23 / 312
第二話 目指せスキルアップ!
ハートに眠る力?
しおりを挟む~☆~☆~☆~☆~☆~
「おーい、ナガレよぅ!」
町の通りを歩くナガレに声をかける者が一人。アルカナショップの看板息子、ルックが手を振っていた。
「この前はありがとな、ウチのねーちゃんを助けてくれてよ」
「よせやい、そのセリフ一日一回は聞いてるよ」
あの後アリッサがルックの姉だということを知った。それ以降ずっと感謝されている。
「そうか、すまねぇ……それで今日はどうした? ヤケに機嫌が良さそうじゃねえか」
「へへっ、実はな……」
ナガレはニヤリと笑う。楽しみで仕方がないと言う表情だ。
「今日はタネツ先輩とヒズマ先輩が、タイガスの街に連れて行ってくれるんだ。あの人らが武器を買いに行くから一緒に来ないかって。……あの人らは、多分賭場にいくんだろうけど」
「そりゃすげえな!」
タイガスの街……ここから駅馬車で一時間ちょっとかかる、ここスラガン地方一の大都会。武器屋も防具屋もアイテムショップも酒場も飲食店も、バッファローの町よりいくつもレベルが上。カジノも風俗も大人の店だってある。何よりスラガン地方の冒険者ギルド支部は、荒野を生きる凄腕の冒険者が集まった全地方の中でも強豪だ。
「だがナガレのことだし、遊びに行くってんじゃねぇだろう? 最近ねーちゃんと特訓してるくらいだし」
「ああ……実はスキル鑑定をしてもらおうと思っててさ」
スキル鑑定、それは人々の心身に宿る特殊能力を暴き教えてもらうこと。
スキルの種類はさまざまだ。モンスターとの戦いでチャンスの時にいつもより強い攻撃が出せる『好機(大)』、薬を飲んだ時他の人より効き目が良かったりという『タフネス』など特殊なスキルが大半である。
しかし、それ以外にも長剣をうまく扱える技術がある『長剣上手』や敵の気配を遠くからも感じ取れる『気配読み』といった、単に本人の特技を表示するだけのスキルもあるのだ。
これらとは反対のマイナススキルもあった。弱いモンスターでも逃げずに襲いかかってくる『威圧(弱)』、自分の体力が十分なうちは無意識に攻撃の手を抜いてしまう『油断』といった能力が弱くなる悪い効果をもたらすのがある。
「そうかい、じゃあ行ってこい! おみやげは要らないぜ~」
「ははは、世話になってるアリッサには買ってくるから心配しないでよ!」
「そう言わず俺にも買ってきてくれよぉ~!」
ルックがわざとらしくほっぺを膨らませると、ナガレは苦笑しながらギルドの方へ向かった。
さて、店の中に戻ろうとしたルック。まだ品出しが終わっていない……すると店の奥からだっさい部屋着のアリッサが出てきた。
「ふぁあ……おはよ~ルック、誰と話してたの?」
「ナガレのやつだよ、今日はタイガスまで遊びに行くんだとさ。んなどデカい欠伸すんなよ、ねーちゃん……。昨日もナガレの特訓に付き合ってんだろー?」
ナガレは夕方になるとあの高台広場まで走って登り、そこでトレーニングを始める。そして日が沈むと、毎日クタクタになって降りてくるのだ。ちようど店じまいするころなのだが、ルックもまさか毎日姿を見ようとは思わなかった。
「ナガレくんは現状を変えようって頑張ってるから。なんだか昔のあたしを見てるみたいで。あたしは失敗しちゃったからこそ、ナガレ君には成長してほしいの」
「あー……そういやそんな時もあったな」
ルックは数年前のことを思い出す。アリッサがこの街から出て、王都エンペリオンで働こうととしていたことを……。
「ねーちゃんの思いはよく分かった。だけど……それは寝ぼけて良い理由にゃなんねーんだよっ! オラ、とっとと顔洗って品出し手伝えくっちゃね女! 腹の贅肉掻っ捌いてケバブにすんぞ! いい加減働け、この箱入り娘!」
「あ、姉に向かってそんな口を聞きます普通⁉︎ 後贅肉なんてありませんっ、全部筋肉ですぅ~!」
そう言ってトレーナーを上げて腹を見せびらかすアリッサ。太ってはいない……だが痩せてもいない。なんとも中途半端なぷにぷに具合だ。
「……ナガレにチクるぞ、特訓の手伝いはダイエット目的でもあるって」
「なっ⁉︎ そ、それは本気の理由じゃないもん! ナガレくんの力になりたいってのは本当で、ま、まぁそうは思ったけど、あくまで『ついで』で……」
「………………(じとーっ)」
「ぐぬぬ……ああもう分かったよ! 意地悪な弟になっちまって、親はどんな教育したんだか!」
「育ての親はねーちゃんとおんなじだよ!」
「べーっ!」
文句を言いつつアリッサは、素直に引っ込んでいった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
天然ボケ巨乳委員長と処女ビッチ巨乳ダークエルフと厨二病の俺。
白濁壺
ファンタジー
廊下でぶつかったマサトとミチルは異世界に転移させられてしまった。マサトは製作(クリエイト):素材さえあれば何でも作れる能力を。ミチルは選別(ソート):あらゆる物を選別する能力を得た。異世界で仲間になる褐色のエルフと一緒に現代日本に帰る方法を探るうちに。いつの間にか魔王を倒すことになっていた二人だが。異世界、宿屋。若い二人に何も起きないはずがなく。ちょっぴりエッチな青春ファンタジー。
声楽学園日記~女体化魔法少女の僕が劣等生男子の才能を開花させ、成り上がらせたら素敵な旦那様に!~
卯月らいな
ファンタジー
魔法が歌声によって操られる世界で、男性の声は攻撃や祭事、狩猟に、女性の声は補助や回復、農業に用いられる。男女が合唱することで魔法はより強力となるため、魔法学園では入学時にペアを組む風習がある。
この物語は、エリック、エリーゼ、アキラの三人の主人公の群像劇である。
エリーゼは、新聞記者だった父が、議員のスキャンダルを暴く過程で不当に命を落とす。父の死後、エリーゼは母と共に貧困に苦しみ、社会の底辺での生活を余儀なくされる。この経験から彼女は運命を変え、父の死に関わった者への復讐を誓う。だが、直接復讐を果たす力は彼女にはない。そこで、魔法の力を最大限に引き出し、社会の頂点へと上り詰めるため、魔法学園での地位を確立する計画を立てる。
魔法学園にはエリックという才能あふれる生徒がおり、彼は入学から一週間後、同級生エリーゼの禁じられた魔法によって彼女と体が入れ替わる。この予期せぬ出来事をきっかけに、元々女声魔法の英才教育を受けていたエリックは女性として女声の魔法をマスターし、新たな男声パートナー、アキラと共に高みを目指すことを誓う。
アキラは日本から来た異世界転生者で、彼の世界には存在しなかった歌声の魔法に最初は馴染めなかったが、エリックとの多くの試練を経て、隠された音楽の才能を開花させる。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる