538 / 739
第十九話 禍のエースストライカー
冒険者たちの行方?
しおりを挟む
「元気出してくれ、妹よ。今度は金やプラチナのハサミをプレゼントするから」
「兄上! そういう問題ではありません! だってあのハサミは、兄上が私の誕生日を祝って……グスッ、だってだってぇ……」
「おわ! ちょ、ちょっと私は室内に戻るぞ! どうしたんだ妹よ、あ、ダイヤモンドのハサミが良いか?」
「もうっ、兄上の分からず屋!」
そんな会話をしながら、二人は屋敷の中へ戻ってしまった。
「……。なんというか、申し訳ありませんでした」
去っていく二人の背中へ、ちょっと雑に頭を下げるジョー。一方グレッグは、ある言葉を聞いて固まったナガレとフローレンスを見ていた。
「あの、ナガレ様? 何かあったのですか」
「え! あ、い、いやぁ……ちょっとプラチナって言葉にトラウマがあって」
「え? 何かあったのですか」
「いやぁ、ちょっと殺されかけたというか……あ、あはは……」
「……?」
クイーンスライムの一件を思い出し、ナガレの体を嫌な汗が流れる。グレッグはピンと来ていないようで、無邪気に首を捻っていた。
「ナガレさん! 私が守りますから! どんな困難からも絶対にぃっ」
ガシッ! ぎゅぎゅ~!
「ぎゃあぁぁぁ! 逆ベアバッグやめて! 痛い苦しいお腹潰れるって!」
唐突に後ろからフローレンスにバックハグされてもがくナガレ。筋骨隆々の腕で抱きしめられては逃げられない。
「サニー、大丈夫~?」
「……そ、そんなすぐに効果は出ませんよ……」
サニーは負傷兵に混じって、治療を受けていた。ヒズマの手助けで鎧を脱ぎ、こんな真冬に上半身裸で垣根近くに座っている。横腹には止血用の塗り薬が施され、その上から包帯が巻かれていた。
「寒くない~? コートか何か借りてきてあげようか~?」
「いえ、結構ですよ。お気持ちだけ頂いておきます。私はエルフなので、人間より寒暖差に強いんです」
「私たちが心配なのよ~! 他の兵士さんみなさい男女問わずみーんな厚着してるでしょケガしてるのに! アンタも服着なさい! 浮いてるのよ~! あとで毛布でもなんでも持ってくるからアンタは寝てなさいっ。しっかりとした休息は万病に効くのよっ」
「……ハイわかりました」
ヒズマが準備してくれた簡易ベッドに倒されるサニー。今まで痛んでいた腹が治ったことで安心したのか、すぐに意識が遠のいていく……。
そんな茶番を完全無視していたタネツは、周囲を見回してある事に気づいた。
「……あれ? ケンガやマックィーンさんはどこだ? イーターズもいねえぞ」
「あ、そういえばそうですね。ケンガには文句言ってやろうと思ったのに」
暴れるナガレを降ろして、フローレンスも頭を掻く。ナガレやヒズマも近づいてきた。
「どこかで休んでるんじゃないですか? イーターズのみんな、ワッカーサが裏切った事ショックだろうな……」
「兄上! そういう問題ではありません! だってあのハサミは、兄上が私の誕生日を祝って……グスッ、だってだってぇ……」
「おわ! ちょ、ちょっと私は室内に戻るぞ! どうしたんだ妹よ、あ、ダイヤモンドのハサミが良いか?」
「もうっ、兄上の分からず屋!」
そんな会話をしながら、二人は屋敷の中へ戻ってしまった。
「……。なんというか、申し訳ありませんでした」
去っていく二人の背中へ、ちょっと雑に頭を下げるジョー。一方グレッグは、ある言葉を聞いて固まったナガレとフローレンスを見ていた。
「あの、ナガレ様? 何かあったのですか」
「え! あ、い、いやぁ……ちょっとプラチナって言葉にトラウマがあって」
「え? 何かあったのですか」
「いやぁ、ちょっと殺されかけたというか……あ、あはは……」
「……?」
クイーンスライムの一件を思い出し、ナガレの体を嫌な汗が流れる。グレッグはピンと来ていないようで、無邪気に首を捻っていた。
「ナガレさん! 私が守りますから! どんな困難からも絶対にぃっ」
ガシッ! ぎゅぎゅ~!
「ぎゃあぁぁぁ! 逆ベアバッグやめて! 痛い苦しいお腹潰れるって!」
唐突に後ろからフローレンスにバックハグされてもがくナガレ。筋骨隆々の腕で抱きしめられては逃げられない。
「サニー、大丈夫~?」
「……そ、そんなすぐに効果は出ませんよ……」
サニーは負傷兵に混じって、治療を受けていた。ヒズマの手助けで鎧を脱ぎ、こんな真冬に上半身裸で垣根近くに座っている。横腹には止血用の塗り薬が施され、その上から包帯が巻かれていた。
「寒くない~? コートか何か借りてきてあげようか~?」
「いえ、結構ですよ。お気持ちだけ頂いておきます。私はエルフなので、人間より寒暖差に強いんです」
「私たちが心配なのよ~! 他の兵士さんみなさい男女問わずみーんな厚着してるでしょケガしてるのに! アンタも服着なさい! 浮いてるのよ~! あとで毛布でもなんでも持ってくるからアンタは寝てなさいっ。しっかりとした休息は万病に効くのよっ」
「……ハイわかりました」
ヒズマが準備してくれた簡易ベッドに倒されるサニー。今まで痛んでいた腹が治ったことで安心したのか、すぐに意識が遠のいていく……。
そんな茶番を完全無視していたタネツは、周囲を見回してある事に気づいた。
「……あれ? ケンガやマックィーンさんはどこだ? イーターズもいねえぞ」
「あ、そういえばそうですね。ケンガには文句言ってやろうと思ったのに」
暴れるナガレを降ろして、フローレンスも頭を掻く。ナガレやヒズマも近づいてきた。
「どこかで休んでるんじゃないですか? イーターズのみんな、ワッカーサが裏切った事ショックだろうな……」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます(Ver.02)
京衛武百十
ファンタジー
俺の名は錬是(れんぜ)。開拓や開発に適した惑星を探す惑星ハンターだ。
だが、宇宙船の故障である未開の惑星に不時着。宇宙船の頭脳体でもあるメイトギアのエレクシアYM10と共にサバイバル生活をすることになった。
と言っても、メイトギアのエレクシアYM10がいれば身の回りの世話は完璧にしてくれるし食料だってエレクシアが確保してくれるしで、存外、快適な生活をしてる。
しかもこの惑星、どうやらかつて人間がいたらしく、その成れの果てなのか何なのか、やけに人間っぽいクリーチャーが多数生息してたんだ。
地球人以外の知的生命体、しかも人類らしいものがいた惑星となれば歴史に残る大発見なんだが、いかんせん帰る当てもない俺は、そこのクリーチャー達と仲良くなることで残りの人生を楽しむことにしたのだった。
筆者より。
なろうで連載中の「未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます」に若干の手直しを加えたVer.02として連載します。
なお、連載も長くなりましたが、第五章の「幸せ」までで錬是を主人公とした物語自体はいったん完結しています。それ以降は<錬是視点の別の物語>と捉えていただいても間違いではないでしょう。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる