362 / 739
第十五話 リトル・ドラゴンスレイヤー
町の教会
しおりを挟む
「おーい、ナガレっち~?」
目の前で手をヒラヒラされて、ナガレはようやく正気に戻った。センチアの手のひらはヤケに分厚く柔らかそうだ。半獣人特有の、イヌの肉球の名残りかもしれない。
「うおっと。なんとなくだけど分かった。教会なら、もちろんあるぜ。案内してやんよ」
「え、マヂ! やりぴ~! ここまで頑張って来て努力報われちだわ~」
「ここからスワロー村までどのくらいかかったのさ?」
「んー、大体四時間くらいやんね」
「結構遠いんだな……」
そんなことを話しながら歩いていく。……まだ宇宙猫状態のアリッサとルックは放ったままだが。
「このバッファローの町はまだ『辺境』じゃけ? ウチはホントの『田舎』だしぃ。加工屋もホテルもレストランもないし、冒険者ギルドだって適当にメンバー集めて『ギルド』って言い張ってるだけだから。あ、冒険者ライセンスはちゃんと取ってんよ?」
「そ、そんなのでギルド出来るの⁉︎」
自分との待遇の違いに驚くナガレ。だがセンチアは少し目を逸らして、誤魔化すように耳の裏をポリポリ掻いた。
「やー、ウチはあまりにも外界との関わりないからね。危険なモンスターもぜぇ~んぜん来ないし、だいたいの仕事は畑を荒らすスカルウルフとか雑魚を追い払うだけだし。だから稼ぎもそこまで多くないよん」
「なぁんだそっか……」
規模が小さいと、得することもあるようだ。バッファローの町にはちゃんと建物やギルドマスターがいる分、資金繰りなども重要視されて『しまって』いるのだろう。
もしギルドが潰れたら、また自分たちで立ち上げてもいいかもしれない。そんな風に考えていると、センチアが「あ!」と顔を上げた。
「あの建物はなんだし? ボロっちくてなんだかクサそう。なんで撤去しないんだろね?」
「…………アレが、オレたちの冒険者ギルドだよ」
センチアが反応したのは、ちょうど横を通り過ぎた冒険者ギルドだった。ボロいのは間違いないが……。
「……マヂ? ま、まっさか~。流石に冗談っしょ……」
ギィィィィッ……。
「あれ、ナガレ君じゃん。オーッス。……もしかしてデート中?」
さすがに嘘だと思ったセンチアは笑い飛ばそうとした……が、タイミング悪くギルド職員のアルクルが出てきた。ちょっと気崩しているが、確かに冒険者ギルドの制服である。
「…………マヂ?」
「うん、そうだよ。でもそう言うことよく言われてるから気にしないで」
「へっへっへ~、仲睦まじそうで何より。それじゃあ俺は消えるぜ~☆」
おそらく買い出しにでもいくつもりだったのだろうが、いらん気を遣ってアルクルはまた引っ込んでいった。
目の前で手をヒラヒラされて、ナガレはようやく正気に戻った。センチアの手のひらはヤケに分厚く柔らかそうだ。半獣人特有の、イヌの肉球の名残りかもしれない。
「うおっと。なんとなくだけど分かった。教会なら、もちろんあるぜ。案内してやんよ」
「え、マヂ! やりぴ~! ここまで頑張って来て努力報われちだわ~」
「ここからスワロー村までどのくらいかかったのさ?」
「んー、大体四時間くらいやんね」
「結構遠いんだな……」
そんなことを話しながら歩いていく。……まだ宇宙猫状態のアリッサとルックは放ったままだが。
「このバッファローの町はまだ『辺境』じゃけ? ウチはホントの『田舎』だしぃ。加工屋もホテルもレストランもないし、冒険者ギルドだって適当にメンバー集めて『ギルド』って言い張ってるだけだから。あ、冒険者ライセンスはちゃんと取ってんよ?」
「そ、そんなのでギルド出来るの⁉︎」
自分との待遇の違いに驚くナガレ。だがセンチアは少し目を逸らして、誤魔化すように耳の裏をポリポリ掻いた。
「やー、ウチはあまりにも外界との関わりないからね。危険なモンスターもぜぇ~んぜん来ないし、だいたいの仕事は畑を荒らすスカルウルフとか雑魚を追い払うだけだし。だから稼ぎもそこまで多くないよん」
「なぁんだそっか……」
規模が小さいと、得することもあるようだ。バッファローの町にはちゃんと建物やギルドマスターがいる分、資金繰りなども重要視されて『しまって』いるのだろう。
もしギルドが潰れたら、また自分たちで立ち上げてもいいかもしれない。そんな風に考えていると、センチアが「あ!」と顔を上げた。
「あの建物はなんだし? ボロっちくてなんだかクサそう。なんで撤去しないんだろね?」
「…………アレが、オレたちの冒険者ギルドだよ」
センチアが反応したのは、ちょうど横を通り過ぎた冒険者ギルドだった。ボロいのは間違いないが……。
「……マヂ? ま、まっさか~。流石に冗談っしょ……」
ギィィィィッ……。
「あれ、ナガレ君じゃん。オーッス。……もしかしてデート中?」
さすがに嘘だと思ったセンチアは笑い飛ばそうとした……が、タイミング悪くギルド職員のアルクルが出てきた。ちょっと気崩しているが、確かに冒険者ギルドの制服である。
「…………マヂ?」
「うん、そうだよ。でもそう言うことよく言われてるから気にしないで」
「へっへっへ~、仲睦まじそうで何より。それじゃあ俺は消えるぜ~☆」
おそらく買い出しにでもいくつもりだったのだろうが、いらん気を遣ってアルクルはまた引っ込んでいった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
聖人様は自重せずに人生を楽しみます!
紫南
ファンタジー
前世で多くの国々の王さえも頼りにし、慕われていた教皇だったキリアルートは、神として迎えられる前に、人としての最後の人生を与えられて転生した。
人生を楽しむためにも、少しでも楽に、その力を発揮するためにもと生まれる場所を神が選んだはずだったのだが、早々に送られたのは問題の絶えない辺境の地だった。これは神にも予想できなかったようだ。
そこで前世からの性か、周りが直面する問題を解決していく。
助けてくれるのは、情報通で特異技能を持つ霊達や従魔達だ。キリアルートの役に立とうと時に暴走する彼らに振り回されながらも楽しんだり、当たり前のように前世からの能力を使うキリアルートに、お供達が『ちょっと待て』と言いながら、世界を見聞する。
裏方として人々を支える生き方をしてきた聖人様は、今生では人々の先頭に立って駆け抜けて行く!
『好きに生きろと言われたからには目一杯今生を楽しみます!』
ちょっと腹黒なところもある元聖人様が、お供達と好き勝手にやって、周りを驚かせながらも世界を席巻していきます!
未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます(Ver.02)
京衛武百十
ファンタジー
俺の名は錬是(れんぜ)。開拓や開発に適した惑星を探す惑星ハンターだ。
だが、宇宙船の故障である未開の惑星に不時着。宇宙船の頭脳体でもあるメイトギアのエレクシアYM10と共にサバイバル生活をすることになった。
と言っても、メイトギアのエレクシアYM10がいれば身の回りの世話は完璧にしてくれるし食料だってエレクシアが確保してくれるしで、存外、快適な生活をしてる。
しかもこの惑星、どうやらかつて人間がいたらしく、その成れの果てなのか何なのか、やけに人間っぽいクリーチャーが多数生息してたんだ。
地球人以外の知的生命体、しかも人類らしいものがいた惑星となれば歴史に残る大発見なんだが、いかんせん帰る当てもない俺は、そこのクリーチャー達と仲良くなることで残りの人生を楽しむことにしたのだった。
筆者より。
なろうで連載中の「未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます」に若干の手直しを加えたVer.02として連載します。
なお、連載も長くなりましたが、第五章の「幸せ」までで錬是を主人公とした物語自体はいったん完結しています。それ以降は<錬是視点の別の物語>と捉えていただいても間違いではないでしょう。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる