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第二十六話 荒野に叫ぶロックスター
突然の来訪者
しおりを挟むパァァァァ……!
「あっ!」「むっ!」「……!」
ナガレのマルチスタッフから、一瞬青い光が出現。まるで蛍のように儚い光がしばらく中を舞い、そしてすぐに消えてしまう。
「……でかしたぞ。そうだ、その光だ」
「い、今の感じ⁉︎ ぃやったぁーー! よーやく一歩前進だ!」
バンドに褒められて、ナガレは元気ハツラツの大ジャンプ! その明るい姿からは、先ほどの足がすくむような殺気は微塵も感じさせない。ジョーは少しホッとした。
(……良かった。一瞬嫌な予感がしたが、やはりいつものナガレだ)
「……その思いこそコツと言える。今の感じを、忘れるなよ」
「おうっ! よぉーし、今の感じ……憎しみも八つ当たりも、負の感情をフルに込めて……っ!」
「……⁉︎」
ナガレの口から出たとは思えない言葉に、ジョーは驚いてのけ反った。まさかアズラを出すために、自分の心を暗くしたのか……!
「ぐっ…………んんっ!」
ギンッ! と前方を睨みつけるナガレ。モンスターと戦う時のように、いつものヒロイックな雰囲気ではない。相手を殺す、殺陣の時に見せるような、血に飢えた獣の目……!
このまま続けさせて良いのか、そう考えたジョー。バンドの隙を見て、ナガレを止めようとした瞬間……!
「……誰か来る」
そう言ってバンドは、ジョーにとっては幸いなことに、一瞬で姿を消した。ジョーの姿からバンドの黒い鎧に戻る瞬間が一瞬だけ見えた。
「……ナガレ。階段だ。だがこの雰囲気には、似たものを前に見た」
「へっ? そ、そうなの?」
知り合いの誰かだろうか? ナガレもマルチスタッフをベルトにしまう。
そして階段を登ってきたのは……。
「はぁっ、はぁっ……ぱ、パイセン……うえぇ……」
なんと青肌チビッ子の小鬼族ガール、シャット! ナガレたちの姿を見るなり、へなへなと地面に倒れてしまう。
「うわっシャット⁉︎ し、しっかりしろぉ!」
「……小鬼族の、そんな短い手足でここまで登ったのか? なんと言う根性だ……」
驚きつつ、彼女に駆け寄るナガレとジョー。シャットの身長は一メートルにも満たない上、高台広場への階段はかなり急で、トドメに彼女は小鬼族が故に手足がとても短い。階段を登ると言うよりロッククライミングである。ナガレの大きさ(約170cm)で例えると、腰までの高さがある段差をいくつも乗り越えてきたようなものだ。
「し、死ぬぅ……な、何か飲み物を……んぐぐ、こんなに辛いなんて……」
「わーっ、しっかりしろーっシャットーー!」
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