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第一話 最悪のギルド!?
帰還
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キィィ……。
「……ん? おおっ、ナガレ君じゃんか!」
「何じゃと⁉︎ よ、よう戻った!」
支部のドアを開けると、シラフのアルクルがナガレの肩をガシッと抱いた。後ろにはまるで宝くじに当たったような満面の笑みのレンもいる。
「おう、あんな目に遭ってもよく戻ってきたな! しかもその日のうちに! ナガレ君が心配で、酒どころか水も喉を通らなかったぜ、ワハハ!」
「全くじゃのう! 怖い目にあったから、こっそり逃げ出しててもおかしくないと考えてしもうて……もう不安で仕方がなかったぞ」
そう言いながらレンはちっこい手で、ナガレの手をぎゅうぎゅう握ってくる。結構力強い……。
「あ、あはは……クエスト達成報告しに来たんで、そろそろ離してもらえます?」
「ぬ……す、すまぬナガレ君。どうぞ行ってくれ」
「あいよ! ほら、とっとと報告してくれや。今日はオレの奢りでどっか行こうぜ! な!」
「こらぁアルクル! これ以上抜け出したら、本当に給料抜きじゃぞ!」
「じょ、ジョーダンですって……」
「コントはいいから早くしてくれ!」
突っ込まないといつまでも続きそうな気がして、流石にナガレが待ったをかけた。正直早く家でダラダラしたい。
「……という訳でクエストは成功、と。依頼主からも達成報告が出てるぞ。ナガレ君、アリちゃんからめちゃめちゃ感謝されてたなぁ」
「え、そんなにか?」
キョトンとしたナガレ。アルクルはニンマリと笑った。
「そうか、ナガレ君は知らないのか。アンタが助けた可愛い女の子がいるだろ? あれが依頼主だよ。痺れを切らして一人で探しに行ってたんだ」
「はぁ⁉︎ んな無茶な……」
「しっかし、これでスカルクリーチャーに悩まされることも無くなったな。いやあお手柄だぞ! アイツには懸賞金も出てたんだ、後でお前にやるからな」
「い、いや……実はアイツを倒したのは」
「アリちゃんもようやく春が来たかねぇ! ナガレくんと同い年なんて、これ運命じゃね?」
「からかうでないぞアルクル……ナガレ君が困っておるじゃろう」
「はははっ、すんません」
そう言ってアルクルはクエスト書類にハンコを押した。これで全て完了だ。カウンターに背を向けると、不意に横から声をかけられた。
「お~い新入り! こっちにも顔見せてよ~!」
「でヘヘ、こっちだぜこっち!」
「ん?」
声の主は二人並んで、ランプ近くの壁にもたれかかっていた。振り向いたナガレに対して、気さくに手を挙げる。
(うお⁉︎)
両方ともすごい外見だ! 片方の男性はナガレの倍以上ありそうな、縦にも横にもでかい図体はまるでクローゼット。真っ黒に日焼けした肌、無精髭、スキンヘッドが強烈な外見で、目元はサングラスでよく見えない。
もう片方はおばさ……いや、多分ギリギリお姉さん。髪型は茶髪のポニーテールで大きなタレ目がおっとりした風貌を醸し出している。こっちは胸やら尻やら、鎧の上でも分かるほどでかい。なんというか……その、世間一般の『人妻』が具現化したような外見だ。
(これ以上考えるのはよそう……)
妙な考えを振り払うナガレ。こんなのが先輩か……いやいや、人は見た目によらないものである。良い先輩かもしれない。
「な……なんです?」
「聞いたわよ~、スカルクリーチャーを倒してくれたんでしょ~?」
「アイツには俺らもほとほと困ってたんだ。今日は新人歓迎会も兼ねて、俺たちの奢りでお祝いだぜ!」
「え、ホントですか⁉︎ 嬉しいです!」
一瞬で敬語になるナガレ。晩飯も食べていない今、これは嬉しい誤算だ。
「この街には美味しい酒場があるのよ~。ほらほら、早く行きましょ~!」
「オウ、マスターとアルクルも来るかい⁉︎」
大柄な男の方が振り返って声をかける。レンは苦笑して首を振った。
「すまぬが酒は苦手でな……あの絶妙な苦さは耐えられぬ。仕事中じゃから、行っておいで」
「はいはーい、俺は一緒に……」
ゴスッ!
「……やっぱ仕事があるから無しで」
「そうかい。なら、あばよ! また明日なぁ……ほれ行くぞ新入り」
そうして三人は支部を出て行った。
「……ナガレ君、大丈夫かのう。二人はかなりの酒豪じゃが……」
「……アイツならなんとかやりますよ。……多分、ね」
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