トリップ先は少し変わった戦国時代…!?

つばき

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桜の絨毯

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冬の長い寒さが和らぎ、別れと出会いが訪れる季節、春。
卒業式や入学式などのイベントはもちろん、お花見や新作スイーツなどに心を躍らせる者も多いだろう。
もちろん私も春は好きだ。
青空の中満開に咲き誇る桜に思わず笑みを零す人は多いだろう。だけど、散り際の、空には花弁が舞い、地面や池には桜の絨毯が敷かれる景色も私は好きだ。

「雪景色に桜ってのも見てみたいなぁ…」

きっと綺麗なんだろうな…と妄想に浸りながら、思わず呟く。
今年は桜が散り始める季節になっても、なかなか気温は上がってくれない。
そんな今日はまるで雪が降る日のように寒かった。
天気予報によると、一部では雪が降るかもしれないらしい。

「なーに言ってんの、そんな景色見れたら季節どうなんのよ。」

呆れた様な顔をした友人─めぐみ、に声を掛けられた。今にもため息をつきそうだ。

「ん、おはよ。」

私の前の席に座る友人にそう声をかける。
彼女とは小学校からの付き合いだ。それなりに仲がいい方だと自分でも思っている。

「にしても寒いねー、冬みたい」

彼女は少し寒がりで、今も膝の上にブランケットを掛けている。

 「ねー。だから今日はブランケット2つ持ってきた!!」

私は得意げにブランケットを2つ取り出た。1つは普通の触り心地が良いブランケット。もう1つは、フードが着いていて頭から被れるブランケットだ。

「でた、枕。さては寝る気満々だね」
「さっすが、わかってる~」

呆れ顔でフード付きブランケットに目を見やる友人を横目に、フードの中にブランケットを折り畳んで詰め込んだ。収納すると枕のようになるのである。

「まったく…ちゃんと授業聞きなよー」
「何言ってるのさ、ちゃんと聞くよ。日本史は!」

そう、日本史以外の授業はさして興味が無いのだ。
特に数学と英語。寝ないとやってられない。
だけど高校2年生になった今年からは選択授業で日本史が2時間連続で受けれるのだ。選択授業最高すぎる。

「ほんっと、日本史は好きだよね。」
「そりゃね!まあ、戦国時代専門だけどね」

愛ちゃんとのんびり話していると、ガララッと音を立て担任の先生が入ってきた。
常にプルプルと震えている眼鏡を掛けたおじちゃん先生だ。生徒になめられる事も多い。
担任の長い話を聞きながら、空を眺めながらあくびを抑える。

「……退屈だなぁ。」

こうして高校2年生になった私の一日は始まっていく。といっても、今日は始業式のみで授業も無いため、早く帰ることになった。何時もは部活にバイトで忙しいけど、今日はゆっくり出来そうだ。

「授業も無かったし、寄り道でもしながら帰ろうかな~」

私がリュックを背負い教室を出ようとすると、どこかへ行っていた愛ちゃんが教室へと戻ってきた。

「今日バイトはー?暇なら一緒に帰ろうよー」
「ないよー、カラオケでも行く?」

遊ぶのは久しぶりだから何をしようかワクワクしながら帰路につくことになった。
マフラー巻いてくれば良かったなと少し後悔しながら公園の近くを歩いていた時、

「ニャー」

と、猫の鳴き声の様なものが微かに聞こえ、音の発信源を探すのに辺りを見渡す。

「どうしたの?」
「いや、何か鳴き声が聞こえた気がして…気の所為かな?」

少し立ち止まって音の主を探してみると、少し離れた所に子猫が居た。
驚かさないようにそっと近づいて小さく屈む。

「逃げちゃうかな~」

怖がらせないか少し不安になりながら恐る恐る手を伸ばしてみると、子猫は擦り寄ってきた。
余りの可愛さに撫でていると、愛ちゃんにこっそりと声を掛けられた。

「ねえ、結月。あの人……」

不自然に声を潜め、私の名前を呼んだ愛ちゃんの様子を疑問に思いながら愛ちゃんの視線の先を見ると、黒い帽子に白い使い捨てマスクを着けた怪しさ満点の男がゆっくりと自分達に近づいて来ていた。
男に見ている事を勘づかれないように素早く視線を外し子猫へと向けた。

「…何かヤバそうだね。とりあえず私の背に隠れといて。」

愛ちゃんにそう言いながらどうしようかと思考を巡らせる。
ひとまず男と距離を取ろうと子猫を抱えた瞬間、ポケットに手を入れた男がこちらに向かって走ってきた。男がポケットから手を取り出そうとした時何かキラリと光る物が見えた気がした。

「愛ちゃん、この子をお願い。走れる?出来れば大人を連れてきて欲しい。」

男の目的が何か分からない状況で子猫を放置して逃げるのも心配だった為、咄嗟に愛ちゃんに子猫を託した。
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