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第七話 剣を手にしたスナイパー
父と子
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「た……タネツさんの……」
「実の子供ってことかぁーーっ⁉︎」
「な、なんちゅうことじゃ……」
ナガレたちはその光景を前に、呆気に取られている。少年はただただぽっちゃりしたお腹にぎゅーっと抱きつき、タネツも困ったような嬉しいような顔で、優しく肩を抱いた。
「ターショ、大きくなったな……久しぶりだ」
(……ん? そういえば、あの時……)
そんな会話を横で聞いていると、ナガレはあることを思い出す。
『……嫁が子供を連れて出て行っちまったんだぁ~……』
ナガレがこの町へやって来た時、タネツとヒズマが歓迎会としてお酒をおごってくれたことがあった。その時に、タネツがこんなことを言っていたような……。
(ははあ、きっとその子が子供なんだな。にしても何というか、タネツさんと違って可愛げのある感じの顔だな……)
ナチュラルに失礼なことを考えながら、二人を見つめれナガレ。タネツはようやく呆気に取られる三人に気が付いて、ようやく少年から手を離した。
「おっと、説明すんの忘れてたぜ……こいつは俺の『元』息子、ターショだ。ちょっと内気だが優しくっていい子だぜ」
「……こんにちは。ターショです。……苗字がサオで、名前がターショ……」
少年ターショは礼儀正しく頭を下げた。
(タネツ・ケオージの息子がターショか……)
よからぬことを考えながら「オレはナガ
レ・ウエスト。冒険者だよ」と自己紹介する。
「そ、そういえばタネツには息子がおったのじゃのう」
「マスター、忘れてましたね」
「ううむ……」
レンとアルクルの会話は、誰も聞いていない。
「しっかし久しぶりだなぁ。三年ぶりか?」
「……四年ぶり……」
「そうかそうか。ターショは記憶力がいいなぁ」
そんな感じにデレデレしていたところで、タネツはふと何かを思い出したようだ。
「だが、シェイ……お前のお母さんに、ここに来ちゃダメって言われてたんじゃなかったのか?」
「えっ?」
なにやら妙な言葉が聞こえて、ナガレは疑問を抱く。来てはいけない……?
「そのことなんじゃがタネツよ、実はターショ君はのう……」
レンが進み出て、これまでの経緯を語った。するとタネツは「なにぃっ⁉︎」と驚いたのち、苦悶の表情で頭を抱える。
「マジか……家出って……ターショ、何があったんだ。まさか、殴られたり蹴られたりしたのか⁉︎」
「……いや、そうじゃない……」
焦った様子のタネツとは裏腹に、ターショはテンションが低い。
「お母さんとお父さん……最近家に帰ってなくて……でも僕、お金無いから……だから最後のお金使ってここに来た……。僕もう、お金無い……お腹も空いた」
「なにいっ!? い、いつからだ!」
「えっと、今年の四月くらいから……」
「じゃあ、もう三ケ月じゃねえか! な、なんてこった……」
タネツは頭を抱える。
「……タネツよ、積もる話もあるじゃろうが、まずはその子を休ませてあげなさい。聞けばターショ君、わざわざミラグアナ地方から駅馬車でやって来たそうじゃないか」
ミラグアナ地方は、大陸の東にある火山地帯。そこから馬車でやってくるとなると一日はかかってしまう……かなりの長旅だ。
「そ、そうだな。ターショ、とりあえず俺の家に行こうか。お前の母さんには内緒だぞ。休んだら一緒に食堂へ行こう。好きなものがあれば、なんでも頼んでいいからな」
「うん……」
そんなことを話しながら、タネツはターショを連れて出て行った。
「実の子供ってことかぁーーっ⁉︎」
「な、なんちゅうことじゃ……」
ナガレたちはその光景を前に、呆気に取られている。少年はただただぽっちゃりしたお腹にぎゅーっと抱きつき、タネツも困ったような嬉しいような顔で、優しく肩を抱いた。
「ターショ、大きくなったな……久しぶりだ」
(……ん? そういえば、あの時……)
そんな会話を横で聞いていると、ナガレはあることを思い出す。
『……嫁が子供を連れて出て行っちまったんだぁ~……』
ナガレがこの町へやって来た時、タネツとヒズマが歓迎会としてお酒をおごってくれたことがあった。その時に、タネツがこんなことを言っていたような……。
(ははあ、きっとその子が子供なんだな。にしても何というか、タネツさんと違って可愛げのある感じの顔だな……)
ナチュラルに失礼なことを考えながら、二人を見つめれナガレ。タネツはようやく呆気に取られる三人に気が付いて、ようやく少年から手を離した。
「おっと、説明すんの忘れてたぜ……こいつは俺の『元』息子、ターショだ。ちょっと内気だが優しくっていい子だぜ」
「……こんにちは。ターショです。……苗字がサオで、名前がターショ……」
少年ターショは礼儀正しく頭を下げた。
(タネツ・ケオージの息子がターショか……)
よからぬことを考えながら「オレはナガ
レ・ウエスト。冒険者だよ」と自己紹介する。
「そ、そういえばタネツには息子がおったのじゃのう」
「マスター、忘れてましたね」
「ううむ……」
レンとアルクルの会話は、誰も聞いていない。
「しっかし久しぶりだなぁ。三年ぶりか?」
「……四年ぶり……」
「そうかそうか。ターショは記憶力がいいなぁ」
そんな感じにデレデレしていたところで、タネツはふと何かを思い出したようだ。
「だが、シェイ……お前のお母さんに、ここに来ちゃダメって言われてたんじゃなかったのか?」
「えっ?」
なにやら妙な言葉が聞こえて、ナガレは疑問を抱く。来てはいけない……?
「そのことなんじゃがタネツよ、実はターショ君はのう……」
レンが進み出て、これまでの経緯を語った。するとタネツは「なにぃっ⁉︎」と驚いたのち、苦悶の表情で頭を抱える。
「マジか……家出って……ターショ、何があったんだ。まさか、殴られたり蹴られたりしたのか⁉︎」
「……いや、そうじゃない……」
焦った様子のタネツとは裏腹に、ターショはテンションが低い。
「お母さんとお父さん……最近家に帰ってなくて……でも僕、お金無いから……だから最後のお金使ってここに来た……。僕もう、お金無い……お腹も空いた」
「なにいっ!? い、いつからだ!」
「えっと、今年の四月くらいから……」
「じゃあ、もう三ケ月じゃねえか! な、なんてこった……」
タネツは頭を抱える。
「……タネツよ、積もる話もあるじゃろうが、まずはその子を休ませてあげなさい。聞けばターショ君、わざわざミラグアナ地方から駅馬車でやって来たそうじゃないか」
ミラグアナ地方は、大陸の東にある火山地帯。そこから馬車でやってくるとなると一日はかかってしまう……かなりの長旅だ。
「そ、そうだな。ターショ、とりあえず俺の家に行こうか。お前の母さんには内緒だぞ。休んだら一緒に食堂へ行こう。好きなものがあれば、なんでも頼んでいいからな」
「うん……」
そんなことを話しながら、タネツはターショを連れて出て行った。
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