182 / 508
第九話 月に泣く凶牙
登場・ココリョナカイマン!
しおりを挟む
そのまま十分ほど川沿いに進むナガレたち。時々ヨビカリジェルをそこら辺に吹き付けて道標にしている。
「そういえば、コウヨウ地方の川には『ホタル』って言う虫がいるらしいぜ。夜になると緑色に光って綺麗なんだってさ」
「ナガレさんってコウヨウ地方に詳しいんですね……出身なんですか?」
「いや、オレの好きな人がコウヨウ地方出身なんだ。だから話してると色々情報入ってくんの。サキミっていうちょっと病弱だけど、とーってもカワイイ女の子なんだ~♡」
「え、病弱? サキミ? もしかしてあの名家の……」
「どうかした?」
「えーと、その方の名字ってもしかして……」
「サキミの名字は…………あれ? そういえば、一度も聞いてないな」
思えば初対面の時サキミは、名前こそ名乗ったものの名字を言っていなかった。あの時はデレデレしてたから気にしてもいなかったが、どうしてだろう?
「それってもしかして……いえ、まさかね……えーっと、ナガレさんはどこ地方出身なんですか?」
(そんなにその子の事が好きなんですねぇ。ラストハーレムズに来てくれないかな……いや闘病中らしいし無理ですかね)
(……フローレンス、丁寧語と良いお淑やかな性格といい、サキミとキャラ被ってる……バストサイズ以外はだけど)
(……俺様、空気にされてるな。俺様の失言とはいえ、いくらなんでも引きずりすぎだろうに……)
ナガレとフローレンスは二人仲良く話している。その少し後ろを、つまらなさそうな顔をしたケンガが手を頭の後ろに乗っけて付いている。
とはいえケンガが何も言わないので、ナガレも放っておいている。やはり、現状を変えられるのは自分だけということだ。
「オレはコナキ地方だよ。夏以外はだいたい雪降って寒かったから、スラガン地方の暑さに驚いちゃった」
「あー、辛いですよね……私、実はエンペリオン地方の首都出身なんです。平和ではあるんですけど、夜も明るくてうるさいし昼は昼でうるさいし……とにかくうるさいです」
「え、首都⁉︎ すげぇー!」
意外と都会っ子だった! その事実に驚いて身を乗り出すナガレ。フローレンスは「いえいえそんなことないですよー」と謙遜しているが、口元がちょっとニヤけている。
「全く、雑談にうつつを抜かしやがって。いつ敵が襲ってくるか分からないことを忘れてるんじゃないだろうな」
一人で愚痴るケンガだが、日頃の行いを見るに人のこと言えないだろう。
「仕方ない、俺様だけでもしっかりしなければ!」
そう言ってケンガは川を見つめ続けた。水はかなり澄んでいて、夜のくせにとても明るく見える。特に川の真ん中あたりが鮮やかな瑠璃色に光ってて、とっても綺麗……。
「……って、なんだとうっ⁉︎」
いや、いくら川でも瑠璃色光るのはおかしい。それに変色しているのは一箇所だけだ!
「話している場合か! あそこを見ろ、ナガレ!」
「なんですか人が男子と仲睦まじく話してる時に……って、ああっ⁉︎」
「なんだ! 川が光ってる!」
慌ててナガレたちは抜刀し武器を構える。川底に何かあるようには見えないが……。
バサァッ……。
「んぉ!」
突然周囲がキラキラ白く光りだす。何か粉塵が空気中を舞い、月の光が反射しているようだ。
「これは粉……ナガレさん! 上です!」
フローレンスの言葉に、一斉に上を向く一同。
そこには三日月をバックに空を飛ぶ、半透明な瑠璃色の大きな翼。
胴体があるはずの場所には、体が真っ白なワニがいた。ぶら下げられたように後ろ足を下にして、空中で静かにとどまっている。人間に持たれたネコみたいでちょっと可愛い姿勢だが……細長い口から時々覗くトゲトゲした牙で帳消しになる。
「なんじゃありゃ~!?」
「あれがココリョナカイマンか! あの見た目なんか……生物的になんか嫌だ」
驚いて叫んでしまうナガレと、生理的嫌悪感に顔をしかめるケンガ。
だがココリョナカイマンはただこちらを見つめるだけで、特に何もしてこない。基本はおとなしい性格のようだ。
「なんで襲ってこないんだ?」
「まだナワバリに入ってないからです。ちょっと川に足入れてみてくれます?」
「お、おう」
よく分からないままフローレンスに促され、浅瀬に片足を突っ込むナガレ。すると……。
「ガァァァァ!」
突然ココリョナカイマンが咆哮して、こちらへ向かって急降下! そのまま大きな口を開けてナガレに襲いかかる!
「どひゃーっ!?」
慌ててジャンプで飛び出して避ける。相手はナガレがさっきまでいたところに思いきりかぶりついた。
ガリガリガリッ!
「じ、地面が抉れたぞ! なんという顎の力だ……」
川底に大きな穴ができている。あんなので噛みつかれたら、防具ごとコナゴナに粉砕されてしまう……。
「ナガレ! 来るぞ!」
「ココリョナカイマンはナワバリに入った相手は絶対に許さないんです! それに住み心地が良ければどんどんナワバリを広げていって……本拠地のデクネク地方ならいずれ他の個体と激突するんですが、ここには迷い込んだヤツしかいませんから」
「そうか。それではいずれ近くの橋までナワバリを広げてしまうかもしれない……よぉし、やっつけてやるか!」
川の浅瀬にざぶざぶ入り込む三人。ココリョナカイマンはゆっくりと地面近くまで降りてきて「ガルル……」と牙を剥き出しにして威嚇した。
バトルスタートだ!
「そういえば、コウヨウ地方の川には『ホタル』って言う虫がいるらしいぜ。夜になると緑色に光って綺麗なんだってさ」
「ナガレさんってコウヨウ地方に詳しいんですね……出身なんですか?」
「いや、オレの好きな人がコウヨウ地方出身なんだ。だから話してると色々情報入ってくんの。サキミっていうちょっと病弱だけど、とーってもカワイイ女の子なんだ~♡」
「え、病弱? サキミ? もしかしてあの名家の……」
「どうかした?」
「えーと、その方の名字ってもしかして……」
「サキミの名字は…………あれ? そういえば、一度も聞いてないな」
思えば初対面の時サキミは、名前こそ名乗ったものの名字を言っていなかった。あの時はデレデレしてたから気にしてもいなかったが、どうしてだろう?
「それってもしかして……いえ、まさかね……えーっと、ナガレさんはどこ地方出身なんですか?」
(そんなにその子の事が好きなんですねぇ。ラストハーレムズに来てくれないかな……いや闘病中らしいし無理ですかね)
(……フローレンス、丁寧語と良いお淑やかな性格といい、サキミとキャラ被ってる……バストサイズ以外はだけど)
(……俺様、空気にされてるな。俺様の失言とはいえ、いくらなんでも引きずりすぎだろうに……)
ナガレとフローレンスは二人仲良く話している。その少し後ろを、つまらなさそうな顔をしたケンガが手を頭の後ろに乗っけて付いている。
とはいえケンガが何も言わないので、ナガレも放っておいている。やはり、現状を変えられるのは自分だけということだ。
「オレはコナキ地方だよ。夏以外はだいたい雪降って寒かったから、スラガン地方の暑さに驚いちゃった」
「あー、辛いですよね……私、実はエンペリオン地方の首都出身なんです。平和ではあるんですけど、夜も明るくてうるさいし昼は昼でうるさいし……とにかくうるさいです」
「え、首都⁉︎ すげぇー!」
意外と都会っ子だった! その事実に驚いて身を乗り出すナガレ。フローレンスは「いえいえそんなことないですよー」と謙遜しているが、口元がちょっとニヤけている。
「全く、雑談にうつつを抜かしやがって。いつ敵が襲ってくるか分からないことを忘れてるんじゃないだろうな」
一人で愚痴るケンガだが、日頃の行いを見るに人のこと言えないだろう。
「仕方ない、俺様だけでもしっかりしなければ!」
そう言ってケンガは川を見つめ続けた。水はかなり澄んでいて、夜のくせにとても明るく見える。特に川の真ん中あたりが鮮やかな瑠璃色に光ってて、とっても綺麗……。
「……って、なんだとうっ⁉︎」
いや、いくら川でも瑠璃色光るのはおかしい。それに変色しているのは一箇所だけだ!
「話している場合か! あそこを見ろ、ナガレ!」
「なんですか人が男子と仲睦まじく話してる時に……って、ああっ⁉︎」
「なんだ! 川が光ってる!」
慌ててナガレたちは抜刀し武器を構える。川底に何かあるようには見えないが……。
バサァッ……。
「んぉ!」
突然周囲がキラキラ白く光りだす。何か粉塵が空気中を舞い、月の光が反射しているようだ。
「これは粉……ナガレさん! 上です!」
フローレンスの言葉に、一斉に上を向く一同。
そこには三日月をバックに空を飛ぶ、半透明な瑠璃色の大きな翼。
胴体があるはずの場所には、体が真っ白なワニがいた。ぶら下げられたように後ろ足を下にして、空中で静かにとどまっている。人間に持たれたネコみたいでちょっと可愛い姿勢だが……細長い口から時々覗くトゲトゲした牙で帳消しになる。
「なんじゃありゃ~!?」
「あれがココリョナカイマンか! あの見た目なんか……生物的になんか嫌だ」
驚いて叫んでしまうナガレと、生理的嫌悪感に顔をしかめるケンガ。
だがココリョナカイマンはただこちらを見つめるだけで、特に何もしてこない。基本はおとなしい性格のようだ。
「なんで襲ってこないんだ?」
「まだナワバリに入ってないからです。ちょっと川に足入れてみてくれます?」
「お、おう」
よく分からないままフローレンスに促され、浅瀬に片足を突っ込むナガレ。すると……。
「ガァァァァ!」
突然ココリョナカイマンが咆哮して、こちらへ向かって急降下! そのまま大きな口を開けてナガレに襲いかかる!
「どひゃーっ!?」
慌ててジャンプで飛び出して避ける。相手はナガレがさっきまでいたところに思いきりかぶりついた。
ガリガリガリッ!
「じ、地面が抉れたぞ! なんという顎の力だ……」
川底に大きな穴ができている。あんなので噛みつかれたら、防具ごとコナゴナに粉砕されてしまう……。
「ナガレ! 来るぞ!」
「ココリョナカイマンはナワバリに入った相手は絶対に許さないんです! それに住み心地が良ければどんどんナワバリを広げていって……本拠地のデクネク地方ならいずれ他の個体と激突するんですが、ここには迷い込んだヤツしかいませんから」
「そうか。それではいずれ近くの橋までナワバリを広げてしまうかもしれない……よぉし、やっつけてやるか!」
川の浅瀬にざぶざぶ入り込む三人。ココリョナカイマンはゆっくりと地面近くまで降りてきて「ガルル……」と牙を剥き出しにして威嚇した。
バトルスタートだ!
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
クラス転生あるあるで1人追放になって他の勇者は旅立ったけど私達はのんびりしますがのんびり出来なそうです
みさにゃんにゃん
ファンタジー
よくラノベの定番異世界転移のクラス転移で王様がある男子…黒川君を国外追放した。
理由はあるある展開で「雑魚スキルだから出てけ」ということで黒川君はドナドナされて残ったメンバーは勇者として直ぐに魔物討伐の旅に出されたが私達はのんびりしようと思います。
他のキャラのサイド話が間に入りますので悪しからず
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる