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第三話 誇りとプライドを胸に
紫の炎
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「……ガラガラマムシがやられた、ですって?」
どこか暗い森の中、ある人物が黒フードの男から報告を受けていた。周囲は昼間なのに薄暗く、大きな篝火を焚いている。それを無数の人影が囲んでいた。
……そう、あの夜カープー森林にいた、シスター服の女だ。冒険者パーティ・ホムーランの一同を消したのち、すぐさまアジトを移したのだろう。彼女らがいる森林はスラガン地方ではない別の場所だ。
「……はい、どうやら旅の冒険者により斃されたようです」
「……本当にバッファローを襲わせたの? あの町はタイガスから近いのを良いことに、冒険者ギルドは弱小で、駐屯騎士の派遣も最低レベル。田舎町を踏み潰し、我らの存在を国中に知らしめようとしたのに……」
ギリギリと歯を食いしばる、シスター服の女。顔はよく見えないが、悔しさだけでなく焦りの感情もあるようだ。
「が……ガラガラマムシの魔法はまだ溶けてないのですね?」
「はい」
「そう……なら良かったです」
女はホッとしたように息を吐いた。反面黒フードの男は相変わらず何も言わない。何も考えていない……というより、まるで何かに操られているかの如く、力無くだらりと立っている。
「信者たちは全員こちらに移りましたか?」
「いえ……三名が逃げ遅れ、森を騎士隊に包囲されました」
「それで、どうしたのです?」
「……ご安心ください。三人とも勇敢に刃物を取り出し、迷いなく自らの喉を突き殉職致しました。望遠鏡で観察していた私から見ても、主人様のしもべとして恥じない素晴らしい最期でした」
「そう……残念ですが、彼らは立派に主人様の秘密を守ったのですね。命尽きれば体の『紋章』は消えてしまうでしょう。……いずれ彼らを讃える場を作りましょう。ですが今ではありません」
仲間が自害したというのに『素晴らしい』だの『立派』だの、明らかに論理感が欠如している。いくら文化の異なる異世界でも、それを美化するのはおかしかった。
「……すぐにその冒険者について調べなさい。何、ガラガラマムシを斃せるほど強い者ならすぐ尻尾を掴めるでしょう。さあ、行ってください。主人様のご加護がありますよう……」
「はっ。我らが主人様のご加護を!」
そう言って男は、数人の仲間と共に森の奥へ姿を消した。女は深呼吸して、荒れる感情を沈める。
「……ただでは済まさないわ。どこの誰だか突き止めて、我らの邪魔をすればどうなるか思い知らせてやる。覚えていなさい……! このスラガン地方を第一歩として、我が主人様は世界中に羽ばたくのです!」
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