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第十二章 そして新大陸へ!
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しおりを挟む「ちょっと金目のものを借りたいだけなのだ。冥界へ戻ったらきちんと相応額は支払う。今ここで身ぐるみ脱ぎ捨ててくれたらすぐに冥界へ送り返してやるから、一瞬だけ我々に協力してはくれぬか」
「へっ、ふっ服のことですか!? 身ぐるみ脱ぎ捨てる……って!!?」
「そうだ。着ているものも装飾品も全て置いていけ」
完璧に『追いはぎのセリフ』を口にすることになってしまったのは至極残念だ。しかしファルクの常日頃の所業を鑑みるにこれぐらいの仕返しは必要だというのと、旅を続けるのであればやはり当面の資金は必要なのである。
王子はファルクの目の前に屈んで顔を近づけ、凄みを利かせた。
「やれ、今すぐだ。主君の命令だぞ」
「ご、ご冗談もほどほどになさってくださいよ殿下。わたくしは殿下のお父君の臣下なのであって、貴方様の直接の臣下ではございませ――」
しどろもどろに反論しようとしたファルクは、しゃがんできたナシェルの背後に文字通り『主君』が立っているのに気づき、目玉を飛び出させた。
「め、冥王……陛下――――!!?」
「ヴァルトリス公。じつは王子が諸事情でなるべく迅速に、高値で換金できそうな物品を所望しておってな。済まぬが協力してやってくれ。身ぐるみ置いてゆくだけでよい―――」
「ええぇ―――っ!!?? っきゃあああぁ~~!!」
ヴァニオンが有無も言わさずファルクの上着を脱がしにかかる。揉み合いとなり、ファルクの上着の金のボタンがプツンと弾け飛んだ。
コロコロ……、と転がってきた派手なボタンを拾い上げ、ナシェル王子は満足げに微笑する。
「フッ、純金製か。素晴らしいぞファルク……」
ヴァニオンが手際よくファルクを裸に剥いていきながらウンザリした声を上げる。
「まさかテメーを脱がす日が来ようとは、夢にも思ってなかったぜ……」
「あっ…! 私もっ…! 攻めキャラなのにヴァニオン君に脱がされる日が来るなんてまさか夢にも思っ……ああっ! パンツはやめて♡!! 後生ですから!!」
「陛下どうします~?」
「まぁ、パンツは許してやるがよい……売れぬだろうしな……」
さてと、と純金ボタンを握りしめナシェルは立ち上がる。
全くもって最初から最後まで金策に追われる船旅となった。ヘンテコな詐欺師にもつかまり、天敵の光神族にも遭遇するし、とんだ災難だった。まだまだ旅の行先は長そうだが、ひとまずここで一休みしよう。えっと父上はどこまでついてくるつもりかな……?
港町から少し離れた小高い丘の、昼下がり。
海のほうを見下ろせば、白亜の客船アヴェイロニア号が小さく見える。
ナシェルもヴァニオンと同様、豪華客船といえどもう船旅はこりごりだ。やはり旅は天馬を使うに限る。
視線を戻せば魔法陣の上でファルクがシナをつくっている。
「ああ、皆さん見つめないでください恥ずかしい……どうしよう……わたくし、皆さんに見られて新たな性癖に目覚めてしまいそうです……」
「ほんとテメーの裸なんぞどうでもいいんだが俺たち」
「ファルク、クネクネするな、じっとしてろ。魔法陣からはみ出したら体の半分だけ冥界に帰還することになりかねんぞ……」
パンツ一丁となったファルクを囲み、喧々囂々にぎやかな声がいつまでも街道に響き渡っていた……。
『王子の船旅は多難につき』[完]
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お読み下さりありがとうございました♡
パラレル番外編として、すったもんだの父子船旅編をお送りしてきました。
本編とはガラッと雰囲気を変えてコメディタッチで書いてみました(*´艸`)
未読の方はぜひぜひ本編のほうもよろしくお願いします~(^^♪
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