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第十話 闇を抱える爆音波
キンテツ村の惨状
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という訳で三人の二組に分かれて馬車に乗り込んだ冒険者たち。
……ちなみに冒険者はケンガとサニーを含めて五人であるが、残る一人はなんとジョーである。
「え、ジョー? オメーも付いてくんのか?」
「……不満か?」
「いや、そういう訳じゃないけど……これはオレたち冒険者の依頼だろ? ほら……あのズルセコドラゴン(ズルくてセコいドラゴン)との約束はいいのか?」
忘れている方もいるかもしれないが、ナガレが言っているのはあのマッシバーのことである。ジョーの元チームメイトで、大陸に数名しかいない『Zランク冒険者』の称号を持つが、ナガレたちからすれば、ギルドにいちゃもんを付けてくる嫌なヤツである。
そう聞いてジョーは首を振った。
「……いや、俺が報酬をもらわなければいい。俺は友達の仕事を『手伝い』に行くだけだ。決して冒険者の仕事をしている訳ではない」
「ジョー……お前、だいぶ強引になったな」
「フッ、誰かさんのおかげでな」
という訳でジョーも同行することになったのだ。アリッサとルックに「いってらっしゃ~い」と見送られ、少し恥ずかしそうだった。
そうして同じ馬車に乗ったジョー、それとサニーと話しているうちに、日が沈み始めた。
「……それで今度サキミと一緒にお酒飲む約束したんだ! 病気もだいぶ治ってきたみたいで、ちょっとだけなら飲んでも大丈夫なんだって! いやー、楽しみだなぁ~……」
「それはおめでとうございます。なんというか人間らしい恋愛ですね」
「……嫌味か?」
「いいえジョーさん、そんなつもりではありません。しかしエルフの私には、先ほどナガレさんがおっしゃっていた『一目惚れ』というのがよくわからなくて」
「え、そうなの?」
興味を持ったナガレはグッと身を乗り出す。サニーはニコリとして頷いた。
「はい。エルフは長寿種族故に、恋愛などにあまり興味を持たないんです。それゆえ他人を好きになるには、見かけや第一印象などで判断したりせず、相手と長い間過ごしてやっと恋心が芽生える……という学説があります。まぁこれも人間の学者さんの物なんですけどね」
「へぇ~、異文化交流だなぁ」
思わず感心して、背もたれ代わりのバッグにもたれかかるナガレ。……するとジョーがふと窓の外を見た。
「……もうすぐ着くぞ、降りる準備をしておけ」
「え、マジ? よく分かったな」
ジョーの言う通り、じきに馬車は止まった。馬の繰り手の兄ちゃんにお礼を言ってピョンと飛び降りる。
「どうか、お気をつけて……」
そう言って繰り手は手綱を振り、馬を走らせて去っていった。
「さて、ここがキンテツ村………………⁉︎」
振り向いたナガレは、その光景に絶句した。
「な……なんだよコレ! まるで戦争でも起こっちまったみたいだ……!」
少し前までのどかな村であったのだろうキンテツ村は、真っ黒コゲの焼け野原と化していた……。草木はもれなく煤になり、すべての建物は焼け焦げ倒壊して無惨な姿となっている。ほとんどの建物に屋根がないどころか、まともな壁が残っているものすら、片手で数えるほどしかない。村のゲートの看板が、留め具が外れてぶらぶらと垂れ下がっていた。
「こ……こりゃ、ひでえ……!」
「マガツゴーストもどんだけ暴れたのよ~……!」
聞き慣れた声に振り向くと、ヒズマたちも後ろで立ち尽くしていた。あまりの惨状に、みな言葉を失っている。
……と、デコボコになってしまった道の向こうから誰かがやって来るのが見えた。
「お? なんじゃありゃ」
目を凝らしてじーっと見つめるナガレ。その人物は「おーい!」とこちらへ手を振っている。
頭にシンプルなヘルメットを被った、吊り目が特徴の女性だ。黒いタンクトップに橙色のニッカポッカのようなズボンを履いて、頑丈そうな作業靴、首にタオルを巻いている。ベルトにはトンカチやらネジ回しやら、いろいろな工具がぶら下がっていた。
「おばさん、誰? オレはナガレ。冒険者だよ」
「おばさんじゃねえ、まだお姉さんだ! アンタ達が依頼を受けた冒険者かい?」
「そ、そうだけど」
だいぶ声が大きくてうるさい。ナガレが頷くと、その女性はニッと笑った。
「そうだったか! 可愛いお嬢さんだねぇ。あたしゃ、ヤング・ムーンってなもんだ。キンテツ村復興の工事現場を取り仕切ってる。現場監督とでも呼んでくんな」
「オレは男だっつーの!」
プンスカ怒るナガレを押し留めつつ、サニーが前に進み出る。
「私は冒険者のサニー・ワカセラ。状況はどんな感じですか?」
「あんまり良くは無い。この仕事初めて十七年経つけど、こんなボロボロにやられちまったような村落は初めて見たよ。ささ、案内するからついて来な。この辺りはすぐ真っ暗になるから、逸れるんじゃ無いよ!」
そう言って現場監督のヤングさんは踵を返し歩いていく。ナガレ達も後に続いた。
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