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第二話 目指せスキルアップ!

まさかの参戦者

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~☆~☆~☆~☆~☆~
 
 チクチク……。
「あひぃ! うぎっ! いだだだだ!」
「男の子なんだから我慢するの!」
「そんなガキみたいなあやし方するなよぉ……いっだーっ!」
 結局ナガレは鎧を引っぺがされ、アリッサから治療を受けた。絆創膏を貼られるだけで鋭い痛みが走り、ナガレはもう涙目になっていた。
「こんな擦り傷、水浴びて回復薬飲んで寝とけば治るってのに」
「バカ言わないで! こうした方が早く治るし安全なの!」
 アリッサは慣れた手つきで怪我の処置をする。
「詳しいな、アリッサ……どっかで調べたの?」
「……ウチのねーちゃん、昔は医者を目指してたんだ」
 ナガレの率直な問いに答えたのはルック。アリッサに言われたものを救急箱から手渡していた。
「それでマディソンじーさんに教えてもらってたんだけど、ドクターライセンスをもらうには王国公式試験があるだろ? それに三回も失敗しちゃって……」
「ルック、それ以上言ったらダメ」
 いつもよりキツめなアリッサの声。ルックは気まずそうに目を逸らす。
「ま、そーゆーこと」
 そう言いながらルックはナガレの方を見た。姉にはナガレの決して諦めない姿勢に感化されたのかもしれない。最近なんだか性格が明るくなったのは、彼のおかげかも……。
「……はい、こんなもんね。よく我慢できましたっと」
「あー、痛かった……」
 ひと通りの治療が終わり、アリッサは大きく伸びをした。痛みに堪えたナガレは、バレないようにそっと涙を拭う。
「ところでアリッサにルック、どうしてここに? 結構遅い時間だし、もう来ないかと思ってたぞ」
「俺はねーちゃんを追いかけて来た。こんな夜に一人で出歩かせる訳にゃあ行かねーよ」
 ルックはそう答える。アリッサは少し迷ったそぶりを見せた末に、さっきから何も言わずナガレを見ている……タネツとヒズマの方を指差した。
「あたしは二人について行ったの。こんな夜遅くに二人並んで歩いてたから、面白半分でこっそり追いかけたんだ。なんかこう……ロマンチックなことが起きるかなーと思って」
 そこまで言ってアリッサは、タネツたちの顔色を伺う。二人は何も言わなかったが、話を遮る雰囲気はない。
「でも高台広場に向かってたから、あたし声をかけたんだ。あそこはナガレ君がいるかもしれないよって。そこで『牛猿流棒術』について教えてあげたら、二人ともびっくりしたみたいで……」
「『石猿流棒術』な」
 石猿流棒術。大陸の西にある異文化地方、コウヨウ地方発祥の流派……と、アルクルは推測しているらしい。
「そうとも言うね、えへへ。そしたらヒズマさんが『その様子を見に行くのよ~』って言ってたから、案内してあげたの……」
「へ? オレに何か用事ですか?」
 ナガレはタネツに問いかけた。昼にあんな事があったから、心配してくれていたのだろうか?
 先輩二人は顔を見合わせる。タネツがヒズマを軽く肘で小突いた後、口を開いたのはヒズマだ。
「えっとね……実は私たちも、ナガレ君の力になれたらな~って。それでどんな特訓してるのか、ずっと木の影で隠れて見てたのよ~」
「え、そうなんですか⁉︎ ぜんぜん気づかなかった!」
 特訓に夢中で、ぜんぜん気が付かなかった。図体の大きなタネツが隠れていれば、すぐに分かりそうなものだが……。
「でも、どうして隠れてたの? そんなコソコソしなきゃいけない関係でもないのに」
 アリッサが首を傾げる。二人ともナガレとは結構仲が良いし、特訓を見にくるのはそこまで後ろめたいことではないはずだ。
「あー、そうなんだがよ……声かける前にまずはどんな事してんのか、誇張無しのナガレ君の特訓を見たかったんだ」
 反応したのはタネツ。なぜかナガレと目を合わせようとしない。
「ここに来るまではせいぜい走り込みとかデコイぶっ叩いたりとかその程度だと思ってたんだが……まさか体に砂袋巻きつけて、マルチスタッフぶん回してるとはたまげたぜ。なかなか声をかけらんなかった。その……胸を貸してやるつもりが、足手まといになるんじゃねえかとな」
「タネツの言う通りよ……。まさかあんなに無茶な特訓してるとは思ってなくて、なかなか声をかけられなかったの。でもナガレ君が転びそうなのを見たら、すぐに体が動いちゃって」
 それで見つかった、と言う事だ。
「そ……そんなの大歓迎ですよ! 本当なんですか⁉︎ やったぁー! アリッサばっかりに無理させるのはこっちも辛かったんで大助かりですよ!」
 ナガレは手放しで喜んだ。先輩二人はCランクでも、ナガレより実力は上だ。……しかしもう一つ聞くべき点がある。
「そりゃあとってもありがたいんですけど……どうして急になんですか?」
 ナガレが悔し泣きするのを見てやる気を出した、と言うのはまあ分かる。しかし生半可な軽い気持ちで強くはなれない。その決意がどんなものかを、ナガレは知っておきたかったのだ。
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