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第一章 ずっとずっと好きだったけれどもういけない
青四季海と、養護教諭の女良陽菜2
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陽菜の奥は指で、とがったそれは舌で、完全に役割分担をして、それぞれの部分が最も望む刺激を与えてやる。
最適の強さで、休みなく、容赦なく。
陽菜は、前触れもなく決壊した。
「ああああッ! うわあああ……っ!」
ひときわ多く濡らして、陽菜が達する。
声は、長く長く続いた。
「ああ……あー……あ……」
海は、だんだんと速度を落としていった。
特に指のほうは、陽菜のやわらかさを愛おしむように、もうほとんど出し入れをしない。
舌はやはり全面を使うが、込められた力はそれまでとは比べ物にならないほど優しい。時折舌の裏もつかっているらしく、ざらざらした表とは違う心地よさがあった。
「うっ……う、……青四季くん……」
「はい、先生」
返事をさせると、わずかにとはいえ愛撫がやんでしまう。それさえ惜しがって、
「それ好き……もう少し、してて……」
息も絶え絶えにそう伝えた。
海は、言われたとおりに穏やかな触れ方を繰り替えす。しかし空いているほうの手には、いつの間にか、厚手のタオルがあった。
陽菜が濡らした股や腿が、それでふわふわと拭かれていく。液体が冷えて不愉快になる前に、余分な水分はすべて拭き取られてしまった。
後には、いまだ続く、暖かく思いやりに満ちた後戯だけが残った。
「青四季くん……ありがとう……」
陽菜は学生のころから、男子に人気があった。今までに何人かの男とつき合ったことがある。中には、陽菜より一回り近く年上の男性もいた。
しかし、こんなにも満ち足りた、ぬくもりを感じる余韻を与えられたことはなかった。
なんでこんな男の子がこんな術を身につけているのだろう、といつも不思議に思う。
しかし海の与えてくれる満足がなければ、自分などとうにどこかおかしくしていたかもしれない。こうした落ち着いた時間があれば、これからも今の仕事を続けていくかどうか、自分なりに向き合って考えることもできるだろう。
賢者タイムっていうんだっけ、と陽菜は笑った。
「先生?」
「ううん、なんでもない。今日も、すごくよかった。本当にありがとう。」
「いえ。おれのほうこそ、先生には、初めてのときから何度も助けてもらっているので」
最初に陽菜が海を買ったときは、当然、陽菜は海にこんなことをさせるつもりはなかった。
しかし、狼狽する陽菜に、ホテルの部屋で、海は自分の悩みを打ち明けた。やっていることが露見したことで、一人で抱えていた苦しみを吐露することができた。
自分は汚い。女の人の欲求につけ込んで、いやらしいことをしているだけだ。女の人が喜んでくれているときだけは、充実を感じることができる。それは、女性という性を都合よく利用しているだけではないのか。
陽菜は、自分がいかに、この青四季海という生徒から、教師として信頼されているかを知った。養護教諭というのは、男子生徒から舐めた口をきかれることはあっても、教育者として敬われることはそうそうない。少なくとも陽菜はそう思っていた。
嬉しかった。だから海を肯定した。
「満たされない欲求を抱えた人を慰めることが、そんなに悪いことだとは思わないよ。君は苦しんでいるのだろうけど、君に救われた人もたくさんいることを忘れないで欲しい」
海の見開いた目は、潤んでいた。
陽菜は、どうするか迷ったものの、海の要望を受けて、愛撫を受けることにした。
海には、ほかに感謝を示す方法がなかった。だから陽菜は断れなかった。
今までにないくらいに濡れた。
人に聞かせたことのない声を上げた。
さんざんのけぞらされた体から力が抜け、シーツの上に崩れ落ちたとき、海は
「ありがとうございます」
と深々と頭を下げた。
それから、何度となく陽菜は海の手で欲求不満を解消されている。
「引退」をする前は海は陽菜から料金を取るのを渋ったが、陽菜のほうから強いて払うようにしていた。
今は海が「仕事としてはもうやりません」と言うので、無料で奉仕を受けている。いずれ、なんらかの形で返さなくてはならない。
(ちょっと心配だったのは、青四季くんが、ほかの男子みたいに私に告白してきたらどうしようってことだったんだけど――)
海を見ると、彼は自分の口元をタオルで拭っている。そして陽菜の視線に気づくと、どうかしましたか? と無邪気な犬のような視線を返してきた。
(――でも、この子全然そういう感じがないのよね)
けだるい体になんとか力を入れて、陽菜は自分の服を直した。
そして、年頃の男子だというのに、愛撫以上のことをまるでしようとしない海に、なんだか少しだけ腹立たしいものを感じて、意地悪を言ってみる。
「青四季くんって、童貞なんだよね?」
「そうですけど。それが、なにか?」
「今もそう?」
「そうですって」
「ふうん。よく平気だね」
「なにがですか」
もしかしたら、技術は身につけていても、性欲自体は希薄なのかもしれない。
陽菜は勝手にそう推量する。
「じゃ、彼女とかは」
「いたら、さすがにこういうことはしてないですね。自分では割り切りやすい性格だと思ってますけど、たいていのことが、思った通りにはいかないので……」
海が苦笑した。
最適の強さで、休みなく、容赦なく。
陽菜は、前触れもなく決壊した。
「ああああッ! うわあああ……っ!」
ひときわ多く濡らして、陽菜が達する。
声は、長く長く続いた。
「ああ……あー……あ……」
海は、だんだんと速度を落としていった。
特に指のほうは、陽菜のやわらかさを愛おしむように、もうほとんど出し入れをしない。
舌はやはり全面を使うが、込められた力はそれまでとは比べ物にならないほど優しい。時折舌の裏もつかっているらしく、ざらざらした表とは違う心地よさがあった。
「うっ……う、……青四季くん……」
「はい、先生」
返事をさせると、わずかにとはいえ愛撫がやんでしまう。それさえ惜しがって、
「それ好き……もう少し、してて……」
息も絶え絶えにそう伝えた。
海は、言われたとおりに穏やかな触れ方を繰り替えす。しかし空いているほうの手には、いつの間にか、厚手のタオルがあった。
陽菜が濡らした股や腿が、それでふわふわと拭かれていく。液体が冷えて不愉快になる前に、余分な水分はすべて拭き取られてしまった。
後には、いまだ続く、暖かく思いやりに満ちた後戯だけが残った。
「青四季くん……ありがとう……」
陽菜は学生のころから、男子に人気があった。今までに何人かの男とつき合ったことがある。中には、陽菜より一回り近く年上の男性もいた。
しかし、こんなにも満ち足りた、ぬくもりを感じる余韻を与えられたことはなかった。
なんでこんな男の子がこんな術を身につけているのだろう、といつも不思議に思う。
しかし海の与えてくれる満足がなければ、自分などとうにどこかおかしくしていたかもしれない。こうした落ち着いた時間があれば、これからも今の仕事を続けていくかどうか、自分なりに向き合って考えることもできるだろう。
賢者タイムっていうんだっけ、と陽菜は笑った。
「先生?」
「ううん、なんでもない。今日も、すごくよかった。本当にありがとう。」
「いえ。おれのほうこそ、先生には、初めてのときから何度も助けてもらっているので」
最初に陽菜が海を買ったときは、当然、陽菜は海にこんなことをさせるつもりはなかった。
しかし、狼狽する陽菜に、ホテルの部屋で、海は自分の悩みを打ち明けた。やっていることが露見したことで、一人で抱えていた苦しみを吐露することができた。
自分は汚い。女の人の欲求につけ込んで、いやらしいことをしているだけだ。女の人が喜んでくれているときだけは、充実を感じることができる。それは、女性という性を都合よく利用しているだけではないのか。
陽菜は、自分がいかに、この青四季海という生徒から、教師として信頼されているかを知った。養護教諭というのは、男子生徒から舐めた口をきかれることはあっても、教育者として敬われることはそうそうない。少なくとも陽菜はそう思っていた。
嬉しかった。だから海を肯定した。
「満たされない欲求を抱えた人を慰めることが、そんなに悪いことだとは思わないよ。君は苦しんでいるのだろうけど、君に救われた人もたくさんいることを忘れないで欲しい」
海の見開いた目は、潤んでいた。
陽菜は、どうするか迷ったものの、海の要望を受けて、愛撫を受けることにした。
海には、ほかに感謝を示す方法がなかった。だから陽菜は断れなかった。
今までにないくらいに濡れた。
人に聞かせたことのない声を上げた。
さんざんのけぞらされた体から力が抜け、シーツの上に崩れ落ちたとき、海は
「ありがとうございます」
と深々と頭を下げた。
それから、何度となく陽菜は海の手で欲求不満を解消されている。
「引退」をする前は海は陽菜から料金を取るのを渋ったが、陽菜のほうから強いて払うようにしていた。
今は海が「仕事としてはもうやりません」と言うので、無料で奉仕を受けている。いずれ、なんらかの形で返さなくてはならない。
(ちょっと心配だったのは、青四季くんが、ほかの男子みたいに私に告白してきたらどうしようってことだったんだけど――)
海を見ると、彼は自分の口元をタオルで拭っている。そして陽菜の視線に気づくと、どうかしましたか? と無邪気な犬のような視線を返してきた。
(――でも、この子全然そういう感じがないのよね)
けだるい体になんとか力を入れて、陽菜は自分の服を直した。
そして、年頃の男子だというのに、愛撫以上のことをまるでしようとしない海に、なんだか少しだけ腹立たしいものを感じて、意地悪を言ってみる。
「青四季くんって、童貞なんだよね?」
「そうですけど。それが、なにか?」
「今もそう?」
「そうですって」
「ふうん。よく平気だね」
「なにがですか」
もしかしたら、技術は身につけていても、性欲自体は希薄なのかもしれない。
陽菜は勝手にそう推量する。
「じゃ、彼女とかは」
「いたら、さすがにこういうことはしてないですね。自分では割り切りやすい性格だと思ってますけど、たいていのことが、思った通りにはいかないので……」
海が苦笑した。
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