12 / 16
第十章
しおりを挟む
「どういうことなの!?」
美月と桜、美晴は声をあげた。三人が怒るのは仕方がないことだろう。
海外旅行から帰国してみれば、樹が意識不明の重体で眠っているのだから。
いつ目覚めるか分からない眠りについているのだから。
今も色々な延命治療の機会が取り付けられている。その樹の姿を見て、美月はショックをうけた。自分の中で彼は何事にも負けることなく、いつも強いイメージがある。
その樹が弱っている。
美月は彼の手をとった。
(ごめん――ごめんね、樹。本当は私のことだから、自分が向き合わないといけなかったのに、立ち向かわなければいけなかったのに。私の弱さがあなたを傷つけた。あなたに甘えている自分がいた)
熱もあるのか握っている手は熱かった。呼吸器をしていても息をするのもつらそうである。樹の額にある汗を濡らしたタオルで引き取る。
険しかった顔が多少、和らいだ気がした。
*
昭の背後で早く話せという美晴と桜の威圧感がすごかった。
「それと、今回のことは三人には話さないでください」
「どうして?」
「あの三人には闇は似合わない」
「分かった――約束をしよう」
樹と契約した時に交わした握手の感触を昭は思い出していた。ひんやりとした冷たい手だった。だからといって、彼の心が冷たいわけではない。
今回、命を試みず美月を助けてくれた。
ありさから助け出してくれた。
(美月をいじめという絶望の淵から光をあててくれた。滝本ありさに対して、反撃の狼煙をあげてくれた)
彼に対し感謝の言葉しかなかった。
*
ぼんやりとしていた昭は、さくらに叩かれて現実に引き戻された。二人のきつい眼差しに耐えられない。
逃げきれない。
(逆らえない。樹君、ごめん。約束を破ることを許してくれ)
心の中で樹に謝罪をする。
昭はボイスレコーダに録音した声を聞かせる。樹の悔しそうな声に、美月は胸が揺さぶられた。その声に心がかき乱される。きっと、自分がこんな感情になるのは、樹に関してのみだろう。
(何で? 何で、樹だけが苦しい思いをしなければいけないの?)
昭が持っていたボイスレコーダを美月は奪った。彼が驚いた表情を見せる。もし、樹が助けてくれなかったら、人体実験に利用されていたのは自分かもしれない。
そう思うと鳥肌が立つ。
「美月?」
「美月ちゃん?」
美晴と桜が美月を見る。
「警察に送る仕事は私がやるわ」
これ以上、逃げるわけにはいかない。
「けれど、危険すぎる。滝本側に知られたお前の命はないぞ」
昭がきつめに警告をする。
「お願い――これぐらい私にさせて」
(動かないと何も変わらないし、始まらない。弱い自分とさようならをするためには行動しないと)
今度は自分が樹を守る番である。
自分だって何かをしたい。
樹を救いたいし、気持ちに答えたい。
もう、樹や昭、桜、美晴に守られるのは嫌だった。
ともに戦いたかった。
「昭さん。美月の気持ちはあなたにも分かるでしょう? 美月も樹君を守りたいのよ」
桜に言われて昭は言葉を失う。
「昭さん。私からもお願いするわ」
美晴は昭に頭を下げた。
「桜。美晴さん。分かった。これを、お前に託そう」
美月にボイスレコーダと写真を渡す。
「やり方は私に任せてもらってもいいかしら?」
「美月が思うようにやってみればいい」
「樹をお願いね」
病院を出て自宅に戻り、準備をする。ありさは美月の字を知っている。手書きの場合、すぐにばれてしまうだろう。パソコンをとも考えたが、消去しても痕跡が残ってしまうことがある。痕跡が残ってしまえば、ありさたちに追跡される可能性があった。
美月は樹や昭のようには戦えない。
戦闘面でも情報面でも負けてしまう。
(そうだわ。この方法なら必ず目につくはずよ)
唯一、思いついたのは新聞の一文字を切り取り封筒に貼っていく方法だった。誘拐事件の小説やドラマによく使われる手法である。古典的な方法だが、警察の目にもとまりやすいメリットもあった。使える文字を新聞から探すのは、対戦だが弱音を吐いてはいられない。
(やると決めたからにはやるしかないのよ)
新聞を広げて丁寧に切り取り、封筒に貼っていく。今回の事件に関与されている人たちの写真も一緒に同封しておいた。
あとは、ポストに投函するだけである。指紋も分からないように手袋もしていた。季節は冬のために、手袋をしていても誰も不審には思わないだろう。
(冷静に――冷静に)
美月は心の中で唱える。
(大丈夫。私ならできるわ。違う。やらないといけないのよ)
樹のために。
ありさと決着をつけるために。
深呼吸をして平然と歩く。平然と歩いていれば、誰も事件の証拠を持っているとは思わないだろう。美月とて一市民でしかない。興味をもつ人などいないだろう。そのとおりで、誰も美月を見ようとはしない。
まっすぐ前を向いて歩く。
美月の瞳には絶対にやり遂げるといった強い位置が宿っていた。信号の反対側にポストが見えている。周囲の人ごみに紛れてポストに向かう。無事に届きますように――聞いてもらえますようにと祈りながらポストに投函する。
「坂本美月だな?」
病院に戻る途中で男に声をかけられて、裏路地に引きずり込まれた。明らかに、一般人とは違う。ありさが呼んだ男だろう。美月はそこに転がっている石を投げる。その隙を見て逃げ出そうとしたが、男に腕をとられてしまう。
男が美月の服を破った。
すると、一台のオートバイが止まる。運転手は美月に上着をかけてボタンを止め、オートバイに乗せるとそのまま走り出した。暫くすると、警察署の前で停車した。運転手がヘルメットをとる。
「これでもう大丈夫よ」
「あなたは?」
「私? 私は川口千夏」
千夏は美月に警察手帳を見せる。ちょうど、パトロールの途中で男に連れ込まれるのを目撃したのだという。中に案内すると予備の服を渡して着替えるように促す。着替えて出てきた美月にジュースを差し出した。ジュースの甘さにほっとする。
「刑事さんですか?」
「ここの警察署に所属している特別班の一員よ。でも、あなた。なぜ、狙われているの?」
「私、いじめられていて――きっと、その人の仕業だと思います」
千夏が警察の人でもボイスレコーダと写真のことを話すつもりはない。それに、彼女たちの元に届くとは限らない。三月が勝手に動くわけにはいかなかった。
「いじめ? どうして?」
「私とその人が同じ人が好きで、私が愛されているから気に食わないのだと思います」
「助けてくれる人はいないの?」
「助けてくれる人はいます」
美月は樹の姿が頭をよぎる。
仲良くなったクラスメートを思い出す。美月自身、恵まれた環境にいると思っていた。
愛されて、守られて、思われて。
自分はどれだけ、幸せなのだろうか?
「苦しかったら、その人たちの甘えてもいいと思うよ」
「でで、私のせいで愛する人が傷つきました。今も眠っています。初対面の人にこんな話を――ごめんなさい」
美月は視線を下におとす。
こうして、千夏と話せるのも親近感を感じたためなのか。
「話を聞くのも私たちの仕事よ」
「ありがとうございます。少し気持ちが落ち着きました」
「私たちも動こうか?」
「いえ――これは、私が解決すべきことですから」
「あなたは強いわね。送っていくわ」
「今は外の景色を見たい気分です」
千夏の送って行こうかという言葉に美月は首をふった。景色を見ながら樹がいる病院に帰りたかった。
*
「千夏」
千夏は圭太と渡に呼ばれる。
「私はいくわね」
「ありがとうございました」
美月は頭をさげた。
*
千夏は彼女を見送った。少しだけ、気になったのか渡と圭太も顔を覗かせている。
「千夏。今の子は?」
「――ん? 人生相談といったところかな?」
「いじめか?」
「そんなところ」
「圭太、千夏」
「どうした? 渡」
「なぁに? 渡る」
「あの子はきっと強くなす。将来化けるぞ」
渡は言いきった。
勘がいい彼のことだ。
信じてもいいのだろうが、付き合いの短い千夏には分からない。
「圭太、本当なの?」
圭太に聞いてみる。
「信じるか信じないかは千夏次第だろう」
「あ、はぐらかしたわね。圭太」
席に戻った二人はその間にも書類を、分別する手を休めることはない。千夏も大きく背伸びをすると、山積みになっている書類を手にとった。
美月と桜、美晴は声をあげた。三人が怒るのは仕方がないことだろう。
海外旅行から帰国してみれば、樹が意識不明の重体で眠っているのだから。
いつ目覚めるか分からない眠りについているのだから。
今も色々な延命治療の機会が取り付けられている。その樹の姿を見て、美月はショックをうけた。自分の中で彼は何事にも負けることなく、いつも強いイメージがある。
その樹が弱っている。
美月は彼の手をとった。
(ごめん――ごめんね、樹。本当は私のことだから、自分が向き合わないといけなかったのに、立ち向かわなければいけなかったのに。私の弱さがあなたを傷つけた。あなたに甘えている自分がいた)
熱もあるのか握っている手は熱かった。呼吸器をしていても息をするのもつらそうである。樹の額にある汗を濡らしたタオルで引き取る。
険しかった顔が多少、和らいだ気がした。
*
昭の背後で早く話せという美晴と桜の威圧感がすごかった。
「それと、今回のことは三人には話さないでください」
「どうして?」
「あの三人には闇は似合わない」
「分かった――約束をしよう」
樹と契約した時に交わした握手の感触を昭は思い出していた。ひんやりとした冷たい手だった。だからといって、彼の心が冷たいわけではない。
今回、命を試みず美月を助けてくれた。
ありさから助け出してくれた。
(美月をいじめという絶望の淵から光をあててくれた。滝本ありさに対して、反撃の狼煙をあげてくれた)
彼に対し感謝の言葉しかなかった。
*
ぼんやりとしていた昭は、さくらに叩かれて現実に引き戻された。二人のきつい眼差しに耐えられない。
逃げきれない。
(逆らえない。樹君、ごめん。約束を破ることを許してくれ)
心の中で樹に謝罪をする。
昭はボイスレコーダに録音した声を聞かせる。樹の悔しそうな声に、美月は胸が揺さぶられた。その声に心がかき乱される。きっと、自分がこんな感情になるのは、樹に関してのみだろう。
(何で? 何で、樹だけが苦しい思いをしなければいけないの?)
昭が持っていたボイスレコーダを美月は奪った。彼が驚いた表情を見せる。もし、樹が助けてくれなかったら、人体実験に利用されていたのは自分かもしれない。
そう思うと鳥肌が立つ。
「美月?」
「美月ちゃん?」
美晴と桜が美月を見る。
「警察に送る仕事は私がやるわ」
これ以上、逃げるわけにはいかない。
「けれど、危険すぎる。滝本側に知られたお前の命はないぞ」
昭がきつめに警告をする。
「お願い――これぐらい私にさせて」
(動かないと何も変わらないし、始まらない。弱い自分とさようならをするためには行動しないと)
今度は自分が樹を守る番である。
自分だって何かをしたい。
樹を救いたいし、気持ちに答えたい。
もう、樹や昭、桜、美晴に守られるのは嫌だった。
ともに戦いたかった。
「昭さん。美月の気持ちはあなたにも分かるでしょう? 美月も樹君を守りたいのよ」
桜に言われて昭は言葉を失う。
「昭さん。私からもお願いするわ」
美晴は昭に頭を下げた。
「桜。美晴さん。分かった。これを、お前に託そう」
美月にボイスレコーダと写真を渡す。
「やり方は私に任せてもらってもいいかしら?」
「美月が思うようにやってみればいい」
「樹をお願いね」
病院を出て自宅に戻り、準備をする。ありさは美月の字を知っている。手書きの場合、すぐにばれてしまうだろう。パソコンをとも考えたが、消去しても痕跡が残ってしまうことがある。痕跡が残ってしまえば、ありさたちに追跡される可能性があった。
美月は樹や昭のようには戦えない。
戦闘面でも情報面でも負けてしまう。
(そうだわ。この方法なら必ず目につくはずよ)
唯一、思いついたのは新聞の一文字を切り取り封筒に貼っていく方法だった。誘拐事件の小説やドラマによく使われる手法である。古典的な方法だが、警察の目にもとまりやすいメリットもあった。使える文字を新聞から探すのは、対戦だが弱音を吐いてはいられない。
(やると決めたからにはやるしかないのよ)
新聞を広げて丁寧に切り取り、封筒に貼っていく。今回の事件に関与されている人たちの写真も一緒に同封しておいた。
あとは、ポストに投函するだけである。指紋も分からないように手袋もしていた。季節は冬のために、手袋をしていても誰も不審には思わないだろう。
(冷静に――冷静に)
美月は心の中で唱える。
(大丈夫。私ならできるわ。違う。やらないといけないのよ)
樹のために。
ありさと決着をつけるために。
深呼吸をして平然と歩く。平然と歩いていれば、誰も事件の証拠を持っているとは思わないだろう。美月とて一市民でしかない。興味をもつ人などいないだろう。そのとおりで、誰も美月を見ようとはしない。
まっすぐ前を向いて歩く。
美月の瞳には絶対にやり遂げるといった強い位置が宿っていた。信号の反対側にポストが見えている。周囲の人ごみに紛れてポストに向かう。無事に届きますように――聞いてもらえますようにと祈りながらポストに投函する。
「坂本美月だな?」
病院に戻る途中で男に声をかけられて、裏路地に引きずり込まれた。明らかに、一般人とは違う。ありさが呼んだ男だろう。美月はそこに転がっている石を投げる。その隙を見て逃げ出そうとしたが、男に腕をとられてしまう。
男が美月の服を破った。
すると、一台のオートバイが止まる。運転手は美月に上着をかけてボタンを止め、オートバイに乗せるとそのまま走り出した。暫くすると、警察署の前で停車した。運転手がヘルメットをとる。
「これでもう大丈夫よ」
「あなたは?」
「私? 私は川口千夏」
千夏は美月に警察手帳を見せる。ちょうど、パトロールの途中で男に連れ込まれるのを目撃したのだという。中に案内すると予備の服を渡して着替えるように促す。着替えて出てきた美月にジュースを差し出した。ジュースの甘さにほっとする。
「刑事さんですか?」
「ここの警察署に所属している特別班の一員よ。でも、あなた。なぜ、狙われているの?」
「私、いじめられていて――きっと、その人の仕業だと思います」
千夏が警察の人でもボイスレコーダと写真のことを話すつもりはない。それに、彼女たちの元に届くとは限らない。三月が勝手に動くわけにはいかなかった。
「いじめ? どうして?」
「私とその人が同じ人が好きで、私が愛されているから気に食わないのだと思います」
「助けてくれる人はいないの?」
「助けてくれる人はいます」
美月は樹の姿が頭をよぎる。
仲良くなったクラスメートを思い出す。美月自身、恵まれた環境にいると思っていた。
愛されて、守られて、思われて。
自分はどれだけ、幸せなのだろうか?
「苦しかったら、その人たちの甘えてもいいと思うよ」
「でで、私のせいで愛する人が傷つきました。今も眠っています。初対面の人にこんな話を――ごめんなさい」
美月は視線を下におとす。
こうして、千夏と話せるのも親近感を感じたためなのか。
「話を聞くのも私たちの仕事よ」
「ありがとうございます。少し気持ちが落ち着きました」
「私たちも動こうか?」
「いえ――これは、私が解決すべきことですから」
「あなたは強いわね。送っていくわ」
「今は外の景色を見たい気分です」
千夏の送って行こうかという言葉に美月は首をふった。景色を見ながら樹がいる病院に帰りたかった。
*
「千夏」
千夏は圭太と渡に呼ばれる。
「私はいくわね」
「ありがとうございました」
美月は頭をさげた。
*
千夏は彼女を見送った。少しだけ、気になったのか渡と圭太も顔を覗かせている。
「千夏。今の子は?」
「――ん? 人生相談といったところかな?」
「いじめか?」
「そんなところ」
「圭太、千夏」
「どうした? 渡」
「なぁに? 渡る」
「あの子はきっと強くなす。将来化けるぞ」
渡は言いきった。
勘がいい彼のことだ。
信じてもいいのだろうが、付き合いの短い千夏には分からない。
「圭太、本当なの?」
圭太に聞いてみる。
「信じるか信じないかは千夏次第だろう」
「あ、はぐらかしたわね。圭太」
席に戻った二人はその間にも書類を、分別する手を休めることはない。千夏も大きく背伸びをすると、山積みになっている書類を手にとった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説


【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。


あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる