1 / 7
桜の絨毯
しおりを挟む
冬の長い寒さが和らぎ、別れと出会いが訪れる季節、春。
卒業式や入学式などのイベントはもちろん、お花見や新作スイーツなどに心を躍らせる者も多いだろう。
もちろん私も春は好きだ。
青空の中満開に咲き誇る桜に思わず笑みを零す人は多いだろう。だけど、散り際の、空には花弁が舞い、地面や池には桜の絨毯が敷かれる景色も私は好きだ。
「雪景色に桜ってのも見てみたいなぁ…」
きっと綺麗なんだろうな…と妄想に浸りながら、思わず呟く。
今年は桜が散り始める季節になっても、なかなか気温は上がってくれない。
そんな今日はまるで雪が降る日のように寒かった。
天気予報によると、一部では雪が降るかもしれないらしい。
「なーに言ってんの、そんな景色見れたら季節どうなんのよ。」
呆れた様な顔をした友人─愛、に声を掛けられた。今にもため息をつきそうだ。
「ん、おはよ。」
私の前の席に座る友人にそう声をかける。
彼女とは小学校からの付き合いだ。それなりに仲がいい方だと自分でも思っている。
「にしても寒いねー、冬みたい」
彼女は少し寒がりで、今も膝の上にブランケットを掛けている。
「ねー。だから今日はブランケット2つ持ってきた!!」
私は得意げにブランケットを2つ取り出た。1つは普通の触り心地が良いブランケット。もう1つは、フードが着いていて頭から被れるブランケットだ。
「でた、枕。さては寝る気満々だね」
「さっすが、わかってる~」
呆れ顔でフード付きブランケットに目を見やる友人を横目に、フードの中にブランケットを折り畳んで詰め込んだ。収納すると枕のようになるのである。
「まったく…ちゃんと授業聞きなよー」
「何言ってるのさ、ちゃんと聞くよ。日本史は!」
そう、日本史以外の授業はさして興味が無いのだ。
特に数学と英語。寝ないとやってられない。
だけど高校2年生になった今年からは選択授業で日本史が2時間連続で受けれるのだ。選択授業最高すぎる。
「ほんっと、日本史は好きだよね。」
「そりゃね!まあ、戦国時代専門だけどね」
愛ちゃんとのんびり話していると、ガララッと音を立て担任の先生が入ってきた。
常にプルプルと震えている眼鏡を掛けたおじちゃん先生だ。生徒になめられる事も多い。
担任の長い話を聞きながら、空を眺めながらあくびを抑える。
「……退屈だなぁ。」
こうして高校2年生になった私の一日は始まっていく。といっても、今日は始業式のみで授業も無いため、早く帰ることになった。何時もは部活にバイトで忙しいけど、今日はゆっくり出来そうだ。
「授業も無かったし、寄り道でもしながら帰ろうかな~」
私がリュックを背負い教室を出ようとすると、どこかへ行っていた愛ちゃんが教室へと戻ってきた。
「今日バイトはー?暇なら一緒に帰ろうよー」
「ないよー、カラオケでも行く?」
遊ぶのは久しぶりだから何をしようかワクワクしながら帰路につくことになった。
マフラー巻いてくれば良かったなと少し後悔しながら公園の近くを歩いていた時、
「ニャー」
と、猫の鳴き声の様なものが微かに聞こえ、音の発信源を探すのに辺りを見渡す。
「どうしたの?」
「いや、何か鳴き声が聞こえた気がして…気の所為かな?」
少し立ち止まって音の主を探してみると、少し離れた所に子猫が居た。
驚かさないようにそっと近づいて小さく屈む。
「逃げちゃうかな~」
怖がらせないか少し不安になりながら恐る恐る手を伸ばしてみると、子猫は擦り寄ってきた。
余りの可愛さに撫でていると、愛ちゃんにこっそりと声を掛けられた。
「ねえ、結月。あの人……」
不自然に声を潜め、私の名前を呼んだ愛ちゃんの様子を疑問に思いながら愛ちゃんの視線の先を見ると、黒い帽子に白い使い捨てマスクを着けた怪しさ満点の男がゆっくりと自分達に近づいて来ていた。
男に見ている事を勘づかれないように素早く視線を外し子猫へと向けた。
「…何かヤバそうだね。とりあえず私の背に隠れといて。」
愛ちゃんにそう言いながらどうしようかと思考を巡らせる。
ひとまず男と距離を取ろうと子猫を抱えた瞬間、ポケットに手を入れた男がこちらに向かって走ってきた。男がポケットから手を取り出そうとした時何かキラリと光る物が見えた気がした。
「愛ちゃん、この子をお願い。走れる?出来れば大人を連れてきて欲しい。」
男の目的が何か分からない状況で子猫を放置して逃げるのも心配だった為、咄嗟に愛ちゃんに子猫を託した。
卒業式や入学式などのイベントはもちろん、お花見や新作スイーツなどに心を躍らせる者も多いだろう。
もちろん私も春は好きだ。
青空の中満開に咲き誇る桜に思わず笑みを零す人は多いだろう。だけど、散り際の、空には花弁が舞い、地面や池には桜の絨毯が敷かれる景色も私は好きだ。
「雪景色に桜ってのも見てみたいなぁ…」
きっと綺麗なんだろうな…と妄想に浸りながら、思わず呟く。
今年は桜が散り始める季節になっても、なかなか気温は上がってくれない。
そんな今日はまるで雪が降る日のように寒かった。
天気予報によると、一部では雪が降るかもしれないらしい。
「なーに言ってんの、そんな景色見れたら季節どうなんのよ。」
呆れた様な顔をした友人─愛、に声を掛けられた。今にもため息をつきそうだ。
「ん、おはよ。」
私の前の席に座る友人にそう声をかける。
彼女とは小学校からの付き合いだ。それなりに仲がいい方だと自分でも思っている。
「にしても寒いねー、冬みたい」
彼女は少し寒がりで、今も膝の上にブランケットを掛けている。
「ねー。だから今日はブランケット2つ持ってきた!!」
私は得意げにブランケットを2つ取り出た。1つは普通の触り心地が良いブランケット。もう1つは、フードが着いていて頭から被れるブランケットだ。
「でた、枕。さては寝る気満々だね」
「さっすが、わかってる~」
呆れ顔でフード付きブランケットに目を見やる友人を横目に、フードの中にブランケットを折り畳んで詰め込んだ。収納すると枕のようになるのである。
「まったく…ちゃんと授業聞きなよー」
「何言ってるのさ、ちゃんと聞くよ。日本史は!」
そう、日本史以外の授業はさして興味が無いのだ。
特に数学と英語。寝ないとやってられない。
だけど高校2年生になった今年からは選択授業で日本史が2時間連続で受けれるのだ。選択授業最高すぎる。
「ほんっと、日本史は好きだよね。」
「そりゃね!まあ、戦国時代専門だけどね」
愛ちゃんとのんびり話していると、ガララッと音を立て担任の先生が入ってきた。
常にプルプルと震えている眼鏡を掛けたおじちゃん先生だ。生徒になめられる事も多い。
担任の長い話を聞きながら、空を眺めながらあくびを抑える。
「……退屈だなぁ。」
こうして高校2年生になった私の一日は始まっていく。といっても、今日は始業式のみで授業も無いため、早く帰ることになった。何時もは部活にバイトで忙しいけど、今日はゆっくり出来そうだ。
「授業も無かったし、寄り道でもしながら帰ろうかな~」
私がリュックを背負い教室を出ようとすると、どこかへ行っていた愛ちゃんが教室へと戻ってきた。
「今日バイトはー?暇なら一緒に帰ろうよー」
「ないよー、カラオケでも行く?」
遊ぶのは久しぶりだから何をしようかワクワクしながら帰路につくことになった。
マフラー巻いてくれば良かったなと少し後悔しながら公園の近くを歩いていた時、
「ニャー」
と、猫の鳴き声の様なものが微かに聞こえ、音の発信源を探すのに辺りを見渡す。
「どうしたの?」
「いや、何か鳴き声が聞こえた気がして…気の所為かな?」
少し立ち止まって音の主を探してみると、少し離れた所に子猫が居た。
驚かさないようにそっと近づいて小さく屈む。
「逃げちゃうかな~」
怖がらせないか少し不安になりながら恐る恐る手を伸ばしてみると、子猫は擦り寄ってきた。
余りの可愛さに撫でていると、愛ちゃんにこっそりと声を掛けられた。
「ねえ、結月。あの人……」
不自然に声を潜め、私の名前を呼んだ愛ちゃんの様子を疑問に思いながら愛ちゃんの視線の先を見ると、黒い帽子に白い使い捨てマスクを着けた怪しさ満点の男がゆっくりと自分達に近づいて来ていた。
男に見ている事を勘づかれないように素早く視線を外し子猫へと向けた。
「…何かヤバそうだね。とりあえず私の背に隠れといて。」
愛ちゃんにそう言いながらどうしようかと思考を巡らせる。
ひとまず男と距離を取ろうと子猫を抱えた瞬間、ポケットに手を入れた男がこちらに向かって走ってきた。男がポケットから手を取り出そうとした時何かキラリと光る物が見えた気がした。
「愛ちゃん、この子をお願い。走れる?出来れば大人を連れてきて欲しい。」
男の目的が何か分からない状況で子猫を放置して逃げるのも心配だった為、咄嗟に愛ちゃんに子猫を託した。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最後に言い残した事は
白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
どうして、こんな事になったんだろう……
断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。
本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。
「最後に、言い残した事はあるか?」
かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。
※ファンタジーです。ややグロ表現注意。
※「小説家になろう」にも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる