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第四章 冥王、王子をやっと見つける?
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さて、ナシェルが宝石商の部屋で宝石を眺めていたころ――。
「おっかしいな、陛下が船内のどこにも居やしねえ……??」
ヴァニオンは頭をかきかき、船内を歩いてVIP船室のある階まで戻ってきた。
掏られたカネを取り戻していないと知れたらナシェルから大目玉を食うのは確実だが、それより何より、父王が迫っている危険性(危険性?)をいち早く知らせねばなるまい。
船室のほうからドタンガタンと何やら大きな物音が聞こえる。
自分とナシェルが宿泊しているVIP船室だ。
開かれたドアから、何かが凄い勢いで放り出されているのだ。
廊下がゴミの山のようになっている。
「あ゛?」
ヴァニオンは目を疑った。よく見たらゴミの山ではなく。
「……俺の荷物じゃねえか!?」
「おいコラ、ナシェル。いくらなんでも捨てるこたねえだろ! 俺の荷物だぞ」
VIP船室の戸口に立ったヴァニオンは、飛んできた自分のパンツやベルト類を避けた後に、絶句した。
ヴァニオンの荷を室外へ投げ捨てているのは、部屋主のナシェル殿下(激怒モード)かと思いきや、くだんの冥王様だったのだ。
「ちょ……」ガツーン!
コップや歯ブラシなどは避けきれず、モロに浴びる。
「何してんスか!」
「見て分からぬかこの大うつけ者が」
冥王はヴァニオンの顔めがけて、これで最後だとばかりに彼の緋色のマントをぶぁさと投げて寄越した。そして塵でも払うかのように両手を打ち合わせた。
「そなた下僕の分際で王子と相部屋で船旅とはな! どういう了見あってのことだ」
「いやいや、よく見て下さい奥にそれぞれ一部屋づつあるでしょうが。相部屋といっても寝室は別でしたよちゃんと!」
「寝室は別でも風呂とトイレは共同であろうが!」
「だから何なんスか!? 今さら俺と殿下の間で万が一にも間違いなんかあるわけないでしょう! 俺にはもうサリエルという相手がいるんですよ。そもそも殿下と相部屋がダメなら何でオレに護衛役を一任したんすか!」
「単に、幻嶺の疾駆についていけそうなのがそなたの炎醒ぐらいしかおらぬからだ」
「……(乳兄弟とかの信頼感より馬のスピード重視かよ…)……それより、どうやってこの階に上がって来たんですか?」
「どうやってと言われても、天井やカベをすり抜けて来たわけではない。普通に階段を上がって来ただけだ」
「この階にはVIPの船客しか入れないハズ……」
とヴァニオンは言いかけ、それが愚問であることに気づく。下階の警備員が、ナシェルと冥王の「微々たる違い」に気が付くわけがない……。顔パスだったというわけか。
「おっかしいな、陛下が船内のどこにも居やしねえ……??」
ヴァニオンは頭をかきかき、船内を歩いてVIP船室のある階まで戻ってきた。
掏られたカネを取り戻していないと知れたらナシェルから大目玉を食うのは確実だが、それより何より、父王が迫っている危険性(危険性?)をいち早く知らせねばなるまい。
船室のほうからドタンガタンと何やら大きな物音が聞こえる。
自分とナシェルが宿泊しているVIP船室だ。
開かれたドアから、何かが凄い勢いで放り出されているのだ。
廊下がゴミの山のようになっている。
「あ゛?」
ヴァニオンは目を疑った。よく見たらゴミの山ではなく。
「……俺の荷物じゃねえか!?」
「おいコラ、ナシェル。いくらなんでも捨てるこたねえだろ! 俺の荷物だぞ」
VIP船室の戸口に立ったヴァニオンは、飛んできた自分のパンツやベルト類を避けた後に、絶句した。
ヴァニオンの荷を室外へ投げ捨てているのは、部屋主のナシェル殿下(激怒モード)かと思いきや、くだんの冥王様だったのだ。
「ちょ……」ガツーン!
コップや歯ブラシなどは避けきれず、モロに浴びる。
「何してんスか!」
「見て分からぬかこの大うつけ者が」
冥王はヴァニオンの顔めがけて、これで最後だとばかりに彼の緋色のマントをぶぁさと投げて寄越した。そして塵でも払うかのように両手を打ち合わせた。
「そなた下僕の分際で王子と相部屋で船旅とはな! どういう了見あってのことだ」
「いやいや、よく見て下さい奥にそれぞれ一部屋づつあるでしょうが。相部屋といっても寝室は別でしたよちゃんと!」
「寝室は別でも風呂とトイレは共同であろうが!」
「だから何なんスか!? 今さら俺と殿下の間で万が一にも間違いなんかあるわけないでしょう! 俺にはもうサリエルという相手がいるんですよ。そもそも殿下と相部屋がダメなら何でオレに護衛役を一任したんすか!」
「単に、幻嶺の疾駆についていけそうなのがそなたの炎醒ぐらいしかおらぬからだ」
「……(乳兄弟とかの信頼感より馬のスピード重視かよ…)……それより、どうやってこの階に上がって来たんですか?」
「どうやってと言われても、天井やカベをすり抜けて来たわけではない。普通に階段を上がって来ただけだ」
「この階にはVIPの船客しか入れないハズ……」
とヴァニオンは言いかけ、それが愚問であることに気づく。下階の警備員が、ナシェルと冥王の「微々たる違い」に気が付くわけがない……。顔パスだったというわけか。
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