「ザイとエイラが、ノアールに出会ったのは今から3年近く前だ。 その頃からだ、子供のいない彼らがせめてノアールに少しでも教育をと願って養子にしてあって、彼らの死後財産をすべて譲る遺言を残していた。 

 ネイス、キャサリン、それにノアールが来てから知らないリズにダン、ノアールに少しでも嫌悪、敵意をしめせば今日のキャサリン以上の事になる。 ノアールは、障害があるが、それを補うように異なる感覚が鋭く、警戒心が強い。 この屋敷にいるものが、万が一敵意をしめせば反撃してよいとノアールには言ってある。 ノアール自身の自己防衛のためだ。」

「父上、なぜそこまであの子を?」

「あのザイとエイラがわしに託した子だ。 だからだ。 ちなみに、キャサリン、お前が壊した地図をノアールがどのくらい時間をかけたかわかるか?」

「1日でしょ。 大陸の地図の半分だったわよ」って答えたわ。 今、そんな話をしている場合じゃないのに。

「マーカス、あの精巧の地図だぞ。」とお父様が呆れている。 何がいけないのよ。

「ノアール君に大陸の地形、地図がわかるようにとザック殿と話し合って、立体にするのが良いのではないかということになりました。 そしたら、ノアール君が粘土から作るといい、まず粘土収集から始まり、目の見えないノアール君がザック殿と少しずつ作り、その間ザック殿が国の歴史、町の調度品や名産などはなしながら作っておりましてようやく半分がこの半年でできました。 ちなみに、材料費はタダです。」ってマーカスがいう。

え!粘土の採取からって、買えばいいし、馬鹿なのあの子。 それに、職人に作らせらばいいじゃない。

「キャサリンは、わからないようね。 いちから作る意味が。 そして、盲目の子の苦労も。。 なのに、ノアールは、私たちと遜色なく普通に生活している異常性も。」 何いってるのお母様。 

「ネイス、キャサリン、とりあえず明日から目隠して生活しろ。 リズ、ダン、お前達もだ。 他の者達は、こいつらがズルしないように交代でみはれ。」

何いってるのよ、お父様。 お兄様も何も言えない顔してる。
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