736 / 966
第二十三話 希望と絶望の復活
この大陸の王様
しおりを挟む
「何してんだアホ、王様だぞ!」
だがナガレも内心で驚いていた。王様がいることはみんな知っているが、その姿を見たものは少ない。エンペリオン地方の民はよく見るだろうが、別地方からわざわざ見にいくほどのことはない。なのでその姿を見たことがある、覚えている国民は意外といないのである。
無表情でこちらを見つめる少年。肌は白く、ちょっぴりハネたカッコ可愛い王子カットの金髪。こちらをじっと眺めている大きく青い目。見た感じ、年相応の低身長。金色ラインが入った純白のスーツで、赤いマントをつけている。頭には金色の王冠があった。
そして耳は長く尖った……エルフのものだ。
「ははーっ、陛下! ありがたき幸せー!」
そう言ってナガレは先頭で跪く。後ろのみんなも見よう見まねでお辞儀した。
「親愛なる国王陛下、こんな卑しい身分の私めを、清純たる王の間へお招きいただいたことを嬉しく思います。私たちはスラガン地方、バッファローという町の冒険者です」
そう言って後ろの仲間を大袈裟に手で示す。
「これは私の頼もしい仲間たちです。数々のモンスターを共に倒してきた、私の人生における自慢の仲間たちにございます。ですが平民ゆえに正しい礼儀方法を知らないものでして、ご無礼をお許しくださいませ」
緊張で顔を赤くしながら、ナガレはなんとか言い切った。……すると数秒の沈黙の末、王様が立ち上がる。
「……よくぞ参った、冒険者よ。私はカイリス・アレシオス・ロードバッツ。今は亡き兄上に変わって王の座についておる。冒険者よ、頭を上げよ」
見た目に変わらぬジョタボイス。だがその声には可愛さだけじゃない威圧感がある。
「ははーっ、ありがとうございます」
素直に顔を上げるナガレ。すると国王陛下、カイリス王と目があった。
「……女。私のこの見た目が気になるか」
「へ? おっおい! 陛下をそんなにジロジロ見ちゃ……」
後ろを向くナガレ。だがフローレンスもヒズマもセンチアもまだ顔を上げていない。みんな怖いのか、ちょっぴり震えながら絶対に視線を合わせない。ということはつまり……。
「そなたのことだ、銀髪の女よ。私の姿が気になるのか。まあ、バンガローに住んでいるのなら私の姿を知らずとも無理はない」
「陛下、バッファローにございます」
「…………」
いつのまにかそばにいたガレオンに耳打ちされ、カイリス王はちょっぴり顔を赤くした。カワイイ!
「コホン、バッファロー住まいなら仕方がない。……我が姉は聡明なるエルフで、私より百五十歳年上だった」
カイリス王はすぐににこやかな顔になる。
だがナガレも内心で驚いていた。王様がいることはみんな知っているが、その姿を見たものは少ない。エンペリオン地方の民はよく見るだろうが、別地方からわざわざ見にいくほどのことはない。なのでその姿を見たことがある、覚えている国民は意外といないのである。
無表情でこちらを見つめる少年。肌は白く、ちょっぴりハネたカッコ可愛い王子カットの金髪。こちらをじっと眺めている大きく青い目。見た感じ、年相応の低身長。金色ラインが入った純白のスーツで、赤いマントをつけている。頭には金色の王冠があった。
そして耳は長く尖った……エルフのものだ。
「ははーっ、陛下! ありがたき幸せー!」
そう言ってナガレは先頭で跪く。後ろのみんなも見よう見まねでお辞儀した。
「親愛なる国王陛下、こんな卑しい身分の私めを、清純たる王の間へお招きいただいたことを嬉しく思います。私たちはスラガン地方、バッファローという町の冒険者です」
そう言って後ろの仲間を大袈裟に手で示す。
「これは私の頼もしい仲間たちです。数々のモンスターを共に倒してきた、私の人生における自慢の仲間たちにございます。ですが平民ゆえに正しい礼儀方法を知らないものでして、ご無礼をお許しくださいませ」
緊張で顔を赤くしながら、ナガレはなんとか言い切った。……すると数秒の沈黙の末、王様が立ち上がる。
「……よくぞ参った、冒険者よ。私はカイリス・アレシオス・ロードバッツ。今は亡き兄上に変わって王の座についておる。冒険者よ、頭を上げよ」
見た目に変わらぬジョタボイス。だがその声には可愛さだけじゃない威圧感がある。
「ははーっ、ありがとうございます」
素直に顔を上げるナガレ。すると国王陛下、カイリス王と目があった。
「……女。私のこの見た目が気になるか」
「へ? おっおい! 陛下をそんなにジロジロ見ちゃ……」
後ろを向くナガレ。だがフローレンスもヒズマもセンチアもまだ顔を上げていない。みんな怖いのか、ちょっぴり震えながら絶対に視線を合わせない。ということはつまり……。
「そなたのことだ、銀髪の女よ。私の姿が気になるのか。まあ、バンガローに住んでいるのなら私の姿を知らずとも無理はない」
「陛下、バッファローにございます」
「…………」
いつのまにかそばにいたガレオンに耳打ちされ、カイリス王はちょっぴり顔を赤くした。カワイイ!
「コホン、バッファロー住まいなら仕方がない。……我が姉は聡明なるエルフで、私より百五十歳年上だった」
カイリス王はすぐににこやかな顔になる。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説



貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――

要石の巫女と不屈と呼ばれた凡人
イチ力ハチ力
ファンタジー
女神が姿を消し、瘴気による侵食が進む『詰んでいる世界』に、五人の高校生が召喚された。
そして五人の中で唯一勝手に付いてきた富東 矢那(フトウ ヤナ)は、他の四人と異なり“勇者”では無かった。
『魔王』を倒すべく喚ばれ、魔力量も桁外れ、伝説級のスキルを既に取得している他の四人の『召喚されし勇者』達に対し、矢那の召還時の魔力量は凡人並。スキルも“言語/文字理解”を除いてはただ一つ、『不撓不屈』のみ。
『召喚を要求した者』は、数奇な運命と自身の持つ宿命に導かれながら、世界の命運を賭けた戦いに、身を投じていくことになる。
絶望の色に染まる『巫女』と、絶望が大嫌いな『凡人』が出会う時、神に挑みし『不屈』の物語が幕を開ける。
脳筋や変態扱いされても、姫がポンコツになっても、ヒロイン達が野獣と化したとしても! この男は決して倒れる事は無い! 顔で嗤って心で泣いて、世界を救う真の英雄譚が始まる!
熱い魂の王道ファンタジーここに誕生!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる