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第一話 最悪のギルド!?
祝杯
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そうしてやって来たのは、街の北にある大きな酒場『シンク・ア・サン』だった。カウンター席に三人で腰掛ける。
「ここには街のみんなが来る良い酒場なのよ~。いつ来ても誰かしら居るし、従業員もみんな面白い人だからね~」
「まぁ料理が少ないのは難点かもしれねえが……たくさん食いてえとき以外はここだな。俺は公園近くの定食屋も好きだぜ!」
「おいおい、そんなに言われるとは参ったねぇ」
二人の後ろからバーテンダーが顔を出す。渋いイケメンだ。
「ナガレ君、何が飲みたい~? 高いお酒でも大丈夫よ~」
「いっそのこと『妖精の涙』でも開けちまうか? 今月の生活費が吹っ飛んじまうな、ガッハッハ~!」
「じゃあ『アンチモンドレッド』あります?」
「「え……」」
何食わぬ顔で頼んだナガレ。しかしその場にいた全員、言葉を失った。アンチモンドレッドとは、爽やかな甘みと弾ける炭酸が特徴のそこそこの銘酒だが、凄まじいアルコール度数なのだ。常人が飲めば卒倒してしまうほどである。
「……ま、まぁなんでも飲みゃいいさ! ホレ、アンチモンドレッドをジョッキで……ちょっと水増しで頼む」
「わ、私はスラガンビールで~。タネツも同じので良いわよね~? あ、あと何かおつまみもお願い~」
そうして酒を待つ間、ようやくナガレはまともに自己紹介していないことを思い出した。そこで二人に向き直り、頭を下げる。
「改めて、オレの名前はナガレ・ウエストです。しばらくの間、よろしくお願いします!」
先輩二人は顔を見合わせた。
「俺はタネツ・ケオージ。冒険者ランクはCだ。ま、仲良くしようぜ!」
「私はヒズマ・トーネトラよ~。私もCランク~。でも、もっとフレンドリーに行きましょう~? 冒険者ってのはそういうものよ~」
「うっす!」
すぐにでも出て行きたいと思っていることは当然言わない。少なくとも二年は付き合うことになるだろうし、二人の好意を無碍には出来なかった。
「お三方、注文のお酒だよ」
……と、ここでイケおじのマスターが三人にジョッキを差し出した。タネツ・ヒズマのは普通のビールだが、ナガレの酒は何かがおかしい……。緑色の液体で、炭酸がボコボコと泡を作り出していた。
「あの、マスターこれ……」
「いやあ、ごめんねぇハハハ……。アンチモンドレッドは今日仕入れたばかりなんだ。普通なら数日間寝かせとくものなんだけど……炭酸がキツすぎるかもよ? お客さん、やっぱり変えようか?」
「いやいや、オレはこの方が好きだからさ! ありがとう、マスター!」
(……マジで?)
そんな一同の視線を受けながら、ジョッキを傾けてグビグビ飲んでいくナガレ。
(うお⁉︎ し、死んじまうぞ⁉︎)
(ちょっとコレ大丈夫なの~⁉︎ ナガレ君、無理してない~⁉︎)
「ぷはーっ、やっぱうまいな! もう一杯頼むよ!」
……ナガレは結構な酒豪だったようだ。
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