王子の船旅は多難につき

佐宗

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第八章 乳兄弟、ラッキースケベで絶叫す

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「……謝るなんてお前らしくねぇな、いいよ冗談って分かってたし。俺とお前の仲だろ? そんなことより俺、三等室に降りてからお前にも、コイツの正体を教えなきゃって思って船員の服を調達したりして、この階に戻ってくるの本当に大変だったんだ……ホント間に合ってよかった……。てか、なぁナシェル、すげー汗だけど……なにか変なものでも食わされたのか!?」
「……たぶん酒に妙な、薬を……」
「薬? ちょ……っと待て、え、エッ、エッチな気分になるやつってこと?」
「そう、らしい」

 体が疼いて仕方がないナシェルは、ヴァニオンの首に両手を回して体をすり寄せる。ほとんど無意識にやっているのだ。

「ナ、ナシェル……」
「ヴァニオン、何とかしてくれ……体が、熱くて仕方がないんだ」
「なんとかするって云ったって……」

 ナシェルの体に視線を落としたヴァニオンは、はだけた衣装の胸元から覗くツンと尖った乳首と、それを彩るピアスに気づき目を丸くした。

「わ、お前こんなドスケベなの、いつの間に……やべぇ」
「いいから。触れ……鎮めてくれ、頼む」
「え、いやいやいや、まず、マズイってそれは……!」

 今度はヴァニオンがナシェルに押し倒され、うろたえた声を上げる。

「ナナナシェル、待て落ち着け……ていうか、初めてなのに何この既視感。こういうパターン前にもなかった俺たち……?」
「さあ、忘れた……それどころじゃ……はぁ」

 ナシェルはヴァニオンの上に馬乗りになり、膨張した下腹部のモノを彼の着衣の上から擦りつける。服が邪魔でじれったく、腕に絡まっていた上衣を脱いだ。腰帯はもともと緩んでいたので穿き物も着乱れていて、一物を取り出すのは簡単だった。ナシェルは欲望のままに自分のナニをごしごし扱きながらヴァニオンのベルトも外しにかかった。

「ひぇぇ…積極的ね、め、目のやり場に困っちゃう……」

 ヴァニオンの脳内は、止めなければという責任感と、ちょっとだけこのまま楽しみたいという欲望の双方に揺れる。困ったことに後者の割合がどんどん高まっていくばかりなのだ。腹の上で超絶美人のナシェルが自分の陰茎をこすりながら扇情的に腰を揺らし、色っぽい眼差しで見下ろしてくる図は、あまりにも絶景すぎた。

「ヴァニオン……」
 乳兄弟の穿き物を引き下げることに成功したナシェルが、ハアハアと盛りのついた獣のような呼吸音を漏らす。
「はぁ、はぁ、すまん、先に謝っておく……」
「あンッ、なっ、何?」
「男相手にこっち側は初めてなんだ……優しくできるか分からない――」
「えっアッ――! まさかのそっち!!?? 俺に突っ込む気――!!??」

 ナシェルの昂りを陰嚢の下に感じ、ヴァニオン卿は涙目で絶叫した。

「イヤンッ、わー待ってマジでダメ、ナシェル! そんな、ろくすっぽほぐしもしないで挿れたら俺こわれちゃうよ!!俺尻処女だから! 分かる?! だからせっ……せめてまっ……まずは解さない?!……いやほぐすとかそういう問題じゃなくて! とにかくダメッ!!」

 危機的状況でもボケてノリツッコミもこなす器用な男である。
 ともかくもヴァニオンは、驚異的な腹筋で体を起こすと、ナシェルの両肩を掴んでからくも挿入は阻止した。だが興奮状態のナシェルはなおも全力でヴァニオンを押し倒そうとする。2人は、長椅子の上で両掌で掴み合い、しばし本気で格闘した。滑稽な絵面だが例によってお互い真剣である。

「ぐぬぬぬやばい、これ押し負けたらマジで犯される……、と、ところでナシェル、へ、陛下はどこにいるんだよ?」

 この光景が冥王に見つかるのはマズいがこのまま犯されるわけにもいかない。藁にも縋る思いで問うと、ナシェルはゼェゼェしながら血走った目で答えた。

「バーに、いるはずだ。船内の賭博客たちと、でき上がってるらしいからしばらく戻ってこないだろう……大丈夫だ」
「いや何がどう大丈夫なんだよ~~!? しかも俺、お前と何かあってバレたら今度こそ陛下に殺されちゃうよ!!」

 ナシェルはちらりとヴァニオンの肩の古傷あたりに目をやってくる。眉間に苦悩のシワがよる。まさに理性と本能のせめぎ合いだ。

(お、理性が多少は残っている? 自制を促そうか)
 ヴァニオンは尻処女喪失を回避すべく必死の説得にかかる。

「なぁ……ナシェル覚えてるだろ!? 俺たち失敗しまくったもんな! そんで次はないの。もう俺、あとが無いのよ!? オマエとまたいけないコトして俺が陛下に今度こそブッ殺されてもいいの?! たぶん冥府の王宮前で晒し首よ!?」
「……全責任は私が取るから大丈夫だ、おとなしく力を抜け」
「アカンッやっぱ欲望優先型だ!! ダメだこりゃ――!!」

 思わず脱力したヴァニオンは力負けし、興奮が最高潮に達したナシェルに再び押し倒された。
 膝に絡まるズボンを剥がされ、脚を抱えられたが早いか、ぬらぬらした切っ先を後孔に押し当てられる。思わずのけ反り「ギャ――ッ! ほぐさないの鬼畜ゥ~~~!」と叫んだところへ。






「な に を し て お る の だ そ な た ら……」






 戸口から突如、轟くような重低音の声が響いてきた。




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