泉界のアリア

佐宗

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番外編

かけがえのない日々㉒※

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「ね、お願いです……うずいて、たまらない、から……動いて…」
「全く欲しがり屋だね。……少し力を緩めてごらん、息を吐いて」

 言われた通り、悦びにひきる後孔の力を抜く。こんなに力が籠っていたのかと、自分でも驚いた。
 王は少々身を起こし、深い吐息をついてみせる。
「……あまり、締めすぎてはいけないよ。持っていかれそうになる」

 王が、自分の内壁のきつさに少し追い立てられていたと知り、歓喜と愛おしさがこみ上げてくる。ナシェルは済まなそうにおずおずと両手を伸ばした。流れる黒髪の間をぬって王の秀麗な頬に触れ、額ににじんだ汗を指でぬぐう。ナシェルはナシェルで、あいかわらず内臓を串刺されるような肉の圧力に襲われ続けている。

 繋がった興奮と悦びに、互いに少しばかり余裕を失っている。……可笑おかしいけれど、王が一方的に猛々しく攻めるだけでなく時折そういう表情を垣間見せてくれるのも、また嬉しい。

「悪い子だ、ナシェル」
 言葉と裏腹に、王の視線は甘く柔らかく注がれる。ナシェルは腰のいたずらを封じられて、欲しさでたまらず艶めかしい視線で見上げる。

「……だって、我慢できなくて……。いい子にするから――お願い、もっと奥にきて」
 切実な訴えに、王は溜飲を下げたように目尻を蕩かせた。

「――こうして……突いて欲しいの?」
「――っあ、ぁ!」

 不意に膝を抱えられ、ぐっと奥の奥まで挿入された。ナシェルの体は急な突き上げを受けてびくんと反りかえる。胸の尖りについたピアスの鎖が、跳ねた衝撃で肌を打つ。

「ああっ、いいっ、もっとして―――」
 王の肉を咥え込んだまま、うわ言のように口走る。全身が熱くなり肌が薔薇色に紅潮してゆく。
 しどけなく反ったナシェルの肢体を眺め下ろし、王がほれぼれと賛じた。

「綺麗だ、ナシェル。それに今日はいつにもまして感度が良い――どうしてだろう」
「あっ、そんな、わ、分かんな……ぃ……」
「……乳首ココをたくさんしたからかな」
「んうぅ――……!」


 左胸の金の輪をそっと指の腹で撫でられ、ひき攣れたような感覚にびくびくと腰が躍る。
 また下腹に力が入りそうになり、焦りで動悸を感じる。

「や、ぁっ――……!」
「まだ、痛む?」
「じんじんしてる…、…から……や、触っちゃ……」

 しかし王はそのままピアスの鎖を指で持ちあげ、半泣きのナシェルが怖がって首を振るのを眺めながら、ゆっくりと腰を前後に使いはじめた。
 はじめは甘く突かれて、ナシェルはひぃひぃと善がる。
 やがて抜き差しは、臓物が根こそぎもっていかれるような激越なものに変わっていった。

 重たく固い弓形ゆみなりが腸孔の深奥部まで、寸分の躊躇いもなく突き入れられる。引くときには特大の雁首カ リで内腔を削ぎ取られるような、凄まじい快感が襲ってくる。
 荒波のような抽送に翻弄され、待ち遠しかった快感に、ナシェルは喉を嗄らしてよがりいた。

「ああ……! んっ――はぁ――」

 じゅくじゅくとした卑猥な水音に王の吐息、ナシェルの上ずった喘ぎが重なり天蓋の内に響き渡る。声を殺したくても呼吸するのが精いっぱいで、開きっぱなしの口からとめどなく鳴声があふれてしまう。

 時おり鎖をかるく揺すられると乳首に衝撃が伝わり、とろけた精神に稲妻のような緊張が奔る。愛しい王に与えられる刺激はすべて脳内で快楽へと切り替えられて、ナシェルの意識を陶酔の淵へと誘う。
 いつしか鎖で乳首を引っ張られる都度に、無意識にくぱくぱと括約筋を開閉させて責めに応えていた。

「ひ、ぃっ!…ん、っふ……ぁあっ! きもちぃい、すご、い……父上っ……ちちうえ……っすき……」
「ナシェル、可愛い、愛してる……中が熱い、蕩けそうだよ……」

 腰をしならせ全身汗に塗れて、時間も忘れまぐわった。



 ……脈打つ灼熱に体腔を隅々まで検められて、朦朧としかけた頃、不意に二の腕を引かれ体を引き起こされた。
 繋がったまま、胡坐あぐらの王の上に足を広げて座らされる。

 ふらふらと揺れる頭をようやく起こすと、王の紅玉の瞳と目が合った。この体勢でするのかと視線で問えば、王が肯定するように瞼を細めて、背を抱きしめ、ナシェルの鎖骨に舌を這わせてくる。

「んっ……はぁ、はぁ、あぅ…ッ……」

 今度は体面座位でじっくりと犯され、首を舐められて、ナシェルも応じるように王の肩に縋り腰を揺り動かす。しゃらしゃらと胸の鎖も揺れる。全身を羞恥にあかく染めながら、ナシェルは力強い愛に応えるべく下肢の力を振り絞った。

「ナシェル、ここ、自分でしてごらん」

 繋がりながら王が自慰を促してくる。腰を上下させながら、とても無理だとナシェルは首を振って赦しを乞うが、王の手がナシェルの片腕をとり性器を握らせてくる。

 その上から、王の手がナシェルの指ごと、それを包み込んだ。

 さきほど香油を塗りたくられたそこは二人の腹の間に挟まれ苦しげに張りつめて、鈴口から透明な蜜を滴らせている。指ごと父の大きな手に包み込まれると、さらなる焦熱がこみ上げてきた。

「手を動かして……こうして」
「あっ、あっ」

 誘導されるように手を動かされて、そり返った花芯がますます固く昂る。
 思わず腰の動きを忘れそうになると、咎めるように叱咤するように、下から強い突き上げが来る。

 ナシェルはいつしか陶然となり、上下に揺れながら己の性器を無心に扱いていた。興奮で涙が溢れ、汗とともに顎をしたたり落ちる。ぬれた頬に髪が貼りついて気持ちが悪いが、顔をぬぐう余裕もない。

「ああっ……だめ、もう、持たない……イッちゃう……いっちゃうの、父上ぇ」
「――いいよ、見ててあげる。逝きなさい」
 悠々とした表情の王も、吐く息を少し荒らげている。

 視線を交わし、後孔に嵌った逸物に内襞をめくりあげられながら、自分のモノを一心不乱に追い上げてゆく。

「あっ……あぁ゛っ、一緒にイって……!……っ、ぅあああっ―――」

 喉を嗄らして哀願しつつ、ナシェルは背を反らして白濁を吹き散らした。
 同時に王も獣の唸りのような声を発し、ナシェルの肩を狂おしいほどに引き掴んで、奥深くに欲望を開放する。


 ……瑞々しい神司で体内を満たされて、ナシェルは陶然と王の胸の中に倒れ込んだ。
 疲労が頂点に達し、絶頂感も手伝って、猛烈な睡魔が襲ってくる。
 王は二度、三度と、爆ぜる雄をナシェルの中に擦りつけ精を注ぎ込んだ。






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