山口さん周辺のインプロヴァイゼーション事情

黒見 蠢

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長いものには巻かれろ変

長変 0日目

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「僕は運命論というものは信じていません。なぜなら信じるだけ絶望といいますか、面白味に欠けるといいますか、なんと言いますか考えるだけで未来への夢も希望も根こそぎ毟り取られたような気分になって明日学校を休みたくなってしまうので、基本的に信じないことにしているんです。

 では何を信じているのか。何を以て僕は僕自身の世界を定義し、明日を迎えようとしているのか。そこら辺の高校生ならばこう答えるでしょう『何言ってんの? わけわかんない』。ええごもっとも。そこら辺の一高校生としては充分な回答ですね。ですけどそうではないんです。ぼくとしてはそんな回答は及第点にもならないですし、ぶっちゃけ赤点なので却下です。

 ……ああ、話がそれちゃいましたね。それでぼくが信じているものは何かという話。それは『シュミレーテッドリアリティ』。俗に言う『世界は物語である』というトンデモ世界観でござい。今僕達が生きている世界は何者かによって綴られた作品であり、何者かによる創作でしかなく、そして僕達もあなたもあの人も、或いはそれ以外の誰かも創られたキャラクターでしかない、というものなのです。

 いやぁ、先人の価値観というものは理解しがたいですね。あっはは。

 んえ? それは運命を信じることと同じものなんじゃないかって? さあて、どうでしょう。僕はそうは思いませんけど、僕以外の誰かがそう思うのならば、きっとそうなのではないでしょうかね。

 運命とは決まりきった不変のレールですけど、物語とは作者の都合でいくらでも変わる不定形のレールなのですよ。

 ところで話は変わるんですけど、やたら丈の長いコートとかカーディガンとかパーカーとかの長物を、まるで悪役か何かのように日常的に着ているのって、よくよく考えて見て、言うならばそこら辺の一高校生的な目線から見て、めちゃくちゃ悪役臭くないですか? 特に黒だと悪役具合が極まってますます愉快ですね。まるで強面のようです。
 パーカーに付いているフードを、家の中でも外でもお構いなしに被っちゃう人と同じくらい愉快痛快腹痛ちゃんです。幾ら物語といっても、露骨すぎるのはいけません。

 それにそんな黒い長物を着ているキャラクターに、ろくなものを見たことは一度もありません。故に、きっと黒い長物を着ているキャラクターにろくな奴はいないのでしょう。

 長いものには巻かれろとはよく言いますが、あれらのぷんぷん悪役の臭いの漂うキャラクターは巻かれてるというより、絞められてるとか縛られてるとか囚われてるとか絡め取られてるとかに近いような気がしますしおすし。

 さて、さてさてさてさて。

 これから始まる物語は、まあここで僕がこうしてくっちゃべっていることから分かるかも知れませんが、とりあえず既に停止した出来事であり、そんな長い物に巻かれたり絞められたり縛られたり囚われたり絡め取られたりしちゃったりしちゃったりしている人達の物語のような運命のような、要するに即興劇です。

 しかし僕自身、人伝ひとづてに聞いただけなので詳しくは本来の出来事と微妙に異なっているかもしれませんけれど、そこはそこ。僕の友人知人が誠実なキャラクターであると信じて開幕していきましょう。

 それにしても、あーあ。ここから僕の出番はほとんどなくなるのかと思うと明日学校へ行くモチベーションが光の速さでなくなっていきますね。どうしましょうか。これは友人にジュースとお菓子を奢ってもらうしかなさそうです。

 それでは張り切って参りましょう。『長』い物には巻かれろ『変』。

 まさに、超絶インプロヴァイゼーション」
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