崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ

文字の大きさ
上 下
848 / 966
第二十六話 荒野に叫ぶロックスター

一触即発?

しおりを挟む

「……気づいていたか」
 すると、崖下から一つの影が飛び上がり、ナガレたちのそばに音も無く着地。ヨビカリ草に照らされたのは……ジョー!
「ファッ! じ、ジョーが二人……⁉︎」
「……驚いた。俺の姿まで変えられたか。だが怪しいものだ、マスクを外してみろ」
 ジョーが冷たく言うと、ジョーはマスクを外す。(とてもややこしい)傷ひとつない、彼の強者っぷりを表す綺麗な顔だ。
「……何だ」
 マスクを外した姿を見て、ジョーは「フン」と鼻で笑った。(とってもややこしい)
「……先の発言を撤回する。お前の変身も大したことないな」
 そう言って、ジョーもマスクを外した。……その頬や顎には当然、醜く変色した大火傷の跡があった。
「……イビル教団か」
 そう言ったジョーの姿が、突然肥大化していく。肌は黒く変色し鎧となり、まるで体から生えてくるように、ボロ布のマントが出現する。すぐにバンドの姿へ戻った。
「……詳しいな。ああ、奴らの炎に焼かれた傷だ。イビル教団が復活したせいで、この傷がまた疼き始めた」
「……復讐か」
 バンドは腕を組む。ジョーは「フフッ」と冷笑した。
「……くだらんことはやめろとでも言うつもりか。イビル教団がこの世に存在する限り、俺は死ねない。一人残らず、皆殺しにしてくれる」

「……ああ、それでいい」
「え?」「……なに?」
 なんとバンドは、清清きよきよしいくらいに文句を言わなかった。むしろ大きく頷いて、彼の復讐を肯定する。 
「……ああ、思い切りやるがいい。……復讐なんて、何も生まない。気分が晴れるわけでもない」
 そこまで言って「フ……」と小さく笑うバンド。
「……だが、復讐しなけれは、永遠に悔しさに囚われるだろう。それを忘れられるのは、真の強者しかいない。……お前は強者ではない」
「……なんだと?」
「……俺なんざに理解されたくもないだろうが、お前の気持ちは少し分かる。復讐とは盲目……だが、それに呆けて大切なものを失うなよ」
「……嫌味か、貴様!」
 ジョーは復讐の果てに、姉を失っている。イライラしたように低く呟き、黒曜石の短剣『オブシディアンダガー』を抜き放った。
「……図星か」
 だがバンドはそう言って、なんと背を向けた。そのまま崖へ歩いていく。

「……待てっ、どこへ行くつもりだ!」
「……ナガレ」
「は、はい?」
 怒れるジョーを無視して、ナガレと目を合わせるバンド。
「……また明日、ここに来い。そこの男を連れてくるなら、勝手にしろ。……だが決して、話の分からない、俺を捕まえようとする奴は連れてくるな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話

Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」 「よっしゃー!! ありがとうございます!!」 婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。 果たして国王との賭けの内容とは――

要石の巫女と不屈と呼ばれた凡人

イチ力ハチ力
ファンタジー
女神が姿を消し、瘴気による侵食が進む『詰んでいる世界』に、五人の高校生が召喚された。  そして五人の中で唯一勝手に付いてきた富東 矢那(フトウ ヤナ)は、他の四人と異なり“勇者”では無かった。  『魔王』を倒すべく喚ばれ、魔力量も桁外れ、伝説級のスキルを既に取得している他の四人の『召喚されし勇者』達に対し、矢那の召還時の魔力量は凡人並。スキルも“言語/文字理解”を除いてはただ一つ、『不撓不屈』のみ。  『召喚を要求した者』は、数奇な運命と自身の持つ宿命に導かれながら、世界の命運を賭けた戦いに、身を投じていくことになる。  絶望の色に染まる『巫女』と、絶望が大嫌いな『凡人』が出会う時、神に挑みし『不屈』の物語が幕を開ける。  脳筋や変態扱いされても、姫がポンコツになっても、ヒロイン達が野獣と化したとしても! この男は決して倒れる事は無い! 顔で嗤って心で泣いて、世界を救う真の英雄譚が始まる!     熱い魂の王道ファンタジーここに誕生!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...