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シークレット6
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麻子にとっては分からない様々な装置が並んでいた。
ピッ、ピッと刻まれる機械の一定のリズム。
ここはクローンを作っている研究所の一室。
麻子はそこから抜け出して昴に会いに行ったのだ。彼に会いに行ったのも興味本位だった。
やはり、自分と同じからっぽの瞳。
似たような人がいるのだと嬉しかった。
ようやく、居場所を見つけられたのである。
ならば、その場所を守らなければいけない。
全力で戦わないといけない。
もし、昴が殺されてしまえば何もかもが変わってしまう。麻子は台所から包丁を取り出した。
自分の命は自分で決める。
誰にも支配させない。
「コピー」や「オリジナル」など関係ない。
そう思ったのは自分の「オリジナル」である加奈を家族として昴が接してくれたから。
そのことに気が付き両親に順応な自分を演じることを止めた。
だから、雨が降りしきる葬式の日。
昴に会いに行ったのだ。
――もう、殺すしかない。
麻子は包丁を振り上げた。
「何だ? やるのか?」
「――くっ」
それも、簡単に丸め込まれてしまった。
「所詮、お前は「コピー」でしかない」
「「コピー」でも生きる権利はあるわ!」
彼女は抵抗をする。ここまで抵抗されるとは思ってもいなかったのだろう。雄二が驚いて動きを止めた。包丁が光を浴びてキラリと光る。
「お前に生きる権利などない」
「あなた、止めて!」
バンッと部屋の扉が開いた。
その場には警察官が立っている。
どうやら、母・しずかが呼んだらしい。
「母さん」
「もう、大丈夫だからね」
彼女が麻子を抱きしめる。けれど、しずかも雄二の実験に参加をしていた。
その部分では同罪だ。
雄二はクローン研究者の第一人者として。
しずかは政治家の娘として。
元々、雄二としずかは政略結婚である。二人の間に愛情はなかった。お陰で雄二の実験は軌道にのり、政府に認められるものになったのである。子供ができなかったこともあり、桜井加奈と自分と姉妹のクローンを作ったのである。
その後、加奈は同じく子供ができなかった桜井家に引き取られていった。その経緯もあり、麻子は早く一人前の大人になるしかなかった。
「私の気持ちも考えずに今更母親面しないでよ!」
「可哀そうな麻子ちゃん。桜井昴と加奈に感化されたのね」
私の大切な子を誑かして! としずかが憤慨する。
「感化されてなんかいないわ! これは、私の本心よ!」
「あなたはそんなことを言う子じゃないわ」
これは、ダメだ。
麻子の言葉を聞かない。
雄二に感化されていた。
「しずか、煩いぞ。その人を連れていけ」
裏切り者! 絶対に許さない! と叫びながらしずかは連行されていった。
「父さん」
麻子は部屋から出て行こうとして雄二を止めた。彼が足を止めて麻子と向き合う。
向けられる瞳。
その瞳は真っ直ぐで引き込まれそうになる。
「何だ?」
「どうして、私を助けたの?」
「理由なんてないお前はお前の道をいけばいい」
思いもよらない応援の言葉。
さっきまでの態度と全く違う。
まるで、別人。
先ほどまでの殺気が嘘のようだ。
他の人の魂が乗り移ったかのようである。
「裏」と「表」。
二つの顔を使い分けている。
どちらが、本当の雄二なのだろうか?
何を隠しているのだろうか?
父親には変わりないが、麻子には分からない。こんなに、性格が掴めない人は初めてだった。それに、変に緊張をしている。
手にじっとりと汗をかいている。
「私は私の道を?」
「そう。決まっているのだろう?」
その質問と聞いて浮かんだのは昴の顔。
どうして、雄二は昴のことを知っているのだろうか?
彼には昴に会いに行ったことがばれているようだ。
でも、責めようとはしない。
麻子を傷つけないように話し方を選んでいるかのようだった。
「あなたは何者なの?」
麻子は直球で聞く。
聞いても返事が返ってこないことは理解をしている。それでも、無意識に聞いていた。彼はまだ内緒だよ、いずれ分かるさと笑う。
麻子は呆然としたまま雄二が出て行った扉を見つめた。
ピッ、ピッと刻まれる機械の一定のリズム。
ここはクローンを作っている研究所の一室。
麻子はそこから抜け出して昴に会いに行ったのだ。彼に会いに行ったのも興味本位だった。
やはり、自分と同じからっぽの瞳。
似たような人がいるのだと嬉しかった。
ようやく、居場所を見つけられたのである。
ならば、その場所を守らなければいけない。
全力で戦わないといけない。
もし、昴が殺されてしまえば何もかもが変わってしまう。麻子は台所から包丁を取り出した。
自分の命は自分で決める。
誰にも支配させない。
「コピー」や「オリジナル」など関係ない。
そう思ったのは自分の「オリジナル」である加奈を家族として昴が接してくれたから。
そのことに気が付き両親に順応な自分を演じることを止めた。
だから、雨が降りしきる葬式の日。
昴に会いに行ったのだ。
――もう、殺すしかない。
麻子は包丁を振り上げた。
「何だ? やるのか?」
「――くっ」
それも、簡単に丸め込まれてしまった。
「所詮、お前は「コピー」でしかない」
「「コピー」でも生きる権利はあるわ!」
彼女は抵抗をする。ここまで抵抗されるとは思ってもいなかったのだろう。雄二が驚いて動きを止めた。包丁が光を浴びてキラリと光る。
「お前に生きる権利などない」
「あなた、止めて!」
バンッと部屋の扉が開いた。
その場には警察官が立っている。
どうやら、母・しずかが呼んだらしい。
「母さん」
「もう、大丈夫だからね」
彼女が麻子を抱きしめる。けれど、しずかも雄二の実験に参加をしていた。
その部分では同罪だ。
雄二はクローン研究者の第一人者として。
しずかは政治家の娘として。
元々、雄二としずかは政略結婚である。二人の間に愛情はなかった。お陰で雄二の実験は軌道にのり、政府に認められるものになったのである。子供ができなかったこともあり、桜井加奈と自分と姉妹のクローンを作ったのである。
その後、加奈は同じく子供ができなかった桜井家に引き取られていった。その経緯もあり、麻子は早く一人前の大人になるしかなかった。
「私の気持ちも考えずに今更母親面しないでよ!」
「可哀そうな麻子ちゃん。桜井昴と加奈に感化されたのね」
私の大切な子を誑かして! としずかが憤慨する。
「感化されてなんかいないわ! これは、私の本心よ!」
「あなたはそんなことを言う子じゃないわ」
これは、ダメだ。
麻子の言葉を聞かない。
雄二に感化されていた。
「しずか、煩いぞ。その人を連れていけ」
裏切り者! 絶対に許さない! と叫びながらしずかは連行されていった。
「父さん」
麻子は部屋から出て行こうとして雄二を止めた。彼が足を止めて麻子と向き合う。
向けられる瞳。
その瞳は真っ直ぐで引き込まれそうになる。
「何だ?」
「どうして、私を助けたの?」
「理由なんてないお前はお前の道をいけばいい」
思いもよらない応援の言葉。
さっきまでの態度と全く違う。
まるで、別人。
先ほどまでの殺気が嘘のようだ。
他の人の魂が乗り移ったかのようである。
「裏」と「表」。
二つの顔を使い分けている。
どちらが、本当の雄二なのだろうか?
何を隠しているのだろうか?
父親には変わりないが、麻子には分からない。こんなに、性格が掴めない人は初めてだった。それに、変に緊張をしている。
手にじっとりと汗をかいている。
「私は私の道を?」
「そう。決まっているのだろう?」
その質問と聞いて浮かんだのは昴の顔。
どうして、雄二は昴のことを知っているのだろうか?
彼には昴に会いに行ったことがばれているようだ。
でも、責めようとはしない。
麻子を傷つけないように話し方を選んでいるかのようだった。
「あなたは何者なの?」
麻子は直球で聞く。
聞いても返事が返ってこないことは理解をしている。それでも、無意識に聞いていた。彼はまだ内緒だよ、いずれ分かるさと笑う。
麻子は呆然としたまま雄二が出て行った扉を見つめた。
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