8 / 31
この国ができたころのこと
8
しおりを挟む
これが、王子さまのお生まれです。
ティアーナ妃神さまから譲られたものは、命と、明け方の夜空のようなその瞳のお色だけ。
あとは、冥王さまをそのまま小さくしたようなお姿です。
でも、冥王さまが内心に抱えておられる故郷をなつかしいと思う気持ちや、孤独といった感情は、王子さまにはありません。だって王子さまはまだ物心がついたばかりで、仲間に捨てられたりふるさとを去ったり、三界の一つを統べる役割を背負わされたり、愛する方と涙ながらのお別れをしたことはないのですから。
王子さまは天真爛漫に日々、いたずらをしたり、かくれんぼをしたりと周囲の魔族たちをてんやわんやさせつつ、冥王宮でお父さまと幸せに暮らしていました。冥界全土の精霊たちの半分を受けついだ、といっても、神さまらしいことはまだ何ひとつできません。精霊たちはとくになにかを命じなくてもかってに活動しています。でも精霊たちは、おつかえする神さまがふたりに増えてうれしいようです。とりわけ小さい子神さまがかわいくて仕方がない様子で、いつも周囲に集まってきます。
お父さまにとっても、王子さまの存在は救いでした。
王子さまにとってお父さまが唯一の家族であるのと同じく、お父さまにとっても、御子さまは寂しさをいやしてくれる唯一の大切な家族なのです。女神さま亡きあと、ここ死者の国に、神さまという存在はお互いだけになってしまいましたから。
時々、お父さまが、お母さまのことを思い出して目を潤ませようとすると、王子さまはそれをさせないかのように、いつもいたずらを思いついて実行するのです。そうすると王宮じゅうが混乱して、冥王さまは大抵われに返り「なんのさわぎだ?」としもべの魔族たちに聞かざるを得なくなります。
王子さまの起こした騒動だと分かると、冥王さまはため息をついて魔族の侍女たちとともに王子さまを探し回りました。たいていは精霊たちが居場所を知らせてくれるので、王子さまはどこへ隠れてもすぐに居所がばれて、高い位置から首根っこをむんずと掴まれてしまいます。子どもの神さまは、お付きの精霊をまだじょうずに散らせないのでかくれんぼは無理なのです。親神が探しやすいようになっているのです。
吊り上げられた王子さまは反省のしるしに冥王さまの首すじに抱きついて、ほっぺにキスをします。ティアーナさまゆずりの深い青の瞳をキラキラさせて屈託なく笑うようすに、冥王さまはいつしか過去の悲しみのことなど忘れて、お小言も何となく引っこんでしまい、困った苦笑いはほんものの笑顔になっていくのでした。
ティアーナ妃神さまから譲られたものは、命と、明け方の夜空のようなその瞳のお色だけ。
あとは、冥王さまをそのまま小さくしたようなお姿です。
でも、冥王さまが内心に抱えておられる故郷をなつかしいと思う気持ちや、孤独といった感情は、王子さまにはありません。だって王子さまはまだ物心がついたばかりで、仲間に捨てられたりふるさとを去ったり、三界の一つを統べる役割を背負わされたり、愛する方と涙ながらのお別れをしたことはないのですから。
王子さまは天真爛漫に日々、いたずらをしたり、かくれんぼをしたりと周囲の魔族たちをてんやわんやさせつつ、冥王宮でお父さまと幸せに暮らしていました。冥界全土の精霊たちの半分を受けついだ、といっても、神さまらしいことはまだ何ひとつできません。精霊たちはとくになにかを命じなくてもかってに活動しています。でも精霊たちは、おつかえする神さまがふたりに増えてうれしいようです。とりわけ小さい子神さまがかわいくて仕方がない様子で、いつも周囲に集まってきます。
お父さまにとっても、王子さまの存在は救いでした。
王子さまにとってお父さまが唯一の家族であるのと同じく、お父さまにとっても、御子さまは寂しさをいやしてくれる唯一の大切な家族なのです。女神さま亡きあと、ここ死者の国に、神さまという存在はお互いだけになってしまいましたから。
時々、お父さまが、お母さまのことを思い出して目を潤ませようとすると、王子さまはそれをさせないかのように、いつもいたずらを思いついて実行するのです。そうすると王宮じゅうが混乱して、冥王さまは大抵われに返り「なんのさわぎだ?」としもべの魔族たちに聞かざるを得なくなります。
王子さまの起こした騒動だと分かると、冥王さまはため息をついて魔族の侍女たちとともに王子さまを探し回りました。たいていは精霊たちが居場所を知らせてくれるので、王子さまはどこへ隠れてもすぐに居所がばれて、高い位置から首根っこをむんずと掴まれてしまいます。子どもの神さまは、お付きの精霊をまだじょうずに散らせないのでかくれんぼは無理なのです。親神が探しやすいようになっているのです。
吊り上げられた王子さまは反省のしるしに冥王さまの首すじに抱きついて、ほっぺにキスをします。ティアーナさまゆずりの深い青の瞳をキラキラさせて屈託なく笑うようすに、冥王さまはいつしか過去の悲しみのことなど忘れて、お小言も何となく引っこんでしまい、困った苦笑いはほんものの笑顔になっていくのでした。
0
あなたにおすすめの小説
マジカル・ミッション
碧月あめり
児童書・童話
小学五年生の涼葉は千年以上も昔からの魔女の血を引く時風家の子孫。現代に万能な魔法を使える者はいないが、その名残で、時風の家に生まれた子どもたちはみんな十一歳になると必ず不思議な能力がひとつ宿る。 どんな能力が宿るかは人によってさまざまで、十一歳になってみなければわからない。 十一歳になった涼葉に宿った能力は、誰かが《落としたもの》の記憶が映像になって見えるというもの。 その能力で、涼葉はメガネで顔を隠した陰キャな転校生・花宮翼が不審な行動をするのを見てしまう。怪しく思った涼葉は、動物に関する能力を持った兄の櫂斗、近くにいるケガ人を察知できるいとこの美空、ウソを見抜くことができるいとこの天とともに花宮を探ることになる。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで
猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。
※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。
※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。
※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。
※2026.1.5に完結しました! 修正中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる