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第十七話 ハト・スタンピード!

貴族もどきのティータイム

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「もぐもぐ……! 叔母さま! このクッキーとても美味しいです!」
「そう、それは良かったわ。頑張って焼いた甲斐があるわね。たくさんあるから、もっと食べて」
 パァッと表情が明るくなったグレッグ。佐藤は少なめだが牛乳の甘さがあってとてもおいしい! それを見たシャルロットも少しだけ微笑んだ。
「でも、後でちゃんと歯を磨くのよ」
「はいっ!」
 元気よく返事をして、またクッキーの山へ手を伸ばすグレッグ。お上品に振る舞っていても、こう言うところはまだ子供だ。
 反面ハーバードは少し不満そうだった。
「なあシャルロット。クッキーくらい、召使やメイドにでも焼かせれば良いではないか。何もお前が作らなくても……」
「兄上。私は好きで花を育て、お菓子を作り、料理をしています。まさか兄上は私の趣味を妨害する訳ではないでしょうね」
「そ、そんなことはしないさ!」
 シャルロットの言い方はとても穏やかだ。だがハーバードはギクリとして、慌てて両手を顔の前で振った。
「愛する妹にそんなことはしない! ただ私はお前が無茶をしているのではないかと……」
「わかっています、兄上。ありがとうございます。ですがこれは私が好きでやっていること。ご心配には及びません」
「そ、そうか。それならいいのだ。はっはっは……」
 誤魔化すように笑って、ハーバードもクッキーを一枚手に取った。
「はむっ……! こ、これはうまい! さすがはシャルロット、料理の腕も一級品だな! 私も兄として誇らしいぞ。レシピを今度教えてくれ」
「はい、ありがとうございます。ですがそれはできません」
「ど、どうしてだ? ……まさか私がなにか失礼なことを⁉︎ す、すまない、今すぐ謝るから許してくれ!」
「いえ、その……」
 シャルロットはグレッグをチラリと見てからハーバードに耳打ちした。

「……これは、私の義妹、兄上の奥様がかつて教えてくださったレシピなのです」
「………………なるほど、そうだったか……」
 グレッグは美味しそうにクッキーを食べている。だが、シャルロットとハーバードは黙り込んでしまった。

 彼の許嫁が亡くなってから、もう十年になる。グレッグがまだ一歳の時、病気で死んだのだ。

「ああ、美味しいです……今度は兄上とも一緒に食べたいです。叔母さま、ぜひお願いいたします!」
「え、あ、そ、そうね……。ええ、もちろん。たくさん焼いてあげますよ。その代わりに勉強も頑張りなさい」
「はいっ、もちろんです!」
 ややこしいが、実はグレッグにも一人兄がいる。現在十七歳でキングクロス地方にて経営のイロハを勉強中……だが、紹介するのは別の機会に。
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