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第二話 目指せスキルアップ!

ハートに眠る力?

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~☆~☆~☆~☆~☆~

「おーい、ナガレよぅ!」
 町の通りを歩くナガレに声をかける者が一人。アルカナショップの看板息子、ルックが手を振っていた。
「この前はありがとな、ウチのねーちゃんを助けてくれてよ」
「よせやい、そのセリフ一日一回は聞いてるよ」
 あの後アリッサがルックの姉だということを知った。それ以降ずっと感謝されている。
「そうか、すまねぇ……それで今日はどうした? ヤケに機嫌が良さそうじゃねえか」
「へへっ、実はな……」
 ナガレはニヤリと笑う。楽しみで仕方がないと言う表情だ。
「今日はタネツ先輩とヒズマ先輩が、タイガスの街に連れて行ってくれるんだ。あの人らが武器を買いに行くから一緒に来ないかって。……あの人らは、多分賭場にいくんだろうけど」
「そりゃすげえな!」
 タイガスの街……ここから駅馬車で一時間ちょっとかかる、ここスラガン地方一の大都会。武器屋も防具屋もアイテムショップも酒場も飲食店も、バッファローの町よりいくつもレベルが上。カジノも風俗も大人の店だってある。何よりスラガン地方の冒険者ギルド支部は、荒野を生きる凄腕の冒険者が集まった全地方の中でも強豪だ。
「だがナガレのことだし、遊びに行くってんじゃねぇだろう? 最近ねーちゃんと特訓してるくらいだし」
「ああ……実はスキル鑑定をしてもらおうと思っててさ」
 スキル鑑定、それは人々の心身に宿る特殊能力を暴き教えてもらうこと。
 スキルの種類はさまざまだ。モンスターとの戦いでチャンスの時にいつもより強い攻撃が出せる『好機(大)』、薬を飲んだ時他の人より効き目が良かったりという『タフネス』など特殊なスキルが大半である。
 しかし、それ以外にも長剣をうまく扱える技術がある『長剣上手』や敵の気配を遠くからも感じ取れる『気配読み』といった、単に本人の特技を表示するだけのスキルもあるのだ。
 これらとは反対のマイナススキルもあった。弱いモンスターでも逃げずに襲いかかってくる『威圧(弱)』、自分の体力が十分なうちは無意識に攻撃の手を抜いてしまう『油断』といった能力が弱くなる悪い効果をもたらすのがある。
「そうかい、じゃあ行ってこい! おみやげは要らないぜ~」
「ははは、世話になってるアリッサには買ってくるから心配しないでよ!」
「そう言わず俺にも買ってきてくれよぉ~!」
 ルックがわざとらしくほっぺを膨らませると、ナガレは苦笑しながらギルドの方へ向かった。

 さて、店の中に戻ろうとしたルック。まだ品出しが終わっていない……すると店の奥からだっさい部屋着のアリッサが出てきた。
「ふぁあ……おはよ~ルック、誰と話してたの?」
「ナガレのやつだよ、今日はタイガスまで遊びに行くんだとさ。んなどデカい欠伸すんなよ、ねーちゃん……。昨日もナガレの特訓に付き合ってんだろー?」
 ナガレは夕方になるとあの高台広場まで走って登り、そこでトレーニングを始める。そして日が沈むと、毎日クタクタになって降りてくるのだ。ちようど店じまいするころなのだが、ルックもまさか毎日姿を見ようとは思わなかった。
「ナガレくんは現状を変えようって頑張ってるから。なんだか昔のあたしを見てるみたいで。あたしは失敗しちゃったからこそ、ナガレ君には成長してほしいの」
「あー……そういやそんな時もあったな」
 ルックは数年前のことを思い出す。アリッサがこの街から出て、王都エンペリオンで働こうととしていたことを……。
「ねーちゃんの思いはよく分かった。だけど……それは寝ぼけて良い理由にゃなんねーんだよっ! オラ、とっとと顔洗って品出し手伝えくっちゃね女! 腹の贅肉掻っ捌いてケバブにすんぞ! いい加減働け、この箱入り娘!」
「あ、姉に向かってそんな口を聞きます普通⁉︎ 後贅肉なんてありませんっ、全部筋肉ですぅ~!」
 そう言ってトレーナーを上げて腹を見せびらかすアリッサ。太ってはいない……だが痩せてもいない。なんとも中途半端なぷにぷに具合だ。
「……ナガレにチクるぞ、特訓の手伝いはダイエット目的でもあるって」
「なっ⁉︎ そ、それは本気の理由じゃないもん! ナガレくんの力になりたいってのは本当で、ま、まぁそうは思ったけど、あくまで『ついで』で……」
「………………(じとーっ)」
「ぐぬぬ……ああもう分かったよ! 意地悪な弟になっちまって、親はどんな教育したんだか!」
「育ての親はねーちゃんとおんなじだよ!」
「べーっ!」
 文句を言いつつアリッサは、素直に引っ込んでいった。
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