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第十話 闇を抱える爆音波
特別な任務?
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「ま、まあね~。私も結構スタミナついて来たのかしら~?」
「そうだな! 俺も何かしらの新スキルがついてほしいもんだ」
何度もスキルを有効活用していると、ナガレの『闘魂』のようにスキルがパワーアップすることもある。二人はその特訓に重点を置いていた。
「くそ……あと、何、回、かなんだ……ぐへ!」
そのすぐ近くで、ついにナガレがへたり込んでしまった。地面に突っ伏して「はぁはぁはぁ……」と荒い息をしている。
「ぐ……も、もうダメ……立てねえ……。アリッサぁ~、ちょっと手ぇ貸してくれ~……」
「んもう、しょうがないなぁ。だから無理しちゃダメって言ってたのに……」
そう言ってアリッサはナガレの手を掴み引っ張ろうとするが……。
グググ……。
「おっ、重ぉっ⁉︎」
一般田舎娘アリッサの非力な腕力では、砂袋+マルチスタッフ込みで総重量百キロを超えるナガレを持ち上げられなかった。
「ちょちょちょ、ルック! 手伝ってよ!」
「バカだなねーちゃん、こういう時は砂袋を外せば良いんだ」
「あ、その手があったか」
そんな事を話していた、その時。
タッタッタッタッタッ……。
「ん? 誰か来るぞ」
誰かが階段を上がってくる音がする。みんな休憩して静かだったので聞こえたようだ。
「はぁはぁ……ふうっ、やっとついた。俺様のスタミナを持ってしても時間がかかるとは」
「あ、ケンガじゃないか」
上って来たのはケンガ。相変わらず派手なガラシャツ姿の普段着である。
「なんだケンガ、どうしたんだよ?」
「なんかギルドマスターが招集をかけてるぞ。冒険者たちに集まってほしいらしい。呼んできてくれと言われたから、俺様がわざわざ来てやったんだ」
「マスターが? なんだろう……」
何か問題があったのだろうか? とにかく用事もないため一同はギルドに向かった。
~☆~☆~☆~☆~☆~
と言う訳でやってくると、いつも通りレンとアルクルが出迎えてくれた。傍にはサニーの姿もある。
「おお、来てくれたか。いきなり呼び出して済まんのう」
「だが急ぎの用事でな。みんな、こいつを見てくれ」
そう言ってアルクルが一枚の紙を渡してくる。みんなで内容をのぞき込むと、そこにはこんなことが書いてあった。
『キンテツ村護衛依頼
九月二日深夜、スラガン地方南エリアに位置する集落・キンテツ村がマガツゴーストに襲われる事案が発生しました。
村民は避難し人的被害はありません。
しかし村は多くの建物が破壊され、さらに襲撃に伴い発生した土砂崩れで、村の水源であるブレーブ川がせき止められてしまい、村の生活不可能な状況にあります。
現在村民の皆様には、緊急で設立されたベースキャンプにて生活していただいております。
復興作業において、モンスターが接近する可能性があります。
冒険者の皆様に護衛をお願いいたします。
タイガス冒険者ギルド本部』
「なんだって!? 大事件じゃないか! すぐ助けに行かないと!」
ナガレは驚いて目を見開いた。村がモンスターに襲われて壊滅したなど、そうそうある事態ではない。現にバッファローの町も半年くらい前にガラガラマムシに襲われる事態があったのだ。
「落ち着けよナガレ君。モンスターに襲われてるから助けに来てほしいって依頼じゃない。そんな事態だったら俺らじゃなくて、もっと強い冒険者パーティが行ってるはずだ」
アルクルがそう言ってたしなめる。
「じゃあどうして私たちなんかを頼ったのかしら~……?」
「それは……おそらくじゃが……」
ヒズマが素朴な疑問を口にすると、レンが言いにくそうに答える。
「その……多分『護衛くらいならこいつらでもできるだろ』と考えて回されたのじゃろう」
「……舐められてんな、オレたち」
「まあ弱いのは事実だしな」
「……言うなアルクル。オレたちはガラガラマムシとかサラマンダーをやっつけているんだぞ!」
「そりゃジョーがいたからだろ」
「ぐぬぬ……言い返せない」
ぐうの音も出ずに悔しそうなナガレは一旦置いといて、レンが口を開いた。
「おそらくタイガスギルドのマスター、クリフが私たちのために回してくれたのじゃ。それでどうする、受けるかの? 一応断ることもできるが……」
レンが一同を見渡す。
「オレは行きます! 困ってる人はほっとけない! オレはこんな人たちを助けるために冒険者になったんです」
最初に声を上げたのはナガレだ。続いてタネツも頷いた。
「なら、俺も行くぜ。金も出るんだろう、マスター? それじゃあちょっとターショの世話を頼めるか?」
「もちろんじゃ、一日四百ダラーが出る。その分護衛だけでなく、いろいろ手伝ってもらうことになるじゃろうが……」
「ターショ君の世話は任せときな~。俺、子供の世話とか得意だからさ」
アルクルがウィンクした。タネツは安心したようにほっと息を吐く。
「あ、なら私も行くわ~。やっぱり強くなるには、いろいろな経験をしないとね~」
「私も行きましょう。皆様のことを知るいい機会になるかもしれませんし、人は助けるものですから」
ヒズマに続いてサニーも手を挙げた。残るケンガは……やっぱりニヒルに笑っている。
「フッ、ならこの俺様もついて行ってやろう。アタカン家の由緒正しき魔術使い……」
「あー、はいはい」
そんなわけで、一同の出張が決定した。
「そうだな! 俺も何かしらの新スキルがついてほしいもんだ」
何度もスキルを有効活用していると、ナガレの『闘魂』のようにスキルがパワーアップすることもある。二人はその特訓に重点を置いていた。
「くそ……あと、何、回、かなんだ……ぐへ!」
そのすぐ近くで、ついにナガレがへたり込んでしまった。地面に突っ伏して「はぁはぁはぁ……」と荒い息をしている。
「ぐ……も、もうダメ……立てねえ……。アリッサぁ~、ちょっと手ぇ貸してくれ~……」
「んもう、しょうがないなぁ。だから無理しちゃダメって言ってたのに……」
そう言ってアリッサはナガレの手を掴み引っ張ろうとするが……。
グググ……。
「おっ、重ぉっ⁉︎」
一般田舎娘アリッサの非力な腕力では、砂袋+マルチスタッフ込みで総重量百キロを超えるナガレを持ち上げられなかった。
「ちょちょちょ、ルック! 手伝ってよ!」
「バカだなねーちゃん、こういう時は砂袋を外せば良いんだ」
「あ、その手があったか」
そんな事を話していた、その時。
タッタッタッタッタッ……。
「ん? 誰か来るぞ」
誰かが階段を上がってくる音がする。みんな休憩して静かだったので聞こえたようだ。
「はぁはぁ……ふうっ、やっとついた。俺様のスタミナを持ってしても時間がかかるとは」
「あ、ケンガじゃないか」
上って来たのはケンガ。相変わらず派手なガラシャツ姿の普段着である。
「なんだケンガ、どうしたんだよ?」
「なんかギルドマスターが招集をかけてるぞ。冒険者たちに集まってほしいらしい。呼んできてくれと言われたから、俺様がわざわざ来てやったんだ」
「マスターが? なんだろう……」
何か問題があったのだろうか? とにかく用事もないため一同はギルドに向かった。
~☆~☆~☆~☆~☆~
と言う訳でやってくると、いつも通りレンとアルクルが出迎えてくれた。傍にはサニーの姿もある。
「おお、来てくれたか。いきなり呼び出して済まんのう」
「だが急ぎの用事でな。みんな、こいつを見てくれ」
そう言ってアルクルが一枚の紙を渡してくる。みんなで内容をのぞき込むと、そこにはこんなことが書いてあった。
『キンテツ村護衛依頼
九月二日深夜、スラガン地方南エリアに位置する集落・キンテツ村がマガツゴーストに襲われる事案が発生しました。
村民は避難し人的被害はありません。
しかし村は多くの建物が破壊され、さらに襲撃に伴い発生した土砂崩れで、村の水源であるブレーブ川がせき止められてしまい、村の生活不可能な状況にあります。
現在村民の皆様には、緊急で設立されたベースキャンプにて生活していただいております。
復興作業において、モンスターが接近する可能性があります。
冒険者の皆様に護衛をお願いいたします。
タイガス冒険者ギルド本部』
「なんだって!? 大事件じゃないか! すぐ助けに行かないと!」
ナガレは驚いて目を見開いた。村がモンスターに襲われて壊滅したなど、そうそうある事態ではない。現にバッファローの町も半年くらい前にガラガラマムシに襲われる事態があったのだ。
「落ち着けよナガレ君。モンスターに襲われてるから助けに来てほしいって依頼じゃない。そんな事態だったら俺らじゃなくて、もっと強い冒険者パーティが行ってるはずだ」
アルクルがそう言ってたしなめる。
「じゃあどうして私たちなんかを頼ったのかしら~……?」
「それは……おそらくじゃが……」
ヒズマが素朴な疑問を口にすると、レンが言いにくそうに答える。
「その……多分『護衛くらいならこいつらでもできるだろ』と考えて回されたのじゃろう」
「……舐められてんな、オレたち」
「まあ弱いのは事実だしな」
「……言うなアルクル。オレたちはガラガラマムシとかサラマンダーをやっつけているんだぞ!」
「そりゃジョーがいたからだろ」
「ぐぬぬ……言い返せない」
ぐうの音も出ずに悔しそうなナガレは一旦置いといて、レンが口を開いた。
「おそらくタイガスギルドのマスター、クリフが私たちのために回してくれたのじゃ。それでどうする、受けるかの? 一応断ることもできるが……」
レンが一同を見渡す。
「オレは行きます! 困ってる人はほっとけない! オレはこんな人たちを助けるために冒険者になったんです」
最初に声を上げたのはナガレだ。続いてタネツも頷いた。
「なら、俺も行くぜ。金も出るんだろう、マスター? それじゃあちょっとターショの世話を頼めるか?」
「もちろんじゃ、一日四百ダラーが出る。その分護衛だけでなく、いろいろ手伝ってもらうことになるじゃろうが……」
「ターショ君の世話は任せときな~。俺、子供の世話とか得意だからさ」
アルクルがウィンクした。タネツは安心したようにほっと息を吐く。
「あ、なら私も行くわ~。やっぱり強くなるには、いろいろな経験をしないとね~」
「私も行きましょう。皆様のことを知るいい機会になるかもしれませんし、人は助けるものですから」
ヒズマに続いてサニーも手を挙げた。残るケンガは……やっぱりニヒルに笑っている。
「フッ、ならこの俺様もついて行ってやろう。アタカン家の由緒正しき魔術使い……」
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