500 / 966
第十八話 悪夢の遠吠え
報復の相手
しおりを挟む「それで、オメーは何を調べてたんだ? 教えてくれよ」
「ああ。……コレを見てくれ」
ジョーは先ほどの手帳を渡した。ナガレはそれを受け取って、パラパラとページをめくる。
「どれどれ。……なんだ? 何かの地図ばっかりだぞ??」
どのページにも、地図ばっかりだった。直接書き込んだ手書きのものもあれば、他の精巧なものを切り抜いて貼り付けたものもある。
「……お? これは……」
その中でナガレは『ゼルダン』という町の地図に目をつけた。ここはナガレの故郷の近くにある、コナキ地方の町だ。彼も何度か妹と一緒に行ったことがある。
「……どうした?」
「コレ、ウチの近所だよ。懐かしいなぁ。妹と劇場で演劇を見たんだ。この地図やけに正確だな。ジョーが書いたのか?」
「……いや、書いたのは俺じゃない。脅して書かせた」
(聞くんじゃなかった……)
軽はずみな質問を後悔するナガレ。ノスタルジーな気分が吹っ飛んだ。
窓からの光も少なく、部屋は薄暗い。それも相待ってなんだか不気味な雰囲気だ。
「ん、なんだこの赤い印」
ナガレはふと地図を見て、一箇所に赤いバツ印が書かれていることに気がついた。色々と雑な手書きの地図なので具体的な位置は分からない。
「……ああ、それは死体を埋めたところだ。誰にも見られていない」
(……なんでこんなことばっかり聞いちゃうんだろう)
もしかして自分、今メチャクチャ危険な状況なんじゃないだろうか。ジョーが「次はお前だ、ナガレ。ここでくたばれ!」とか言ってこないだろうか……。
「……もうなんとなく察しているだろうが、これは俺の家族を殺した奴らの……復讐の記録だ」
そんなことを考えて黙っているナガレを見て、ジョーはようやく手帳のことを話してくれた。
「……フッ、なんの因果だろうな。俺はどうやらコレに呪われているようだ」
「え、どういう意味だ?」
言葉の意味がわからずキョトンとするナガレ。すると……ジョーは黙ってこちらを見つめた。
「え、な、なんだよ」
「……そういえば、俺が何を憎み何に復讐したかずっと言っていなかった。……だがお前はもう、その名前を知っていたんだな」
ジョーは深く息を吐く。落ち着こうとしているようだが……。
「……これも察していたんじゃないか? …………俺の家族を殺したのは、あのイビル教団だってことを」
「え……!」
さも当然のように言われた言葉に、ナガレは絶句した。後ずさった拍子に棚にぶつかって、タネが入った袋が地面に落ちる。
ドサッ……。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説


【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?


ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――

要石の巫女と不屈と呼ばれた凡人
イチ力ハチ力
ファンタジー
女神が姿を消し、瘴気による侵食が進む『詰んでいる世界』に、五人の高校生が召喚された。
そして五人の中で唯一勝手に付いてきた富東 矢那(フトウ ヤナ)は、他の四人と異なり“勇者”では無かった。
『魔王』を倒すべく喚ばれ、魔力量も桁外れ、伝説級のスキルを既に取得している他の四人の『召喚されし勇者』達に対し、矢那の召還時の魔力量は凡人並。スキルも“言語/文字理解”を除いてはただ一つ、『不撓不屈』のみ。
『召喚を要求した者』は、数奇な運命と自身の持つ宿命に導かれながら、世界の命運を賭けた戦いに、身を投じていくことになる。
絶望の色に染まる『巫女』と、絶望が大嫌いな『凡人』が出会う時、神に挑みし『不屈』の物語が幕を開ける。
脳筋や変態扱いされても、姫がポンコツになっても、ヒロイン達が野獣と化したとしても! この男は決して倒れる事は無い! 顔で嗤って心で泣いて、世界を救う真の英雄譚が始まる!
熱い魂の王道ファンタジーここに誕生!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる