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シークレット・ラスト3
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位置情報を頼りに部屋に突入すると、男が麻子にナイフを突きつけて立っていた。
「この娘がどうなってもいいのか!」
幸美、雄二、琥珀が念のために銃を手放す。
「それは、どうかしら?」
三人が不敵に笑った。
勝つ自信があるからこその笑みである。
読み取れる余裕。
痛い目にあうのはそっちだと言っているようだった。
「何だと!」
今まで腕の中にいた麻子が男の腹に力一杯肘鉄を食らわした。記憶はなくても体は覚えていたらしい。雄二から教えてもらった護身術。
ここで力を発揮したのである。
吹き飛ばされた男を、情報屋が回収していく。恐らく、この男は一生塀の中で暮らすことになるだろう。
愛情を知らない孤独な男の最後だ。
「あなたたちは誰?」
「私たちはあなたの味方よ」。
――あさちゃん!
――麻子!
どこかで、聞いたことがある。
激しい頭痛がした。
思い出そうとするが、思い出せない。頭の中に靄がかかっているかのようだ。
それと、同時に残っているのは人を刺した感触。
流れていく赤い血。
犯した罪の大きさ。
残っているのは罪悪感。
今になってそれが押し寄せてきた。記憶を奪われているとしても、やってはいけないことである。琥珀や雄二、琥珀に聞いてみても、裁かれることはないという話だった。
麻子を愛してくれている人が許してくれているのだという。こんな汚れてしまった自分を好きだと言ってくれているというのだ。
傍にいてくれるというのだ。
そんな彼のことを忘れてしまった自分が悔しい。
悔しくて仕方がない。
いつか、ごめんなさいと伝えることができるのだろうか。
それとも、彼の前から姿を消した方がいい?
顔も見たくない、声も聞きたくないと言われたらどうしよう。
そんな感情が麻子の中をぐるぐると回る。かき乱される。
「――私は」
「無理はしなくていい。ゆっくりでいい」
気遣う言葉。
どうして、この人たちはこんなに優しいのだろうか。
人を思うことができるのだろうか。
「私、何であなたたちのことを忘れてしまったのかな?」
麻子が本音を零す。
くしゃりと顔を歪めた。
「もしかしたら、彼を見たら思い出すかもしれないわ」
「彼?」
「そう。あなたを愛してくれている人のことだ」
先ほど、昴が目を覚ましたと病院から連絡があった。
「でも、昴君の負担にならないかしら?」
「彼からラインが来ていているの」
<麻子を連れてきてみてほしい。記憶を取り戻すことができるかやってみる>
琥珀が幸美と雄二にラインを見せる。昴とて目が覚めたばかりで傷が痛いはずだ。ろくに動けないはずなのに、自分よりも麻子を優先するとは彼らしい。
それに、麻子は昴のために。
麻子は昴のために。
生きているみたいなものだ。
そんな二人を引き離すことなどできない。三人にとって昴と麻子は希望の星だった。この先にあるだろう結婚式――子供の顔を見られるまで死ねない。麻子と昴のそのことを知られてしまったら笑われそうだ。
心の中にしまっておこう。
「行ってみる?」
「うん」
麻子は幸美、琥珀雄二と一緒に車に乗った。
「この娘がどうなってもいいのか!」
幸美、雄二、琥珀が念のために銃を手放す。
「それは、どうかしら?」
三人が不敵に笑った。
勝つ自信があるからこその笑みである。
読み取れる余裕。
痛い目にあうのはそっちだと言っているようだった。
「何だと!」
今まで腕の中にいた麻子が男の腹に力一杯肘鉄を食らわした。記憶はなくても体は覚えていたらしい。雄二から教えてもらった護身術。
ここで力を発揮したのである。
吹き飛ばされた男を、情報屋が回収していく。恐らく、この男は一生塀の中で暮らすことになるだろう。
愛情を知らない孤独な男の最後だ。
「あなたたちは誰?」
「私たちはあなたの味方よ」。
――あさちゃん!
――麻子!
どこかで、聞いたことがある。
激しい頭痛がした。
思い出そうとするが、思い出せない。頭の中に靄がかかっているかのようだ。
それと、同時に残っているのは人を刺した感触。
流れていく赤い血。
犯した罪の大きさ。
残っているのは罪悪感。
今になってそれが押し寄せてきた。記憶を奪われているとしても、やってはいけないことである。琥珀や雄二、琥珀に聞いてみても、裁かれることはないという話だった。
麻子を愛してくれている人が許してくれているのだという。こんな汚れてしまった自分を好きだと言ってくれているというのだ。
傍にいてくれるというのだ。
そんな彼のことを忘れてしまった自分が悔しい。
悔しくて仕方がない。
いつか、ごめんなさいと伝えることができるのだろうか。
それとも、彼の前から姿を消した方がいい?
顔も見たくない、声も聞きたくないと言われたらどうしよう。
そんな感情が麻子の中をぐるぐると回る。かき乱される。
「――私は」
「無理はしなくていい。ゆっくりでいい」
気遣う言葉。
どうして、この人たちはこんなに優しいのだろうか。
人を思うことができるのだろうか。
「私、何であなたたちのことを忘れてしまったのかな?」
麻子が本音を零す。
くしゃりと顔を歪めた。
「もしかしたら、彼を見たら思い出すかもしれないわ」
「彼?」
「そう。あなたを愛してくれている人のことだ」
先ほど、昴が目を覚ましたと病院から連絡があった。
「でも、昴君の負担にならないかしら?」
「彼からラインが来ていているの」
<麻子を連れてきてみてほしい。記憶を取り戻すことができるかやってみる>
琥珀が幸美と雄二にラインを見せる。昴とて目が覚めたばかりで傷が痛いはずだ。ろくに動けないはずなのに、自分よりも麻子を優先するとは彼らしい。
それに、麻子は昴のために。
麻子は昴のために。
生きているみたいなものだ。
そんな二人を引き離すことなどできない。三人にとって昴と麻子は希望の星だった。この先にあるだろう結婚式――子供の顔を見られるまで死ねない。麻子と昴のそのことを知られてしまったら笑われそうだ。
心の中にしまっておこう。
「行ってみる?」
「うん」
麻子は幸美、琥珀雄二と一緒に車に乗った。
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