崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

第十八話 悪夢の遠吠え

対決⁉︎ 裏切り兵士

「……チッ、行動の早い奴らだ！」
　オオカミ男と化したワッカーサは、右手で剣を振り回しフローレンスを牽制する。重い鉄球を弾かれて、フローレンスは歯噛みした。
「ぐぬぬっ、まさか片手でガードしてくるなんて……」
　そして、ワッカーサが左手に抱いているのは……。

「んぐぐー！　ふぐー！」
　手足を縛られ猿轡さるぐつわを噛まされたグレッグだった！　涙目でこちらに何かを訴えてくるが、うめき声にしか聞こえなかった。
「グレッグ様！　今助けますから！」
「……なるほど、狙いは息子のグレッグだったから、ブラフとしてシャルロット嬢を狙ったのか。全く姑息なやつだ」
　ジョーが冷たく言い放つ。ワッカーサはこちらを見るなり「ん⁉︎」と首を傾げた。
「そこのマスク男！　てめえ何者だ。その目どこかで見たような……」
　ダッ！
　反応するより前に、ジョーが駆け出した。ダガーを抜き放ちワッカーサに斬りかかる。
　ザシュッ！
「ぐおっ！　……へっへっへ、スジは良いな」
「……なにっ！」
　脇腹をダガーで斬られても、ワッカーサは口角を上げニヤニヤ笑う。傷はついたが血が出ていない！　思わぬ強敵に、ジョーはキッと目を細めた。
「だが、人違いだ。こんなに強い奴がいたら、忘れるはずがない。……この俺にダメージを与えるとは。俺たちの組織にスカウトしたいくらいだ」
「その組織に入ってやっても良い。……貴様が死ねばな！」
「ジョー、落ち着け！　今のあいつはグレッグ様を人質にしてるんだぞ！」
「案ずるなナガレ、奴の目的は誘拐だ。ここで殺せば、奴は組織に潰されるぞ」
「えっと、それってあなたの推測ですよね？」
　ナガレのツッコミも意に介さずジョーはダガーの先を突きつけた。
「……貴様の相手はこの俺だ！」
　ダッ……キィン！
「いやちょっと……ジョーっ！」
「ナガレ君！　危ない～！」
「……！」
　ヒズマの声で我に返ったナガレ。顔を上げた瞬間、裏切った兵士が斬りかかってきた！
　ブンッ！
「こなくそっ！」
　すぐさまマルチスタッフで迎撃する。ロングソードの攻撃は確かに強そうだが、ナガレはヒズマとの特訓でこれより遥かに速い剣撃を捌いていた。
　キィン！　カーン！　キィン！
　振り回される剣の連撃を全て受け流す。突き刺し攻撃を後ろへ受け流すと、相手はよろめいた。
「かなり痛いけどガマンしろよ！　サミダレコンボ！」
　一瞬脳天をぶん殴ろうと思ったが、人の体にマルチスタッフを差し込みたくない。胴体を狙って、八の字を描くサミダレコンボを繰り出す！