【不遇転生:1】俺と魔神 ~ハードモード人生だけど、せめて平均寿命まで生きたい~

八木恵

文字の大きさ
上 下
26 / 185
2章:少年期(イーストエンドでの生活)

キャサリンの言い分 後編

しおりを挟む
夕食会は、私たち家族だけの4人。 
リズに連れられて、食堂に到着したら既にお父様、お母様、そしてお兄様もいた。
相変わらず、お父様もお母様も質素な服装。 王都じゃ恥ずかしいわ。 
お母様は綺麗だから質素でもある意味及第点かしら、でもお父様は厳つい顔。 
冒険者風情のギルドマスターだから野蛮なのね。 お母様もよく結婚したわ。 元公爵令嬢なのに。 って思いつつ、リズに王都の流行の服装と化粧で参加したの。

「キャサリン、それが昨今の王都の流行か? ドリル巻きに、厚化粧が。」
お父様は野蛮だから分からないのね。

「ええ、ただ本当はドレスに刺繍がはいるのですが、いただいている仕送りでは難しくて」って言っておいた。
「お兄様の服装も本来であれば、フリルまたは金刺繍がはいるんですの」
「ええ、キャサリンの言う通りで。 第一王子の側におりますが、周りと比べると見劣りするようで、筆頭側つきにはなれず。。」とお兄様も言う。

「そうか。だが、わしは外見だけで判断するような人になってほしくない。 故に、自身の心を磨く意味で、お前達への仕送りを決めておる。 お前らは足りぬというのか?」 
お父様の機嫌が悪いわ。 お兄様と目を合わせて合図した。

「お父様は、不良品を養っているとか。 その費用こそ、無駄金ではございませんか?」って言ってやったわ。

「サイラス先生から手紙をいただきました。 父上も母上も、不良品の使用人に対して教育を施し、我が家の家計を圧迫させていると。 父上も母上も、質素な服で、貴族としての誇りはないんですか?」とお兄様がフォロー。

お父様が握ってたナイフとフォークが震えている。
「マリー、やはりサイラスに任せたのが失敗だったのか。 いや、我らが気付かなかったのかもな。」
「あなた、私も同意見です。 貴族社会に慣れた、いえ染まったとしか。」
「ああ、王都に行かせたのは間違いだったのかもな」

「お父様、お母様、何をおっしゃってるの。 それに不良品は私を殴ったのよ!」って言ったわ。 娘が殴られてるのよ。 早くあの子を追い出して。 お金の無駄よ!

”バン”
お父様がテーブルを叩いた音。 食事中にそんな態度をしたことがなくて、思わずビクッてなったわ。
「お前らぁ、わしの手紙はよまずサイラスに絆されおって! ノアールを不良品、もしくは欠陥品と呼ぶ奴は我が子であれこの家から出て行け!!」
お父様がこんなに怒鳴るなんて初めてで、怖くで涙があふれてきた。
お兄様も驚いた様子。

「あなた落ち着いて。ネイスもキャサリンも勘違いしてるのよ。」というお母様。 
何が勘違いなのよ! 

「マリー、すまなかった。 今夜は子供達に説明するためにノアールを同席させなかったな。」って、落ち着いたのか何時もと同じ口調になるお父様。 でも表情はまだ怒ってる。

「まず、ノアールは、使用人ではない。 それに、あの子の生活費から何から全ての金銭的費用は、わがガーネット家からではない。 信じられないのであれば、あとでマーカスから帳簿を見せてもらえ。 

 お前らはわしの手紙は読んでないようだな。 もう一度言う、ノアールは、ザイとエイラの養子で、彼らの遺産相続人だ。 わしがノアールが成人になるまで後継者となっている。 今の家庭教師であるザック、そして我が家にすむ費用は全てノアールの財産からだ。 本当は、わしもマリーも、生活費など無用だといったが、ノアール自身が望んだことだ。」

「しかし、父上、サイナス先生いわく、不当な理由で解雇されたとも。 それに、なぜザイ様とエイラ様が、あのふ、いやあの子を養子にして財産を!」
お兄様が反論している。 お兄様は、サイナス先生を慕っていらっしゃるから、今回の件について許せないのね。

「ネイス、サイナスを解雇したのは私です。 ノアールが文字を書けることを利用して、単語が違うとか、文章が曲がっているという度に手をムチで叩き最後はペンが握れないほど膨れあがった右手と左手でした。 痛覚がないノアールは自分がペンを握れない理由がわからず、ただ感触だけと。 たまたま、様子を伺った私が見つけ、その場で解雇したのです。」

サイナス先生がムチでたたくって。。信じられない。
お兄様も驚いている。 サイナス先生は、紳士で博識でいつも丁寧に教えてくれてた。
きっとあの不良品の出来が悪いからよ。

「マリー、お前のせいではない。 我々がサイナスを見誤った。 後で調べたが、他家の身分が低い子には同様にムチでたたいていたらしい。」

え!どういう意味。 頭がついていかないわ。 でも、お父様が話を続けてる。

「ザイとエイラが、ノアールに出会ったのは今から3年近く前だ。 その頃からだ、子供のいない彼らがせめてノアールに少しでも教育をと願って養子にしてあって、彼らの死後財産をすべて譲る遺言を残していた。 

 ネイス、キャサリン、それにノアールが来てから知らないリズにダン、ノアールに少しでも嫌悪、敵意をしめせば今日のキャサリン以上の事になる。 ノアールは、障害があるが、それを補うように異なる感覚が鋭く、警戒心が強い。 この屋敷にいるものが、万が一敵意をしめせば反撃してよいとノアールには言ってある。 ノアール自身の自己防衛のためだ。」

「父上、なぜそこまであの子を?」

「あのザイとエイラがわしに託した子だ。 だからだ。 ちなみに、キャサリン、お前が壊した地図をノアールがどのくらい時間をかけたかわかるか?」

「1日でしょ。 大陸の地図の半分だったわよ」って答えたわ。 今、そんな話をしている場合じゃないのに。

「マーカス、あの精巧の地図だぞ。」とお父様が呆れている。 何がいけないのよ。

「ノアール君に大陸の地形、地図がわかるようにとザック殿と話し合って、立体にするのが良いのではないかということになりました。 そしたら、ノアール君が粘土から作るといい、まず粘土収集から始まり、目の見えないノアール君がザック殿と少しずつ作り、その間ザック殿が国の歴史、町の調度品や名産などはなしながら作っておりましてようやく半分がこの半年でできました。 ちなみに、材料費はタダです。」ってマーカスがいう。

え!粘土の採取からって、買えばいいし、馬鹿なのあの子。 それに、職人に作らせらばいいじゃない。

「キャサリンは、わからないようね。 いちから作る意味が。 そして、盲目の子の苦労も。。 なのに、ノアールは、私たちと遜色なく普通に生活している異常性も。」 何いってるのお母様。 

「ネイス、キャサリン、とりあえず明日から目隠して生活しろ。 リズ、ダン、お前達もだ。 他の者達は、こいつらがズルしないように交代でみはれ。」

何いってるのよ、お父様。 お兄様も何も言えない顔してる。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

はずれ職である魔法戦士に転生した僕はなぜかクリティカルヒットを出しまくるのでとりあえず異世界で無双します!

闇夜
ファンタジー
 前世での事故により死んでしまった主人公は、女神ハーティの情けにより、彼女が造った世界「フルスティア」に転生することになった。  どんな人生が待っているのかとワクワクして目覚めたら、なぜか荒野に捨てられていた…。  偶然通りかかった神父に拾われ、ワークとして生きることになった。ワークは職業適正の儀式でこの世界では「はずれ職」である魔法戦士の適正をもらい、村のものから馬鹿にされていた。  しかし彼は転生ボーナスにより、相手に必ずクリティカルダメージを与えることができるスキルを持っていたため、暇があれば魔物たちを狩りまくっていた。  いつものようにダンジョンで魔物を倒していたある日、隠し部屋を見つけて宝箱に入っていた宝石を気に入ったワークはその石を持って帰ることにした。石を拾ったことにより、ワークの運命は大きく動き出す。  

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...