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第十一話 さらば、アタカンの子息

カープー森林の対峙

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~☆~☆~☆~☆~☆~

 その後はトントン拍子で次の日を迎えて、ナガレとフローレンスはカープー森林にやって来た。鬱蒼とした森の前で集合する。
「改めて、来てくださってありがとうございます! それにナガレさんとすぐに会えて、私とっても嬉しいです!」
「へへ、喜んでもらえてよかったよ。頑張ろうぜ」
「あの、ところでそちらの方は……?」
 いつも通りの白装束を着たフローレンスは……ナガレの後ろに控えるサニーを覗き見た。
「こんにちは。私はサニー・ワカセラ。数週間前にバッファロー冒険者ギルドへ加入した者です。不束者ですが、どうぞよろしく」
「は、はぁ、そうですか。こちらこそ……」
 礼儀正しく挨拶され、フローレンスもちょっと困り顔で頭を下げた。……関係ないことだが、サニーもそこそこ長身なのに、フローレンスの身長の方が三十センチは大きい。かつて自分の身長を二メートルほどと言っていたが、実際はそれ以上なのでは……?
「他のみんなはしばらく休みたいって言ってたんだけど、サニーだけが名乗り出てくれたんだ。……よし、それじゃあ行こうぜ! あ、ただちょっと聞いときたいことがあってさ。かくかくしかじかで……」
 ナガレはフローレンスに、レンから聞いたカープー森林の話をしてみる。ついでにラストハーレムズのチームメイトの事をきくと、彼女は少し迷ったようだが頷いた。
「あー、はい。実はそう言うことです。私一人でここに入るのは、なんだか怖かったので……てへへ、私ってば人望ないんですね」
 おどけたように、舌を出して笑うフローレンス。かなりぞんざいな扱いを受けているのに笑顔を作れるのは、強い心の証だろう。
「そっか……大変だな。すごいよフローレンスは。でもさ……」
 ナガレは率直に気になった事を尋ねてみた。
「ラストハーレムズじゃなきゃ、フローレンスのなりたいモノにはなれないの? ほら、前言ってた『キラキラした女の子になりたい』ってヤツ」
「え? ……えっと、そ、それは……」
「あ! ご、ごめん、今のはちょっと良くなかったよね……」
 だが、フローレンスはハッとしたように硬直した。何かマズイことを聞いたかと萎縮するナガレ。
「まあまあお二人方、ここで立ち話をしていても仕方ありません。今日の目的はデスパイダーを討伐する事だけ。集中していきましょう」
 サニーに促され、一行は森の中へ入っていった。


「サニー、どうしたんだキョロキョロして? そんな地面ばっかり見ても、デスパイダーは出てこないぞ。穴掘れる訳でもあるまいし」
「いえ……あ、ありました!」
「え、何がですか?」
「ほら、これを見てください! デスパイダーの足跡です」
 木々で視界が遮られるようになり始めたころ、サニーが何かを発見する。そこには地面に杭が刺さった跡のような、小さく細長い穴があった。
「えぇ~? 他のところにはなかったぞ?」
「いえ、これはデスパイダーが木から飛び降りた時に出来た足跡です。ヤツは警戒心が強い為普段は痕跡をあまり残しませんが、高いところから降りてくると足が地面に刺さるんです」
「な、なるほど……」
「この近くにいるかもしれませんね!」
 得物のモーニングスターを構えるフローレンス。ナガレも油断なく周囲を見渡している。
「奇襲を受けないよう、慎重に立ち話まりましょう」
 
 ……ザッザッザッ……。

「ん?」
 ふと、木を削るような音がした。見るとサニーが近くにある木の表面に、何やらサーベルで傷をつけている。
「何やってんの? ……なんかグチャグチャで良く分からない形だな」
「ええ、これは目印をつけているんです。グチャグチャの形をした方が、分かりやすいですからね」
「そうかなぁ? ……ま、いいや」
 ナガレはすぐに前方へ向き直り、マルチスタッフを片手に持って進んでいく。

 サニーはそれを見て、ホッとため息をついた。
(……危ない危ない、『紋章』を消したのがバレるところでした。全く、撤退の後始末が雑なんですからもう……)
 バレないようにチラッとナガレに視線を送る。こちらに背中を向けて、呑気にフローレンスと話していた。
(……フン。ナガレのヤツが単純なバカで助かったものです)
 そして心の中で、かなり辛辣に毒吐いた。
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