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第七話 剣を手にしたスナイパー
名探偵アリッサ
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よく晴れた休日。バッファローの町にもついに、本格的な夏がやって来た。
日差しはとても強く暑いが、風がよく吹いてくれるためそこまで過酷では無い。町中では多くの人が日傘をさしたり、帽子やスカーフを巻いている。
そんな中、暑そうなローブの新入り冒険者・ケンガが歩いていく。
「なにか良いお土産は無いものか……」
そんな様子を建物の影から尾行する、怪しい影が一つ……。
「ふっふっふ……やっぱり気付かれてない」
それは(自称)謎めいたクールビューティー少女アリッサ・ケランだ! クールなサングラスとイカしたコートで、ケンガを尾行している。
……実際町の人からはモロバレどころかモロ目立ちだったが、あえて何も言われていないだけだった。まあ肝心のケンガにバレていないだけマシかもしれないが……。
「カナ、喜んでくれるかな……」
果物を見物するケンガの隙をついて、アリッサは影から影へコソコソと移動する。
……どうしてこんなことをしているのか。それは数時間前に遡る。
「やっほーナガレ……あれっ?」
道でナガレを見つけて声をかけたアリッサだったが……。
「うーん……そんな心配することはないんじゃねーの?」
「だがハッキリさせておかなくては……」
どうやらジョーと話しているようだ。(何を話しているんだろう?)と思ったアリッサは、そのへんに隠れてそれとなく聞き耳を立てる。
「いいかナガレ、ぽっと出の仲間ではダメなんだ。特に自分の実力に大きな自信を持っている冒険者は、いつか必ず自分を、チームを危険にさらす」
「大丈夫だって、ケンガはそんな奴じゃないと思うぞ」
「……俺はラグナロクにいたとき、様々なチームメイトと出会った。ついに憧れのパーティに入ったと張り切る奴、ここからのし上がってやるという奴……そいつらはすぐに死んでいった。いくらラグナロクといえども無敵ではない。イレギュラーが重なり敗走することもある」
「え……」
「そんな時、マッシバーたちは絶対にそいつらを囮にするんだ。そしてそいつはたった一人で立ち向かい、やがて倒され死んでしまう……。それだけ自信というのは危険なものなんだ」
「う……た、確かに」
見た感じ、ナガレが言いくるめられている。
「もし信じられないほどの強敵になって逃げだしたとしよう。ケンガが一人で敵に立ち向かったりしたら、お前はどうする? ……お前もともに戦うだろう。ヒズマやタネツもだ」
「えー、決めつけるなよ」
「俺には断言できる。お前は必ず立ち向かう! ……お前たちはそういう人間をほっとけない奴等だ。だが、それでどうなる? ……全滅するに決まってる。あいつの実力をはっきりさせておくべきだ」
そんな会話をこっそり聞いてしまったアリッサ。なんだか妙なお節介心が湧いてきて、居ても立っても居られなくなった。気付かれないようにこっそりその場を立ち去っていく。
(ジョー君とマブダチのナガレが困ってる……ここはこのアリッサちゃんが一服脱ぐとしますか! 警戒されてるらしい二人に代わってなんとかしたげよっと)
……おそらく『一肌脱ぐ』と言いたかったのだろう。言い間違いはともかく、そう言うわけでわざわざ地味な変装をして尾行しているのである。
日差しはとても強く暑いが、風がよく吹いてくれるためそこまで過酷では無い。町中では多くの人が日傘をさしたり、帽子やスカーフを巻いている。
そんな中、暑そうなローブの新入り冒険者・ケンガが歩いていく。
「なにか良いお土産は無いものか……」
そんな様子を建物の影から尾行する、怪しい影が一つ……。
「ふっふっふ……やっぱり気付かれてない」
それは(自称)謎めいたクールビューティー少女アリッサ・ケランだ! クールなサングラスとイカしたコートで、ケンガを尾行している。
……実際町の人からはモロバレどころかモロ目立ちだったが、あえて何も言われていないだけだった。まあ肝心のケンガにバレていないだけマシかもしれないが……。
「カナ、喜んでくれるかな……」
果物を見物するケンガの隙をついて、アリッサは影から影へコソコソと移動する。
……どうしてこんなことをしているのか。それは数時間前に遡る。
「やっほーナガレ……あれっ?」
道でナガレを見つけて声をかけたアリッサだったが……。
「うーん……そんな心配することはないんじゃねーの?」
「だがハッキリさせておかなくては……」
どうやらジョーと話しているようだ。(何を話しているんだろう?)と思ったアリッサは、そのへんに隠れてそれとなく聞き耳を立てる。
「いいかナガレ、ぽっと出の仲間ではダメなんだ。特に自分の実力に大きな自信を持っている冒険者は、いつか必ず自分を、チームを危険にさらす」
「大丈夫だって、ケンガはそんな奴じゃないと思うぞ」
「……俺はラグナロクにいたとき、様々なチームメイトと出会った。ついに憧れのパーティに入ったと張り切る奴、ここからのし上がってやるという奴……そいつらはすぐに死んでいった。いくらラグナロクといえども無敵ではない。イレギュラーが重なり敗走することもある」
「え……」
「そんな時、マッシバーたちは絶対にそいつらを囮にするんだ。そしてそいつはたった一人で立ち向かい、やがて倒され死んでしまう……。それだけ自信というのは危険なものなんだ」
「う……た、確かに」
見た感じ、ナガレが言いくるめられている。
「もし信じられないほどの強敵になって逃げだしたとしよう。ケンガが一人で敵に立ち向かったりしたら、お前はどうする? ……お前もともに戦うだろう。ヒズマやタネツもだ」
「えー、決めつけるなよ」
「俺には断言できる。お前は必ず立ち向かう! ……お前たちはそういう人間をほっとけない奴等だ。だが、それでどうなる? ……全滅するに決まってる。あいつの実力をはっきりさせておくべきだ」
そんな会話をこっそり聞いてしまったアリッサ。なんだか妙なお節介心が湧いてきて、居ても立っても居られなくなった。気付かれないようにこっそりその場を立ち去っていく。
(ジョー君とマブダチのナガレが困ってる……ここはこのアリッサちゃんが一服脱ぐとしますか! 警戒されてるらしい二人に代わってなんとかしたげよっと)
……おそらく『一肌脱ぐ』と言いたかったのだろう。言い間違いはともかく、そう言うわけでわざわざ地味な変装をして尾行しているのである。
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