トリップ先は少し変わった戦国時代…!?

つばき

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謎の気配の正体

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男達と戦ったせいもあってか、少し歩くと疲れてしまい、大きめの石の上に座って少し休憩をとることにした。

「確か…今日買ったお茶が…あった!!」

こちらの世界に来た時に一緒にリュックも私と一緒に飛ばされていたのは不幸中の幸いだった。
リュックからお茶が入ったペットボトルを取り出し、ゴクリと喉を鳴らしお茶を飲む。

「…ふぅ。やっぱお茶は落ち着くなぁ。あ、銀も飲む?」

狼にペットボトルのお茶を与えて良いのだろうかと疑問に思ったが、とりあえず手をお椀のようにしてお茶を注ぐ。そして銀の顔の目の前に差し出してみると、クンクンと匂いを嗅いだ後、ペロペロと飲み始めた。

「んっ、これ手がくすぐったいなぁ」

私が呟くと、飲み終わった銀が私の顔を不思議そうに見上げてきた。
そんな銀を撫でていると、突然背後に人の気配を感じ、咄嗟に後ろを向く。するとそこには、瑠璃紺るりこんの髪に山吹色やまぶきいろの瞳をした青年が立っていた。黒ずくめの動きやすそうな、いかにも忍びといった感じの服装をしていた。

「あの…何か御用でしょうか…?」

目の前に現れた忍び風イケメンに声を掛けてみる。
口元にマフラーの様なものを巻いているため、表情は読めないが、殺しに来た訳では無いらしい。先程の男達の様な殺気は感じられない。

「…お前、魔獣と契約を交わしているな。」

何を言うかと思えば、急にそんな事を聞かれても…契約ってなに?

「契約とは何ですか?というより、なんでそんな事が分かるんですか?」

イケメンに質問を投げてみると、案外優しい人なのか、淡々としているが質問には答えてくれる。

「お前の鎖骨の辺りに紋が浮かんでいるだろう。同じものがこの狼にも現れているはずだ。」
「そうなんですか!?」

言われた紋が気になって川を覗き込んで確認してみる。
すると、花緑青はなろくしょうの風を模したような模様が肌に刻まれていた。

「ほんとだ!!いつの間に…」

思わず銀の首から胸の辺りの毛を掻き分けてみると、同じ色の同じ模様が刻まれていた。

「魔獣と契約とはどのような物なのですか?」
「知らずに契約を交わしたのか?」
「いえっ、気が付いたらいつの間にか…」

イケメンは考え込むような素振りをした。

「後で詳しく説明しよう。ひとまず着いてくるといい」

そう言うと、イケメンは歩き出してしまった。
よく分からないが、ここはとにかく着いて行った方が良いと思い、私はイケメンの後を追いかけた。

歩き始めて2時間くらい経った頃、鬱蒼うっそうとした森の中にある集落へと辿り着いた。
イケメンは終始無言ではあるのの、ちゃんと私が着いてこれるくらいの速さで歩いてくれていた。

集落に近付けば近づく程馬防柵ばぼうさくが至る所に設置され、木製だがなかなか頑丈そうな背の高い壁で集落全体が囲まれていた。

「……攻め落とす方は大変なんだろうなぁ。」

大阪城の様な立派な天守閣をもつお城は無いものの、集落を隠す様に生い茂る沢山の木々や、敵の侵入を至る所で防ぐ馬防柵などを見て思わずそう呟いた。

「ここは300年近く敵の侵略を許していない。」
「そうなんですね~……て、300年!!??」

私の呟きが聞こえていたのか、イケメンはこの集落について教えてくれた。

いやいやいや、300年前って何時代よ。鎌倉幕府になった直後とか元寇とかの辺り…?ヤバくない?

「凄い所なんですね…」

思わず呆気に取られてしまう。
ボケーッと聞いていると、いつの間にか質素ながらに大きな門の前へ来ていた。

「着いたぞ。」

イケメンにそう言われハッと我に返る。
気が付くと私の目の前に人が居た。

「おぉ、きり。よく戻ったな。して、その娘は?」

目の前にいた、背が低い髪も髭も真っ白いおじいちゃんがイケメンに話しかけた。

「任務の帰りに、何も知らずに魔獣と契約を交わしている馬鹿な娘を見付けたので連れて来ました。」

…ん?今馬鹿って言ったか?コノヤロウ。

「ふぉっふぉっ、確かに面白い娘じゃのう」

なんだかよく分からないけど、笑わないでおじいちゃん……。
魔獣とか契約とかそんなよくある事なの?
襲ってきた謎の男達にも世間知らずって言われたしなぁ。この世界の事ちゃんと調べなきゃ。

「まあ、なぁんにも無い所じゃが、ゆっくりして行くと良い。」
「ありがとうございます」

馬鹿にされてるのはともかく、歓迎されてはいるようなので礼を告げると、おじいちゃんは立ち去ってしまった。




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