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第十二話 猛き冠、森林の蹄
裏の裏まで
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「うあっ!」
ドサッ……。
「アンタさぁ、ウチらが遠回しに『早く辞めろ』って言ってんの気づかない? マジでキモイんだけど」
「うっ……」
ここはどこかも分からない、薄暗い部屋。地面に倒れているのは、あのフローレンスだ。それを三人の人物が取り囲んでいるが、あまりに光が少ないため顔はよく見えない。
しかし声はとても可愛らしい女性的なものだ。
「何とか言えよ、このブスゴリラ!」
ガッ!
「ぐぅっ……! げほっ、ごほっ……」
その中の一人が、フローレンスの顔面を蹴り飛ばす! うずくまって咳き込む彼女の口からはポタポタと血が溢れていた。
「マジで何も出来ないんだ。アイドルとして色々どうなの? 金づるにも何ねえし……アンタみてえなゴリラ女は金積まれても抱かないって、ウチの二人目の彼氏も言ってるし」
「言っとくけど、誰かに訴えようってのも無駄ですから。証拠は何にもないですし。ま、今すぐ消えればずーっとラクになりますけどね」
後の二人も淡々と吐き捨てるように言い放つ。それでも何も言わないフローレンスを見て、暴力を振るう一人はニヤリと笑った。
「そっかそっか。文句も不満も言えるワケないんだよねえ。そんなことしたらアンタの『キラキラした女の子になりたい』って夢がそこで終わっちまうからねぇ~! キャハハハハ……!」
女は笑いながらフローレンスの胸ぐらを掴み、乱暴に放り投げた。
「……ッ!」
「……んだよ、その目。何見てんだよっ!」
ドガッ!
「うぐっ!」
倒れたフローレンスと目があっただけで、また顔面を蹴り飛ばす女。嫌味な微笑みはなおも口元から消えない。
ドガッ! ドガッ! ドガッ!
そのまま何度も蹴り続ける女。
「抵抗しても良いんだよ~? ほらほら、殴られっぱなしで嫌じゃ無いの? 殴ったら追放だけど! キャハハハハハハッ!」
……しかし何度蹴られて罵られても、フローレンスは決して言い返さなかった。まともに戦えば力でねじ伏せられただろうにちっとも反撃しない。
「そう言えばリーダー、バックダンサーの入れ替えとかどーします? 来月ファン感謝デーの時、必要になるじゃないですか」
「さぁ? とりあえず顔が良くて冒険者としての実績もあって、しっかり踊れる女入れときな。……そうそう、あたしより上は出すなよ」
「へーへー、分かってますよ。そうそう、この前一人辞めちゃったらしいんで、ボスが直接審査するらしいっす。あのお眼鏡がキツイボス相手に挑戦しなきゃいけないなんて、新しく来る子もついてないっすねぇ」
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