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第四章 冥王、王子をやっと見つける?
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しおりを挟む「見事な宝石のコレクションですね」
ナシェルは色とりどりの宝石を見つめ舌舐めずり――否、感嘆の吐息を漏らした。
地中深き冥界産の宝石に比べれば小物ばかりだが、こちらの世界で売るとなれば、金にはなりそうだ。
アシールに誘われて彼の船室までやってきたナシェルは、彼とワインを酌み交わした後、彼の商売道具である宝飾類を見物している。
「宝飾に興味がおありなのですか。失礼――、石の一つも身につけていらっしゃらないので、着飾ることにはあまり興味がおありでないのかと思いましたよ。ええと、ほら、貴方は宝石など身につけなくとも充分お美しくていらっしゃるから」
「着飾ることに興味がないのはお察しの通りです。自分の見た目もあまり気にしたことがありません。ですが、価値のある物とそうでない物を見分ける目は、幼い頃からそれなりに養ってきたつもりです」
ナシェルは宝石箱をガン見したまま応じた。
「なるほど。それでは貴方が私の誘いを受けてこの部屋を訪ねて下さったのは、私についてある程度はその値打というか価値を、認めてくださったということですね?」
アシールの手が肩に回されそうな気配を感じ、ナシェルはさっと横へずれた。手を空振りさせてしまったアシールは、気まずそうに手をわきわきさせている。ナシェルは慎重に、こう答えておいた。
「まだお会いしたばかりなので、貴君の価値については分かりません。今はまだ値踏みしている、という所でしょうか」
「はは、手厳しいな……」
「ところで、宝石商と言っておられたが、この船旅も仕事のために?」
「ええ、そうです。実は、とある重要な商談のために大きな商品を運んでいる最中でしてね。
本当は、部外者をこの部屋に入れるのは不用心な行為と言わざるを得ないのですが……、甲板の上で寂しげにしている貴方を見つけた瞬間、そんなちっぽけな事はすっかり頭の片隅に追いやられてしまいました……」
押せ押せモードでアピールしてくるアシールに、ナシェルはやや食傷気味だ。
(まだ見せていない、もっと高価な宝石も積んでいるということか。そんなことも初対面の相手に明らかにしてしまうとは、この男……さては、アホの部類だな…それもヴァニオンを上回るアホの予感が……まあ、人間だから私の容姿に心奪われて自制心を失うのは、仕方ないかもしれんな)
相手をするのは疲れるが、ここはその『商談に使う大きな商品』とやらを見せてもらわずに、引き下がるわけにはいかない。
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