上 下
207 / 497
第十話 闇を抱える爆音波

驚愕の再会

しおりを挟む

 ……と、ここでまたも「おーーい!」と呼ぶ声が。
(このセリフ、今日はよく聞くな)
 ジョーがそっちを向くと、走ってくるケンガがいた。プンスコ怒りながら突撃してくる姿はなんだか滑稽である。
「おっせーぞジョー! 一体何を話してやがる……」
 ここでヤケに気落ちしたナガレたちと、それを何とか取り持とうとしているセンチアを見て首を傾げた。
「なんだ? 何の騒ぎだ。俺様にも教えろよ~」
 全く周囲が見えていないようだ。説明するのもめんどくさいので、ジョーは黙ってカナたちの方へ顎をしゃくった。
「ったく、相変わらず口数が少ない、ん、だか、ら…………………」
「……ウソ」

 そうしてカナと目が合った瞬間、ケンガからニヤけた笑いが引っ込んだ。

「か……カナ⁉︎」
「ケンちゃん⁉︎」

「……カナ? ケンちゃん?」
「なんと、知り合いでしたか!」
 思わずジョーとサニーは顔を見合わせた。
「え、ダチなん? なんかあーし困惑しててウケる」
「ああ……コイツが前話してた……なんだか頼りなさそうだが……?」
それだけでなくセンチアとダンケも困惑している上、二人同時に名前を叫んだのでナガレたちも思わずそちらを見てしまう。
「え、何?」
「あら、いつの間に増えてたの~⁉︎」
 しかしケンガとカナはそんな周りの様子など関係なく二人で喋っていた。
「か、カナ! お前冒険者になってたのか⁉︎」
「ケンちゃんだって、本当に冒険者だったんだね! 昔は嘘つきで見栄っ張りの『弱虫ケンガ』なんて言われてたのに……」
「お、おい! その話はよせって……」
「昔の事じゃない! うわぁ、懐かしいな~。一緒に遊んだ時のこと思い出すね~」

「なんだよ、二人は知り合いか?」
 流石に気になってナガレが聞いてみた。
「べ、別に俺様はこんなヤツ知らねえよ」
「はぁ~っ、まーだウソばっか。ケンちゃんはあたしの幼馴染なんです。あっ、こんにちは! あた……私カナって言います」
「ああ、オレはナガレ・ウエスト。アンタが次の冒険者?」
「それについちゃ、あーしがメイセツしちゃる!」
 空気をシラけさせた名誉を挽回するチャンスに飛び込んだのは、イヌ耳のセンチアだった。
「実は本来参加する冒険者のティーパー(パーティ)は他のトコだったん! だけどそいつら急に依頼キャンセルしてどっか行っちゃったんよね~。それでウチのギルマスに、あーしらが代わりに言ってくれって頼まれたんよ」
「へぇ~、そうだったのか」
 それなら人数が少なかったのも納得だ。なぜ前の冒険者たちが突然キャンセルしたのか気になるが、とにかく代わりが来てくれてよかった。

「それにしてもケンちゃん、どうしてずーっと村に帰って来なかったの? あたしら地元の冒険者ギルドに着いたのに」
「俺様は……俺はアタカンの、オヤジの苗字に恥ずかしく無い冒険者になりたかった。だから帰らなかったんだ。タイガスでビッグになって、おめーを迎えに行こうと……」
(へぇ~)
(そうなのね~)
(初めて聞いたぞ、そんなの)
 二人の会話を、しれっとみんなで聴いている。そういえばケンガの父親は、昔有名な冒険者だった。
「え、それホントだったんだ。今までずっとウソだと思ってた」
「…………」
 カナにそう言い放たれてしまい、なんとも言えない表情になるケンガ。まあ正直ナガレたちも、あんまり信じていなかったが。
「今はとっても楽しいよ! ダンケとセンチアみたいな仲間もできたし、ケンちゃんも戻ってこれば良いのに」
「え、それはオレたちが困る!」
 あんまりな話に流石のナガレも声を上げた。ただでさえ人が足りて無いバッファロー冒険者ギルドで、新たに抜けられるのはマズイ!
「うわ、ナガレさん? どうしたんですか……」
「今コッチは大変なんだよ。人も金も無くて解散の危機でさ」
 
 そこまで言ったところで……急にダンケがカナの手を取り、ケンガたちから引き離した。
「ほらカナ、ずっと立ち話ばかりではいられまい。ナガレさんたちもやることがあるだろう。俺たちは準備しようじゃないか」
 そう言ってカナの首根っこを掴み、ズルズル引っ張って向こうへ歩いて行く。
「あーもうダンケ……ケンちゃん、また後でね!」
 その状況でものんきに手を振るカナ。
「ウチもイノヘッドでリターンすんわ! そんじゃバイビー☆」
「…………」
 大袈裟に手を振るセンチアと無言で片手を上げるワッカーサも、その後を急いで追いかけた。

 カランカラーン!

「……!」
 と、ここでワッカーサのベルトポーチから水筒が落ちた。硬い地面にぶつかって大きな音を立てる。
「大丈夫ですか? はい、どうぞ……」
 さすがは紳士、サニーがいち早くしゃがんで水筒を取った。それをワッカーサに手渡そうとするが……。

 その瞬間、ワッカーサが突然サニーに低い声で耳打ちした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

処理中です...