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第二話 目指せスキルアップ!
復活の凡才
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そこまで言ってレンは顔を上げた。
「すまんのうナガレ君、希望を持たせるようなことを言って、このザマとは……」
「いや……良いです! ありがとうございます!」
ナガレはすぐに立ち上がった。その目は今すぐに走り出しそうなほど、やる気に満ちている!
「こうしちゃいられない、オレすぐに特訓してきます! どんな試練も乗り越えられるように、強くなってみせます!」
「うむ、その意気じゃ!」
「あ、えっとー……その通りだ! ようやくナガレ君らしくなって来たじゃねえの!」
レンとアルクルもニッと笑う。ナガレはマルチスタッフを引っ掴み、すぐに鎧を装着し始めた。
「それじゃ、今から特訓してきます! 鍵も閉めるんで二人とも出てくださいや。本当にありがとうございました、マスター!」
「ふっふっふー、たまにはギルドの長としてカッコいいところを見せぬとな!」
そうしてみんなで家の外に出た。空にはもうまん丸の月が登っている。と、ここでナガレが振り返った。
「あ、そうだ。ありがとねアルクル」
「は~? 俺ぁ何もしてねえぞ。ただの付き添いだっちゅーの」
「嘘つけよ。寝たふりしてたけど、時々チラチラ目を開けてオレの様子見てただろ?」
「な⁉︎」
動揺した様子のアルクル。さっきまで寝ていたのは演技だろう。ナガレの目は誤魔化せない。
「ふふふ、下手な演技だったようじゃのう。実は言い出しっぺは私ではなくアルクルなのじゃ。『マスターが代わりに慰めてやってほしい。俺には何もアドバイスできねえからよ』なんて頼んできたものでな。しかし直前になって『もっと落ち込んでしまったら、そんな様子見ていられない。寝たふりするから代わりに続けてくれ』など言いよって……」
「わー、ストップストップ!」
「へへっ、二人ともありがとうございました! それじゃあコレで! うぉぉぉぉっ、オレはやるぞーっ!」
ドドドドド……。
凄まじいスピードで、もう暗くなった夜道を走っていくナガレ。残された二人は顔を見合わせた。
「ったく、テンションの高低差が激しいヤツだ。若さが羨ましいよチクショウ」
「アルクルよ、そなたにしては粋な計らいじゃったのう。そこまでしてナガレ君に入れ込むのじゃな? 理由を聞かせてくれんかの」
レンにそう言われたアルクルは「うーん」と顎に手を当てた。
「なんでっスかね……アイツが特訓してるのは知ってるんで、それで助けてやりたくなったというか……やっぱ、なんでだろ?」
「そうか……じゃがナガレ君が成り上がるのならば、この街はあまりにも狭く古すぎる。強くなれば、すぐにここを出ていくのじゃろう。あまり気にしすぎるのも……」
「はいはい、意地悪は無しっスよマスター。アンタだってそれが分かっててもなお、ナガレ君を助けたじゃないですか」
「なんじゃあ、こんな時だけ頭の回転が早いヤツめ。ふふふ……いくつになっても頑張る人を見ると、損得抜きで助けてやりたくなるものじゃのう」
二人してニヤリと笑い、ギルドに歩き出した。
「そーいやマスター、どうしてそんな哲学のアレコレなんて知ってんスか? そりゃエルフだからいろんな事知ってるでしょーけど、その事ってまだ世間に好評されてない、研究中のヤツなんスよね?」
「なーに、詳しい学者の友達から聞いた話じゃ……ずっと前に亡くなっておるがのう。それよりアルクル、今日は良い仕事じゃったな。特別に一杯奢ってやるから酒場へ行くぞ。今日はもうギルドは休みじゃ」
「え、マジすか⁉︎ いやった~! 盛りだくさん飲んじゃって、いいんですよね⁉︎」
「『いっぱい』ではなく『一杯』じゃ! ちゃっかりしおって……私を酔わせて奢らせるのもなしじゃぞ! 今日は絶対に飲まぬからな!」
「はいはい、ゴチになりますっと!」
「すまんのうナガレ君、希望を持たせるようなことを言って、このザマとは……」
「いや……良いです! ありがとうございます!」
ナガレはすぐに立ち上がった。その目は今すぐに走り出しそうなほど、やる気に満ちている!
「こうしちゃいられない、オレすぐに特訓してきます! どんな試練も乗り越えられるように、強くなってみせます!」
「うむ、その意気じゃ!」
「あ、えっとー……その通りだ! ようやくナガレ君らしくなって来たじゃねえの!」
レンとアルクルもニッと笑う。ナガレはマルチスタッフを引っ掴み、すぐに鎧を装着し始めた。
「それじゃ、今から特訓してきます! 鍵も閉めるんで二人とも出てくださいや。本当にありがとうございました、マスター!」
「ふっふっふー、たまにはギルドの長としてカッコいいところを見せぬとな!」
そうしてみんなで家の外に出た。空にはもうまん丸の月が登っている。と、ここでナガレが振り返った。
「あ、そうだ。ありがとねアルクル」
「は~? 俺ぁ何もしてねえぞ。ただの付き添いだっちゅーの」
「嘘つけよ。寝たふりしてたけど、時々チラチラ目を開けてオレの様子見てただろ?」
「な⁉︎」
動揺した様子のアルクル。さっきまで寝ていたのは演技だろう。ナガレの目は誤魔化せない。
「ふふふ、下手な演技だったようじゃのう。実は言い出しっぺは私ではなくアルクルなのじゃ。『マスターが代わりに慰めてやってほしい。俺には何もアドバイスできねえからよ』なんて頼んできたものでな。しかし直前になって『もっと落ち込んでしまったら、そんな様子見ていられない。寝たふりするから代わりに続けてくれ』など言いよって……」
「わー、ストップストップ!」
「へへっ、二人ともありがとうございました! それじゃあコレで! うぉぉぉぉっ、オレはやるぞーっ!」
ドドドドド……。
凄まじいスピードで、もう暗くなった夜道を走っていくナガレ。残された二人は顔を見合わせた。
「ったく、テンションの高低差が激しいヤツだ。若さが羨ましいよチクショウ」
「アルクルよ、そなたにしては粋な計らいじゃったのう。そこまでしてナガレ君に入れ込むのじゃな? 理由を聞かせてくれんかの」
レンにそう言われたアルクルは「うーん」と顎に手を当てた。
「なんでっスかね……アイツが特訓してるのは知ってるんで、それで助けてやりたくなったというか……やっぱ、なんでだろ?」
「そうか……じゃがナガレ君が成り上がるのならば、この街はあまりにも狭く古すぎる。強くなれば、すぐにここを出ていくのじゃろう。あまり気にしすぎるのも……」
「はいはい、意地悪は無しっスよマスター。アンタだってそれが分かっててもなお、ナガレ君を助けたじゃないですか」
「なんじゃあ、こんな時だけ頭の回転が早いヤツめ。ふふふ……いくつになっても頑張る人を見ると、損得抜きで助けてやりたくなるものじゃのう」
二人してニヤリと笑い、ギルドに歩き出した。
「そーいやマスター、どうしてそんな哲学のアレコレなんて知ってんスか? そりゃエルフだからいろんな事知ってるでしょーけど、その事ってまだ世間に好評されてない、研究中のヤツなんスよね?」
「なーに、詳しい学者の友達から聞いた話じゃ……ずっと前に亡くなっておるがのう。それよりアルクル、今日は良い仕事じゃったな。特別に一杯奢ってやるから酒場へ行くぞ。今日はもうギルドは休みじゃ」
「え、マジすか⁉︎ いやった~! 盛りだくさん飲んじゃって、いいんですよね⁉︎」
「『いっぱい』ではなく『一杯』じゃ! ちゃっかりしおって……私を酔わせて奢らせるのもなしじゃぞ! 今日は絶対に飲まぬからな!」
「はいはい、ゴチになりますっと!」
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