崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

第二十五話 リベンジ！ スカルクリーチャー

その名はディーネ

「あれ？　エディ店長、別のバイト雇ったのかな」
「……ちげーよ、アンポンタン」
　コツン！
「いでっ⁉︎　ヴァレリーだな！」
「ご名答だよメス男子。他の客に迷惑かけんな」
　金属のトレーでナガレの頭を叩いたのは、やはりヴァレリー。つまらなさそうにナガレを見つめてくる。
「この女の子は？　新しいバイト？」
「はいセクハラ。気安く話しかけんな常連ツラすんな」
　またもトレーが飛んでくる。だがそれはナガレに片手でキャッチされた。
「お前なぁ……他の客には絶対こんなことするなよ。冒険者ってのはオレみたいに甘っちょろいヤツばっかりじゃないんだぞ」
「うっせーな、余計なお世話だ」
　呆れたような目のナガレに、トレーを引ったくるヴァレリー。すると女の子は「はいっ、私ですか？」と見上げて来た。
　おそらくルックと同じくらいの少女。茶髪のおさげヘアーで、目が大きく肌も健康的な白さだ。
「わたし、ディーネって言います！　店長のエディは私のパパなんです」
「へぇ～、それじゃあお母……」
　と言いかけて、ナガレは慌てて口をつぐんだ。

　これはナガレもタネツから聞いた話だが、エディ店長はかつて結婚していた。お相手の女性はたいへん美しく、性格も良かった。しかし彼女は馬車の事故でのケガが原因で衰弱、亡くなってしまう。
　つまりこのディーネちゃんこそ、妻の忘れ形見と言うわけだ。
「どうかしましたかっ？」
「え、えーと……そ、そう。おか……おかしいなあ！　ちょっと財布が……おっとっと……あ、あった！　あぁ良かった、財布を忘れたかと思ったよアハハ……」
「なぁんだ、良かったです！　食い逃げは厳禁ですよっ。あなたがナガレさんですよね！　お料理、すぐにお持ちしますからねっ」
　そうニカッと笑顔を見せてから、厨房へ入って行った。
「パパー！　ステーキまだ出来ないのー？」
「ちょっと待ってくれよ。まだ生焼けだ。もう少し火を通さなきゃ……」
　そんな会話が聞こえてくる。するとヴァレリーがニヤニヤした笑顔をむけて来た。
「アタシが色々話してたんだよ。おめーのことも面白おかしく説明しておいた」
「余計なことを……ったく」
　一体何を伝えたのか……と呆れたナガレだが、突如反撃のアイデアが閃いた。
「ふーん……」
「あ？　なんだよメス……」

「それじゃ、エディ店長が再婚したら、その人がディーネちゃんの母親になるのかな？」
「……ッ⁉︎」
　突然ハッとしたヴァレリー。その顔がどんどん赤くなっていく。
「まぁ、そうだよね」
「何言ってんだナガレ、そんなの当たり前だろ」